精子(精液)の量を増やす方法は?精子の量が少ない病気についても紹介!

近年は、妊活という言葉も一般化して社会の中に定着してきています。妊活とは、妊娠に関する知識を勉強したり、妊娠を目指すにあたり夫婦双方の身体の状態を把握しようという活動のことですが、妊娠をするための性行為・セックスを指す場合もあるようです。

そんな妊活の中で、大きなテーマとなるのが不妊の問題です。不妊というと、どうしても女性側の問題として捉えられがちですが、実は不妊の原因の一部は男性側の問題でもあります。そして、男性不妊の原因の中で多くを占めるのが乏精子症で、つまり射精された精液の中に存在する精子量・精子数が少ないのです。

そこで今回は、乏精子症についてご紹介するとともに、乏精子症でないのに精液量・精子数が少ないと感じている人のために精液・精子を増やす方法についてもご紹介したいと思います。

精子に関する基礎知識

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そもそも精子や精液は、どのように体内で作られているのでしょうか?漠然とは理解しているものの、詳しくは知らない方も多いのではないでしょうか。

そこで、まずは精子に関する基礎知識について、簡単におさらいをしておきたいと思います。

精子の生成

精子は、たんぱく質を原材料にして、睾丸(こうがん)の中に存在する精巣(せいそう)で生成されます。もともと精子は精原細胞からはじまり、細胞分裂を経て精細胞が作られ、精細胞が精子へと形を変えて完成します。

精子は、いわゆるオタマジャクシのような形態をしていて、頭部の丸い膨らみに遺伝情報の核DNAが納められ、頭部の付け根にあたる中片部にはミトコンドリアが集合し、中片部から先の糸のような尾部とで構成されています。中片部と尾部を併せて鞭毛(べんもう)と呼び、鞭毛が動くことで精子が移動する際の推進力を得ます。そして、この精子の運動性のエネルギーを生み出す装置が中片部のミトコンドリアなのです。

ちなみに、精巣で1日に生成される精子の数は、個人差があるものの約5000万個から1億個とされています。

精子の貯蔵

このようにして精巣で生成された精子は、副睾丸とも呼ばれる精巣上体という器官に運ばれて貯蔵されます。精巣上体は、平均すると最大で10億個程度の精子を貯蔵することができるとされています。

ちなみに、精子は常に生成され続けて補充されていきますので、精巣上体は数日で一杯になります。精巣上体に貯蔵された精子は、古いものから分解された上で、体内に吸収されます。

射精

陰茎などに性的刺激が加わり陰茎が勃起するとともに性的な興奮度が高まると、精子は精巣上体から精管に送り出されます。

精管の平滑筋が波打つような蠕動運動(ぜんどううんどう)をすることで、精子が精管の中を押し流されて射精管まで来ると、精嚢(せいのう)という袋状の器官から分泌される精嚢液(精嚢分泌液)と混ざります。

次に、精子と精嚢分泌液が混合した液体が射精管を通じて前立腺に送られると、前立腺から分泌される前立腺液(前立腺分泌液)と更に混ざることで精液(射精液)が完成します。そして、精子を含んだ精液は、前立腺の平滑筋の動きによって尿道に押し出されて体外に射精されます。

ちなみに、精嚢液と前立腺液を併せて精漿(せいしょう)と呼びます。

精液の量や精子の数と運動率

このようにして体外に射精された精液には、無精子症などの特別な理由がない限り、精子が含まれています。一度の射精で体外に出される精液の量は、個人差がありますが、概ね2~5ml程度とされています。ただし、精液の9割以上は、精嚢液と前立腺液です。

また、一度の射精で体外に出される精液に含まれる精子の数は、個人差のほかに体調による変化もありますが、概ね1億個から4億個と言われています。

このような精液量と精子数は、年齢的に30代~40代を迎えると男性ホルモン(テストステロン)減少のはじまりとともに、徐々に減少しはじめます。そして、近年の研究報告により、加齢に応じて核DNAを損傷した精子が多くなり、正常形態の精子数が少なくなるとともに、精子の運動率も低下するという精子の質の低下が生じることが分かっています。

ちなみに、精液量・精子量が正常な健全な人であっても、10日以上射精しない日が続くと、精子運動率の低下と正常形態精子の減少が生じる可能性があります。

乏精子症について

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不妊というと、どうしても女性側の問題として捉えられがちですが、実は不妊の原因の一部は男性側の問題でもあります。そして、男性不妊の原因の中で多くを占めるのが乏精子症です。

それでは、乏精子症とは、どのような病気なのでしょうか?そこで、乏精子症について、ご紹介したいと思います。

乏精子症とは?

乏精子症とは、射精された精液の中に存在する精子量・精子数が少ない状態、つまり精液における精子濃度が通常よりも低い状態のことを言います。精子数が少ない状態であるため、夫婦間の性行為・セックスによる自然妊娠が困難となり、乏精子症は男性不妊の代表的な原因の一つとされています。

世界保健機関(WHO)が定める基準では、精液1ml中に1500万個の精子が基準値となって、これを下回る検査結果で乏精子症と判断されます。

ただし、実際に自然妊娠しやすい精子濃度は、精液1ml中に4000万個以上の精子を必要とする見解があり、不妊治療施設の中には4000万個程度を独自基準とする所もあるようです。

乏精子症の原因

乏精子症の原因は、いくつかの障害に分類することができます。最も多い原因が、造精機能障害で男性不妊の9割を占めます。その他に、精路通過障害、副性器障害、性機能障害などが乏精子症の原因となります。

  • 造精機能障害:精子をつくる能力や機能が低い、あるいは全く無いという障害。
  • 精路通過障害:精子を射精するまでの経路が障害されている。
  • 副性器障害:精嚢や前立腺の病気の影響によって精子の運動率が低下する障害。
  • 性機能障害:勃起不全や射精障害など、何らかの理由で性行為・射精ができない障害。

造精機能障害

造精機能障害とは、精子をつくる能力や機能が低い又は無いことにより、精子数が少なくなったり、正常形態精子が減少したり、あるいは無精子となる障害のことです。

造精機能障害は男性不妊の9割を占めますが、造精機能障害の原因がはっきりする場合と原因が不明な場合は、ほぼ半々とされています。特に原因不明の造精機能障害は、特発性造精機能障害と呼ばれます。

原因がはっきりしている場合の例として、精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)という睾丸上部の静脈が肥大化し血流障害が発生することにより睾丸の温度が上昇し、精巣の造精機能が低下することが挙げられます。また、抗ガン剤・ダイオキシン・環境ホルモン・活性酸素などの造精機能低下への関与も指摘されています。特に喫煙やストレスは、活性酸素の増加を招きますので注意が必要です。

乏精子症の治療法

不妊治療として、乏精子症の治療をする場合、いくつかの治療方法が存在します。乏精子症の程度や原因に応じて、専門医との相談により治療法が選択されます。

  • 外科手術:原因が明確で、解剖学的に手術で根治できると判断できる場合に実施。
  • 精巣内精子採取術:精巣から精子を採取し、いわゆる人工授精・顕微授精を行う。
  • ホルモン療法:特発性造精機能障害などの場合に、男性ホルモン剤を投与。
  • 投薬治療

精液の役割と精液量を増やす方法

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前述したように精液の9割以上は、精嚢液と前立腺液で構成されていて、その中に精子が含まれているのが通常です。それでは、精液を構成する精嚢液と前立腺液は、どのような役割を果たしているのでしょうか?

また、精液量を増やす方法はあるのでしょうか?そこで、精液の役割と精液量を増やす方法について、ご紹介したいと思います。

精嚢液と前立腺液の役割

精嚢液と前立腺液を併せて精漿と呼ぶことは前述しましたが、精漿は基本的に弱酸性である女性の膣内で、酸性に弱い精子を保護する役割を担っています。

精嚢液(精嚢分泌液)

精嚢液は、精液のうち約7割近くを占める分泌液で、精嚢から分泌されます。精嚢液は、どちらかと言うとゲル状・ゼリー状で粘度が高くドロドロした液体で、やや黄色味を帯びています。そして、この精嚢液には果糖が含まれているのが、最大の特徴と言えます。

精液の中に含まれる精子は、エネルギーを生み出す装置としてミトコンドリアを有していますが、エネルギー源となるものは有していません。そこで、精子は精嚢液に含まれる果糖をエネルギー源として用いながら、ミトコンドリアによってエネルギーを生み出し、鞭毛を動かすのです。

前立腺液(前立腺分泌液)

前立腺液は、精液のうち約3割近くを占める分泌液で、前立腺から分泌されます。前立腺液は、タンパク質分解酵素を含んでいて、精嚢液の粘度を低くしてサラサラにする働きをする液体で、やや白味がかった色をしています。また、精液が独特の青臭いニオイがするのは、前立腺液に由来すると考えられています。

そして、前立腺液の最大の特徴はアルカリ性の液体であることで、そのために精液は弱アルカリ性を示します。精液が弱アルカリ性であることにより、弱酸性を示す女性の膣内において、酸化・酸性に弱い精子が生存や卵子を目指す活動をすることができるのです。

精液量が減少する要因

精液の量が減少する要因は、多岐にわたります。そもそも1日に複数回の射精をしたり、毎日射精をすると、精液の大部分を占める精嚢液が十分に溜まる前に射精をすることになり、精液の量は通常より少なくなります。精嚢液が精嚢を満たすには、概ね2日~3日を要するとされています。

ストレスは、精神的ストレスでも身体的ストレスや疲労のいずれでも精液・精漿の減少要因になります。また、加齢や老化による男性ホルモン(テストステロン)の分泌低下や射精に関与する筋肉の衰えも精液・精漿が減少する要因の一つです。さらに、射精前の性的興奮度が低かったり、陰茎の勃起不足も精液・精漿が減少する要因になります。

精液量を増やす方法

このように精子が卵子と受精するまでの生存をサポートする精漿が少ないと、精子は女性の膣内で十分に生きて活動することができません。

また、男性の性行為時のオーガズムは射精時に訪れますが、オーガズムの度合いは射精に関与する骨盤底筋の筋肉収縮の度合いと回数に概ね比例するとされます。精液量が多くなると、それだけ骨盤底筋の収縮回数が増えるので、快感の度合いも高くなるのです。

ですから、成人男性としては、二つの意味で精液量を増やしたいとなるのですね。そして、精液量を増やす方法は、いくつか存在しますので、ご紹介したいと思います。

射精の間隔を1日~2日程度あける

毎日射精をすると、精液の大部分を占める精嚢液が十分に溜まる前に射精をすることになり、精液の量は通常より少なくなります。

ですから、精液量を増やすには、マスターベーションや性交による射精を毎日するのではなく、1日~2日程度の間隔をとることで精嚢が精嚢液で満たされる時間を作ると良いでしょう。

ストレスを溜めない

精神的ストレスや疲労などの肉体的ストレスは、男性ホルモンの分泌の不足を招き、生殖機能全般を低下させます。そのため、精液量を維持するためには、ストレスを溜めないことが必要になってきます。

精神的ストレスは、自分なりのストレス解消法により、上手く発散することが大切です。また、疲労などの肉体的ストレスは、十分な睡眠時間を確保することで解消しましょう。

運動とバランスの良い食事

加齢や老化は誰もが避けることはできませんが、運動や筋トレなどで身体を鍛えることは射精に関わる筋力アップにもつながります。そして、筋力の向上には、バランスの良い食事でタンパク質やビタミンなどの栄養成分・栄養素を摂取することが求められます。このように生活習慣を改善することも、精液量を増やすための方法となります。

ちなみに、精液・精漿の構成成分を見ると、その大部分がアルギニンというアミノ酸です。そのため、アルギニンを意識して摂取することは、精液量の増加に良い影響をもたらします。アルギニンは、大豆製品に多く含まれていますが、その効果から精力剤にも配合されることがあります。

十分な性的興奮と陰茎の勃起

射精時の精液量は、性的興奮度や陰茎の勃起と相関関係があるとされています。ですから、パートナーとのコミュニケーションを密にして、お互いの性的刺激が高まるような性生活を目指しましょう。質の高い性生活を送ることが、ドバドバと多くの精液を出すための近道なのです。

精子の数を増やす方法

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精液の中に含まれる精子の数は、目で見て数えることはできませんから、厳密に精子の増減を確認するには精液検査をする必要があります。

そこまでしなくとも、自然妊娠を望むのであれば質の良い精子の数を増やしたいですよね。そこで、運動率が高く質の良い精子の数を増やす方法について、ご紹介したいと思います。

病気の場合は治療が必要

何らかの病気によって、精子数が少なくなっていたり、精液の中に精子が存在しない場合は、治療が必要です。病気によって精子数が減少する場合には、前述した乏精子症のほかに、精液の中に精子が存在しない無精子症があります。

また、精液の中に精子が存在していても、その精子の運動率が低い場合は精子無力症と判断されて、やはり治療が必要になります。

精子数を増やす方法

このように病気でないとしても、精子数が少ないのではないかと悩みを感じていたり、自然妊娠を強く望む人は、なんとかして精子数を増やしたいとお思いでしょう。

精子数を増やす方法は、精液量を増やす方法と同様に、いくつか存在します。

適度な間隔で射精をする

前述しましたが、精液量・精子量が正常な健全な人であっても、10日以上射精しない日が続くと、精子運動率の低下と正常形態精子の減少が生じる可能性があります。

こちらも説明した通り、精子は常に生成され続けて補充されていきますので、精巣上体は数日で一杯になります。そして、一杯になると精子は、活力を徐々に失っていくのです。やがて、精巣上体に貯蔵された精子は、古いものから分解された上で、体内に吸収されます。

ですから、運動率が高く質の良い精子を多く射精するには、射精しない日を10日以上発生させずに、3日~4日を目安にして適度な間隔で定期的に射精すると効果があるでしょう。

精巣のある睾丸は風通しを良くする

乏精子症の項で説明しましたが、睾丸の温度が高くなると精巣の造精機能が低下してしまいます。精巣の造精機能が効率良く働くには、体温の平熱より少し低めの35度くらいが良いとされています。そのため、精子数を増やすという観点からは、下着は風通しのあるトランクスが良いと言えます。

ですから、ブリーフやボクサーパンツなどのタイトな下着を着用していると、股間が蒸れて睾丸の温度上昇を招きかねません。また、あまりにも長く風呂やサウナに入ることも避けたほうが良いかもしれません。さらに、高熱が出た場合には、男性は頭部とともに股間も冷やしたほうが良いでしょう。

活性酸素を増やさない

体内で発生する活性酸素は、造精機能低下への関与が指摘されています。ですから、体内に活性酸素を増やしてしまう喫煙は、精子数を増やす観点からは止めるべきでしょう。また、ストレスも活性酸素の増加を招きますので、上手くストレスを解消することが精子数の増加につながります。

ちなみに、喫煙は血管を収縮させ血流を悪くするので、陰茎の勃起力や勃起の持続力にも悪影響を及ぼします。この点にも留意しておく必要があるでしょう。

バランスの良い食事

精子数を増やすためには、栄養バランスの良い食事が必要です。それに加えて、いわゆる精力を高める食材・食品を摂取して、生殖機能を高くすることに気を配ることも大切です。

特にミネラルの中でも亜鉛は、精子を生成するのに必要不可欠な栄養素と言われています。亜鉛不足は、精子の生成に影響するだけでなく、味覚障害も招く可能性があります。亜鉛の摂取は、牡蠣(かき)・牛肉赤身・豚レバーなどに含まれますが、亜鉛サプリメントや牡蠣エキスを凝縮した牡蠣サプリなどの商品を利用しても良いでしょう。

まとめ

いかがでしたか?乏精子症や精液・精子を増やす方法について、ご理解いただけたでしょうか?

たしかに、不妊というと、どうしても女性側の問題として捉えられがちです。しかしながら、実は不妊の原因が男性側にある場合が思っている以上に存在します。そして、男性不妊の原因の中で多くを占めるのが乏精子症なのです。

また、乏精子症のような病気でなくとも、精液量や精子数に関する漠然とした悩みを抱える男性が少なくありません。

ですから、そのような悩みを抱えている方は、本記事の情報を参考にして、精液・精子を増やす方法を実践してみてはいかがでしょうか。

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