空気嚥下症の治療方法とは?症状や原因を知って対策しよう!

「空気嚥下症(くうきえんげしょう)」は、別名「呑気症(どんきしょう)」とも呼ばれます。空気を飲み込む癖により発症するため、このように言われていわれています。

過度にゲップが出たり(口から体内のガスが出る事)、腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん/お腹の中が大きくふくらむ感覚)や胸焼けが生じている場合は空気嚥下症が疑われるかもしれません。では、空気嚥下症とはどういった原因で起きるのか、症状などを踏まえて詳しく述べていきます。

空気嚥下症の原因

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空気嚥下症は、その名の通り「空気」の飲み込みすぎが原因で起きます。見られる症状は同じですが、原因は様々です。原因が異なれば対処法も異なってきます。

では、原因やそのタイプなどについて説明していきます。

発症率

日本人では、8人に1人の割合で空気嚥下症を発症します。特に女性に多く発症します。

タイプ別 空気嚥下症(心因性)

一般的に空気嚥下症のほとんどは心因性に当てはまります。原因は、精神的ストレスを感じやすい人、神経症等の精神的な症状を抱えやすい人、鬱(うつ)傾向の人、ヒステリックな人、胃神経症など身体に精神的ストレスが現れやすい人に多く見られます。

特に、ストレスを抱えている人は食道の上部に多く存在するTRPV1と呼ばれる異物に反応するセンサーが知覚過敏状態に陥ります。これにより、胸焼けが悪化することがあります。このストレス、他にも影響があり、ストレスが溜まっていることで溜息を頻繁にする人がいますが、この息を吐いた後に吸い込む空気が口腔に入り、唾液と一緒に飲み込みます。これが原因で空気嚥下症に陥るという人がいます。

タイプ別 空気嚥下症(器質性)

精神的な要因は関係しておらず、身体の機能の異常が原因で空気嚥下症を生じます。つまり、食道、胃や腸といった消化器の異常、姿勢の崩れ、歯の状態の悪さが影響しています。

それらは各専門医の医師の診断の元、判断されます。検査として、レントゲンやCT、MRI等の画像検査、胃カメラ等の内視鏡検査などが施行されます。例えば、胸やけの主な原因は、胃からの過剰な胃酸の分泌が挙げられるので、これに対しての検査が施行されます。

それぞれの検査結果で異常が見つかることなく、日常生活にも問題がなければ、特に治療の必要はなくなります。

タイプ別 空気嚥下症(習慣性)

食事の際に、食べ物と同時に空気を飲み込むことがあります。日常の話し方や歯を噛み絞める癖があるかどうかでも左右されます。早食いや遅食いに伴い空気を吸い込む量が増えることも一因となります。

喫煙時やガムを噛む、飴を舐める、無意識に口を動かしてしまう等といった際に、多量の空気を飲み込んでしまうことで、食道や胃、腸に空気が貯留して胸焼けやゲップ、腹部膨満感を生じるようになります。

アウトドアやスポーツも原因になる

プールや海などで泳ぐ際には息継ぎを何度もします。これにより、空気を大量に吸い込みすぎてしまうことや唾を多く飲み込んでしまうことが原因に挙がります。

また、マラソンをするなど過度に運動をすることで呼吸時に大量に空気を吸い込むことがあります。こういった激しいスポーツをすることが原因となることもあります。

空気嚥下症の症状

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最初にも述べたように、空気嚥下症の主症状として、胸やけ、ゲップ(口から体内のガスが排気される)、おなら(殿部から体内のガスが排気される)が挙げられます。

空気嚥下症が悪化すると更に他の症状が出現し出します。これらについて下記に説明します。

胸やけ

上腹部(胸部)が焼けるような不快感を感じ、更には嘔気などが生じると胸やけと判断されることがあります。状態としては、胃近位部の食道付近に胃酸や胆汁が作用し、それが刺激となり、これらが原因となって食道が拡張されることで胸やけが生じます。

つまり、消化器に刺激となる飲食物を摂取し続けると生じやすくなります。

ゲップ

胃や腸に空気が過剰に貯留されることで生じます。これは、日常生活の中や仕事をしている中で様々な要因で緊張をしたり、不安になることがあったりと身体的・精神的ストレスを抱え、必然的に体内に空気を多く摂りこんでしまうことがあります。

こういったストレスが慢性化すると知らず知らずに体内に取り込む空気量が増えてしまい、ゲップが出やすくなります。

おなら

異臭のしないガスが殿部から排気さるといった症状です。ちなみに、これとは異なり異臭のするガスは、消化器や腸内細菌によって胃や腸で生成されたものになります。

噛み締め呑気症候群(かみしめどんきしょうこうぐん)

空気嚥下症が悪化した際に生じます。肩こりや頭痛、顔の一部(顎や眼、奥歯)に痛みが生じます。これらは噛み締めや歯ぎしり、歯の食いしばりが原因で生じます。だいたい睡眠時に起こってしまうことが多いため、無意識化で行うことが多いです。

こうなってしまう要因は、噛み合わせの悪さや重い物を持ち上げる際に奥歯を噛み絞めることも挙げられます。また、噛み絞め呑気症候群は特に女性に多く、男性:女性では1:4の比率で見られます。

それは何故か、ホルモンバランスの崩れにより更年期の時期や妊娠中に発症しやすいためです。よって、早い人では20歳代から発症する人もいると言われています。

逆流性食道炎(ぎゃくりゅうせいしょくどうえん)

胸やけや腹部膨満感、胃の不快感などの症状を放置しておくと、症状が悪化して逆流性食道炎を発症します。これは、胃にある胃液や十二指腸液が食道へ逆流することで、食道の粘膜に悪影響を与え、びらんや炎症を引き起こすといった症状がみられます。

これらを更に放置してしまうと、食道癌や胃癌になる可能性があるため注意が必要です。胸焼けや腹部膨満感、呑酸(どんさん/口腔内や喉に胃液の酸っぱい液が逆流してくる状態)、喉の違和感、嗄声(させい/かすれ声)、喘息や咳、不眠症が続く場合には早期に対応するようにしましょう。

併発しうる神経症

空気嚥下症を発症した際に出現し易い症状になるのが神経症です。神経症には、腹鳴恐怖症、おなら恐怖症、過敏性腸症候群、自律神経失調症、慢性肩こり、慢性頭痛、嘔吐恐怖症、胃腸神経症が挙げられます。

これらの内、「とらわれ」によって生じてしまうものが、腹鳴恐怖症、自律神経失調症、慢性肩こり、慢性頭痛、胃腸神経症があります。「とらわれ」によるものは、心療内科や精神科を受診しなければならない可能性があります。

空気嚥下症の細かい要因とそれに対する対処方法

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空気嚥下症の場合は、胸やけの原因となる胃酸分泌を抑制する薬を服用しても治りません。その他、これまで述べた症状を改善させようと空気を多く飲み込む作業を多く行ってしまう人もいます。実は、これは間違った方法であり逆に空気嚥下症を悪化させることになります。

例えば、これを行うとどうなるか、食道や胃、腸が空気で膨れ上がり空気が体内に回るのと同時に胃酸は逆流します。上記でも述べたように、これを繰り返すことで特に胸焼けの症状を悪化させる悪循環を繰り返します。

空気の嚥下と不快感の負のサイクルが始まるというわけです。では、どのように対処をしていくと良いのでしょうか。

喫煙は禁止

食道や胃、腸には喫煙は害です。消化器の粘膜に悪影響を与え、血流や血行を悪くし、自己免疫能力を低下させることで様々な抵抗力を低下させます。

これにより、症状が緩和されにくくなるどころか、病状を悪化させる原因になります。自己回復能力が低下してしまうので、なるべく禁止するようにしましょう。

食事で空気を飲み込む場面

食べ物や飲料物を思い切り飲み込む時や、食べ物を十分に噛まずに飲み込む時、早食いで勢いよく早く食べ物を食べる時、遅食いでゆっくり食べ物を口へ運搬し、ゆっくり噛むことで口腔内に空気が入りやすくなる時が挙げられます。

できるだけ食事時に空気を飲み込まないようにゆっくり噛んで食べるように気を付けましょう。また、熱い飲料水を飲む際に多いですが、すするように飲むと一緒に大量の空気を飲み込みがちになるので、気をつけましょう。

飲食物に注意をする

食道や胃、腸に良くない食べ物や飲み物を食べることを避けましょう。

例えば、脂肪分を一度に多く摂取すると脳の命令により噴門(食道と胃上部入り口の境界部位)が緩くなり、胃液が食道に逆流し易くなります。これにより腹部膨満感や食道が拡張されて胸焼けが生じたり、ゲップが出やすくなります。

食道や胃、腸といった消化器に負担をかけるような味の濃い塩分の濃い物は避け、熱すぎる食べ物や冷たすぎる食べ物も刺激となるので、なるべく避けると良いでしょう。食べ物ではスナック菓子や揚げ物、脂身の多いお肉、さつまいも、ごぼうや味を濃くする香辛料、唐辛子やコショウ等、酢の物系や塩分の多い梅干し等が挙げられます。また、飲み物ではアルコールにも注意をして下さい。

アルコールを飲酒するだけで食道や胃、腸の粘膜を溶かすので、冷たい物や熱い物を摂取するよりも強い刺激を与えます。暴飲暴食は控えるようにし、食べる物にも配慮をしましょう。

サプリメントの利用

「原因」でも述べたように、空気嚥下症の発症の原因の多くが心因性に起因するものと述べています。よって、精神的ストレスをできるだけなくしてリラックスさせ、ストレスを抱える予防をするためのサプリメントを飲むこともお勧めします。

精神的ストレスや鬱に関与する成分として、メラトニンやセロトニンが多く挙げられます。これに関与するものを洗濯して飲むと良いでしょう。但し、サプリメントは食品に含まれますが、他に薬を服用している人や身体が比較的弱い人、サプリメントによって体調が変動することが不安だという人は医師に相談しましょう。

サプリメントの他に、気持ちを安らげるためのアロマオイルを使用してみるのも良いでしょう。アロマオイルも様々な種類があり、様々な成分があるので、自分に合った物を見つけて下さい。身体に異変が出た場合は医師に相談するようにしましょう。

身体はなるべく真っ直ぐな姿勢にしましょう

鼻の疾患(例えば、副鼻腔炎や蓄膿症)等の後鼻漏で鼻をすする時、鼻で呼吸ができず口呼吸になる時、前傾姿勢(猫背)の時に空気が体内に蓄積されやすい為、注意が必要です。

特に前傾姿勢の場合は、身体が前にかがんでいる状態になるため、胃や腸内の圧力が増幅し、噴門(食道と胃上部入口の境界部位)にストレス負荷がかかりやすくなり、胃液が逆流を起こし易くなります。また、十分に空気が排気されきれず体内に蓄積され易くもなります。更に、前傾姿勢は空気を飲みこみ易い姿勢であり、奥歯を噛み絞め易い状態にもなるため、空気をより飲み込みやすくしてしまいます。これによって症状が悪化する場合があります。

対処としては、できるだけ真っ直ぐとした正しい姿勢を保持するようにすると症状が軽快するかもしれません。

マススピースの利用

無意識下の中で唾液を飲み込む時や歯を噛み絞める時、歯ぎしり、食いしばりをする際にも空気を飲み込みやすくなります。睡眠時は特に無意識に歯ぎしりや噛み絞めをしてしまっていることがあります。これらを予防するためにマウスピースを利用することも一つの手になります。

歯科では保険が適応して相場5,000円で作成してもらうことができます。歯科医師に診てもらうことで自身の口に合った型のマウスピース(ナイトガードやマウスガード)を作成することが可能になります。その分、値段は高くなります。市販でも安価な物からあるので、そういった物から試してみるのも良いですが市販なので、それが自身の歯に合うかは別です。

型が合わない可能性がある他、壊れやすいというデメリットもあります。どちらを買うか悩んでいる方は、医師に相談してみても良いでしょう。

根本的に治す方法として、歯に詰め物をしたり歯を削るなど歯科で噛み合わせを調整してもらうことで対処することも可能です。

日常生活での中での自身の癖を知り、直しましょう

唾液を一緒に飲み込むことで空気が体内に入りやすくなります。ではどういった時に唾液を飲み込みやすくなるのか、既に癖になってしまって無意識に行っていることが多いです。他にも記している留意点を踏まえて、ここにまとめていきます。

副鼻腔炎や蓄膿症など、喉の方へ流れ込み易い鼻炎を保有しており、且つそれを嚊まずに飲み込んでしまう人、鼻で呼吸ができず口で呼吸をしてしまう人、猫背により腹部に圧をかけている状態で唾を飲み込んでいる人、唾を飛ばすような話し方の人、早口で話す人、歯を噛み絞める癖がある人、緊張感が強く唾液を飲み込む癖がある人、こういった人は特に唾液と一緒に空気を飲み込んでしまいがちになります。

こういった癖に着目して直すようにするだけでも症状の軽減につなげることができます。

薬物療法

薬の服用が必要と言っても、空気嚥下症は軽症の場合にはほとんど薬は処方されません。主に使用される薬は、消泡剤や消化剤、整腸剤、抗うつ剤や精神安定剤、漢方薬が使用されます。

消泡剤や消化剤、整調剤は、腸にガス(空気)が貯留し易く、それを排気する為や、食道の知覚過敏の抑制、食道の粘膜保護を目的に処方されます。漢方薬は、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)が主に使用されます。腹部膨満感や胃の不快感、心因性ストレスによる胃炎の患者に処方されることが多いです。その他、精神安定剤が処方されることがあります。

これに関しては、下記の「心因性が原因の場合の対処方法」にて説明します。

心因性が原因の場合の対処方法

心因性は精神的ストレスが原因である場合が多いため、抗うつ薬や抗不安薬といった精神安定剤や環境設定が基本的な対処法になります。

重い心因性にある患者や軽度のうつ症状を保有している患者に使用されることが多いです。神経症など合併してくる病態によっては、森田療法などのリハビリテーションやメンタルのカウンセリングが必要にもなります。

まとめ

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空気嚥下症を予防するためにも、空気をどういった時に飲み込んでしまうかを考え、なるべく空気を飲み込まないように対応していくと良いでしょう。

日常生活に支障が出る程悩む場合があります。身体が少しでもおかしいと感じた際には早急に医師に診てもらうようにしましょう。空気嚥下症を疑った際には、「内科」または「消化器科」を受診しましょう。器質的なものが原因の場合は、画像検査なども施行される可能性があるため、設備が整っている大きな病院に受診すると良いでしょう。

また、原因が心因性のものも関与している場合には、「精神科」や「心療内科」の受診が必要なこともあることを念頭に置いておくと対応しやすいでしょう。その他、噛み締め呑気症候群の場合は「歯科」、「口腔外科」、副鼻腔炎や蓄膿などは「耳鼻科」というように、各専門医に診てもらう必要があります。総合病院などの大きな病院であればおおよそ各科が揃っているため検査や診断がスムーズに進むでしょう。

  
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