アルビノとは、髪の毛や皮膚の色素、メラニンが生成されないため髪の毛や皮膚が白くなり、眼の色素が薄くなってウサギのように目が赤くなる体質です。
なんとなく白人のイメージがありますが、日本人にもアルビノが生まれることがあります。確率は2万人に1人の割合だと言われてます。
神秘的な白い肌は美しいですが、目立った外見故に周囲の人から後期の目でみられたり、就職活動や学校で「染めろ」と強制されたりアルビノは虚弱体質という差別や誤解もあるようです。
特に色素が薄いタイプのアルビノでは、目や皮膚が紫外線に弱くサングラスや日焼け止めを良く塗ってあまり直射日光に当たらないようにするなど苦労も多いようですが、結婚で「アルビノが遺伝するから」という理由で差別したりする必要はありません。アルビノでない人がアルビノの因子を持っていることは、50~70人に一人ぐらいと珍しいものではないのです。心配な方は遺伝カウンセリングを受けるとよいでしょう。
アルビノについての正しい知識を振り返りましょう。
アルビノとは
アルビノとは遺伝子疾患でメラニンと呼ばれる色素を合成するチロジナーゼという酵素の働きが弱いか、働きを助ける物質などに問題があって、体中の色素が薄くなり、肌は白く眼の虹彩が薄くなる体質のことをアルビノと呼びます。
かつて白子症や眼皮膚白皮症という名前で呼ばれていましたが、現在は差別的な印象があるという理由で使われなくなりました。裏を返せば昔も差別があったということでしょうかね。その他にも先天性色素欠乏症や白変種という呼び名もあります。
成長にともないある程度は色素が出てくることもあります。この場合、チロジナーゼ陽性型であるといわれます。チロジナーゼがある程度働いているが弱いタイプのアルビノです。
成長してもほとんど色素が出てこないタイプはチロジナーゼ陰性型と呼ばれ、陽性型より色素が薄いのが特徴です。
このようなアルビノはある日突然身体の色素が抜けて白くなってしまうのではなく全てが先天性のもので生まれつきこの様に真っ白の状態で産まれてきます。これは、動物も人間でも同じです。
アルビノはどの種族にも発症の可能性がありなんと虫にもアルビノ種が確認されます。その発症確立は0.005~0.01%ほどと言われています。計算だと日本にも6000人以上のアルビノの人が居るという計算になります。
重症型のアルビノについて
メラニン色素は紫外線や光を防いでくれる役割があります。その為、皮膚に直射日光が当たると紅斑ができてしまうことがあります。細胞の遺伝子は紫外線によって傷がついてしまいます。傷ついてもほとんどは修復や除去がされますが、皮膚がんの原因になることもあります。
また眼に入る光を遮断する虹彩の色素も少なすぎると目に入る光がまぶしく感じられたり視力が下がったりします。
このため、日焼け止めをぬり、色眼鏡やサングラスをかけて生活する人が多いようです。
また眼だけに色素がなくなる眼白皮症という病気もあります。X染色体の異常で男性に多い病気とされます。寿命が短いなどの傾向も見られるようです。
目二は厄介な症状がでることもあるようです。目に出てくる障害は以下の三つが考えられます。
- 弱視
- 眼球振盪
- 羞明
弱視
目には脈絡膜という光を吸収する部分がありますが、アルビノの場合はこの脈絡膜に色素がないため、光が眼球内で散乱してしまいます。
このため、網膜にある光を受け取る細胞が十分に光を受け取れなくなってしまいます。
光が見えにくいだけではなく、光を受け取る視細胞が刺激を受けないことによって、視細胞が未発達になってしまいます。
コンタクトレンズによってある程度矯正できますが、しかし視細胞が未発達なので強制して見えるようになる力にも限界があります。オペラグラスとルーペがあると便利です。
また境界線を認知するのが苦手です。明確なカラーで色分けをされていると弱視の人にも対象が見えやすくなります。
弱視に関する詳しい記述は弱視とは?症状や原因、治療法を知ろう!子供の弱視に気がつくにはどうすればいい?を御覧ください。
眼球振盪(がんきゅうしんとう)
眼球が自分の意志とは関係なく動いてしまう現象で、視界が左右に細かく揺れてしまいます。
行がぶれたりするので縦書きの文字が読みずらくなります。眼球がぶれてしまう他にくるくる眼球が回ったり、斜め方向に目が傾いたりする現象が起こります。
この症状の原因は耳から来る場合と脳から来るものと目から来るものの3つの原因が考えられます。
眼球振盪に関する詳しい記述は眼振の原因って?種類や症状、予防方法を知っておこう!こちらを御覧ください。
羞明
光がまぶしく感じられる状態です。羞明はまぶしがり症や光感受性とも呼ばれます。原因によっては目の痛みや涙が多く出るなどの症状も見られます。この病気は視神経による刺激が強く現れることが大きな原因で、その関係性がドライアイや角膜炎や結膜炎などの目からの病気が原因のものと、脳腫瘍や脳出血などの脳の病気が原因のものとがあります。
この様な病気が原因の場合は病院での治療が必要です。普段はサングラスをかけたりコンタクトレンズをして光の量を調節し防ぎましょう。
アルビノは病気なの?
難しい問題です。適切に対処すれば生活が可能ですが、紫外線に弱い点、目に障害ができる点でデメリットと思われる症状があるため、医学では「先天性白皮症」として「症状」として扱われます。
ピンク色のウーパールーパーはアルビノです。このように天然でアルビノが主流の生物もいます。ウーパールーパーはもともと日の当たらない洞窟にすんでいて紫外線を浴びず、あまり目を使わないところで生活します。アルビノに限らずそういう生き方ができれば病気ではなくそういう生物ともいえます。鎌形血球とマラリアの話ではありませんが、何をもって正常というのか?ということはいまだ議論中の問題で、それは現時点では時代や社会によります。
白ウサギは外で生活しますが、目の赤い白ウサギはどうも人間によって飼育された結果繁殖したものだと言われています。あまり日の当たるところでアルビノが自然に繁殖することは少ないようです。
しかし、きちんと対処すれば知的には問題がなく生活できます。またチロジナーゼ陽性型であれば軽度のアルビノである可能性もあります。
アルビノは遺伝的な先天性の体質ですが、染色体異常ではありません。染色体の数は普通です。メラニンがでないこと以外の内臓疾患はありません。
アルビノの因子は誰でも持っている可能性があり、誰からアルビノが生まれてもおかしくないのです。
またアルビノの方やアルビノを産んだ夫婦から必ずしもアルビノが生まれるとは限りません。
またアルビノ因子の遺伝もアルビノは劣性遺伝なので発症しにくい情報です。
劣性遺伝の特性が発症する確率は他の遺伝情報に比べて低めです。遺伝に関しては遺伝カウンセリングを受けると詳しい知識を入手できます。
アルビノは劣性遺伝?劣性遺伝ってなに?
アルビノは劣性遺伝です。よく勘違いされるのですが、劣性遺伝とは劣った性質が遺伝するという意味ではありません。
劣性遺伝とは、遺伝しにくい性質の特性です。血液型のO型因子のようなものです。
母親がAA型でAの因子と父親のBO型でOの因子が合わさってAO型の子どもが生まれるとそのこはAO型のA型になります。O型にはなりません。このようにO因子はA因子より劣性なのです。同様にBO型であればB型になります。
しかし両親が両方ともO型の因子を子供に遺伝させた場合はOO型になりその子はO型になります。O型はOO型にならないとなれないのです。その為O型になる確率が一番低いと言えます。
これと同様にアルビノの因子を持つ親が片方だけ遺伝させた場合アルビノにはなりません。アルビノの因子をもつ親が両方ともアルビノの因子を遺伝させた時初めてアルビノの子が生まれます。
つまり、50~70人に一人が持っているアルビノ因子をもつ親が交配され、なおかつ両方がアルビノの性質を遺伝させなければアルビノの子は生まれない、ということです。
よくわからない人は、要するにアルビノの性質がでて生まれることはとても珍しいことだ、という意味でとらえていただければ問題ありません。
アルビノが生まれる確率って?
アルビノの人が子供を産んだ場合アルビノが生まれてくるとは限りません。
前述したとおり、アルビノ因子の保有者と交配しなければアルビノの方でもアルビノの子どもはうまれないのです。アルビノの方と見かけがアルビノではない人と結婚するとしたら、
アルビノの因子を保有している人と交配する確率が1/70だとして更に1/2の確率でアルビノの因子を選択されない可能性があるためアルビノが生まれる可能性は1/140低いです。
一度アルビノを産んだ夫婦がまたアルビノを産む可能性はアルビノの因子を持っている確率1/2×1/2で1/4ですので、そちらの方が高めです。
なおアルビノを産んだ夫婦の血のつながったアルビノの方の兄弟はアルビノ因子を持たない可能性さえあり、アルビノを産んだ家庭の兄弟がアルビノを産む可能性はさらに低くなります。
アルビノの方と、アルビノの方、アルビノの方の兄弟だということがわかっている方は人よりも高い確率でアルビノが生まれる可能性があります。
詳しいことは遺伝カウンセリングを受けるとよいでしょう。家系図をたどるなどして遺伝学的なアドバイスをしてもらえます。
メラニズム
アルビノの逆のものでメラニズムという物があります。色素が白くなるのとは逆に色や毛の色が真っ黒になるのがメラニズムと言います。メラニン色素が発生しやすいことから色素が黒く色づき全身が真っ黒になります。
この現象も日焼けによって色が黒くなっているのではなく、もともと先天的に産まれたときから色が真っ黒で産まれてくるのが特徴です。
この現象の詳しい原因も解明されておらず、突然変異や紫外線の影響をなくすためや外敵から身を隠すための防衛反応など様々な説が囁かれています。
複雑なアルビノと社会
世界でも動物のアルビノが生まれると珍しさもあって神様の化身ではないかと祀られることもあるようです。
一方アフリカ東部にあるタンザニアでは黒人のアルビノが生まれやすく、「アルビノ狩り」と言う黒人狩りという事件が起き酷い迫害を受けていたことがあります。幸運のお守りにするために殺して体を売りさばかれたり、他には性行為するとHIVが治るという悪質なデマがあったり、親自身がアルビノを産んだことを隠すため子供を手にかけるということもあるそうです。同じくタンザニアで2009年にアルビノの国会議員が生まれたそうですが・・・現在どうなっているかは不明です。
日本では迫害はないものの他人との違いに不寛容な日本ではアルビノ特有の症状以外の苦労もあるようです。
日本のアルビノ
日本では6000人ほどのアルビノの方が存在しているようです。
アニメの影響か、身の回りにアルビノの人がおらずよく知らない人にとっては「きれい・カッコいい」と思われており、ウイッグやカラーコンタクトを使ってアルビノらしいファッションやコスプレをする人もいます・・・が、しかし、実際に近くにアルビノの人がいると話は別のようです。
ネットでは就職活動をしていたアルビノの方が「髪を染めろ」と強要されたということが話題になっているケースもあるようです。
就職活動でアルビノの白髪を染めるように強制された女性
アルビノの方が就職活動で髪を染めろと強制されたことが話題になっています。
Twitterの意見を見れば同情的なコメントもありましたが「染めて治せるような特性なら染めて当然だ」という声も一定数ありました。
この企業、他人種の人やハーフの人間の髪の色も染めさせるのでしょうか・・・。またこの話題に関して2chではロシアのモデルをイメージしていたのか写真を見て「アルビノなのに不細工だな」などという失礼なコメントもちらほら見られます。
なんだか・・・日常でどんな風に人と接してきたのか想像に難くありません。他には「ちょっと触らせろ」と見世物のように扱われたという人もいるようです。
日本では直接迫害する度胸がある人はいないが、目立つことに対するやっかみで、普通の友人にはしないような品のない配慮に欠けるちょっかいを出されることは多々あるようです。日本人は、どうも遠くにいる黒人の差別は悪いと考えますが、隣にいる異分子は「自分らの社会に合わせないほうが悪い。俺たちに合わせるのが当然だ。自分たちと違う方が悪い。」と横柄に考える人が多いようですね。
口では平和主義や平等を立派に語っていても、違いを認めて協力し合うということ、自分の側が譲り合うことが実際はできていないなんてことは、日本でベビーカーに舌打ちする電車内の人を思えば、当たり前の話かもしれません。こういう思慮に欠ける心の狭い人だけではないことを祈るばかりです。
芸能人では粕谷幸司さんがアルビノタレントとして有名です。「アルビノを悲劇にしない。楽しいアルビノもいる」と自らの姿をメディアに出して活動し、アルビノの偏見を払拭しようとしているようです。
日本のアルビノの歴史
もっとも古い記録が天皇のアルビノです。444年、第22代清寧天皇がアルビノで、白髪皇子(しらかのみこ)と呼ばれたそうです。そのあとも何人か白子の人物の記述がある書物が見つかり、肌も髪も白く、昼は目がまぶしいので外に出なかったことなどが記録されています。
平安時代の『病草紙』という病気を書かれている書物に白子(アルビノ)が周りの人から笑われている姿が絵巻として残っているようです。
1940年(昭和)には国民優生法という「優れた遺伝子を残すためには病気の人間は生殖できないようにしてもいい」という考えの法律の中に「白児」が含まれていました。アルビノ以外にも障碍者は子供を産むなと国が法律によって取り決めていたのです。
何度も言いますが、アルビノは劣性遺伝なのでアルビノの人からアルビノの人が生まれるとは限りません。間違った科学によって取り返しのつかないことをしていた時代もあったのですね。
正しい知識を得てアルビノの人を差別したりせず、またアルビノの方も自信をもって生活してください。
まとめ
アルビノとは先天的にメラニン色素が生成されず肌や目の色素が薄い人を指します。紫外線に弱く、視力に障害がでることが多いです。
西洋人のイメージが多いアルビノですが、日本でも6000人ほどのアルビノの人が生活しています。日本では歴史的には差別対象にありましたが、近年遺伝学の発達によりその偏見が緩和されたようです。しかし少数派に厳しい現代日本の社会では迫害とまではいきませんが理不尽な要求をされることもあるようです。
アルビノの子ども産む可能性は誰にでもあり、またアルビノの人がアルビノの子を産むとは限りません。正しい知識を持って人と接しましょう。
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