呑酸が起きる病気って何?症状や原因を知ろう!治療するにはどうする?

吞酸(どんさん)という症状を耳にしたことがあるでしょうか?胃腸が弱い方で、胃薬をしばしば服用する方は、ご存知かもしれませんね。逆に胃腸が強く、胃薬を手にとったことすら無い人にとっては、もしかすると初めて耳にする言葉かもしれません。

呑酸は、主に逆流性食道炎が原因となって現れる症状で、胃液が食道まで逆流してきて、酸っぱく不快な感覚になることを言います。このような逆流性食道炎や吞酸の症状を放置していると、様々な危険性が生じます。

そこで今回は、逆流性食道炎や吞酸の症状を放置しないためにも、これらの概要について説明したいと思いますので、参考にしていただければ幸いです。

吞酸とは?

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そもそも吞酸とは、どのような症状のことなのでしょうか?

まずは、呑酸の定義や呑酸が生じる原因など、吞酸についての基礎知識を確認しておきたいと思います。

吞酸とは?

吞酸は、口や喉(のど)に胃液・胃酸が逆流してくることによって、口の中や喉の奥に酸っぱく不快な感覚が生じる症状のことを言います。

実際に口や喉に胃液が逆流してこなくとも、胃液の成分が気化してゲップとともに排出されることで、口の中や喉の奥が酸味や苦味で違和感を覚えることもあります。

吞酸の原因

このような吞酸という症状は、逆流性食道炎という病気で見られる代表的な症状です。ですから呑酸の原因は、主に逆流性食道炎という病気であると言えます。

ちなみに、逆流性食道炎の代表的な症状には、呑酸の他に、胸やけという症状があります。

胸やけ(胸焼け)とは?

胸やけ(胸焼け)は、胸のあたりがチリチリと焼けるような痛みを感じたり、胸のあたりが重苦しいなどの違和感や不快感を感じる症状のことを言います。

そして、胸やけも呑酸と同様に、逆流性食道炎の代表的な症状です。ですから、胸やけの原因は、主に逆流性食道炎という病気なのです。

逆流性食道炎とは?

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それでは、吞酸の主な原因となる逆流性食道炎とは、どのような病気なのでしょうか?逆流性食道炎の症状と逆流性食道炎に関する基礎知識を確認したいと思います。

逆流性食道炎とは?

逆流性食道炎は、胃液や食後に胃で消化されている途中の食べ物が、何らかの原因によって、食道まで逆流して上がってくることで、食道の粘膜に炎症を生じる疾患のことを言います。

逆流性食道炎の症状

逆流性食道炎の代表的な症状が、前述した吞酸と胸やけです。その他に、逆流性食道炎の症状として、次のような症状が現れることがあります。

  • 呑酸
  • 胸やけ
  • 胸のつかえ
  • 胸の痛み
  • 喉(のど)の違和感
  • 慢性的な咳(せき)
  • 口臭、口内炎

胸のつかえ

胸のつかえという症状は、食事の際に食べ物が食道の途中で、いわゆる胸のあたりで詰まるような感覚になって、スムーズに食べ物を飲み込めなくなる症状のことです。

通常、食事の際に食べ物を飲み込むと、食道が蠕動運動をすることによって、食べ物を胃まで運び届けます。

しかしながら、逆流性食道炎によって食道が炎症を起こしていると、蠕動運動が正常に働かずに、食べ物が胃まで上手く運び届けられないために、胸のつかえという症状が現れるのです。

胸の痛み

逆流性食道炎によって、胸のあたりに痛みを感じることがあります。胃酸逆流によって刺激された食道が、本来想定していない刺激に対して、けいれんを生じてしまうために胸のあたりに痛みを感じると考えられています。

喉の違和感

逆流性食道炎症状の一つとして、喉に違和感を感じることも挙げられます。食道を逆流してきた胃酸によって、喉(喉頭・咽頭)の粘膜にも炎症が生じるからです。

慢性的な咳

食道への胃酸逆流によって、喉(喉頭・咽頭)の粘膜に炎症が続くと、慢性喉頭炎のような症状になり、そのために慢性的な咳が生じたり、声が変質して発声しにくくなったり、声がかすれたりします。

口臭・口内炎

逆流性食道炎によって吞酸が生じると、口の中や喉の奥が酸っぱく不快になります。その際に呼吸をすると、鼻をつく刺激臭が口臭として現れることがあります。

また、胃酸が口腔まで逆流すると、口内炎が発生することもあります。

逆流性食道炎の影響

逆流性食道炎によって吞酸や胸やけが生じると、さらに様々な影響が広がる可能性があります。

日常生活への影響

吞酸や胸やけは非常に不快感を伴う症状ですから、気分が冴えずに落ち込んだり、食べたいものを好きに食べられなくなり食生活に影響することもあります。また、睡眠にも影響して睡眠の質が低下することも考えられます。

さらには、不快感から集中力が低下して仕事や勉強に支障をきたすこともあるかもしれません。

炎症の悪化

逆流性食道炎が長く続くと、食道の炎症が悪化して食道潰瘍に進行する危険性があります。食道潰瘍とは、食道の粘膜が炎症し、その炎症が組織深くまで達することで組織が損傷する状態・症状のことを言います。

また逆流性食道炎が長期間続くことで、バレット食道という状態になる危険性もあります。バレット食道とは、通常の食道粘膜が皮膚に似ている扁平上皮という粘膜なのに対して、胃の粘膜に似ている円柱上皮という粘膜に変性してしまうことです。

そして、このバレット食道が食道癌(食道ガン)に進行しやすいという関連性も指摘されていて、特に喫煙者は注意が必要です。

さらには、食道の炎症部から出血をすることがあり、慢性的に出血が続くと鉄欠乏性貧血に陥ることも考えられます。

胃食道逆流症について

逆流性食道炎に似たような病気として、胃食道逆流症という病気があります。

逆流性食道炎と胃食道逆流症は、いずれも胃液や食後に胃で消化されている途中の食べ物が、何らかの原因によって、食道まで逆流して上がってくる病気です。

逆流性食道炎と胃食道逆流症の違いは、逆流してきた胃酸・胃液によって、食道の粘膜が損傷・炎症しているか否かのみです。つまり、逆流性食道炎は胃酸逆流によって食道粘膜が損傷・炎症しているのに対して、胃食道逆流症は食道粘膜に損傷・炎症が生じていないのです。

これは、近年の研究によって、吞酸や胸焼けの症状があっても、食道粘膜に炎症がないケースも存在することが明らかになったため、食道粘膜の炎症の有無に関係なく吞酸や胸焼けの症状がある場合を胃食道逆流症と呼ぶようになったのです。

ですから、逆流性食道炎よりも胃食道逆流症のほうが、病気の概念としては幅広いということになります。また、胃食道逆流症は、吞酸の原因でもあるということになります。

逆流性食道炎の原因

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吞酸の主な原因となる逆流性食道炎は、何らかの原因によって、食道まで胃液が逆流して上がってくることで、食道の粘膜に炎症を生じる疾患です。とすると、逆流性食道炎の原因が吞酸の原因であるということもできます。

それでは、逆流性食道炎の原因は、どのようなことなのでしょうか?

食道が炎症を生じるメカニズム

逆流性食道炎で食道に逆流してくる胃液は、塩酸を主成分とする胃酸、ペプシンに代表される消化酵素などによって構成されています。なかでも、塩酸を主成分とする胃酸は、酸性度が極めて強い強酸性の液体です。

胃の中では、この強酸性の胃酸を中和する液体が胃壁から分泌されますので、問題は生じません。しかしながら、食道には胃酸を中和する液体を分泌する機能がありませんから、胃液が食道に逆流すると、その胃酸の強い酸性によって食道粘膜がただれたりして炎症が生じるのです。

胃液の逆流を抑止するメカニズム

このように胃液が逆流すると問題が生じるために、人の体には胃液や胃で消化中の物が逆流しない仕組みが存在しています。

まず、食道と胃の境目にある下部食道括約筋が、逆流防止の働きをします。食べ物が飲み込まれ、食道が蠕動運動をすることによって運び届けられると、下部食道括約筋が緩んで開き、食べ物を胃に迎え入れます。そして、それ以外の時には下部食道括約筋は常に閉じられていますので、胃の内容物の逆流が阻止されます。

また、食べ物を胃に運ぶ食道の蠕動運動も、逆流阻止の役割をすることがあります。仮に胃の内容物が間違って下部食道括約筋を突破して逆流しても、食道の蠕動運動が正常に働いていれば、すぐに逆流してきた物を胃に押し戻します。

逆流性食道炎の原因

このような胃液の逆流を抑止するメカニズムがあるにもかかわらず、逆流性食道炎になる原因として、次のようなことが考えられます。

  • 下部食道括約筋の弛緩
  • 胃酸の分泌量の増加(胃酸過多)
  • 腹圧の上昇(胃内圧の上昇)
  • 食道知覚過敏

下部食道括約筋の弛緩

逆流性食道炎の原因の一つは、下部食道括約筋が弛緩してしまうことです。下部食道括約筋が緩んでしまう要因は複数あり、具体例として次のようなことが挙げられます。

加齢

年齢を重ねることで、単純に下部食道括約筋の機能が低下します。

アルコール摂取

アルコールで酔っぱらうと筋肉が弛緩します。

タンパク質の多い食事

タンパク質の多い食事は、消化に時間がかかり、長く胃に止まります。胃が大きく伸びるため、下部食道括約筋が緩みやすくなります。

脂肪分の多い食事

脂肪の多い食事をすると、十二指腸から分泌されるホルモンの影響で、胃から十二指腸・小腸に内容物を送り込むスピードがゆっくりになり、長く胃に止まります。そのため、胃が大きく伸びるため、下部食道括約筋が緩みやすくなります。

食道アカラシア

食道アカラシアとは、原因不明の下部食道括約筋の機能障害のことです。正常に下部食道括約筋が機能しないために、食べ物を飲み込んでも食道に詰まることで嘔吐したり、就寝中に胃液が逆流したりする症状が見られます。

胃酸の分泌量の増加(胃酸過多)

胃酸の分泌量の増加、いわゆる胃酸過多の状態も逆流性食道炎の原因になります。胃酸の分泌量が増える要因も複数あり、具体的には次のようなことが挙げられます。

アルコール・コーヒーの飲みすぎ

アルコールは、胃酸の分泌量を高めます。また、カフェインを含むコーヒーや緑茶の飲みすぎも、胃酸の分泌量を高めます。

間食が多い・暴飲暴食

胃酸は食事の後に大量に分泌されますので、間食が多かったり、暴飲暴食などは胃酸の分泌量も増えます。

自律神経の乱れ

胃酸の分泌は自律神経によってコントロールされるため、自律神経が乱れると胃酸の分泌が増える可能性があります。ストレスや不規則な生活習慣などによって、自律神経が乱れることがあります。

慢性胃炎の治療

胃の中にピロリ菌が存在することで、慢性胃炎に苦しむ方がいらっしゃいます。ピロリ菌は、胃や十二指腸の粘膜を傷付けるため、そこに胃酸が入ると炎症が生じて胃潰瘍・胃炎・十二指腸潰瘍などが生じます。

そのためピロリ菌を除菌すると、胃酸が一時的に多くなり、逆流性食道炎につながることが確認されています。この場合は、逆流性食道炎が一時的症状と考え、ピロリ菌の除菌を優先すべきと考えられています。

腹圧の上昇(胃内圧の上昇)

お腹に圧力がかかることで、腹圧(胃内圧)が上昇すると、胃の内容物が圧力に押されて逆流しやすくなります。腹圧の上昇が生じる要因は様々で、具体的には次のようなことが挙げられます。

姿勢の悪さ

猫背、デスクワークの際の姿勢、うつ伏せ寝などの前かがみになる姿勢は、腹圧を高くする要因になります。

ベルト・下着などによる腹部の締め付け

ベルト、下着、衣服などによって、腹部を締め付けることも、腹圧を高くする要因になります。

肥満・腹筋

重い物を持ち上げるなど腹筋に力が入る場面では、腹筋によって腹圧が上昇することがあります。また、肥満の場合は、腹部の脂肪によって腹圧を高くする可能性があります。

食道知覚過敏

ストレスや一時的な胃酸逆流による炎症が原因で、食道の感覚が過敏になることがあります。近年の研究では、この食道知覚過敏が逆流性食道炎の発症に大きく関与しているとの報告があります。

逆流性食道炎の治療方法

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吞酸の主な原因となる逆流性食道炎は、様々な原因によって、食道まで胃酸が逆流することで、食道の粘膜に炎症を生じる疾患です。

とすると、逆流性食道炎の治療法は、吞酸の解消法でもあると言うことができます。それでは、逆流性食道炎治療の方法をご紹介したいと思います。

応急処置

すぐに病院に行けない場合の応急的な対処法として、食後で胃に物が入っている場合は、唾液を何度も意識して飲み込むのがポイントです。何度も飲み込むことで、食道の蠕動運動と唾液で食道に逆流した胃酸を押し返すことができます。

食間・空腹時の場合は、ミネラルウォーターを少量ずつ何度も飲み込み、逆流した胃酸を流し去るのとともに、胃酸の強酸性を薄めるのです。

内科・胃腸科・消化器科のある病院へ

吞酸や胸やけなど逆流性食道炎の症状が現れた場合は、内科・胃腸科・消化器科のある病院を受診しましょう。

病院では、問診による症状チェック、内視鏡検査(胃カメラ)、食道がんなどとの区別のための細胞診(組織を採取して顕微鏡で調べる)などの検査・診察を行い、逆流性食道炎の診断がなされるのが通常とされています。

内視鏡検査や細胞診などの検査をしてから診断する場合が多いのですが、問診や現れている症状から逆流性食道炎の可能性が高いと診断して、薬物療法で治療効果を見るという診断的治療がなされる場合もあります。

薬物療法

逆流性食道炎の胃酸逆流治療は、薬剤の投与・服用によって行うのが主流となっています。逆流性食道炎の治療で用いられる薬剤は、その治療の目的別に分類することができます。

  • 胃酸分泌を抑制する薬剤
  • 胃酸を中和する薬剤
  • 食道粘膜を保護する薬剤

胃酸分泌を抑制する薬剤

逆流性食道炎の治療で最も良く用いられるのが、胃酸分泌を抑制する薬剤です。そして、胃酸分泌を抑制する薬剤は、プロトンポンプ阻害薬とヒスタミンH2受容体拮抗薬があります。

プロトンポンプ阻害薬(PPI)

プロトンポンプ阻害薬は、胃酸の分泌腺に存在して胃酸を生み出すプロトンポンプという部分の働きを抑制させる薬剤です。

プロトンポンプ阻害薬は、ヒスタミンH2受容体拮抗薬に比べ効き目が強く、保険適用される8週間分の服用で約90%程度が治癒に至るとされています。そして、効果も長続きし、副作用が少ないとされています。ただし、まれに発疹や肝障害などの副作用が起こる可能性があります。

一方で、8週間の服用でも症状が改善されない場合、または何度も再発を繰り返す場合は難治性逆流性食道炎と判断されます。難治性逆流性食道炎と診断されると、PPIの長期服用が保険上も認められます。

ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)

胃酸は、胃酸の分泌腺に存在するH2受容体にヒスタミンが結合することをきっかけに作り出されます。ヒスタミンH2受容体拮抗薬は、ヒスタミンとH2受容体が結合することを防ぐ薬剤です。

ヒスタミンH2受容体拮抗薬には、発疹・便秘・下痢・口の渇きなどの副作用が起こる可能性があります。

ちなみに、ヒスタミンH2受容体拮抗薬は医師の処方する薬剤と市販薬がありますが、有効成分の含有量が異なるため、完全に同じ効果を得られるわけではありませんので注意が必要です。

胃酸を中和する薬剤

胃酸を中和する薬剤は、制酸剤とも呼ばれ、吞酸や胸やけの症状に即効性があります。胃酸を中和する薬剤は、効果の持続時間が比較的短いため、胃酸分泌を抑制する薬剤と併用されることがほとんどです。

食道粘膜を保護する薬剤

食道粘膜を保護する薬剤は、食道粘膜の損傷部分・炎症部分を覆うことで、逆流してきた胃酸から食道粘膜を保護し、炎症の改善を補助する薬剤です。

食事や生活習慣の改善指導

逆流性食道炎の対策方法として重要なのは、食事や生活習慣の見直しをすることで、原因となるものを取り除いていくことです。つまり、胃酸過多につながる要因や腹圧を上昇させる要因を取り除いていくことが、結果として逆流性食道炎の根本的な解決法・改善方法なのです。

病院によっては、食事の改善とともに、漢方によって体質の改善を促す治療を行う場合もあるようです。

手術療法

逆流性食道炎が慢性化すると、前述のようにバレット食道・食道がんの危険性が増加します。そこで、薬物療法や生活習慣の改善でも効果が見られない場合は、手術による治療を検討しなければなりません。

近年は、医療技術の進歩によって、身体に負担の少ない腹腔鏡手術が選択されることが多くなっています。

まとめ

いかがでしたか?吞酸の症状や逆流性食道炎について、ご理解いただけたでしょうか?

吞酸は、主に逆流性食道炎の症状の一つで、胸やけとともに不快な感覚にさせられます。一過性のものだろうと安易に考えて放置していると、食道に炎症が生じて、最悪の場合には食道がんに至る可能性すらあるのです。

ですから、吞酸や胸やけなどの逆流性食道炎の特徴的な症状が現れた場合は、すみやかに病院を受診して治療を受けましょう。本記事が、あなたの参考になれば幸いです。

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