リン酸カルシウムの危険性は?過剰摂取を避けるべき理由を紹介!

「リン酸カルシウム」は、骨や歯の健康には必要不可欠な物質です。骨の約60%は、骨を硬くしている無機成分ですが、無機成分の85%がリン酸カルシウムです。

リン酸カルシウムは、肥料など工業製品や薬剤、歯磨き剤、食品添加物、サプリメントなどに利用されています。とても身近な物質です。

でも、リン酸カルシウムを含む食品には危険性が潜んでいます。リンもカルシウムも身体には必要不可欠ですが、過剰摂取には要注意です。

リン酸カルシウムの必要性と危険性についてお伝えしますね。

リン酸カルシウムとは?

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リン酸カルシウムとは、リン酸イオン(PO₄³-)または2リン酸イオン(P₂O₇⁴-)とカルシウムイオンから成る難溶性の塩(陰イオンと陽イオンが結合した化合物)の総称です。ヒトの体内には約2㎏のリン酸カルシウムが含有されています。

リン酸(H₃PO₄)とカルシウムが結びつくと、リン酸カルシウムになります。リン酸カルシウムの分子式はCa₃(po₄)₂ですが、リン酸の水素原子がカルシウム原子と置き換わる仕方により、種類や用途が異なります。

[リン酸カルシウムは人体に必要不可欠]

リン酸カルシウムは、リン酸とカルシウムからできる化合物です。身体を構成するミネラルの中では、カルシウムが最も多く、次にリンが多くなります。水溶性が低い難溶性の塩です。

リン酸カルシウムは生命組織塩の一つ

ヒトの生体を組織するために重要な働きをする無機塩類(ミネラル)を「生命組織塩(ティッシュソルト)」といいます。生命組織塩は、金属元素のナトリウム・カルシウム・マグネシウム・カリウム・鉄、非金属元素のフッ素・リン・ケイ素・硫黄・塩素から成り立つ化合物です。

生命組織塩は、ヒトの身体の臓器や骨、体液、神経組織などあらゆる場所に存在します。

無機塩類には、塩化ナトリウム・炭酸カルシウム・ヨウ素酸カルシウム・酸化マグネシウム・炭酸マンガン・炭酸水素ナトリウム・炭酸コバルト・シュウ酸コバルトなどがあります。

リン酸カルシウムは生命組織塩の一つである無機塩類です。

リン酸カルシウムは骨や歯の主成分

リン酸カルシウムは、骨や歯の主成分です。骨組織の最も重要な構成要素です。

骨は、弾力性を与える有機成分と、硬さを作る無機成分から構成されています。骨の成分値は約60%が無機成分で、その85%がリン酸カルシウム、10%が炭酸カルシウム、1.5%がリン酸マグネシウムです。

骨の無機成分の70%は、リン酸カルシウムの1種であるハイドロキシアパタイト(水酸化リン酸カルシウム)です。歯の主成分もハイドロキシアパタイトです。エナメル質の97%・象牙質の70%を占めています。

リン酸カルシウムは、PHが4以上の中性またはアルカリ性の条件下では、ハイドロキシアパタイト(水酸化リン酸カルシウム)が安定相となります。

カルシウムの働き

カルシウムは骨や歯の成分です。ヒトの体内では、カルシウムは骨に蓄えられるとも言えます。カルシウムは血液中や筋肉細胞にも存在します。血液凝固や筋肉の収縮、心臓の洞調律の維持、さまざまな酵素の機能の正常に保つなどの働きをしています。

リンはDNA・RNAの成分

リンは、体内ではリン酸カルシウムやリン酸マグネシウムという無機塩で存在します。

リンの80%はカルシウムと結びつき、リン酸カルシウムとなって骨や歯を構成します。残りの20%は、神経組織や筋肉組織に存在し、エネルギー代謝の機能と関係しています。また、DNAやRNAの成分でもあります。

リンには、細胞の成長や疲労回復、血液中のPHを一定に維持する働きがあります。

リンとカルシウムは1:1で摂取するのが効果的

リンとカルシウムは、1:1で摂取するとカルシウムの吸収率が良くなります。

リンは不足より過剰摂取に要注意

リンが不足すると、骨や歯がもろくなって歯槽膿漏や骨軟化症を引き起こしたり、筋肉や関節が弱くなったり、神経痛になったりする可能性があります。

しかし、リンは不足よりも過剰摂取しやすい傾向があるので、要注意です。

[リン酸カルシウムの種類と用途]

リン酸カルシウムは、バイオテクノロジーの分野での研究が進み、用途が広がっています。食品添加物や歯磨き用基剤、医薬品に使われたり、新薬開発にも大いに役立っています。

薬剤としては、出産時の男女産み分け促進剤に利用されています。

リン酸とカルシウムは結びつき方により、第一リン酸カルシウム・第二リン酸カルシウム・第三リン酸カルシウムの3種類に分けられます。リン酸(H₃PO₄)の水素原子Hがいくつカルシウムと置き換わるかで、異なります。

第一リン酸カルシウムと第二リン酸カルシウムは、リン酸水素カルシウム塩といいます。

①第一リン酸カルシウム

第一リン酸カルシウムの分子式はCa(H₂PO₄)₂で、水素原子1個がカルシウムに置き換わっています。分子量(分子式量)は234.1です。

カルシウム補給を目的とする食品添加物やベーキングパウダー、また、バイオ薬剤や発泡樹脂膨張剤に使われます。

炭酸水素ナトリウム

ベーキングパウダーには炭酸水素ナトリウム(NaHCO₃)も使用されます。炭酸水素ナトリウム(重炭酸ソーダ)は炭酸飲料水(サイダーなど)や食品添加物、消火剤などに使われます。

②第二リン酸カルシウム

第二リン酸カルシウムの分子式はCaHPO₄です。分子量は136.06。水素原子2個とカルシウム原子が置き換わります。医薬品や歯磨き用基剤、ガラス原料、飼料に使われます。

医薬品としてはカルシウム補給剤に使われことが多いようです。また、炭酸カルシウムと同様、歯磨き用基剤になります。歯の再石灰化を促します。

③第三リン酸カルシウム

第三リン酸カルシウムの分子式はCa₂(PO₄)₃です。水素原子3個とカルシウム原子が置き換わります。合成樹脂(プラスチック)の添加剤や消火剤として使用されます。

食品添加物として、チーズの製造、豆腐の凝固剤、中華麺のかんすい、ハム・ソーセージなどにも使われます。

セラミックス人工骨

合成技術が発達したため、第三リン酸カルシウムの粉末が合成されるようになりました。生体用のセラミックス原料として人工骨などに使用されています。

④リン酸カルシウムの仲間

リン酸カルシウムの仲間には、リン酸水素ナトリウム無水リン酸水素ナトリウムがあります。カルシウム補給剤やビタミン剤など医薬品に使われます。

2リン酸カルシウム(ピロリン酸カルシウム)

塩基性カルシウムと2リン酸(ピロリン酸)が結合すると、2リン酸カルシウム(ピロリン酸カルシウム)ができます。分子式はCa₂P₂O₇です。

ピロリン酸カルシウムは歯磨きのマイルドな研磨剤として使用されます。しかし、2リン酸カルシウムが関節に付着すると「偽痛風」が起きる可能性があります。

リンカル

「リンカル」はリン酸カルシウムに由来する商品名です。「リンカル」には医薬品・サプリメント用と家畜・水産の飼料用があります。

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産婦人科で処方する「リンカル」は男児を出産しやすくなるサプリメントです。リン・鉄・カルシウムを含んでいます。男児が生まれやすくなる仕組みは不明ですが、男児出産の成功率は約73%といいます。

リンカル製品シリーズ

飼料の「リンカル」は、第一リン酸カルシウム・第二リン酸カルシウム・第三リン酸カルシウムを原料にした製品です。水溶性製品・ペレット状にしたペレット製品など家畜用・水産用などいろいろな飼料があります。

脂肪酸カルシウム

リンカル製品シリーズではありませんが、脂肪酸カルシウムは飼料用の添加剤として利用されています。牛乳の乳脂肪成分の中の共役リノール酸の割合を増加させるために、脂肪酸カルシウムを飼料に添加します。脂肪酸カルシウムと大豆の粉を組合せ、ペレット状にする技術で、効率良く、乳牛に与えることができるそうです。

リン酸カルシウムの危険性

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リン酸カルシウムは医薬品やサプリメント、食品添加物、飼料添加物として使用されているので、安全性が気になります。医薬品・サプリメントは無論、食品添加物については、厚生労働省が成分規格や使用基準を定めています。それでも、「らでぃっしゅぼうや」サイトでは、製品規格食品添加物についても、安全性を細かく検討しています。

リン酸カルシウムの毒性は、炭酸水素ナトリウムと同程度ですから、過剰摂取しなければ、危険性は少ないと言えます。

カルシウムは、普通に食事している限り、過剰摂取になる可能性はほとんどありません。過剰摂取になるのは、医薬品やサプリメントとして長期間服用している場合です。

注意したいのは、リンです。食品添加物のリンやリン酸塩で、リンを過剰摂取することがよくあります。

[尿路結石]

腎杯(じんぱい)・腎盂(じんう)・尿管・膀胱・尿道という尿の通り道を「尿路」といいます。尿路にできる結石を「尿路結石」といいます。結石は、リン酸カルシウムやシュウ酸カルシウムなどの塊です。

カルシウムが不足でも過多でも尿路結石ができる

尿路結石の原因は、いろいろあります。原因の一つがカルシウム不足とカルシウムの摂取過多です。

動物性タンパク質や脂肪質を多量に食べると、尿中のカルシウムが増加します。動物性タンパク質の摂取量に比較してカルシウムの摂取量が少ないと、リン酸やシュウ酸とカルシウムが結合して、結石となります。

紅茶やホウレンソウ、チョコレート、タケノコなどにはシュウ酸が多く含まれています。カルシウムとシュウ酸を同時に摂取すると、腸内で結合してシュウ酸カルシウムという大きな塊になり、カルシウムは腸壁から吸収されず、便に排出されます。カルシウムが不足すると、シュウ酸カルシウムの結石ができやすくなります。

しかし、カルシウムを過剰摂取した場合も、リン酸カルシウム結石やシュウ酸カルシウム結石ができやすくなります。

カルシウムは食事で摂る

カルシウムは、サプリメントや補強剤などで摂取せず、毎日の食事から摂るようにします。食品添加物にリン酸カルシウムが沢山使われていますし、小魚や高野豆腐などカルシウムを豊富に含む食材もいろいろあります。食事からカルシウムを摂取すれば、過剰摂取することもなく、適正に摂ることができます。

カルシウムの吸収には、ビタミンDが不可欠ですから、日光を浴びることも大事です。

尿路結石の症状

結石が腎臓にある間は、自覚症状はほとんどありません。腎杯や腎盂で形成された結石が尿管に降りてきて尿路障害が起きると、「疝痛発作」という七転八倒する激痛や血尿が生じます。

シュウ酸カルシウムの毒性

シュウ酸カルシウム(CaC₂O₄)は劇物です。不溶性で、パイナップル・ルバーブ・サトイモなどの植物に多く含まれています。

少し摂取しただけでも、口中や喉にピリピリした灼熱感が生じて、窒息をもたらすことがあります。多量に摂取すると、深刻な消化器障害や呼吸困難を生じます。シュウ酸中毒で昏睡・死亡することもあります。運良くシュウ酸中毒から回復しても、肝臓障害・腎臓障害が残り、治りません。

[高カルシウム血症]

「カルシウム血症」には「低カルシウム血症」と「高カルシウム血症」があります。どちらも血液検査で診断できます。

カルシウムの血中濃度は一定に保たれる

カルシウムの血中濃度は、副甲状腺ホルモンとカルシトニンという2種類のホルモンにより調整されます。

血中のカルシウム濃度が低下すると、副甲状腺ホルモンの量が増え、消化管からのカルシウム吸収を促進します。また、骨のカルシウムを血液中に放出します。骨のカルシウム流出量が多くなると、骨粗しょう症になります。さらに、腎臓から尿中にカルシウムが流出するのを減少させます。

カルシトニンは骨の破壊を遅くして、血中カルシウム濃度が高くなるのを抑えます。

低カルシウム血症

低カリウム血症は血液中のカルシウム濃度が低い状態です。

血液中のカルシウムは、タンパク質の1種であるアルブミンと結合した状態とカルシウムイオンの状態で存在します。アルブミンと結合したカルシウムは保存用ですが、カルシウムイオンの濃度は血液中カルシウム濃度に直結します。

低カルシウム血症の原因

副甲状腺ホルモンの分泌量が少ない・副甲状腺の先天的欠損・身体が副甲状腺ホルモンに無反応が原因で、カルシウムが多量に尿に出てしまったり、骨から血液へカルシウムが移動しなかったりします。

ビタミンD欠乏症でカルシウムの吸収が悪くなったり、カルシウムの摂取量が不足したり、腎臓を損傷したりしても、カルシウム濃度が低下します。

リンの過剰摂取により、カルシウムの吸収が妨げられて、血中のカルシウム濃度が低下します。

低カルシウム血症の症状と治療

カルシウムの血中濃度が低下しても、すぐに症状は現れません。長い時間かけて、脳に影響が出ます。錯乱・記憶喪失・意識混濁・うつ・喉の筋肉の痙攣(けいれん)による呼吸困難・筋肉の硬直や痙攣が起きます。

カルシウム補給剤やサプリメントの服用でカルシウム血中濃度が正常になれば、回復します。ビタミンDのサプリメントでカルシウムの吸収が良くなります。

高カルシウム血症

血液中のカルシウム濃度が異常に高くなった状態です。

高カルシウム血症の原因

高カルシウム血症は、副甲状腺ホルモンが過剰に分泌する「副甲状腺機能亢進症」や、カルシウムの摂取過剰で起こります。

カルシウムの過剰摂取は、消化性胃潰瘍の患者さんが牛乳を多量に飲み、カルシウムを含有する制酸剤を服用することで起きます。特にカルシウム強化の牛乳を毎日多量に飲んでいると、リン酸化カルシウムや炭酸カルシウムを含む制酸剤を服用した時に、摂取過多になります。

また、ビタミンDのサプリメントの過剰摂取で、カルシウムの吸収率が向上して高カルシウム血症が起こります。

高カルシウム血症の症状

初期症状としては、だるさ・脱力感・吐き気・嘔吐・便秘・腹痛・食欲減退・異常に多量な尿などがあります。

重篤になると、錯乱・情動障害・意識混濁・幻覚・昏睡をともなう脳の機能障害、筋力低下、腎不全、高血圧、不整脈が起き、最悪の場合、死に至る可能性もあります。

慢性高カルシウム血症では、カルシウムを成分とする腎結石を生じることがあります。

高カルシウム血症の治療

腎機能が正常であれば、水を多量に飲み、尿とともにカルシウムを排出すれば、回復します。重篤な場合も、腎機能が正常であれば、利尿剤と補液を点滴します。カルシトニンやコルチコステロイド剤を服用し、骨からカルシウムが血中に移動するのを遅くします。

腎機能に障害がある場合は、透析が効果的で安全性の高い治療法です。

[リン酸カルシウム薬剤の副作用]

リン酸カルシウムは、男子を出産する促進剤として使われます。リン酸水素カルシウム水和物は、骨粗しょう症や骨軟化症、カルシウム不足などの治療、カルシウム補給の薬剤です。

過剰摂取すると、副作用が起きる可能性が高くなります。カルシウムが血管壁や肺・腎臓・胃などに付着して、高血圧・動脈硬化・腎機能障害・泌尿器系の結石が生じやすくなります。

[水酸化リン酸カルシウムによる異所性石灰化]

血液中のリンやカルシウムの濃度が高くなると、血液中の水酸化リン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト)の量も増加します。血管壁や肺胞壁、腎臓・胃粘膜の間質に付着して、腫瘤になることがあります。これを異所性石灰化といいます。

腫瘤が大きくなると、血流障害や臓器の機能障害を起こします。疼痛や運動制限が生じます。

リン酸カルシウムの過剰摂取や透析患者さんに発症することが多くなります。

[ピロリン酸カルシウムによる偽痛風]

「痛風」は尿酸塩が原因で関節に炎症が起きる疾患です。「偽痛風」は、過剰摂取によりピロリン酸カルシウムの結晶が関節の軟骨組織に沈着して発する関節炎です。

高熱・発赤・激痛が生じます。60歳以上の高齢者の膝関節に発症することが多くなります。

リン・リン酸塩の危険性

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リン酸カルシウムなどカルシウム塩の摂取過多より、リン・リン酸塩の過剰摂取の方が心配です。リン・リン酸塩の添加食品は多いので、過剰摂取しやすいのです。

カルシウム塩とは、陽イオンがカルシウムで構成される化合物です。強塩基の水酸化カルシウムCa(OH)₂と酸の中和反応で生じます。塩化カルシウム(CaCl₂)や硫酸カルシウム(CaSO₄)などです。

リン酸塩とは、1個のリンと3個の酸素から成る多原子イオン(PO₄)を陰イオンとして構成される化合物です。

[リンの過剰摂取によるカルシウム欠乏症]

リンは摂取不足より摂取過多になりやすい栄養素です。リンを過剰摂取すると、カルシウムの吸収が妨げられて、カルシウム欠乏症になります。

カルシウム欠乏症の原因

カルシウムとリンを1:1で摂取すると、体のカルシウム吸収率が最も良くなります。リンを過剰摂取すると、カルシウムの吸収が抑えられるので、カルシウムが欠乏します。

カルシウム欠乏症の症状

リン・リン酸塩を過剰摂取すると、石灰沈着が起こります。そのため、骨のカルシウムが血中に溶け出し、骨粗しょう症や骨軟化症が起こります。

カルシウムの吸収が抑制され、体内のカルシウム量が低下します。

炭酸飲料を飲むと骨が溶ける?

炭酸飲料(コーラなど)には、食品添加物の酸味料としてリン酸が使われています。炭酸飲料を多量に飲むと、リンが摂取過多になり、カルシウムの吸収が抑えられます。血液中のカルシウム濃度が低下するので、骨のカルシウムが血液中に溶け出します。そのため、「炭酸飲料を飲むと、骨が溶ける」と言われるのです。

炭酸水や炭酸(H₂CO₃)が、直接骨に作用するのではありません。

[リンは過剰摂取されやすい]

リンやリン酸塩は食品添加物として、広く使用されています。また、食材の中にもリンを含む物が多いので、過剰摂取しやすくなります。

外食が多く栄養バランスが悪い人や生活が不規則な人、運動不足の人は、特に要注意です。

リンの添加食品

リンの添加食品は、ハム・ソーセージ・インスタントラーメン(正確には中華麺のかんすい)・清涼飲料水・スナック菓子・レトルト食品・調味料・缶詰などです。「リン酸Na」と表示されています。

リンを含む食物

大豆製品・アーモンドや松の実などナッツ類・海藻類・シラス干しやカツオブシなどの魚・ハムやベーコン、レバーなどの肉類と、体に良いと言われる食物には、リンが豊富に含まれています。

リンの過剰摂取による障害

リン・リン酸塩を過剰摂取すると、前述したカルシウム欠乏症・低カルシウム血症が起きます。腎機能障害や副甲状腺ホルモンの分泌異常が生じます。

[リン酸基]

リン酸基とは、リン酸からハイドロキシ基を取り除いた官能基です。構造式はH₂PO₄-です。

リン酸基は生体内で重要な役割を果たします。リン酸基同士が結合すると、高エネルギーリン酸結合といい、エネルギーを蓄えます。タンパク質の働きもリン酸基の有無で調節されます。

その他の金属・無機塩類

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ヒトはリンやカルシウムの他にも、微量な金属や無機塩類を必要としています。また、金属や無機塩類は、いろいろな面で私達の健康に役立っています。

[銀]

銀は金と同様に貴金属で、通貨によく使用されます。銀は抗菌作用があるだけでなく、極めて毒性が低い金属です。安全性が高いため、昔から西洋でも中国でも、銀製の食器が使われました。

ただ、銀は塩素などハロゲンと結びつきやすく、簡単にハロゲン化銀を形成します。

銀イオン

銀が電気を帯びた粒子を銀イオンといいます。銀イオンには、強い抗菌作用があります。超微量の銀イオンで、大腸菌を死滅させることができます。

銀イオンは、まず菌の繁殖能力を抑え(静菌作用)ます。菌は増殖できないまま寿命が尽きて死にますから、菌がなくなります。つまり、殺菌することになります。

銀イオンは真菌にも効きますから、防カビ効果もあります。

銀ナノ粒子

銀ナノ粒子は、ナノシルバー・ナノ銀イオンともいいます。ナノテクノロジーが生み出した新しい化学物質です。1mの10億分の1の銀の粒子で、強い抗菌作用があります。

パルスレーザー光を利用して、抗菌作用のある銀ナノ粒子を含むリン酸カルシウムのサブマイクロメートル粒子を合成する技術が開発されました。この粒子は歯科治療に使われます。

[亜鉛]

亜鉛は、2000種もある酵素のうち300種類の組成に必要不可欠なミネラルです。細胞分裂や新陳代謝、免疫活性化などの作用があります。

炭酸亜鉛・酸化亜鉛

炭酸亜鉛・酸化亜鉛(炭酸亜鉛を熱して水分を飛ばしたもの)は、化粧品に使用されます。紫外線遮断効果があります。

[銅と鉄]

血の赤い色素となるヘモグロビンは、鉄が成分です。銅は、ヘモグロビンをつくる鉄を必要な場所に運ぶ働きがあります。

硫酸銅

銅は重金属で毒性があります。硫酸銅は、銅イオンと硫酸イオンが結合したものです。殺菌力があるので、防腐剤や殺菌剤に使われます。水溶液はきれいな青色です。

医薬品としては、化膿性皮膚疾患(おでき)の膿の吸出し膏の主成分となります。

また、銅は必須ミネラルですから、人工乳100%の乳児の母乳代替食品の食品添加物として認められています。

硫酸鉄

硫酸鉄Ⅱ(硫酸鉄・硫酸第一鉄)は、鉄イオンと硫酸イオンの化合物で、鉄漿(おはぐろ)・医薬品・インキ・木材防腐剤などに使われます。食品添加物にもなります。

硫化鉄Ⅲは食品添加物としては認められていません。媒染剤・鉄ミョウバンの原料です。

[原子・イオン・分子・複合粒子]

最後になってしまいましたが、簡単に原子やイオンについてお伝えしますね。

原子

原子とは「物質を構成する最小の粒子」です。

原子は原子核と電子から構成されています。原子核は太陽のようなもので、その周りを電子が飛び廻っています。電子はマイナス電気(負の電荷)を帯びています。

原子核には、プラス電気(正の電荷)を帯びた陽子と電気を帯びない中性子があります。

原子核の陽子と周囲を飛び廻る電子の数は同数です。例えば、水素原子は、原子核にプラス電気を帯びた陽子1個があり、原子核の周囲をマイナス電気を帯びた電子1個が廻っています。ですから、原子全体は、電気的には中性になります。

イオン

原子が電子をもらったり、あげたりすると、電気を帯びたイオンになります。電子の数が増えて、原子核の陽子より多くなると、マイナス電気を帯びた陰イオンになります。電子の数が減って、原子核の陽子より少なくなると、プラス電気を帯びた陽イオンになります。

イオンは他のイオンと結合して、再び電気的に中性になります。イオン化すると、他のイオンと結合しやすくなるのです。

分子

原子がいくつか結合したものを分子といいます。水素原子はH、水素分子はH₂、酸素原子はO、酸素分子はO₂、水の分子はH₂Oと表します。

複合粒子

2個以上の粒子が結びついて1個の粒子となったものを、複合粒子といいます。

原子は原子核といくつかの電子から成る複合粒子ですし、原子核も陽子や中性子から成る複合粒子です。

硫酸カルシウムCa₃(PO₄)₂や炭酸カルシウムCaCO₃などの分子も複合粒子です。

まとめ リン酸カルシウムは過剰摂取に要注意

リン酸カルシウムは、カルシウムイオンとリン酸イオンから成る化合物です。身体に必要不可欠な物質で、骨や歯の主成分です。ヒトの臓器・体液・神経組織などにも存在します。

リン酸カルシウムは、カルシウム補給のサプリメント、男児出産の促進剤など医薬分野や、食品添加物、家畜などの飼料添加物に使用されています。またセラミックス原料など工業製品分野でも広く使われています。

リン酸カルシウムは毒性が低く、過剰摂取しなければ、比較的安全性が高いと言えます。

カルシウムは食事から摂取していれば、摂取過多になることはめったにありません。治療薬やサプリメントとして常用すると、摂取過多になる可能性があります。過剰摂取すると、尿路結石や偽痛風、異所性石灰化が起きる危険性があります。

リンは食材や添加食品に豊富に含まれているので、過剰摂取しやすくなります。リンを過剰摂取すると、カルシウムの吸収が抑えられ、カルシウム欠乏症や骨粗しょう症になる危険性が高くなります。

カルシウムはできるだけ食事から摂るように努め、サプリメントに頼らないことをオススメします。

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