普段から常に使っている使っている声帯ですが、大きな声を出してしまったことや、感染症などで喉に炎症が出来たり、酒を飲み過ぎるなどの原因で声がかすれてしまうことがあります。
空気が乾燥して風邪も流行る冬場は特に起こりやすい症状といえるでしょう。普段から声の出し方や生活習慣に気をつけることで、声のかすれは予防することができます。
また、声がかすれてもなかなかすぐに病院に行こうと思わない方も多いかもしれませんが、声のかすれを放置していると重い病気を見逃してしまうこともあるので、どんな病気が関わっているのかチェックしておきましょう。
声のかすれの原因や、可能性のある病気などを紹介していきます。最後までしっかり読んで関連する病気を予防していきましょう。
声の出る仕組み
声が出るには、呼吸器官、発声器官、共鳴器官の3つが使われています。呼吸器官は器官や肺など、発声器官は咽頭、共鳴器官は共鳴腔という響きを作る空洞部分のことを指しています。
まず、声のもとが作られる声帯はこのうち発声器官に属しており、喉の奥に存在している筋肉です。気管の入口に付いていて、左右に分かれた形をしており、これが閉じたり開いたりすることで吐く息から振動を作り出し、声を作っています。
開いた状態の時は振動は起こらず、閉じた状態の時に振動が起こります。
この振動音が口腔内に共鳴することで音が大きくなったり、音に奥行きが生まれたりします。音の反響は共鳴腔と呼ばれる体内の空洞の中で起こります。主な共鳴腔は、鼻の中の鼻腔、喉の咽頭腔、口の口腔になります。
言葉の生成
声帯で出した音を共鳴腔の中で反響させさらにこの音を口の形や舌を使って変化させることで言葉に変換しています。口の形を変形させて母音である「あいうえお」を発音し、舌、唇、顎、歯、鼻、などを使うことでカ行サ行などの子音を形成しその組み合わせで言葉を作っています。
赤ちゃんの頃から毎日の学習によりいつの間にか言葉を発していますが、人間の声から言葉になるまでは、呼吸による空気の出し入れ、声帯の振動による音の発生、共鳴腔での共鳴、共鳴腔内の形状変化による言葉の形成と4つのプロセスを経て言葉を生み出しているのです。
なので、この共鳴腔内に異常があったり、声帯がたるむなどの事が発生してしまった場合には発生する声に異常が出てくるようになります。
では声がかすれる原因はどんなものがあるのか見ていきましょう。
声がかすれる原因
声がかすれる原因は、主に声帯の異常がまず挙げられます。声帯に異常が起こることにより空気の振動がうまくいかなくなり、声がかすれてしまいます。
声帯の異常
声帯に発生する異常として考えられる症状を見ていきましょう。
・声帯ポリープ
声をよく使う方に起こりやすい病気です。声を使う頻度が高いため、声帯の一部分に大きな負担が掛かってポリープができ、かすれた声になることがあります。声帯の酷使、炎症により粘膜に充血が起きて腫れてくると、これが邪魔をして声帯の開け閉めがうまくできなくなったり、声帯の振動が阻害されたりすることにより起こります。
声を使いすぎないように注意すること、禁煙することが治療となりますが改善が見られない場合や日常生活に支障が出る場合は手術を行います。
・声帯結節
ポリープと同様に声を酷使する方に多く見られます。声を出す際、左右の声帯はぶつかりあっていますが、これが頻繁に起こるとペンだこのようなたこができてしまい声がかすれる原因となります。ポリープとは違い左右対称にできます。
発声に慣れていない中学生までの子供であれば経過観察することが多いようですが、大人の場合はポリープの対策と同様声を出し過ぎないようにし、禁煙するのが治療方法となります。
・喉頭がん
声がかすれる症状で一番心配なのは喉頭がんではないでしょうか。喉頭、声帯にがんが出来ることで左右の声帯がうまく振動せずに声がかすれる症状が出ます。
初期のうちならば治療により予後が良くなりますが、放置して首のリンパ節などに転移してしまった場合は厄介です。
患者の多くが60歳以上の喫煙者であるというデータもありますが、気になる場合は早めに診察を受けましょう。
喉頭炎
風邪やインフルエンザなどの感染症により喉に炎症が起きる病気です。ウィルスや菌などによる原因が多く乾燥した季節に喉が乾燥して炎症が起こってしまうことが多いです。感染症による併発が多く同時に咽頭炎や鼻炎を併発する事も多くあります。
感染が声帯にまで及ぶことで声がかすれてきます。発熱や咳や痰などと一緒に声が出しづらかったり声がかすれるなどの症状が現れます。咳止めや抗炎症剤での症状の沈下を図るとともに、身体を休めて体内の菌を殲滅するのを待つ必要があります。風邪やインフルエンザの症状と同時に喉頭炎の症状も回復するので、根本である感染症の治療が重要です。
声帯を動かす神経に問題がある場合
声帯を動かすのに使われる神経が反回神経です。脳幹から枝分かれし、頭蓋骨の中を通って下降してきた反回神経は一度声帯の横を素通りして胸郭までつながってきます。そこから折れ曲がって食道の両脇を上昇、声帯の筋肉に辿り着いています。
一旦下がってもう一度上がるという複雑な回路となっており、そのどこかで障害が起こっている場合に神経の麻痺が起こり、声帯の動きがうまくできなくなるのです。
反回神経の異常は、神経の通り道にできた腫瘍によるものである場合があります。首周りの重大な病気である場合があるので、早急な受診が必要となります。
声帯そのものが萎縮している場合
声帯の粘膜にへこみができてしまう等の原因で声帯の容積が減少し、左右の声帯が上手く噛みあわず隙間ができると声がかすれます。加齢に伴う場合や声帯の麻痺などにより起こります。
治療としては声帯に力が働くように訓練を行います。また、声帯にコラーゲンや脂肪を注入して容積を増やす手術を行う場合もあります。
鼻の問題が原因の場合
鼻風邪のあとで声がかすれるような場合、副鼻腔炎が問題の場合があります。風邪などの細菌が副鼻腔に入り込み炎症が起きる病気で、ひどいものは蓄膿症と言われます。
副鼻腔からの鼻水が喉に落ちて行き、声帯に絡んでいる場合声のかすれが起こります。
胃腸の問題
胃が荒れている場合に逆流性食道炎がおき、これにより声帯が侵され声がかすれることがあります。逆流性食道炎は胃と食道の境目にある筋肉がゆるみ、胃酸が食道まで逆流して来る病気です。この胃酸が声帯についてしまうと声帯が侵され、声に影響がでます。
特に血流量が少ない方の場合、声帯に付いてしまった胃酸を流す力が弱く、声帯が長時間酸に晒されることになります。
精神的な問題
喉そのものには異常が見られないのに、喉に違和感や不快感を感じる症状が咽喉頭異常感症とされる症状です。アレルギーや貧血、更年期障害を原因とする場合があり、ヒステリー球とも呼ばれています。
ストレスを受けた時等自律神経のバランスが崩れることで起こるもので、自律神経の乱れにより交感神経が活動しすぎてしまい、食道等の筋肉が緊張し違和感を感じるようになります。
女性や若い世代、心配性な方、不安が強い方に起こりやすく、「この喉の違和感はもしかして重い病気なのではないか」と心配してしまうことで余計にひどくなってしまうことがあります。
甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの生成が低下することで様々な症状が現れる病気で若い女性に多く見られる病気の一つです。甲状腺ホルモンの分泌の低下により、新陳代謝が低下し体内の水分量が増え、むくみなどの症状の他、体重の増加や、食欲不振、生理不順、行動力低下、脱毛、皮膚の乾燥などの症状とともに喉頭もむくみ、声がかすれたり低い声になったりします。
甲状腺機能低下症の詳しい原因はわかっていませんが、海藻類に多く含まれるヨードの過剰摂取や甲状腺の炎症やヨードが不足することでも発症します。
甲状腺機能低下症は自然治癒することはありません。もし声の枯れる症状の他にこれらの症状が併発している場合は病院にかかってしっかり治療を行いましょう。専門は内科もしくは内分泌科になります。治療は投薬によって行われるので負担は少ないでしょう。しかし定期的に血中の甲状腺ホルモンの濃度を調べる必要があるので血液採取が必須になります。
アルコールのとり過ぎ
アルコールを大量に摂取、もしくは頻繁に摂取する人は声がかすれてしまう場合があります。アルコールは摂取する時必ず食道を通ります。声帯は気道の道にありますが、たまにアルコールが気管に入ることでむせて咳き込むことがあります。そうでなくとも気管と食道は近い位置に存在するので摂取量が多いとアルコールが侵食し声帯付近の血行が促進され、充血やむくみの症状が起き声がかすれます。
また、声帯がアルコールによって閉塞不良を起こすことでも炎症が起きやすくなり声に影響が出ます。お酒が強い人でもその日のコンディションによって大きく症状は変化します。
また、胃に流れたアルコールが呼気にまじり上がってくることでも症状は発症します。お酒の分解酵素の限界量は産まれつき決まっています。お酒に対する抗力は飲むほどに高まっていき、頻繁に飲み続けることで飲める量は増えていきますが、分解酵素の量は変わらないので脳が麻痺しているだけで実際は体内に与えるダメージは増えています。
なので、もともとはお酒が弱かった人などが特に声がかすれやすい傾向があります。いくら飲んでも声が変わらない人は生まれつきアルコール分解酵素が多い人になるでしょう。
シェーグレン症候群
シェーグレン症候群は自己免疫疾患の一つです。難病にも指定されている治療が困難な病気でもあります。目や口や喉などの全身の粘膜が乾燥してしまう病気で様々な症状が起こります。
リウマチなどの病気の合併症として引き起こる場合と、シェーグレン症候群が単発で発症する場合の二つの発生経路があります。40代〜50代の女性に多く発症する病気で1万5千人〜2万人の患者がいると報告されています。
特徴的な症状は口と目の乾きです。その他に膣の乾燥、唾液の減少により虫歯が増える、歯周病になる、咳が出る、口臭が気になるなどの症状が現れます。
また免疫異常の程度によって、関節痛や神経障害、腎障害、血管の炎症などの症状も現れます。
女性ホルモンや遺伝、ウィルス、環境要因などいくつもの原因が複合的に絡んで発症するのが症候群と呼ばれる病気です。喉の渇きによって声がかすれる場合もあります。
この病気は現代の医療では治療することが出来ません。点眼や生活習慣の指導など対処治療での症状の軽減になります。患者には病気との共存する心構えが必要になるでしょう。
声のかすれ対策
声がかすれた場合の対処方法を紹介します。
腹式呼吸
まずは声の酷使が声がかすれる大きな原因なので、声帯に負担を掛けないことが大切です。声が出づらくて余計に声を張り上げると、どんどん悪化してしまうので注意しましょう。
声のかすれを防ぐ発声方法として、腹式呼吸があります。肺の周りの筋肉が緊張していると空気を充分吸うことができないので、喉や胸に力を入れずに腹式で深くゆっくり息を吸い、ゆっくり吐く練習をするとよいでしょう。
あくびをした時のように喉が大きく開く感じが喉の力を抜いた状態です。このままで朗読や発声などの練習をするのが効果的です。
乾燥を避ける
乾燥が続くと、喉で炎症が起こり声がかすれることがあります。また、充分な水分は声帯が滑らかに動く為にも必要です。冬場は特に空気の乾燥に注意し、風を直接浴びないようにしたり、こまめに水分を採るなどの対策が大切です。
尚、コーヒーのカフェインは粘膜を荒らすことがあるのと、利尿作用があるため脱水症状につながる場合があります。また、アルコール類も脱水につながり喉が焼けてしまうので、水分補給の際にはこれらを避けましょう。特に、カラオケ中のアルコールは喉の神経を麻痺させてしまい、無理な高音を出してしまう原因となるので注意が必要です。
ストレスを溜めない
自律神経は発声にも影響を及ぼします。また、ストレスによって声が出づらくなる症状は放置すると慢性化することがあります。
ただし、ヒステリー球が疑われる場合は内科的な問題が本当にないのかを確かめる必要があります。安易に精神的なものだと決めつけて重大な病気を放置することになってしまわないよう注意が必要です。
禁煙、禁酒
ストレスを溜めないことも重要なので程々に行う必要はありますが、煙草によるタールが気管支に悪影響を与えることやアルコールが声帯に悪影響を与えることは確実なので、摂取量を減らすなどの対策を取る必要がります。
また、飲酒をしながらのカラオケなど、喫煙をしながらのカラオケは一気に喉を痛めてしまう原因になります。飲酒している状態では、声を無理に出してしまうのでさらなる負荷を声帯にかけてしまいます。
週末には休肝日やタバコを控えるなどの休息をとるだけでも大きく変わってきます。喉の粘膜を正常に分泌させるためにはタバコを控えることは重要です。
これらを心がけて声のかすれの症状を軽減していきましょう。
まとめ
声のかすれには声帯の問題だけでなく、神経やストレスが関わっていることがあります。また、喉頭癌や声帯ポリープなどの大きな病気が関わっていることもあるので、普段から水分補給や声帯に負担を掛けない発声方法について留意するとよいでしょう。
年末シーズンでカラオケやアルコールに触れる機会も多くなってきますが、大切な声に異常をきたさないよう無理は厳禁です。また、喉頭がんは早期の発見が非常に重要な病気です。異常があると感じた場合にはすぐに病院を受診しましょう。
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