「最近、夜あまり眠れない・・・」とか「ここのところ、不安で不安で心配なんです・・・」といった悩みをお抱えの方はいらっしゃいませんか?
そんな方、実は心の奥底に眠っている心的外傷(トラウマ)が原因かもしれません。
あるいは、自分でも意識していない深層心理の奥底で、深い深い傷を負っているのかもしれません。
今日は、そんな苦しみを負っている方のために、催眠療法についてお話ししたいと思います。
催眠療法とは
催眠療法とは、ヒプノセラピーとも呼ばれ、アメリカやイギリスではその効果がすでに医学的に知られています。
被験者を人工的に暗示にかかりやすくし、術者の与える暗示に極端に注意が集中する特殊な意識の状態(催眠状態)にさせます。そして、その結果、被験者は、心理的または生理的に操作されてしまうのです。
自分自身に催眠療法をを施す場合を自己催眠、集団に施すのを集団催眠といいます。
催眠状態は睡眠とは異なり、意識のせばまった特殊な応対で、施術者によって与えられた命令や暗示だけに従います。
催眠術はメスマーによって科学的にとりあげられ、フロイトを経て現在では精神療法の一つとして一部の精神科医が用いています。
それでは、この催眠療法で用いられている暗示とは、一体何なのでしょうか?暗示の定義を辞書で確認しておきましょう。
暗示
英語ではsuggestion、強制力を用いずに他者の意志を統制したり、特定の認識、意見、信念、価値観などを無批判に受容させること。また、その状態、その結果生起する内的過程、そのために用いられる刺激などを言う。
その極端なものが催眠暗示で、特定の状況下に、特定の暗示者により、反応者の注意の範囲や意識状態は人工的にせばめられ、暗示者や暗示状況の発する刺激のみが選択的に受容されて反応を引き起こすに至る。
暗示は一般に暗示者の被暗示者に対する権威が大きいほど効果的である。しかし、時に「気で病む病」のように刺激源が自己内に起因することもあり、これを自己暗示という。
マイペディア
辞書の定義によると、強制することなく、被験者の意志を統制し、自分の考えていることや意見、価値観などを被験者に批判させずに受け入れさせることとありますね。人工的に、相手の意識をせばめて、暗示者や特定の暗示状況下にある刺激のみが相手に受け入れられ、反応するようですが、その一方で暗示者の被暗示者に対する権威が大きいほど効果的ともあります。
権力の濫用が甚だしい昨今、少し怖いお話でもあります。
しかし、催眠療法は、この「暗示」を用いて、精神的な疾患に苦しんでいる方々の苦痛の源を和らげる、あるいは取り除く治療方法です。
ある意味では、「癒し」に近い治療方法かもしれませんね。
催眠療法を用いる病気と症状
催眠療法を用いる病気と症状にはさまざまなものがありますが、主な病気として以下があります。
- 神経症(ノイローゼ)
- ヒステリー
- 強迫神経症
- 心気症
神経症(ノイローゼ)
精神障害の一つで、精神的な打撃、あるいは持続的な心的葛藤による心的障害を持つ病気のことを指します。精神分裂病などの狭義の精神病に比して、症状も軽く回復は比較的容易とされています。
神経症になりやすい生来の過敏な気質などや、内向的な性格、乳幼児期から現在までの生育歴や家庭環境、社会環境などが間接的原因となる場合もあり、ヒステリー、不安神経症、イポコンドリー(心気症)、脅迫神経症、心因反応の各病型があることでも知られています。
その他戦時の兵士に生じる戦争神経症、外傷後に生じる外傷性神経症等。症状は各病型ごとに多様ですが、不眠、不安等がおもにみられます。
その治療は、抗不安薬等による薬物療法と精神療法が併用されることがほとんどです。
ヒステリー
神経症の一種で、多種多様な心身症状があります。
痛みに鈍感となる痛覚鈍麻、視野が狭くなる視野狭窄(視野欠損)等の知覚障害や、痙攣(けいれん)、麻痺(まひ)等の運動障害もみられ、意識不明になって倒れる転換症状と、ヒステリー健忘や朦朧(もうろう)状態、昏迷(こんめい)が起こる解離症状が現れることもあります。
その治療は、環境の調整、暗示療法、抗不安薬などの薬物療法、精神分析療法によります。
強迫神経症
こちらも、神経症(ノイローゼ)の一種で、不眠、不安といった症状のほかに特に強迫観念を主とし、危惧の解消を求めて脅迫的繰り返しに陥ることがあります。
強迫観念とは、強迫神経症の主な症状で、ある種の考えが、自分では不合理であると自覚しているのに、自分の意志に反して何回も強い圧迫感をもって絶えず頭に浮かんで日常生活にも支障をきたすほど悩む状態のことを指します。
たとえば、鍵をかけ忘れたのではないかと気になり、頭にこびりついて離れないで何回も確かめることなどがその例です。
心気症
ヒポコンドリーとも言われています。
こちらも神経症の一種で、疲れやすく刺激に敏感で、自分の身体の健康状態について過剰な心配をする傾向があり、一般に異常体感、強迫観念、妄想などを呈することが多く見られます。
詳しくは、心気症の症状をチェック!原因や特徴、関連する病気を知ろう!治療するのに必要なことは?を参考にしてください!
催眠療法を必要とする病気の原因
催眠療法を必要とする病気の原因は、多種多様ではありますが、一般的に、家庭環境や親の抑圧などの幼児期の体験や心的外傷経験(トラウマ)などの連続的な体験が挙げられます。
一つ一つは些細でも、これらが一つの経験として少しずつ蓄積されていくと、強力な催眠状態に陥り、それを無意識下で何度も何度も繰り返すようになります。
すると、一種の強迫観念のようなものが幼児期より徐々に蓄積されていき、その結果その人の心の内には如何ともしがたい強烈な強迫観念の世界ができあがり、そこから逃れるすべはなくなってしまいます。
このような状態のまま、思春期や青年期を迎えると、学校や社会への関与のあり方などへの不安や焦燥感などが精神疾患を引き起こし、幼児期から蓄積された強迫観念が顕在化します。
すると、一般的に言われる統合失調症やPTSD、パニック障害などの精神的な疾患となって目に見える形で発症するのです。
催眠療法の治療法とその効果
このような強烈な強迫観念に対して、催眠療法では退行催眠という手法を用います。
退行催眠とは、幼児期の神経の良い状態、つまり純真な心を取り戻すべく、健康な心、健康な感情、健康な感覚を再び手にすることを目的とする根本的な治療方法です。
もちろん、抗不安薬や睡眠導入剤といった薬物投与による薬物療法も必要ではありますが、これだけでは健康な心を取り戻すことはできません。これらの薬物療法は、対症療法に過ぎないのです。
それでは、催眠療法を用いてどのような効果を得られるか、お話ししましょう。
- 健忘症の改善
- 知覚や感覚など五感の改善
- 恐怖や不安の解消
- 自らの殻を打ち破る
- プラス思考
健忘症の改善
人は、忘れる生き物です。
特に、自分にとって嫌なことは自分の心の中から消し去りたいと願う気持ちが心のどこかにあります。この心の中の消去機能が強く作用すると、健忘症となりがちです。
心の健康を取り戻すことで、この健忘症を改善することができます。
知覚や感覚など五感の改善
食べ物の好き嫌いなどの味覚や知覚は、幼児期の虐待経験の記憶と密接な関係があります。幼児期に、嫌な経験をすると、その経験は味覚、知覚とともに記憶に残り、対象となる事象に対して嫌悪感を抱くようになります。
退行催眠を施すことによって、その嫌悪感を和らげ、取り除き、健康な感覚を取り戻してあげると、食べ物の好き嫌いなどの味覚や知覚は不思議と改善されることがあります。逆説的になりますが、味覚や知覚が改善されたということは、過去の嫌な経験を克服した証でもあるのです。
恐怖や不安の解消
幼児期より蓄積された強迫観念は、その人の心の内に恐怖や不安を生じさせます。
この恐怖感や不安感は、話を聞いてあげれば、容易に取り除くことができるといった類のものではありません。
また、この恐怖感や不安感から焦燥感にかられることもあり、最悪のシナリオを描く方も少なくないのが現代社会の実相です。
催眠療法を用いて健康な心のあり方を取り戻すことで、少しでもそんな恐怖や不安を和らげていくことは可能です。ただし、これは数回といった治療ではなく、長い時間をかけて少しずつ少しずつ恐怖や不安を取り除いてあげることが肝要で、長い時間と努力が必要となります。
自らの殻を打ち破る
両親による虐待や学校でのいじめといった過酷な体験は、その人の心の内に強迫観念を生じせしめ、この強迫観念がその人の手枷足枷(てかせあしかせ)となって、その人の心をがんじがらめにして、自らの行動を自分自身で制限するようにしてしまいます。
「自分はこういうことをしてはいけない」という意識が、その人の心の内で必要以上に作用します。
催眠療法は、そんな心の内にある強固な殻を自らの手で打ち破る、そんな心の作用の一助となります。
プラス思考
強迫観念にかられ
て、減点法で養育された子供が成長すると、減点法の思考に伴い、マイナス思考となります。あたかも、100点満点の試験を受験しているかのように、物事を、そして人生を考えてしまうのです。
社会に出れば、問題だらけの世の中です。ましてや、問題を出題し、解答してくれる先生も存在しません。
社会に出ると、自分自身の力で問いを見出し、自分自身の力でその問いの答えを出し続けていかねければなりません。この世に、100点満点の答えなど存在しないのです。
人は、その時代、その社会にあった問いと答えを出し続けていかなければならないプレッシャーと闘い続けねばなりません。
ですので、100点満点からの減点法ではなく、1点ずつ積み重ねていく加点法が必要となってくるのです。
そんな加点法を実現するのが、プラス思考です。
「何かができなかった・・・」ではなく、「それまでできなかった何かができるようになった!」の積み重ねが大切なのです。
おわりに
催眠療法は、打ち出の小槌のように誰にでも効果があるわけではありませんが、心の奥底に潜んでいるトラウマに苦しんでいる方を救ってあげることができる可能性のある治療方法です。
メスマーに始まり、フロイトによって開花された西洋心理学の催眠療法ですが、本当に深層心理にある苦悩に苦しんでいる方にとっては天からの助け舟かもしれません。
「もう、私は助からない・・・」
などと、決して諦めたりせずに、心の奥底に悩みを抱えている方は、藁をもすがる心境で心理カウンセリングを受けてみるのも一つの方法です。
“A drowning man will clutch a straw.”
という英語のことわざがあります。
日本語では、
「溺れる者藁(わら)をもつかむ」
と言います。
心の底から、本当に救いを求めている方には、最適な治療方法かもしれませんね。
関連記事として、
これらを読んでおきましょう。