パソコンやスマートフォンなどの普及で、最近は、一昔前に比べると、文字を書く機会が少なくなったという人も多いのではないでしょうか。現代教育では、タブレットなどを使用するので、子供たちのITリテラシーも、親の世代のそれとは随分異なることでしょう。
しかし、それでも、便箋や鉛筆の存在がなくならないのは、やはり「手で文字を書く」という行為には、何か特別なものがあるからなのかもしれません。
また、勉強するときには、暗記するために何度も覚えるべきことを書いたり、内容をまとめるために、自分で文字を起こすことで、しっかりと内容が頭に入ってきます。そして、その頑張った証のようにして、指にできるのが、今回のテーマになっている「ペンだこ」です。
現代の社会人にとっては、すでに懐かしい存在になっている人もいるかもしれませんが、学生や、お絵かきが好きな小さな子供たちには、今も、ペンだこが指にできることも多いでしょう。
そこで、今回は、ペンだこがなぜできるのか、治す方法はあるのかといった、ペンだこに関する様々な情報をご紹介いたします。
ペンだこができるメカニズム
鉛筆やボールペンを使用する機会の多い物書きの方や、学生、小さな子供たちの指を見ると、中指の第一関節がぷっくりと膨らんでいることがあります。これが、ペンだこです。
足裏などにできる「たこ」と同じように、膨らみ部分の皮膚は少し固く、場合によっては痛みや出血を伴うこともあるようです。
では、なぜ、ペンだこができてしまうのでしょうか?そのメカニズムについて、早速見ていきましょう。
なぜペンだこができるのか?
ペンだこに限らず、そもそも、「胼胝(たこ)」がなぜできるのかについて、まずは見てみましょう。
たこは、いわゆる「防御反応」が生じることでできると考えられています。例えば、足裏にたこができるとき、靴のサイズや体重のかけ方によって、特定の部分に刺激や摩擦が生じているということになります。
ある一定の部分に、過剰な負担がかかることで、身体の防御反応が作用して、その部分の角質を固く、厚みを持たせようとします。
また、こういった現象は、皮膚の柔らかい部分よりも、すぐ下に骨や硬いものがある場所にできやすいという傾向があります。
ペンだこができる位置を思い浮かべると、確かに、鉛筆やボールペンと接触し、骨が直下に存在する中指の第一関節部分ではないでしょうか。
ずっと鉛筆を持ち続けると、そこに摩擦や刺激が加わり、身体がこれらの負担から守ろうとすることで、ペンだこが発生するのです。すなわちこれは、私たちの身体が正常に機能しているという心強い証であるとも言えるでしょう。
ペンだこができやすくなる鉛筆やボールペンの持ち方
前述のように、ペンだこは「指にかかる負担(=圧力や摩擦、刺激)」が原因でできます。つまり、指に負担がかかりやすい状況で鉛筆を使う時間を重ねると、容易にペンだこができてしまうということです。
そして、指にストレスがかかる状況について考えると、やはり大きく影響するのは「鉛筆の持ち方」です。鉛筆をどのように持つのかによって、力の掛かり具合は大きく異なってきます。「正しく鉛筆を持ちなさい」と小さな頃から言われていたのは、きちんと理由があったようです。
以下に、指に負担がかかりやすい、間違った鉛筆の持ち方を記します。自分の持ち方と比べて、当てはまるものがないか見てみましょう。
<人差し指が沿っている>
鉛筆を持ったとき、正しい持ち方をしていれば、人差し指は緩やかな弧を描くようにして、鉛筆に添えられた状態になっています。しかし、力が入りすぎていると、人差し指の第一関節が反り返り、人差し指で三角形を作っているようになってしまいます。
鉛筆を固定させようとする気持ちからか、意外と、この持ち方をしている人が多いようですが、この持ち方は指に負担をかけてしまいます。
<鉛筆が垂直になっている>
文字を書くときに、用紙に対して、鉛筆が垂直に立つようになっていませんか?これは、全ての指で鉛筆を握るように持っていたり、親指が人差し指に乗り上がるように鉛筆を持っている場合に、よく見られます。
このような持ち方は、癖字を書く人に多く見られるようですが、それは、余分な力が入ってしまうことが起因していると考えられています。
<四本指で鉛筆を持っている>
鉛筆を持つ指は、親指と人差し指、そして鉛筆を安定させるようにして中指を添えた状態になるのが、正しい鉛筆の持ち方だと言われています。
しかし、親指と人差し指、中指で鉛筆を持ち、薬指を添えるようにして文字を書いている人もまれにいるようです。通常、ペンだこができる位置は、中指の第一関節が一般的と言われていますが、このような鉛筆の持ち方をする人は、薬指にペンだこができてしまいます。
ペンだこができやすくなる姿勢
ペンだこができやすくなるのは、鉛筆やボールペンの持ち方のみが起因しているわけではありません。文字を書くときに使うのは、指や腕の筋肉ですが、それらを支えるそのほかの筋肉に無理が生じる姿勢で書いていることで、それに伴うようにして、指先にも力が入りやすくなってしまいます。
<背中を丸めて、ノートと顔を近づけて書いている場合>
このように文字を書く癖がある人は、何かを書くときに必ず猫背になっています。猫背になると、体幹の筋肉が緩み、身体の軸を支える力が弱くなるため、鉛筆を持っている手の小指側の側面を机に押し付けて、そこに体重がかかった状態になりやすいのです。
すると、必然的に、鉛筆を持つ力も強くなり、ペンだこができやすくなってしまうというわけです。
<ノートを斜めにして書いている>
本来、文字を書くときには、自分の正面にまっすぐノートが置かれている状態になりますが、まれに、自分が向いている方向に対して、ノートを斜めにずらして文字を書いている人もいるようです。
実際にやってみるとわかるかもしれませんが、このような書き方をすると、肘を外側に広げた状態で、顔を近づけて書かなければなりません。すると、肘が外に逃げようとする力を抑えるように鉛筆を強く握り締めてしまうため、自然に鉛筆を持つ力も強くなってしまいます。
また、ペンだこだけではなく、このような姿勢の悪さは、身体の歪みや肩こりを招きやすくするため、ほかの部分にも様々な不調を引き起こす原因になってしまいます。
ペンだこをできにくくする方法は?
ペンだこをできにくくするためには、やはり、ここまでにあげた「鉛筆の持ち方」と「姿勢」を正すことが一番重要だと言えるでしょう。
ここでは、正しい鉛筆の持ち方と、文字を書くときの正しい姿勢など、ペンだこをできにくくするための方法について、ご紹介いたします。
正しい鉛筆の持ち方を習得しよう
間違った鉛筆の持ち方をしている人の多くが、小さな頃からの「癖」になっているため、その持ち方で文字を書く感覚が身体に染みつき、慣れてしまっています。
しかし、ペンだこをできにくく、また、疲れにくくするためには、正しい鉛筆の持ち方を今からでもぜひ習得すべきです。正しい鉛筆の持ち方は、以下のとおりです。
- まず、鉛筆の先から約3cmあたりの位置に人差し指がくるようにして、親指と人差し指で鉛筆を挟みます。
- 中指は、鉛筆に添えるように当てましょう。
- 人差し指、中指、親指の3本の指に、それぞれ均等に力が入るイメージで軽く持ちます。このとき、鉛筆の先を自分の方に向けると、この3本指で、角の丸い正三角形を作っているような持ち方になるのがベストです。また、手のひらは卵が1つ入る程度の空間ができていると尚良いでしょう。
- 鉛筆は、用紙に対して、60℃ほどの傾斜になっているはずです。この状態で、気持ち利き手側に腕をずらし(鉛筆がある位置が身体の中心にくるようにしない)て、文字を書きましょう。
最初は慣れないかもしれませんが、習慣づけることで必ず身につきます。また、最近は、正しく鉛筆を持つための補助具なども、文房具店に行くと販売されていますので、それらを試してみるのも良いかもしれません。
正しい姿勢で文字を書こう
ペンだこだけではなく、身体の歪みや肩こりを予防するためにも、正しい姿勢はぜひ身につけたいものの一つです。文字を書くときに理想とされる姿勢は、以下のとおりです。
- 椅子の背もたれに寄りかかって座らずに、背もたれと隙間を作るようにして椅子に腰掛けます。
- 机と、自分の身体との間に拳が1つ入る程度の隙間ができるよう、椅子の位置や座る位置を調整します。
- 肩がうちに入り込むようになったり、腰が曲がらないように、しっかりとおへその下あたりを意識して、まっすぐ背筋を伸ばします。背筋を伸ばそうとして、腰が反ってしまっても逆効果ですので、最初は鏡の前に椅子を持って行って、座った姿勢だけ練習すると良いかもしれません。
- 左手(左利きの場合は、右手)を左胸前(左利きの場合は、右胸)あたりに添えます。
- 右手(左利きの場合は、左手)で持つ鉛筆の先が、右胸(左利きの場合は、左胸)と同じくらいの位置になるよう、腕の位置をずらします。
- ノートが遠すぎていないか、近すぎていないか、確認しましょう。利き手の肘が60~80℃程度に曲がる位置がベターです。
よく、姿勢を正そうと意識すると疲れる、と言う人がいますが、あれは錯覚です。身体にとっては、猫背や歪んだ姿勢の方が、よっぽど負担になるのですが、これまで自分の身体は正しい姿勢に慣れていないため、そのように感じてしまうのです。
何事も継続、習慣です。「気がついたら正す」というのを心がけて、正しい姿勢で文字を書く練習をしてみてください。
自分の手にあった筆記用具を探す
鉛筆やボールペンにもいろいろなものがあり、少し太めのものから、デザイン性に優れた細身でスタイリッシュなものまで、様々です。
私たちの身体のつくりが一人一人異なるように、手の大きさや指の長さも一人一人異なるので、全ての筆記用具が、全ての人の手にぴったりとフィットするわけではありません。
よく、小さな子供にペンだこができやすい原因の一つとして、鉛筆の細さがあげられます。握力も弱く、まだ、鉛筆を持つということに慣れていない子供にとっては、細い鉛筆を持つのは困難なため、鉛筆をしっかり支えようとして必要以上に力を入れてしまうのです。
最近は、持ち手がグリップ状になっているものや、指が自然に添えられるように、持ち手が緩やかなカーブを描いているものもたくさん出ています。
また、書き味も重要です。多様な筆記用具の中でも、書き味の良いものと、悪いものが存在しますので、できるだけ、ストレスなく文字を書けるものを選ぶことをおすすめします。
多少値段は張っても、自分にあった筆記用具を、長く使うというのも、なかなか良いものです。
ペンだこの治療法は?
文字を書くのに、支障が出ない程度ならば問題ありませんが、なかにはペンだこによって、文字を書くときに痛みが生じたり、出血を伴うこともあるようです。
また、見た目の問題でも、細くてすっきりとした指を望む人には、ペンだこの膨らみは悩ましいものでしょう。
ここでは、ペンだこの治療法にはどのようなものがあるのか、ご紹介いたします。
皮膚の新陳代謝を利用する
これは、いわゆる自然治癒とも言えますが、自然治癒の過程ができるだけ円滑に進むように工夫する方法は、いくらかありそうです。
「ターンオーバー」という言葉をご存知でしょうか。女性の方ならば、一度は耳にしたことがあるかもしれません。ターンオーバーとは、皮膚が新しい細胞に生まれ変わるサイクルのことを示します。
一般的には、大体1ヶ月程度で、再生すると言われていますので、この周期を上手く活用して治癒を促すのは効果的と言えそうです。具体的な方法を以下にあげます。
- 患部にガーゼや指用のサポーターなどを当てて、それ以上負担がかからないようにする
- 指の血行を良くするためのマッサージを習慣づける
- 乾燥しないよう、ハンドクリームなどで、指先をケアする
- 身体の末端部分が冷えないように、温かくして過ごす
このように、身体の新陳代謝が、スムーズに行われるよう、私たちが外側からサポートすることで、多少時間はかかるものの、自分の持っている自然治癒力で無理なく治すことができます。
市販薬を使用する
これは、ドラッグストアなどで販売されている「たこ用」の薬を使用する方法です。このような薬は、患部に塗布することで、硬くなってしまった角質を柔らかくする効果があります。
また、塗り薬タイプのものと、絆創膏タイプのものがありますので、使用感あるいはお好みで使い分けると良いでしょう。どれが良いのかわからない場合には、薬剤師に相談すると、ペンだこにベストな薬を選んでくれるかもしれません。
ただし、ペンだこの状態によっては、通常よりも時間がかかる場合がありますので、その点は、あらかじめ了承しておきましょう。
削る
足にたこができたときなどには、よく専用のヤスリで削る方法が自宅でできる治療法として用いられますが、これをペンだこにも応用してみようというのが、この方法です。
しかし、足裏の皮膚に比べると、手の皮膚は薄いですから、くれぐれも削りすぎないように気をつけて、ペンだこ以外の皮膚が負傷しないように注意してください。
また、削る際には、皮膚が柔らかくなっているお風呂上がりがおすすめです。ほんの少しずつ、本当にターンオーバーをサポートするくらいのやさしい力加減で削り、ケアしたあとは、必ずハンドクリームなどで保湿することを忘れずに行ってください。
皮膚科での治療
自宅でケアしているのにも関わらず、一向に改善しない場合や、症状が悪化して強い痛みや出血がある場合には、皮膚科で専門の治療を受けることをおすすめします。手早く、安全に治療をするには、やはり、専門医に任せるのが一番です。
皮膚科での治療法には、以下のような治療法があります。
<メスで除去>
薬品で皮膚を柔らかくして、メスまたは専用の医療器具でたこを除去する方法です。サリチル酸でたこを除去するケースもあるようです。
<レーザー治療>
「レーザーメス」とも呼ばれている炭酸ガスレーザーを使用すれば、たこができた部分を除去することができます。また、硬くなった部分のみを正確に除去することができ、出血も伴わないため、安心です。短時間で済むというのもメリットの一つと言えるでしょう。
<凍結させる>
これは、液体窒素を使用して患部を凍結させ、硬くなった部分を壊死させて除去する方法です。しかし、一度の治療では難しいため、何度か通院しなければなりません。治療後は、患部に水ぶくれ、または血豆のようなものができ、それらがかさぶたになります。そのかさぶたが剥げると、たこも治癒された状態になっているというわけです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ほとんどの場合は、自然に治るものですが、痛みを伴う場合などは、やはり皮膚科での治療をおすすめします。
女性にとってはとくに、指先を美しく保ちたいという気持ちがあるのは仕方のないことです。少しでも改善できるよう、ここでご紹介した方法のほかにも、指先だけではなく、全身の新陳代謝が良くなるよう意識して、生活習慣などを見直してみるのも良いかもしれません。よろしければ、ぜひ、お試し下さい。