打撲というのは別名、打ち身といって日常よくある症状です。ちょっとした打撲は子供なら日常茶飯事、親もたいして気にとめないケースも多々あります。
たしかに小さなアザができる程度なら問題ありませんが、たかが打撲と侮るのは危険です。しっかり治療しないと症状が長引いたり、後遺症が残ったりする場合もあります。
今回は治療を必要とするとそうでない打撲の違いや対処法についてご説明します。
放っておくと危険な打撲とそうでない打撲をしっかり見極めてトラブルに繋がらないようにしっかり対処していきましょう。
正しく知りたい「打撲」について
これが打撲、と今さら考えなくても誰でも簡単に打撲のイメージくらい出来ることでしょう。
強く打ったところにアザができて、痛い。そのうち治る、その程度が一般的かもしれません。しかしどうしてあざになっているのか、皮膚の内部に発生している問題についても詳しく知っていますか?
まず打撲とは何か、何が起こって打撲の症状や見た目が産まれているのかについて正確に知りましょう。
打撲したらどうなるの?
打撲とは人体に大きな衝撃が加わって、皮膚や皮下の組織にダメージを負ったものを指します。交通事故などはもちろん、スポーツでの接触が起きた際に頻繁に発症します。
日常生活において、どこかにぶつかっても打撲します。このように打撲は大小さまざまに起こり、打撲せずに人生を終えることは難しいでしょう。
打撲の定義は皮下で血管の損傷により出血が発生し皮膚内に留まってしまうことです。皮膚が裂けて出血すれば打撲とは呼べません。その皮下出血をアザと呼びます。その量にもよりますが、青アザや紫色のアザが体表に現れる程度であれば、自然治癒力が働いているので問題ありません。すぐに処置ができるからです。
打撲とアザは別もの?
変色している皮膚状態のことをアザと呼んで、体を打つことによって痛みや皮膚の色の変化や内出血が発生している症状のことを打撲と呼びます。
打撲の場合、多くのケースでアザを確認することが出来ますが、必ずしもアザが確認できるわけではありません。もし皮膚のかなり深部での内出血や細胞の破壊などが発生していた場合、皮膚や皮下組織がかなり厚くなりますので、色の変化は見られないこともあります。
ですので、アザが無いから打撲ではないというのは間違いになります。実際に頭や肘などに発生するたんこぶも打撲による内出血での腫れになりますが、肘や頭の皮膚は皮膚が厚いので血液が溜まっていても血液がすけて見えることはほとんどの場合ありません。
治療が必要な打撲について
問題は内出血の部位が深く、目で見て分からない打撲患部で腫れの大きいものです。かなりの出血が身体の深いところで発生すると、組織の破壊度が一気に進んで生命の危機に至ることがあります。
打撲が体表に影響するだけなら自宅で様子をみていて大丈夫ですが、気を付けたいのは打撲の場所や衝撃を受けた時の様子です。手足でなければ打撲部位の臓器に影響することも考えなくてはなりません。
手足が強く当たって、アザができたけど腫れもないし、触らなければ痛くはない。そのうちアザが薄くなって、だんだん打ったことさえ忘れてしまった・・・このようなケースなら心配ありません。すぐに冷やして安静にしていれば後遺症など考えなくて大丈夫です。
一番、怖いのは高い階段から転落したり、交通事故で一気に多数の打撲をした場合です。どこをどう打ったのか自覚できません。それは初期治療が最も重要な打撲治療において判断が難しくなります。経過観察をしなくてはなりませんが、それでは遅いのです。
もし腱鞘や肩関節や膝の関節包などを強く打った場合は打撲だけでなく、回旋筋腱板を損傷して運動障害に発展したりして運動障害を引き起こす可能性もあります。
上腕などや肋骨については骨折可能性も高くあります。
打撲治療で大事なこと
一にも二にも、初期対応が大事です。患部を冷やして安静にするのが大原則ですが、そのために打撲の部位について正確な診断ができていなければなりません。
打撲の位置、衝撃の深さ、内出血の有無、腫れの有無。これらの所見を確認することは基本中の基本として、まず知りたいのが骨折があるかどうかです。レントゲンでしっかり確認しないと、内出血が皮下出血だけでなく骨膜からの出血である可能性もあるからです。
いつまでも痛みが引かないし、腫れもひかないので病院に行って骨折が認められた話はよく聞きます。こうなると骨の折れ方や骨折部位によっては修復が難しく、できる治療も限られてきます。早ければ適切な処置を受けて痛みから解放されていたのに、そのうち治るだろうと様子をみていると危険なのは、こういうケースです。
衝撃を受けた部位が関節であれば、脱臼も確認しなくてはなりません。完全に脱臼していればブランとして分かりますが、亜脱臼といって不完全な脱臼、つまり関節がずれている場合は少し動きます。打撲の痛みで動きにくいと感じてしまって受診が遅れるケースです。場合によっては完全に復帰できなかったり、不完全なまま亜脱臼を繰り返しやすくなったりもします。
脱臼だけでなく、靱帯の損傷からも出血します。打撲の仕方によっては瞬間的に患部にねじれの力が働いて、本来なら圧力のかからない角度で骨や関節、靱帯に圧力が加わった場合、あっけなく折れたり、外れたり、切れたりします。
打撲の治療で大切なのは、一か所をコツンと打ってできたものでなく、同時多発で打撲した場合は必ず外科、整形外科で受診することです。しかも、早く。このスピードが大きな分かれ目になります。
後遺症を防ぐ治療
打撲が一時的なダメージで終わるのか、終生残る障害となるのか、それを決めるのが早期治療と経過観察です。
経過観察しましょう
複数、打撲したので即、受診して帰宅したとします。これで安心してはいけません。せめて24時間は家族が様子をしっかり観察してください。
場合によっては容態が急変するかもしれません。病院で受診した時は、意識があるのなら本人の自覚している範囲内の確認になります。痛みの部位や内出血の有無などを確認し、打撲した場所をレントゲンで検査して患部を特定するでしょう。それでも、後で遅れて出てくる症状もあるのです。
頭面部を強打していれば、その衝撃で後から頭痛、吐き気が出る可能性もあります。あるいは意識を失うかもしれません。病院で診てもらったから安心、というわけにはいかないのです。
背面部や胸部を強打して受診した時、もちろん肋骨などの骨折は確認すると思います。骨折がなかったとしても、呼吸した時の痛みが抜けないようでしたら再受診が必要です。打撲によって深い部位にできた内出血が呼吸器の働きを悪くしている可能性があるからです。
腹部の強打も臓器の機能を低下させますので、2~3日の観察は心がけましょう。打撲前の生活に戻れるかどうか、慎重に見極めたいところです。
コンパートメント症候群を予防する
これは手足の部位で起こる現象です。打撲の内出血で起きる内圧上昇により発生する血行障害です。一刻の猶予もできません。
打撲で内出血が大きくなり、すぐに止血処置ができず6時間以上経過してしまうとコンパートメント症候群になりやすいので要注意です。強い痛み、顔面蒼白、知覚異常、麻痺、脈拍喪失になれば8時間以内に筋膜切開を行う必要があります。
そうして圧迫している部位を開放しなくては筋・腱・神経組織が壊死してしまうのです。これは打撲が引き起こす後遺症の中でも大きな留意点といえるでしょう。
この予防自体が大事な打撲の治療であり、時間が命である理由になります。
打撲をした時の応急処置方法
打撲をした時の専門は整形外科になりますが、病院に行く前に行うべき応急処置や軽症の場合に自分で対応できる処置方法についても知っておいた方が良いでしょう。
アザなどを早く直すためや色素の沈着に発展させないための処置方法について紹介します。
冷やす
まず打撲が発生したすぐは冷やすことが有効になります。
温めてしまうと逆に内出血をひどくしてしまうので打撲が発生したすぐの処置方法としては冷やすことが先決となります。
アイス枕などをタオルでくるんで10分〜15分冷やしましょう。長時間冷やし続けると凍傷などのトラブルに繋がりますので、間を開けて冷やしていきましょう。
1〜2日間はこの方法で冷やして対処していきます。
徐々に温める
2日〜3日目に差し掛かると、炎症や出血などが大分落ち着いていますので温めて血行を良くして血液を流したりリンパの流れなどを良くして、治癒力を高めていきます。
温感湿布を貼ったり、温かいお絞りなどを使用してじんわり温めるといいでしょう。自宅であればしっかり入浴で体を温めて患部部分も同時にしっかり温めてあげることが有効です。
しかし、熱いもので温めることだけはしないでください。熱いを長時間皮膚に当てて温めていると低温やけどになってしまう事に繋がり、アザなどが残ってしまう事があります。
33〜40度の上下幅の温度の物で温めるようにしましょう。
患部を高い位置に
上腕部分であれば腕を高く挙げる、足であれば横になって高い所に足を置いて休むなどして患部部分を高い位置に挙げて処置していきます。
これは、アザの部分に溜まっている血を心臓に流すことを目的としています。長時間血がアザの部分に溜まってしまうとアザが長く残ってしまったり、血が大量に溜まってしまって腫れがひどくなってしまうので、出来るだけ高い位置に置いて血が流れないようにすることが有効です。
運動を控える
特に激しい運動などをしてしまうと、血流が更に良くなってしまい、症状をひどく悪化させてしまいます。
運動は打撲の症状の2〜3日目以降に徐々に始めて、痛みの様子との兼ね合いを見ながら行うといいでしょう。
特に筋肉に過度な負荷をかけるトレーニングなどについては、筋肉や皮膚が完全に治ってから行わないと効率も低下しますし、痛みの症状の慢性化や疲労の蓄積による骨折などの問題に発展しかねません。
既にダメージを負っている状態でのすので出来るだけ休めせて回復に集中させましょう。
マッサージをする
打撲している周囲の皮膚や筋肉を血管やリンパの流れに沿って心臓方向に流していきます。
あまり強く刺激してしまうと、痛みが強くなりますし、炎症などしている場合は悪化してしまう危険性がありますので、もし痛みが強い場合は先に冷やすなどの対策をとりましょう。
痛みが大分取れてきてから行う対処法として有効な手段です。
指の腹で柔らかく広範囲にマッサージをして溜まっている血液などを流してあげてください。
時計回りに円を描くようにマッサージしてあげることが有効です。
治療はスピードが命
打撲はすぐに治療しないと、損傷した組織がドミノ式に周辺組織に悪影響を出してしまいます。その進行は深さにも広さにも早く影響します。ここではRICE処置と呼ばれる大事な基本をお伝えします。
R(安静)
打撲した時点で、できるだけ安静にします。交通事故など、その場所に留まることが危険な場合、またはスポーツでプレー中の場合はその場から立ち去らなくてはなりません。まず、安全な場所に移動して、そこから安静にします。
打撲患部の内出血部位を広げないためにも大事なことです。そして他の部位を動かして血流を盛んにしてしまうと、それもまた患部の出血を促してしまいます。この安静とは、打撲患部のみの安静ではありません。
理想は身体を横たえて安静にするのが一番ですが、せめて体重を患部にかけない、というもの立派な安静です。
I(冷却)
打撲患部の内出血を極力、最小限にするために重要なのが冷却(アイシング)です。打撲した直後はレントゲン検査したわけではないので、骨折の可能性もあります。筋断裂、靱帯裂傷かもしれません、内出血の原因が特定できていない時期の処置というのは、あらゆる損傷を視野に入れて行います。
スポーツでは、あらかじめ用意できていると思います。氷や湿布などは必須のアイテムです。スプレー式の冷却剤にはあまり期待できません。打撲は皮膚の損傷がないのですから、皮膚にしっかり密着して冷やせる素材が有効です。
皮下組織を冷やすので温度の低さも必要です。しかも、長時間冷やさなくてはなりません。せめて病院で受診できるまで冷やし続けて、治療に臨みたいものです。
C(圧迫)
スポンジや弾力包帯、テーピングなどで患部を固定します。これは内出血を予防する止血行為です。内出血の広がりを食い止めて、組織の損傷を最小限に抑えることを目的とします。
打撲以上の損傷がある場合、内出血や腫れが大きいとすぐに治療できない時があります。内出血や腫れが引くのを待つ間、どんどん時間がたってしまいます。すぐに適切な処置ができるように内出血や腫れを予防するのが、この圧迫です。
ただ、この圧迫処置をした後、放置してはいけません。圧迫が強すぎるとかえって血流を妨げ、別の問題を出してしまいます。神経を損傷してしまうことさえあります。
圧迫部がきつすぎないか、圧迫部周辺の部位に色の変化がないかどうか、常に確認しなくてはなりません。たとえば打撲部位は足首だったとします。捻挫の併発も考えられますが、とりあえず圧迫しているとして、観察できるのは足の指や爪の色です。青っぽかったり紫に近い色をしていれば、止血しすぎです。すぐに圧迫を開放してやり直しましょう。
この圧迫はアイシングと併用して、より高い効果が期待できます。この圧迫素材もスポーツやアウトドアの時に用意したいものです。
E(挙上)
この上、というのは心臓より上を意味します。血流を遅くして内出血を防ぐ対策です。打撲部位が手足であれば、椅子にクッションか何か弾力性のあるものを敷いて、そこに患部を置き、心臓より高くします。
止血ではありませんが、止血行為と違ってやりすぎることがありません。ただ、大きな効果を期待できるものではありませんから、冷却と圧迫の併用をしなくてはなりません。
まとめ
身近な打撲も簡単に治るものから、命に関わるものまで様々にあります。一貫していえるのは、時間が治療で大きな意味を持つことです。
打撲で考慮しなくてはならないものに、他の見えない外傷の併発がありました。病院で検査ができるまで、全ての可能性を否定できずに応急処置をします。まずは内出血を止めることに尽きます。安静、冷却、圧迫、挙上このRICE処置は内出血の止血が目的です。
あらゆる工夫で止血し、最善の状況で医師の診断を待つ。これが一番重要な打撲の治療といえるでしょう。
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