鎖骨にしこりができた場合、どのような病気が潜んでいるのでしょうか?表面には出ていなくても、鎖骨にしこりができると少し心配になります。
鎖骨にしこりができても、他の症状がない場合と頭痛や肩こりが起こっている場合とは違いがあります。
リンパは全身を駆け巡っていて、丁度血管と同じような働きをしています。鎖骨にしこりができるとリンパ節付近を疑います。
鎖骨にしこりができることは、リンパとどの様な関係になっているのでしょう。鎖骨にしこりができると、どのような病気が疑われるのか調べてみました。
リンパと鎖骨
リンパとは、血管系に似た「リンパ液」と呼ばれる透明な液を運搬している、身体の中の全身を巡る組織形態です。
リンパ管と血管は老廃物の回収という働きは同じですが、流れているものが血液とリンパ液の違いなのです。リンパはリンパ節、リンパ管、リンパ液からなっていて、リンパ液は白血球の一種のリンパ球を含んでいる無色透明の液体です。
リンパについて
まずリンパについて見てみました。リンパは血管と寄り添うように、私たちの体の全身に張り巡らされています。リンパはリンパ系ともいいます。
私たちの体は、まず動脈から細胞全体に栄養素の含まれた水分が行き渡り、細胞の新陳代謝が行われます。各細胞ではこの栄養水分は、使い古されることで汚れた水分となっいきます。この水分は静脈とリンパに流れていきます。
この水分には、細胞のゴミや細菌やウイルスなどの病原菌が紛れ込んでいて、老廃物として静脈に流れ込もうとします。
下水道
静脈の入り口は小さくて、老廃物の大きなものは、リンパの大きな入り口の方に押しやられます。リンパの役目は丁度下水道のような役目をしています。
そしてリンパの中には老廃物を流す下水管のようなリンパ管と、下水処理をする役目のあるリンパ節が存在しています。
リンパ節
このリンパ節では老廃物を、綺麗な水に下水処理してくれています。このリンパ節は全身に800ヵ所ぐらいあって、リンパ液と一緒に流れてきた病原菌を退治する働きをしています。
老廃物の入った汚れた液を、リンパ節で綺麗なリンパ液にする役目を担っています。しかし病気やケガが多くなってくると、リンパ節の仕事が過重になってきます。
リンパ液
リンパ節で過重になると、綺麗な液にすることができなくて、腫れてしまうことがあります。鎖骨の奥に綺麗になったリンパ液は、集まって静脈に流れていきます。
リンパ液は血液と違って、心臓のようなポンプがありません。リンパ液の流れを良くするには、筋肉を動かさないとリンパ液が滞ってしまいます。
ですからリンパマッサージをすると、リンパ液がスムーズに流れやすくなります。
また女性は男性に比べて筋肉量が少なく、リンパ液が流れにくくなっているため、女性はむくみやすくなっています。
リンパ節について
リンパ節はリンパ系と血液系が合流する場所に、リンパ液から細菌やウイルスが入り込まないように、検問所のようなものが設けられています。
その場所は腸や気管支、足の付け根前側、耳の後ろや下、脇の下、首、鎖骨などに存在しています。
ウィルヒョウリンパ節(鎖骨のリンパ節)
鎖骨のリンパ節はウィルヒョウのリンパ節と呼ばれています。左鎖骨上部にあり、細菌やウイルスの検問をしていて、非常に重要な個所です。
この時にリンパ節が炎症を起こして、鎖骨のしこりとなるのがリンパ節腫脹です。リンパ節腫脹はサイズが小さいと見逃してしまいます。
リンパ節腫脹のサイズが大きいと、強い痛みを感じて腫れた感じになり、しこりの大きさによって痛みが変化してきます。
鎖骨のしこりができて、腫れが引かない場合は、病院を受診することをおすすめします。リンパ節に炎症が起ることをリンパ節炎と呼んでいます。
腋窩(えきか)リンパ節
乳がんの転移を起こしやすい場所で、腋鎬にある20~30のリンパ節群を指します。腋窩リンパ節に転移を認めるとリンパ節郭清というものを行います。
乳がんなどの癌細胞が最初に転移するリンパ節のほとんどが腋窩リンパ節で、腋窩リンパ節は腋窩の中の脂肪に埋め込まれているように入っています。
胸骨傍(きょうこつぼう)リンパ節
胸骨傍リンパ節は内胸動脈にそって存在しているリンパ節で、乳がんから鎖骨下リンパ節に転移します。
この胸骨傍リンパ節に転移する、患者が少なく情報が多くありません。
鼠経(そけい)リンパ節
接触しやすく臨床上非常に有効な鼠経リンパ節ですが、これは下肢の付け根の前面(鼠径部)に集まる数十個のリンパ節です。
鼠径部にあるリンパ節の総称で、腰のあるリンパ節に下肢・外陰部のリンパ液を受け取って送る働きをしています。子宮がんや乳がんの手術をした場合に、女性特有の後遺症としてあらわれるリンパ浮腫が見られつことがあります。
子宮がんの手術で、鼠経リンパ節の鼠径部や、腋窩リンパ節の腋窩部にリンパ液が溜まりリンパが腫れてきます。
リンパ液について
リンパ液というのは無色または黄色の透明な組織腋で、毛細血管からにじみ出ています。腸管で吸収された脂肪などの老廃物、古くなった細胞や水分などを運ぶ排泄運搬機能のある液です。
そしてリンパ液の中には、リンパ球という体の外から侵入した細菌やウイルスを撃退してくれる免疫機能の働きを持っているものが存在しています。
この免疫機能は人間が身体を維持するうえで、非常に大切な必要不可欠な役割を担っています。
鎖骨リンパについて
鎖骨リンパは上でも書きましたが、ウィルヒョウリンパ節といって、他のリンパが通る最も重要な場所なのです。
左鎖骨部分のリンパの場所は、リンパの出口となっています。ここで鎖骨下静脈と合流して、心臓へ戻っていきます。
リンパは流れが悪くなると老廃物が溜まりやすくなり、痛みや腫れを起こしてしこりとなる場合があります。
しこりと腫瘍の違い
しこりと腫瘍の違いは、硬さや動くか動かないかで違いが出てきます。リンパが滞ってしこりになっている時は、押すと弾力があり動いて痛みがでます。
腫瘍の場合はゴリゴリして固く動かないことと、弾力がなくて痛みがないのが一般的です。
鎖骨のしこりの症状と原因
鎖骨のしこりが出た時に、他の症状は出ないのでしょうか?それは鎖骨のしこりだけの場合と、その他に症状が出る場合とに違いがあります。
鎖骨が痛む症状で代表的なものは、ズキズキして患部が痛み、頭痛やめまい、耳鳴りなどの症状がでます。
また鎖骨は骨折しやすい場所でもあり、骨折した場合は呼吸するたびに、ズキズキとうずくような痛みが襲います。
原因
肩こり
血行が悪くなると肩こりが起きた時に、鎖骨まで痛みを感じることがあります。
他にも頭痛やめまいの症状を起こします。ストレスなどは血行を悪くします。
神経異常
神経が圧迫され鎖骨に痛みを感じることがあります。
他に腕や手、指などにしびれや違和感を感じることがあり、疲労や精神的な負担があると自律神経に異常が起きてきます。
その他の病気
鎖骨周辺にリンパがあり、リンパ自体の腫瘍や転移などがありますので、それについては後程詳しく説明します。
鎖骨のしこりが痛いのは病気?
鎖骨に痛みのあるしこりがある場合、もしかしてそれはリンパ節腫脹かもしれません。リンパ節腫脹についてみてみました。
リンパ節腫脹
リンパ節腫脹とは、リンパ節の器官が炎症を起こしているということです。リンパ節腫脹には炎症性腫脹と、腫瘍性腫脹があります。
炎症性腫脹
汎発性腫脹と局性腫脹があります。
腫瘍性腫脹
- 悪性リンパ腫(限局性・全身性)
- 白血病(全身性)
- 細網症(全身性)
- 免疫芽球性リンパ節症(全身性)
- 異蛋白血症(全身性)
アレルギー性腫脹
リポイド沈着性腫脹
膠原病
リンパ節腫脹の治療は内科を受診して、主治医の医師の指示に従ってください。
頸性神経筋(けいせいしんけいきん)症候群
頸性神経筋症候群とは首の筋肉の後ろ側に負荷がかかることで、副交感神経に異常が起こります。副交感神経の異常で肩こり、不眠、めまいなどの症状が出てきます。
頸性神経筋症候群は別名「首コリ病」とも呼ばれていて、事故によりむち打ちになったり、パソコンなどで長時間うつむいた姿勢が原因で起こります。鎖骨に違和感や固まったようなしこりを感じるようで、リンパとは関係ないので左右どちらにも出てきます。
心身の調和を保っている副交感神経の働きが異常を起こすために、頭痛、めまい、不眠症などの症状が全身にあらわれ、全身の不調を訴えることが多くなります。
首コリは整形外科、頭痛がある場合は神経内科、脳神経外科を受診したら良いでしょう。
鎖骨のしこりが痛くない場合は?
鎖骨のしこりができても、痛くないから放置するのはとても危険です。しこりが大きくなってきているようだと感じたら、医師に相談してみてください。
癌
癌がリンパに入り込むと、癌細胞が転移したり、リンパ節が癌化することが考えられます。
鎖骨付近のリンパ節だけが癌化しただけでなく、甲状腺、舌、喉、肺などの付近の組織にも転移した可能性を考えなければいけません。
女性などは乳・子宮・卵巣なども注意しなければなりません。左鎖骨上にしこりができ、痛みがなく固くてぐりぐりして、大きくなっている時は癌の可能性があります。
リンパ節腫脹の場合は弾力性がありしこりが動きますが、癌の場合はしこりが動きません。
急速に大きくなる時は痛みを伴うこともあります。癌のチェックを自分でも行ってみて、気になる様でしたら、医療機関を受診してください。
このしこりが動くか動かないかで、単なるリンパ節の腫れか、癌かの違いがあります。癌は早期発見が命を救います。おかしいと思ったら医療機関を受診しましょう。
癌がリンパに侵入してしまうと、全身をリンパが駆け巡っているため、癌細胞が身体中にできる可能性が出てまいります。鎖骨のしこりの他に、生活を振り返り、入浴などの時に全身を観察して、異常は鎖骨のしこりだけか注意してみてください。
癌情報も現在ではかなり多くなってきていて、早期発見なら完治は難しくありません。また自分でも食生活や生活習慣を見直す良い機会になります。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫はリンパ系の組織にできる癌で、リンパ節にピンポン玉サイズのしこりができ、2mm程度のものが5~10cmほどになります。悪性リンパ腫は血液の癌です。
このしこりはソーセージを触った時の感触とよく似ていて、固くてぐりぐりしています。基本的には痛みを伴いませんが、腫瘍が神経を圧迫している場合は、その限りではありません。
リンパ癌は進行が早く、リンパの流れにより、全身に転移する危険性を秘めています。痛みがないからといって、放置していると取り返しがつかないことがあります。
リンパのしこりができ、日々大きくなったり数が増えたりした場合は、悪性リンパ腫の可能性が高いので、速やかに医療機関を受診しましょう。
発熱や体重減少、盗汗、皮膚などの症状が出てる場合は要注意です。
結核性リンパ節炎
結核は結核菌という細菌により、結核患者の飛沫により空気感染する感染症です。症状は37℃前後の微熱が長期間続いて、食欲不振、体重減少、全身の倦怠感などの症状がでます。
結核は、現在では抗菌剤による治療で完治しますが、気が付くのが遅いと死に至ります。結核は肺の症状が多いですが、リンパ節は肺の次に多いのです。
左鎖骨上にもリンパ節腫脹が生じることもあるのです。風邪のような症状が続いて、リンパ節が腫れて咳がでてきたら、至急病院を受診してください。
結核は飛沫感染しますので、結核菌が増えれば増えるだけ、周りの人にも移す可能性が大きくなりますから、敏速な対応が必要となります。
結核性リンパ節炎は、昔は不治の病と恐れられてました。肺結核の人から結核菌が空気感染することにより、リンパ節内で起こる炎症です。
結核性リンパ節炎自体感染はしませんが、発症している人の膿んでいる部分に触ると、感染することがありますので注意が必要です。
胸郭(きょうかく)出口症候群
胸郭出口症候群というのは、鎖骨付近の血管、腕や肩甲骨周辺の神経が筋肉や骨により、胸や首の動脈の出口で圧迫されたり引っ張られたりして起こる病気の総称です。
上肢や肩甲骨の運動や感覚に関わる、神経や動脈が圧迫されます。腕から手にかけてのしびれや、だるさ、首や肩こりなどがあって、鎖骨周辺にしこりを生じることがあります。
上肢のしびれや肩周辺の痛み、また上肢にピリピリするような痛い感覚障害や、握力低下や運動麻痺が起こり、その動作の一つとして、鎖骨にしこりや違和感を感じます。
原因は机でのタイピングや、腕を上に動かす作業、むち打ち、過去の鎖骨骨折などが挙げられます。治療方法としては血流改善の内服や、痛み止めやビタミン剤などが有効ですが、気になる方は整形外科を受診してください。
左胸周辺になると心臓の病気が疑われます。左鎖骨の下となると胸郭出口症候群ですが左胸周辺になると心臓の病気が疑われます。
粉瘤腫(ふんりゅうしゅ)
皮膚にできるできものの一種で、アテロームとも呼ばれています。本来なら外に排出されるはずの垢などの老廃物が、皮膚の内側に溜まったため起こります。
最初はしこりが感じられますが、内部に皮脂や角質がどんどんたまるので、しこりが大きくなっていきます。
小さな黒いくぼみが中央の頂上中央部にあり、圧迫すると非常に臭いにおいが発せられることがあります。
通常は痛みやかゆみがありませんが、時に細菌などが侵入して化膿し、赤く腫れあがることがあります。下手に触ると化膿したりしますので、皮膚科で除去してもらいましょう。
鎖骨のしこりの検査
首や鎖骨の浅い部分は、エコー検査などで早期発見早期治療ができますので、エコー検査をしてもらうと良いでしょう。
早期発見するにはエコー検査や、レントゲン検査が良いでしょう。また血液検査をしてもらうと確定が容易になります。血液検査で腫瘍が良性腫瘍か悪性腫瘍か確認できます。
結核などの感染症の場合も早期発見が必要です。まず内科に受診することです。
またリンパ異常や粉瘤などの皮膚病でない場合は、整形外科に行く方が良いです。整形外科は胸郭出口症候群や、頸性神経筋症候群が専門で骨や筋肉の異常が専門です。
あかちゃんでもこの様なしこりが出てくることがありますので、小児科で診てもらいましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?鎖骨のしこりについて見てきましたが、鎖骨の左鎖骨のリンパ節はとても重要な働きをしていて、鎖骨の左鎖骨にしこりができたら注意しましょう。
また左鎖骨のしこりだけでなく、他にも色々な症状が出ていたら、迷わず医療機関を受診することをおすすめします。
自分の体は自分が守らないと、誰も守ってはくれません。異常を感じたらまずは検査をして異状なければ安心できます。自分の体を大切にしましょう。
関連記事として
これらの記事も読んでおきましょう。