毛虫皮膚炎とは?症状や原因、治療方法を知ろう!市販薬はどうやって選ぶ?

毛虫皮膚炎は、毛虫の毛によって引き起こされる皮膚炎のことです。

毛虫の毛には毒があって皮膚炎を起こすものと思われがちですが、全ての毛虫の毛に毒があるわけではありません。逆に、毛虫の毛だけが毒を持つと思われがちですが、有毒毛を持つ毛虫は、蛹、繭、成虫の蝶や蛾になってからも毒を持つことがあり、毛虫皮膚炎と同じような症状を引き起こします。

今回は、毒を持つ毛虫や、毛虫の有毒毛に触ってしまった場合などの対処法や治療、予防方法などについて資料を集めました。

毛虫皮膚炎とは

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毛虫皮膚炎は蝶や蛾などの鱗翅目(りんしもく)による刺症のうち、皮膚に症状がでるもので、主に幼虫の毛虫によって引き起こされます。種類によっては、幼虫だけではなく、蛹、繭、成虫の蝶や蛾でも引き起こされます。

刺症の症状では皮膚炎が最も多いのですが、呼吸器系、神経系など、皮膚以外の臓器にも多彩な症状がみられることがあります。

毛虫皮膚炎の原因成分

毛虫皮膚炎を始めとする刺症の原因成分は、ヒスタミンやタンパク分解酵素(トリプシン、キモトリプシンなど)、プラスミノーゲン活性を持つ成分などで、1匹が数種類の毒を持っています。

また、毒の種類は、鱗翅目の種類によって様々で、詳しい原因成分が全て分かっているわけではありません。

毛虫の毒性

1匹の毛虫や蛾や蝶による有毒毛からでも、中毒症状が出現します。鱗翅目の種類や、刺された人の体質、刺症の範囲などで、症状は違います。海外ではヤママユガの刺症による死亡例が報告されています。

なお、ヤママユガのほとんどは無害で、日本には毒のあるヤママユガは今の所生息しません。

毛虫皮膚炎の原因種と生息場所

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毛虫皮膚炎の原因種になる鱗翅目の幼虫は、有毒毛を持っており、有毒毛には毒針毛(どくしんもう)と毒棘(どくきょく)があります。

毒針毛はドクガ科、カレハガ科、ヒトリガ科の一部が持ち、毒棘はイラガ科、マダラガ科が持ちます。

毒針毛と毒棘の違い

ドクガ科、カレハガ科、ヒトリガ科が持つ毒針毛には、釣針の返しのようなものがついていて、皮膚に触れるだけで刺さり、なかなかぬけません。毒針毛が皮膚内で壊れると、中からヒスタミンやタンパク分解酵素などの毒成分を放出します。触った時には、チクチクする程度にしか感じないので、毒針毛に気付かずにあちらこちをを触って、毒針毛を広げてしまうことがあります。

イラガ科、マダラガ科が持つ毒棘は、毒嚢(どくのう)が根元にあり、皮膚に刺さると毒嚢からの毒を注射器のように皮膚の中に注入します。触った途端に電気のような疼痛を感じることが多いので、触れたことに気付かずに広げてしまうことは少ないのですが、毒成分にトリプシンやキモトリプシンなどのタンパク分解酵素(膵液と似た成分)を持つ種類も多いので、皮膚に潰瘍や壊死を起こしてしまうこともあります。

なお、ヒトリガ科の有毒毛は毒針毛に分類するときと、毒棘に分類するときがあります。

毒針毛を持つ毛虫

ドクガ科

ドクガ科の中で毒を持つのは、ドクガ、チャドクガ、キドクガ、モンシロドクガ、フタホシキドクガなどです。

ドクガの毛虫はサクラ、キイチゴ、ノイバラなどバラ科の樹木を、チャドクガの毛虫はカキ、チャノキ、ツバキ、サザンカなどツバキ科の樹木を好みますが、大量発生するとタンポポなど、草も食べるようになります。毛虫が発生する期間は、4~6月と8~9月ですが、卵にも繭にも成虫にも毒針毛が備わっているので、注意が必要です。

目立つ長い毛は無毒ですが、毒針毛は0.1〜0.2mmの短さで密集して生えており、肉眼ではビロードのように見え、抜け落ちた毒針毛も粉のように見えます。毒針毛は抜けやすく、風にのって散布されるため、毛虫などに触った覚えがなくても皮膚炎を起こすことがあります。

この毒針毛は本来、2齢幼虫以降の幼虫だけが持っているはずですが、繭を作る際に、毒針毛を繭にすり付け、メスの成虫は繭に擦り付けた毒針毛を腹に付着させ、卵を生む際にその毒針毛を卵の上に擦り付けるため、卵にも繭にも成虫にも毒針毛が備わっていることになります。

毒針毛の数は、2齢幼虫では数百本程度、蛹になる前の幼虫(終齢幼虫)では600万本以上あります。

カレハガ科

カレハガ科の中で毒針毛を持つのは、カレハガ、マツカレハ、クヌギカレハ、タケカレハ、ヤマダカレハなどです。

カレハガの毛虫はサクラ・ウメなど、マツカレハの毛虫はマツなど、クヌギカレハの毛虫はクヌギ・サクラ・ウメなど、ヤマダカレハの毛虫はクヌギ・コナラなどを好みます。毛虫が発生するのは3~4月、10~11月です。

カレハガ科の毛虫の毒針毛は、胸部に束になって帯状に生えていることが多く、ドクガ科の毒針毛とは違って、肉眼でも「毛」に見えます。ドクガ科と同様、幼虫がさなぎになるときには繭の内側から毒針毛を突き刺すため、繭にも毒針毛があります。ただし、ドクガ科とは異なり、成虫はこの毒針毛を擦り付けないため、成虫と卵には毒針毛がありません。

ヒトリガ科

ヒトリガ科の中で毒針毛を持つのは、ヤネホソバ、ツマキホソバなどで、ヒトリガは毒針毛を持ちません。

どちらの毛虫も地衣類(コケなど)を食べます。茅葺き屋根やウッドデッキにに発生するコケを食べる幼虫が、家屋に入り込んで、刺されることがあります。やはり、ドクガ科の毒針毛とは違って、肉眼でも「毛」に見えます。毛虫は8〜9月に卵から孵化しますが、幼虫のまま落ち葉の下などで越冬します。

毒棘を持つ毛虫

イラガ科

イラガ科の代表的なものは、イラガ、アオイラガ、アカイラガ、ヒメクロイラガ、ムラサキイラガ、ヒロヘリアオイラガなどですが、イラガ科の毛虫は、全て毒棘で刺す能力を持っています。

イラガ科の毛虫は、サクラ、ウメ、リンゴなどのバラ科、カキ、カエデ類、ヤナギ類、クリなどを好み、集団で生息します。毛虫が発生する期間は、7月~10月ですが、繭にも毒棘を突き刺す種類がいるので、繭にも注意が必要です。成虫は毒棘を持ちません。

触った瞬間に、蜂に刺されたような電気の流れるような痛みが生じることから、デンキムシと呼ばれることもあります。

マダラガ科

マダラガ科の毛虫の中で毒棘を持つのは、タケノホソクロバ、ウメスカシクロバ、リンゴハマキクロバなどです。

タケノホソクロバの毛虫はササやタケなど、ウメスカシクロバの毛虫はウメやサクラなどバラ科の樹木、リンゴハマキクロバの毛虫はリンゴやズミなどの樹木を好みます。毛虫が発生するのは5月~8月、10月~11月ですが、毛虫の死骸や脱け殻でもかぶれることがあります。

イラガ科の毛虫は全て毒棘で刺す能力がありますが、マダラガ科の毛虫は、毒棘を持つ種は一部です。しかし、毒棘を持たないマダラガ科の毛虫でも、外敵から襲われた際に嫌な味がする防御液を分泌する能力を持つことが多く、この防御液でかぶれを起こすこともあります。

毛虫皮膚炎とその他の刺症の症状

毛虫 かぶれ

毒針毛では初期症状が小さく(むずむずする程度)、毒棘では初期症状が大きい(蜂に刺されたような痛み)ことが多いです。毒針毛の場合、気付かずに口に入れて食べてしまうこともあるので、注意が必要です。

毛虫皮膚炎の症状

毒針毛による皮膚炎の症状

毛虫に直接触ったり、風に乗って飛んできた粉状の毒針毛が皮膚につくと、最初はむずむずする程度の違和感があります。手のひらなどで、払ったり撫でたりすると、毒針毛が皮膚に刺さります。毒針毛には釣針の返しのようなものがついているので、抜けることなく皮膚の中で壊れて毒を放出します。

毒が放出されると強い痒みが現れます。皮膚を掻くことによって、毒針毛はどんどん深く刺さります。赤い点状の発疹が皮膚にあるのに気づくのはこの頃です。数時間後、この点々の周りが腫れ、痒みはさらに強くなります。多数の毒針毛を皮膚に塗り込んでしまった場合は、毒針毛が刺さった部分全体が広く赤く蕁麻疹のように腫れ上がります。

毒棘による皮膚炎の症状

毒棘では、触った瞬間に、思わず飛び上がるほどの激しい痛みが起こります。痛みはかなり強く、水泡や紅斑などの発疹ができたり、ひどい場合には壊死を起こすこともあります。

水泡や壊死が起きずに済んだ場合は、痛みは1〜2時間で一旦収まりますが、数時間後〜翌日には痒みのある湿疹が出てきます。痒みは一週間ほど続きます。

その他の刺症による症状

毒針毛は、粉状なので、口の中に入ったり、吸い込んだりして、皮膚以外の場所でも症状がでることがあります。医療従事者でも意外に知らないことがあるので、注意を要します。

全身症状

滅多にありませんが、どの経路で入った毒でも、アナフィラキシーにより、ショック症状を起こす可能性があります。また、血液凝固障害が起こり、出血が止まらなくなるなどの症状を起こすこともあります。これらの場合は、救急車での搬送が必要です。

呼吸器症状

粉状の毒針毛を吸い込んでしまった場合、鼻咽頭炎、咽頭炎、気管支炎、呼吸困難が起こることがあります。

消化器症状

毒針毛を食べてしまうと、口内炎、嚥下困難、嘔吐、腸炎などを起こすことがあります。

眼症状

毒針毛が眼に入ると、眼の刺激症状、角膜炎・結膜炎、結節性眼炎などを起こすことがあります。

神経・筋肉症状

数は少ないのですが、毛虫への接触により筋肉痙攣を生じたという報告があります。

毛虫皮膚炎やその他の刺症の対処法

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基本は毒針毛や毒棘を取り除くこと。次いで抗ヒスタミン剤やステロイド剤の利用です。大げさだと思っても皮膚科受診をおすすめします。

なお、オンライン上に、ヒスタミンは熱に弱いので50℃のお湯で痒みがなくなるなどの情報が出回っていますが、これは嘘です。ヒスタミンは熱に安定な物質で、調理加熱程度の温度では壊れません。50℃のお湯なら大した害もないので、試してみるのは良いと思いますが、過信して処置のタイミングを逃さないようにして欲しいと願っています。毛虫皮膚炎は早期対策が重要です。

また、トリプシンやキモトリプシンなどのタンパク分解酵素は、ヒスタミンよりは熱に弱いですが、それでも70℃以上に加熱しないと失活しません。

毛虫皮膚炎の対処

1)セロハンテープやガムテープを貼ってはがして除去してください。これを何度も繰り返します。虫眼鏡で見ることができる大きさの有毒毛(毒棘など)なら、ピンセットを使ってください。ドクガ科の粉状の毒針毛に触ってしまったのなら、刺さる前でしたら、流水でこすらずに洗い流すのも有効です。

2)有毒毛の除去がほぼ完全にできたら、付着部分を石鹸と流水で十分に洗ってください。

3)大したことがないと思っても、できれば、この時点で皮膚科を受診してください。皮膚科受診ができない状況の時は、応急処置として、ステロイド軟膏を塗布してください。なければ抗ヒスタミン剤でもかまいませんが、毛虫皮膚炎にはあまり効きません。

4)ドクガ科の粉状の毒針毛がたっぷり付いた衣類は、洗濯しても毒針毛を完全には除去できません。また、毒針毛は無毒化されるのに1年以上かかります。オンライン上に50℃のお湯で洗うと良いなどの情報がありますが、ヒスタミンは煮沸しても無毒化できません。もったいないのですが、毒針毛がたっぷり付いてしまった衣類は、捨ててしまうのが一番です。

ただし、風に乗って飛んできた程度の毒針毛でしたら、洗濯機で5回以上の洗浄(洗剤は入れた方が、毒針毛が浮き出し易いです)で、ほとんど流れてしまうこともわかっています。

全身症状がある場合の対処

アナフィラキシーにより、ショック症状が起こっている場合や、血液凝固障害(出血が止まらないなどの症状)がある場合は、救急車での搬送が必要です。

原因が何であれ、アナフィラキシーや血液凝固障害の治療の原則は同じなので、それに沿った治療を行いますが、毛虫の有毒毛が原因ということは、医師に伝えてください。

呼吸器症状がある場合の対処

場合によっては内視鏡を利用して、毒針毛の除去を行うこともありますが、除去は非常に難しいので、対症療法が中心になります。

消化器症状がある場合の対処

1)まだ口腔内にある場合は、テープを利用して除去します。

2)飲み込んでしまった時には、大人なら200ml程度、子供なら100ml程度の水か牛乳で希釈します。

3)この時点で病院に連れて行ってください。大量に飲み込んでしまった場合は、場合によっては内視鏡を利用しての除去を行うこともありますが、除去は非常に難しいので、対症療法が中心になります。

嘔吐させたり胃洗浄したりなどは、食道に対する刺激を助長するので禁忌とされています。活性炭や下剤は、毒素は吸着しますが毛の物理的刺激には効果がないので、通常行いません。

眼症状がある場合の対処

1)水か微温湯で15分以上洗浄してください。

2)その後、眼科を受診します。

3)眼科では顕微鏡科で注意深く除去し、炎症などに対しては対症療法を行います。

毛虫皮膚炎の予防方法

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毛虫が大量発生したような場合は、駆除するのが一番です。しかし、ドクガ科の毒針毛は抜けやすく、毛虫の死骸からの毒針毛でも風に乗って肌につけば皮膚炎を起こしますので、駆除した毛虫は適切に処分する必要があります。町内で大量発生した場合には、駆除業者に死骸の処分まで依頼してしまいましょう。

5〜10月は気候もよく、洗濯物を外で乾かしたくなる季節ですが、洗濯物をバラ科やツバキ科、カキなど、毛虫が好む樹木の近くで干すのは避けた方が無難です。また、町内で毛虫が大量発生したとわかっている場合は、風にのって毒針毛が飛散しますので、外に干すこと自体避けた方が良いかもしれません。

山登りなどの行楽で、毛虫に遭遇する可能性がある場合には、セロハンテープ、石鹸、市販のステロイド剤を荷物に入れておきましょう。また、長袖、長ズボン、軍手、スカーフやタオル(捨てても諦めがつくもの)の着用はもちろん、帽子もかぶり、飛んできた有毒毛に被爆しないようにしてください。軍手は複数用意し、毛虫を触ってしまったらビニール袋に入れて持ち帰ります。

市販薬の選び方

塗り薬

毛虫皮膚炎など、鱗翅目の幼虫による刺症は、最初の見た目よりも重症になることが多いので、大げさだと思っても、できれば皮膚科受診していただきたいのですが、実際問題として、刺されるのは休日の行楽中だったり、山奥だったりするので、すぐに皮膚科受診ができるとは限りません。

また、山を降りてから皮膚科を受診するにしても、有毒毛を取り除いて洗浄した後は、できるだけ早く患部にステロイド軟膏などを塗布した方が、痒みの期間が短くて済みます。

そういうわけで、行楽のお供に、虫さされ用のステロイド剤(セロハンテープと石鹸も)は必須です。ハチやブヨに刺された時はもちろん、実は、蚊に刺された時にも使えます。

特定の商品名は出したくないので、詳細は薬局の薬剤師に相談してください。薬剤師に相談する時は「山登りをする予定なので、毛虫皮膚炎や虫さされの準備をしておきたいから、ミディアムかストロング以上の強さのステロイド剤を紹介して欲しい。」とお伝えください。

もうちょっと付け加えますと、毒棘などの強い痛みを伴うものは最初の1〜2時間だけはステロイドに加えて局所麻酔剤の入っているものがベター、毒針毛などの痒み優位のものや毒棘の翌日からの痒みに対してはステロイドに加えて痒み止めが入っているものがベターです。しかし、虫さされの薬ばかり沢山あっても仕方ないので、強めのステロイド剤を1つ持っていくのが現実的でしょう。

また、痒みや痛みに対しては、市販の飲み薬(痒み止めや痛み止め)も効果があります。かゆみ止めの飲み薬は眠たくならないものをご利用ください。

まとめ

今回は、毛虫皮膚炎を中心に鱗翅目幼虫の刺症で起こる疾患についてご紹介しました。

毛虫皮膚炎は意外にやっかいですので、医師に診せるほどではないと思っても、応急処置の後、できれば皮膚科を受診してください。すぐに受診ができず、時間が経ってしまった場合でも、皮膚科受診をおすすめします。

また、毛虫の有毒毛は皮膚炎以外の病気も引き起こします。こちらの方は、毛虫皮膚炎に比べると非常に珍しいので、医療従事者でも、その存在を知らないことがあります。毛虫皮膚炎と同時に呼吸器症状や眼の症状があった場合は、皮膚科医から呼吸器科や眼科の医師を紹介してもらい、紹介状に「鱗翅目幼虫の刺症による気管支炎(結膜炎)の可能性」などと書いてもらうと、話がスムーズです。

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