気圧で頭痛が起きる?天気と気圧の関係を知ろう!対処方法も紹介!

「雨の前には古傷が疼く」という表現を聞いたことがあると思います。古傷とは違いますが、頭痛の起こる人も多いでしょう。筆者も、雨の降る前には、けっこうな確率で肩こりと頭痛と関節痛が起こります。でも、いつもではないので、気のせいなのか、お天気が関係するのか判断がつきかねていました。

一方、言葉としての、「天気痛 」「気象病」などは、最近になって、一般的にも広く認識されはじめています。しかし、医師の認識や標準的医学の範疇では、気象病や天気痛は「ある」ことになっているのでしょうか? 医学的に「ある」とすれば、どういうメカニズムで起こるとされているのでしょうか? 予防法や対処法はあるのでしょうか?

今回は、頭痛、肩こり、ついでに自己免疫疾患による関節痛の「天気で悪くなる3点セット」を持っている筆者が、必要に迫られて、雨の前の頭痛やその対処法などについて調べました。お付き合いいただければ幸いです。

気圧って体調不良を起こすの?天気痛・気象病って何?

青空

「天気痛」「気象病」、最近になって何気なく使うようになってきた言葉ですが、4〜5年前までは、「そんな言葉、あったっけ?」くらいの認識だったように思います。

ここでは、その定義を見直し、医学的にはどういう扱いになっているのかみていきます。

気象病とは

特定の気象に体が適応できなくなり、発症したり悪化したりする病気のことです。例えば、寒冷前線通過時に発作が多くなる気管支喘息や、気圧が低くなると痛みが増悪する関節リウマチなどは、気象病です。

気象病には、気管支喘息や関節リウマチの他に、めまいやメニエル病、副鼻腔炎、中耳炎、狭心症、低血圧、うつ病などがあります。

天気痛とは

日本においては、「気象病」は以前から使われていました。しかし、「天気痛」いう言葉が広く認識されるようになったのは、2015年に「天気痛を治せば、頭痛、めまい、ストレスがなくなる!」の著者が、NHKのテレビ番組「ためしてガッテン」に出演なさって以降のことです。

この著作の中で、「天気痛」は以下のように説明されています。

「昔から、気象の変化によって持病が悪化することを、医療現場では「気象病」と呼んでいました。その中でも、特に痛みや、うつや不安といった心の病にまつわる病気を「天気痛」と私が名付けたのが、今から5年ほど前のことです。

「天気痛を治せば、頭痛、めまい、ストレスがなくなる!」佐藤 純著 扶桑社 より引用

佐藤純先生の定義なさっている天気痛には、気管支喘息、関節リウマチ、めまい・メニエル病、副鼻腔炎、中耳炎、狭心症、低血圧、うつ病など、気象病とされているものが全て含まれています。本来、気象病と天気痛は、少し意味合いの違う言葉だったと思われますが、今後は、ほぼ同義語として使われていくでしょう。

これから先、どちらの言葉が定着していくかはわかりませんが、この記事では、昔からある「気象病」という表現で統一します。

なお、英語の直訳だと、

  • 気象病 → meteoropathy
  • 天気痛 → Weather pains またはWeather-related pain

です。しかし、Weather pains(天気痛) は、古代ギリシャ、古代ローマ時代から存在する概念で、本当の意味は天気痛より気象病に近く、古代ギリシャの医学者ヒポクラテスも、ヒポクラテス全集に Weather pains (古代ギリシャ語なので、単語は違う)について書いてたりします。ちょっと面白いですね。

テルモによる「健康と気候に関するアンケート」調査結果

テルモ株式会社では2004年に立正大学、国土環境株式会社と共同で、全国40代~60代の一般生活者および慢性疾患患者を対象に「健康と気候に関するアンケート」調査を行っています(このアンケートでは、気象病という言葉も天気痛という言葉も使っていません)。

その結果、一般生活者の60%、慢性疾患患者では90%が「天気の変化が体調へ影響することを体験している」ことがわかりました。特に低圧症とアレルギー系の病気の人(喘息と皮膚アレルギー)では約94%の人が、慢性的頭痛・片頭痛やリウマチ、関節炎・神経痛・腰痛など慢性疼痛のある病気の人では約90%が天気の変化と体調の変化にに気づいています。

テルモアンケート

出典:TERUMO「健康と気候に関するアンケート」調査結果

テルモのこの調査では、どのように一般生活者を選んだのか、どのように慢性疾患患者を選んだのか書いてありませんし、痛みを感じる人の方が、このようなアンケートには回答しやすい(痛みのない人や興味のない人は、アンケートに参加しない傾向がある)ため、結果をそのまま鵜呑みにはできません。

しかし、アレルギー系の病気や疼痛のある慢性疾患で、体調変化が起こりやすいのは確かで、しかも、相当に多いという情報を読み取ることはできます。

結局、「気象病」って医学的にはアリなのナシなの?

筆者は北米に住んでいるのですが、今の所、北米の医師の間では、「気象病はあるけど、天気は変えられないんだから、ナシってことにしよう」という、前向きなのか後ろ向きなのかよくわからない意見が主流です。

1929年にEdwin B. Rentschlerという神経内科医の先生が、「天候変化による関節痛:Arthritic Pain in Relation to Changes in Weather」という論文を、世界に先駆けて発表してからしばらくは、割と研究されていた時期もあるんですけどね。最近は、気象学者であるDennis Driscoll先生が、「人々は、嵐に関係する気圧の変化は、取るに足りないくらい小さなものだと気づくべきです。

嵐の前の気圧変化なんて、最近の高層ビルのエレベータでの気圧変化と大して変わらないのに、エレベータで関節痛がひどくなる人はあまりいないでしょう?」と啓発活動していて、気象学者の先生が仰るのなら、そうなのかなと思い始めていたところです。

日本でも、以前は、「天気を変える方法はないし、気象条件って人工的には作れないから、研究できないし、研究しても仕方ないよねぇ・・・」という意見が大多数だったように思います。しかし、前述の佐藤純先生や、医師で天気予報士の福永篤志先生が、気象病についてのまとまった著書を出版なさったことで、違う認識を持つ人が増えてきました。

佐藤先生のように色々な気圧や温度条件下で動物実験を行ったり、福永先生のように気象について熟知した医師が記載疫学的なアプローチで研究を行ったりすることで、「天気は変えられないけれど、天気予報を利用して症状を予防・緩和することはできそうだ」という方向にシフトし、「気象病」は積極的は解消法を採用できる病気の1つになってきたようです。

つまり、日本では気象病は医学的に「アリ」の方向に動きそうです。少なくとも、この記事では「アリ」として書いていきます。

気圧と天気の関係

雨雲

今回、雨の前の頭痛などについて調べていて、最初に気づいたのが「低気圧=気圧が低い ではない!」「雨天=低気圧 ではない!」という事実でした。知らなかった・・・。

そういうわけで、ここでは、天気と気圧の関係についてご紹介します。

低気圧=気圧が低い とは限らない

水の中に水圧があるように、空気中にも気圧があります。大気が重力によって地球に引きつけられる圧力(重さにより地表面にかかる圧力)を大気圧または単に気圧と呼びます。

気圧の単位はhPa(ヘクトパスカル)で、同じ気圧地点を線で繋いだものが等圧線。そして、周りよりも気圧が低い地点を等圧線で囲んだものが低気圧、周りより気圧の高い地点を等圧線で囲んだものが高気圧です。ちょうど、周りよりも標高が低い地点を等高線で囲んだものが窪地で、周りよりも標高が低い地点を等高線で囲んだものが山なのと似ていますね。

標高がどんなに高くても、周りより高度が低ければ窪地であるように、実際には気圧が高くても、周りより相対的に気圧が低ければ、それは低気圧です。つまり「◯◯hPa以上が高気圧、〇〇hPa以下が低気圧」というわけではありません。台風であっても、期間中の最低中心気圧ですら1000hPa程度のものもありますし、冬のシベリア高気圧圏内の低気圧には、中心気圧が1030hPa以上あるものも珍しくありません。

参考までに、2016年の台風一覧(気象庁による)は以下のとおりで、期間中の最低気圧が1000hPa程度のものもあります。この年、日本に上陸した台風は、7号、9号、10号、11号、12号、16号の6つです。

2016年台風一覧

出典:気象庁 報道発表資料

雨と低気圧の関係

雨乞いの時は大きな焚火をします。これ、おまじないじゃなくて、ちゃんと理由があるのです(どの程度効果があるかはわかりませんが)。

火を焚くと、温度による対流で「上昇気流」が発生します。上昇気流が発生すると、そこを中心に気圧が下がります。この上昇気流の中心が「低気圧」です。もちろん、焚火以外にも、空気が日光で温められたり、山の斜面を登っていったりすれば、上昇気流は発生します。

上昇気流はどんどん上に登っていきますが、高度が高くなればなるほど、気圧が低くなるため、上昇した空気は上に行けば行くほど膨張します。膨張すると空気の温度は下がります。

空気の温度が下がると、その空気が抱えることのできる水蒸気量(飽和水蒸気量)が減ります。飽和水蒸気量を超えてしまった分の水蒸気は、空気が清浄な場合、雲にならずに過飽和の状態になりますが、海水のしぶきや雨乞いの焚火からの煙などがあれば、それを核にして、水滴を作り雲になります。

こうして成長した雲(水滴)が、重力で落ちてきたものが雨です。核がなければ水滴が発生しないので、空気が清浄な場所では上昇気流が発生しても雨雲ができにくいことがあります。

なお、上空に行けば行くほど、気圧は低くなりますが、目安として、海抜0mの標準気圧が1013hPa、富士山頂上(3776m)での気圧は630hPaくらい、エベレスト頂上(8850m)で300hPaくらい、飛行機機内では標高2000mくらいの気圧(800hPaくらい)になるよう保たれています。だいたい100m標高が高くなると、10hPaくらい気圧が低くなる計算ですね。

低気圧でなくても雨は降る

気圧が低くなくても、中心部の気圧が相対的に低ければ(低気圧)、上昇気流が生じ雨が降りやすいのは上述した通りです。

ですが、暖かい空気と冷たい空気が接触すれば、前線で上昇気流を生じ、中心部の気圧にあまり関係なく雨は降ります。上昇気流発生する前線部分では、気圧は帯状に下がりますが、これは低気圧とは呼びません。天気予報などでは、この帯状の気圧の低下を「気圧の谷」と呼んでいますね。

そういうわけで、低気圧が天気図上に全くなくても「冷たい高気圧+暖かい高気圧→上昇気流(気圧は下がるけど低気圧ではない)→雨が降りやすい」と、なります。梅雨はその典型例で、寒冷な高気圧と温暖な高気圧がぶつかって前線が発生し、雨が降ります。

気圧が引き起こす頭痛

頭痛が治らない

頭痛には色々な種類があり、頭痛によっては命にかかわることもあります。気象病としての頭痛なのか、それ以外の頭痛なのか、見分けるのはとても重要なこと。

ここでは気圧などの気象条件で起こると考えられる頭痛を挙げます。

頭痛の種類

日本神経学会と日本頭痛学会が共同で監修している「慢性頭痛の診療ガイドライン 2013」によると、頭痛は以下の3分類に大きく分けられます。

  • 一次性頭痛:4分類(45サブタイプ)
    • 片頭痛(偏頭痛)
    • 緊張型頭痛(緊張性頭痛)
    • 群発頭痛
    • その他の一次性頭痛
  • 二次性頭痛:8分類(120サブタイプ)
  • 頭部神経痛、顔面痛及びその他の頭痛:2分類(29サブタイプ)

一次性頭痛は「他に病気がない頭痛」のことで、頭痛の9割はこれです。具体的には、片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛がこのグループの頭痛で、通常、気圧や気象条件によって引き起こされる頭痛は、このグループのものだとされています。

二次性頭痛は、脳や身体の病気が原因で起きる頭痛のこと。くも膜下出血、脳腫瘍、髄膜炎などで起こる頭痛で、すぐに病院へ直行しなくてはなりません。頭部神経痛、顔面痛は頭痛というより神経痛ですね。

二次性頭痛が気象によって引き起こされる可能性はゼロではありませんが、これに該当する場合、この記事を読んでいる場合ではないので、ここでは割愛します。頭部神経痛や顔面痛も、気象が誘因の1つになりそうですが、まずは、原因精査をしていただきたいので、やはりここでは割愛します。

気象病頭痛になりうる一次性頭痛

注意! 今までに感じたことがないほどの強烈な頭痛があったり、熱がある・首が硬直した感じがする・手が動かない・言葉が出ないなど、頭痛以外の症状がある場合には、この記事を読んでいる場合ではありません。すぐに病院に行ってください。また、いつもの片頭痛に近い症状でもどんどん増悪するような場合には、すぐに神経内科や脳神経外科などの医師に相談してください。

前述したように、気象病として、症状の原因の一つに気圧や気温が関係していると考えられている頭痛は殆ど全て一次性頭痛です。特に、その中でも、片頭痛、緊張型頭痛は気象病と考えてよいでしょう。

以下、一次性頭痛の特徴を挙げていきます。

片頭痛(偏頭痛)

症状は、こめかみのあたりを中心としたズキンズキンと拍動するような痛み。重症になると、こめかみ以外の部分にも痛みが広がり、吐き気や嘔吐を引き起こします。

日本の有病率は8.4%(前兆があるもの2.6%、前兆がないもの5.8%)で女性に多く、病態メカニズムは、まだはっきりしていませんが、今の所、頭蓋内の血管が拡張して、周囲の神経(主に三叉神経)を圧迫するためと考えられています。セロトニンやカルシトニン遺伝子関連ペプチドなどの神経伝達物質が、血管拡張と関係しているようです。

片頭痛の誘発・増悪因子としては、以下のものが考えられています。

  • 精神的因子:ストレス、精神的緊張、疲れ、睡眠(過不足)
  • 内因的因子:月経周期
  • 環境因子:天候の変化温度差、頻回の旅行、臭い
  • 食事性因子:空腹、アルコール(他の食品群は個人によって反応が異なる)

出典:慢性頭痛の診療ガイドライン 2013

緊張型頭痛(緊張性頭痛)

症状は頭を孫悟空の輪っかでギューっと締め付けられたような痛みです。緊張型頭痛には、片頭痛とのミックス型もあり、この場合は、こめかみの辺りから痛みが始まることもあります。

緊張型頭痛は一次頭痛の中で最も多い頭痛で、女性に多いことだけは確かですが、最もわけがわからない頭痛でもあります。有病率すら良くわかりません。一応、有病率は40%くらいと予想されていますが、15%くらいという調査もあれば、85%くらいという調査もあります。

病態メカニズムも、片頭痛以上にわからないことだらけです。頭蓋周囲筋に圧痛を持つ人が多かったり、筋電図で筋緊張があることが確認されたり、僧帽筋の運動による血流増加が乏したり、筋肉の過緊張による血流障害と頭痛が関係していることなどが見つかったりはしているので、筋肉の緊張が関わっていることだけは確かなようですが、緊張型頭痛のタイプによっては三叉神経も関係しているかもしれないとも言われています。

緊張型頭痛の誘因・増悪因子もあまりよくわかっておらず、以前は心因性だと考えられていました。現在は、運動の過不足、睡眠の過不足、季節・気候の変動、ストレスなどが誘因や増悪因子になるとされていますが、確立したものはありません。

群発頭痛

一次性頭痛に分類されますが、最も痛い頭痛です。片方の目の奥をドリルえぐられるような猛烈な痛みで、1日に1〜数回の30分〜数時間続く頭痛発作が、1ヶ月から数ヶ月続きます。猛烈に痛いだけでなく、発作群発の期間が長く、自殺者もいたことから、Suicide Headaches(自殺頭痛)の別名を持ちます。

有病率は10万人あたり56〜401人で、病態メカニズムははっきりしていませんが、サーカディアンリズム(生物に備わる約24時間周期のリズム)に関係したメラトニン分泌量の変化が見られることから、視床下部のあたりに原因がありそうだと言われています。また、片頭痛と同様、三叉神経血管系の活性化もみられます。さらに三叉神経の過剰興奮が副交感神経の活性化を起こすことなども原因の1つとして考えられています。

誘因・増悪因子には、アルコール、ニトログリセリン、喫煙、ヒスタミン、季節・気候の変動などが挙げらており、群発頭痛も気象病の1つと考えておかしくありません。しかし、片頭痛や緊張型頭痛と違い、痛みが半端ではないので、他の対策法をいろいろ試すより、病院に行くことをお勧めします。

その他の一次性頭痛

典型的な片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛に当てはまらない一次性頭痛の全てがこちらに分類されます。

気圧の変動は、なぜ頭痛の原因になるの?

頭痛

気象病としての頭痛は、主に片頭痛と緊張性頭痛ですが、片頭痛も緊張性頭痛もその病態メカニズムがはっきりわかっていないこと、誘因も増悪因子も複雑に絡み合っていることがお分かりいただけたと思います。

気圧の変動を含む気象の変動が、誘発や増悪因子の1つであることは間違いなさそうですが、沢山ある要因の1つにすぎないこともまた事実。

ここではどういうメカニズムで、気象や気圧の変動が、頭痛の原因になりうるのか、いろいろな説を集めてみました。

気象病は、気のせいが半分という説

「気象病」は、気のせい・心の持ちようが半分という説です。

つまり、

”気圧が変化すると、微細な体調変化が起こる(頭痛など)→何度か繰り返される→どんよりした空をみると、体調変化が起こることを予想する→体調変化を予想することで気分が滅入る→気分が滅入るとそれだけで体調が悪くなる→気圧による体調変化+気分が滅入ことによる体調変化→悪循環”

です。

「病は気から」のマイルドバージョンとも言えますね。アンケートをとったわけではないので、根拠はありませんが、北米や日本の医師の半分くらいは、この説をとっているように思います。

内耳センサー説

気象病や天気痛について、きちんと研究している方はとても少ない上、そのほとんどが疫学研究なのですが、名古屋大学環境医学研究所の神経系分野IIのグループ(先出の佐藤純先生のグループ)では、いくつもの動物実験を行っており、これらの結果から内耳センサー説をとっています。

これの説を、誤解を恐れずに単純化すると以下のようなります。

”内耳にある気圧センサーが気圧が下がったことを感知→自律神経が交感神経優位に興奮する→痛覚系が興奮する→痛い!”

佐藤先生の10本以上ある論文の内容を要約すると以下のようになります。

関節炎モデルラット(関節リウマチを人工的に起こしたラット)と、普通のラットの両方に気圧変化を与えて、痛がるかどうか検査すると、関節炎モデルラットでは、気圧を下げると痛がるような行動をとったり、自律神経の交感神経が刺激されたような症状(心拍数が増えるなど)が見られるのですが、普通のラットでは痛がらないし、交感神経興奮の症状も見られません。ただし、関節炎モデルラットが痛がるのは気圧が変化してから30分以内の間だけで、気圧が低いままでも30分経つと痛がらなくなります。

別の実験で、内耳を薬物で破壊した坐骨神経損傷ラットと、内耳は正常の坐骨神経損傷ラットを用いて、気圧の変化による痛がり行動を観察すると、同じ坐骨神経損傷ラットでも、内耳が破壊されているラットでは気圧が下がっても痛がり行動を起こさず、内耳が正常のラットでは痛がり行動を起こしました。

さらに、他の実験で、前庭神経(内耳の情報を脳に送る神経)の活動性を観察しながら気圧を下げると、神経の活動が活発になり興奮性が高まることがわかっています。

これらの一連のことから、気圧の低下による疼痛の発症には、内耳にある気圧センサーのようなものが関与していると考えられます。

血管拡張・組織膨張説

気圧の低い場所では、風船が膨らんだり、飛行機上でポテトチップスの袋がパンパンになるように、気圧が低い場所では、脳血管が拡張したり、慢性炎症のある場所が膨張(腫れたり浮腫んだり)てしまい、これが神経を圧迫して頭痛や関節痛などの気象病を引き起こすという説です。

この説は、ネット上では一番よく見かける説で、説得力もあるのですが、脳血管の拡張については、誰が言い始めたのか、出典ははっきりしませんでした。気圧が下がると関節が炎症を起こす(炎症細胞が関節に集まってくる)ことは確認されています。

気圧による頭痛の対処法は?

リラックス

疼痛は、たくさんの要因が合わさって発生する以上、「これだけが原因」と言い切ることはできません。気象病としての頭痛もまた然りです。

考えてみれば、天気の変化は自分ではどうしようもありません。気圧も人の力では変えられませんよね。でも、たくさんの要因が合わさっているということは、他の要因には対策があるってことです。

気象病頭痛か、 まずは確認

気象病としての頭痛(多くは一次性頭痛)なのかどうか、確認だけはしておきましょう。生まれて初めて遭遇するようなひどい頭痛なら、迷わず医療機関を受診してください。

また、いつもの頭痛であってもどんどん悪くようなら、医療機関の受診をお勧めします。

天気予報を見てみる

頭痛が起きたら、天気予報で、最高気温、最低気温、気圧などをチェックしてみてください。私は、頭痛と、肩こりと、関節痛の3点セットを持っているのですが、天気予報を見て、気圧が低いようだと、「当たった!」と嬉しくなり、痛みは治らないけど、気分はよくなります。

片頭痛や関節痛を一緒にしてくれる天気予報サイトもありますのでご紹介します。日本語表示も選べるのですが、日本語表示だと、気象病予報はしてくれないので、Language は、Englishを選んでください。以下は東京都の例です。

天気予報

出典:AccuWeather

頭痛〜るを使ってみる

先出の佐藤純先生が開発した頭痛日記と天気予報が一体化した、スマートフォン用のダウンロード無料使用料無料のアプリケーションソフトです。「頭痛〜る」で検索すれば、すぐにインストールできるウエブサイトに行けますよ。インストールの方法もわかりやすく書いてあります。

頭痛〜るが使えなくても、頭痛と天気(気圧など)の関係を記録するだけでも、自分だけの傾向を把握するのに大いに役立ちます。

ちゃんと寝る、食事を抜かない、ほどほどに運動する

半分は気分の問題説であれ、内耳センサー説であれ、気象病の発生に自律神経の関与があることは、間違いないようです。つまり、自律神経がきちんと機能するように、普通のことをきちんとやりましょうってことです。

これらのことは、気象病だけではなく、便秘や不眠など他の体調不良の予防策にもなるのでおトクです。

腹式呼吸をしてみる

腹式呼吸は副交感神経の活動レベルを維持されるための対策方法として簡単で害がなく有効なものです。

息を吐く時には副交感神経が、吸うときには交感神経が優位になります。多くの人は30歳を超えると、副交感神経の活動性が低下するのですが、交感神経はそのままなので、副交感神経の働きを高めたいのです。つまり、吐く時を意識した呼吸法にしたいのですが、これが腹式呼吸だと上手くいきます。

睡眠時には多くの人が意識しなくても腹式呼吸になっていますが、目が覚めている時に、腹式呼吸を取り入れてみてください。

上手に腹式呼吸ができない場合には、まずはゆっくり吐くことから。お腹を意識して、ゆっくり吐くという呼吸法を取れば、あまり意識しなくても自然に腹式呼吸になります。

 のんびりお風呂に入る

ぬるめのお風呂にのんびり入るのも副交感神経の活動を高め、交感神経を抑制するのに役立ちます。温度は夏なら38℃くらい、冬は41℃くらいがオススメですが、気持ちいいのが一番です。

ただし、熱いお湯での烏の行水や、ぬるめであっても長時間の入浴(特に冬場)は、交感神経を刺激してしまうので、気象痛頭痛の対策としてはお勧めではありません。

でも、朝、仕事前などは、ほどほどに交感神経を刺激するのは、悪くないんですよ。

頭痛体操を毎日する

日本頭痛学会から、1日2分の頭痛体操という小冊子がオンライン上で無料配布されていますので、一部ご紹介します。頭痛体操は片頭痛と緊張型頭痛の両方の予防と、緊張型頭痛の緩和に効果があります。気象病頭痛は、片頭痛と緊張型頭痛がほとんどと思われますので、気象病頭痛にももちろん予防効果があります。

ただし、片頭痛の発作中、激しい頭痛がある時、発熱を伴う頭痛がある時は体操禁止です。

腕を振る体操(2分間行う)

正面を向き、頭は動かさず、両肩を大きくまわします。 頸椎(けいつい)を軸として肩を回転させ、頭と首を支えている筋肉 (インナーマッスル ) をリ ズミカルにストレッチします。

腕を振る体操

肩を回す運動(6回繰り返す)

肩を回す体操

出典:日本頭痛学会「1日2分の頭痛体操」

頭痛緩和や酔い止めのツボを押す

できれば頭痛が発生する前、遅くても頭痛のできるだけ初期に頭痛緩和や酔い止めのツボを押してみましょう。優しくツボマッサージしたり、ボールペンのキャップなどで強く押したり、色々な方法を試してください。

頭痛に効くツボ

天柱(てんちゅう):首の後ろ、盆のくぼ(真ん中のくぼみ)の両脇にある太い筋肉の上端にある外側のくぼみ(左右両方にあります)

風池(ふうち):首の後ろ、髪の生え際で、天柱より少し外側にあるくぼみ(左右両方にあります)

合谷(ごうこく):手の甲側、人差し指と親指の骨が合流する所からやや人差し指よりにあるくぼみ。親指で押したときジーンとくる箇所があったらそこが合谷(左右両方にあります)

酔い止めのツボ

内関(ないかん):手のひらを上にして、手と手首の境目のしわの中央から、指3本分。酔い止めだけでなく、つわりや吐き気にも効きます(左右両方にあります)

頭竅陰(あたまきょういん):耳の後ろにある骨の膨らみ(乳様突起)の上にあるくぼみ(左右両方にあります)

翳風(えいふう):耳たぶの後ろ、少し強く押すと、耳の奥の方にずーんとした鈍痛があるので、見つけやすいです(左右両方にあります)

完骨(かんこつ):耳の後ろ、出っ張った骨(乳様突起)の下端にあるくぼみ(左右両方にあります)

天柱(てんちゅう):首の後ろ、中央のくぼみ(盆のくぼ)の両脇にある太い筋肉の上端外側のくぼみ(左右両方にあります)

あまり正確ではありませんが、参考になるように図を示します。

ツボ

濃い緑茶やコーヒーを飲んでみる

カフェインは摂りすぎると、気象病や頭痛の原因になりますが、程よい摂取だと頭痛の緩和作用があります(個人差や体質差があります)。

頭痛薬・鎮痛薬を飲んでみる

気象病であっても、片頭痛や緊張型頭痛なら普通に頭痛薬・鎮痛薬が効くことが多いです。市販のもので効果があればそれで構わないし、医師から処方してもらえるのなら、そちらの方がよいでしょう。

特に片頭痛は、トリプタン(市販されていません)が著効するタイプのものもあるので、医師に相談するのは良い考えです。

めまいや乗り物酔いの薬を飲んでみる

内耳センサー説が正しければ、メニエール病などで用いる回転性めまい用の薬(ベタヒスチンメシル酸塩など)や、内耳の内リンパ水腫に効くタイプの乗り物酔いの薬(ジプロフィリンなど)は効果があるはずです。

ただ、天候によって頭痛が起こることは、一般に認知され、医師も「頭痛と気圧の変化は関係ある」と認識していも、内耳センサー説が正しいかどうかは、まだ確定したわけではありません。

ですから、片頭痛に対してトリプタンを、めまいに対してメリスロン(ベタヒスチンメシル酢酸)を処方する医師はいても、頭痛に対してメリスロンを処方する医師は、恐らくいません。また、現段階では、気象病にメリスロンが効く根拠は不明瞭なので、安易にメリスロンを処方しない医師の方が、信頼できます。

したがって、乗り物酔いの薬を飲んでみるのなら、自己責任で市販薬を購入することになるかと思います。

市販されているもののなかで、これらが含まれているのは、筆者が調べた限りではエーザイ製薬の「トラベルミン」だけでした(もしかしたら、他の会社からも出ているかもしれませんが、調べた範囲では見つけられませんでした)。

エーザイ製薬からはいろいろなトラベルミンが出ていますが、「トラベルミン1(大人用)」や「トラベルミンR(大人用)」ではなく「トラベルミン(大人用)」が、ジプロフィリンを含みます。ただ、「トラベルミン(大人用」にはジプロフィリンだけではなく、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩(第一世代抗ヒスタミン剤)も含むため、猛烈に眠くなります。車の運転をしたり、工場などで勤務するような場合は、飲んではいけない薬です。

まとめ

このような冗長な文章を最後までお読みくださり、ありがとうございます。

「雨の前の頭痛を解消したい!」と、必要に迫られて調べているうちに、あれもこれも盛り込みたくなり、こんなことになってしまいました。これでも半分に削ったのです。

この記事を読んでくださった方が、「気圧が下がれば頭痛の起こる人がいるのは、確固たる事実」「解消法は沢山あるから、気に入ったものを1つ試してみよう」と、思ってくだされば、このような長文を書いた甲斐があったというものです。

気象も気圧も、自分の力ではどうしようもありませんが、頭痛を使って天気予報ができるのなら、便利といえば便利。ちゃっかり頭痛を利用しつつ、早めに頭痛対策して、快適に過ごしたいですね。

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