扁桃炎は、見た目にも顎下、耳下が大きく腫れてしまうために、おたふく(耳下腺炎)に似ていて、「もしかしたら感染する?」と思っている人も多いかもしれません。しかし、結論から先に言えば、実際には扁桃炎そのものは人には感染しません。その個人の体内に潜んでいる「常在菌(じょうざいきん)」が、過労やストレスなどで免疫力が低下したのをきっかけにして爆発的に増殖することで発症する病気だからです。
しかしまた、扁桃炎になるのは常在菌だけが原因ではなく、細菌性、ウイルスが原因となって起こる場合もあります。そのウイルスとは、RSウイルス、EBウイルスやアデノウイルス、ヘルペスウイルス、溶連菌などがそうです。
しかしこれらのウイルスは感染力が低く、他人へと感染しようとした際に、簡単に免疫力による抵抗力で防御されるため、ほとんどぼ場合は扁桃炎そのものが、他人に感染することはないと言えます。
しかし希に、扁桃炎の原因となっているこれらのウイルスが、例えば免疫力が極端に低下して、生体の防御機構が働かない時には、他人の口などから侵入して感染することは可能性として残ります。潜伏期間は2日程度で症状を発症します。
扁桃炎の症状や感染経路や治療方法について紹介していきます。
扁桃炎の主な特徴
扁桃炎の主な特徴は、何より扁桃腺が腫れ上がることです。それ以外には、咽頭痛、頭痛、三十八度から四十度近くの高熱、耳や耳下の痛み、関節痛、悪寒や寒気などです。
ここに挙げたものを見ると分かりますが、ほとんどがカゼの場合にも見られる症状です。なので、多くの場合で扁桃炎になっていたとしても気づかずに、軽度の場合にはいつの間にか治っていることもあるようです。
扁桃炎の種類
さて、それではもう少し具体的に扁桃炎を見ていくことにしましょう。
扁桃炎は二種類あります。ひとつは「急性扁桃炎」で、もうひとつは「慢性扁桃炎」です。
それぞれに共通する初期症状をみてみると、まずは風邪のように咽頭が赤く腫れることから始まります。次第に痛みを伴うようになり、飲食のたびにのどに違和感を感じるようになります。さらに症状が進行すると、つばを飲む込むことさえ辛くなります。
一方、急性扁桃炎の特徴は、高熱を発症することです。また頭痛や悪寒を伴い、関節痛や頸部痛を訴えることも多く見受けられます。場合によっては耳下炎を併発します。そうなると、頭痛や患部の痛みに加え、体のだるさや食欲不振に悩まされることになります。
お世辞にも、あまりいい状態とは言えません。例えば、インフルエンザにかかった上に扁桃炎が腫れる人の場合はこれにあたります。治療期間はおよそ1週間ほどで回復していきます。
他方、慢性扁桃炎の特徴は、急性扁桃炎ほど激しい症状ではないのですが、数週間に一度から数ヶ月に一度は扁桃炎になるというように、繰り返し炎症を起こすのが特徴的です。
また慢性扁桃炎の症状が重たくなってきた場合には、扁桃腺の摘出手術などを考えなければならなくなります。
扁桃炎と腎臓
慢性扁桃炎は急性扁桃炎と同様に、痛みと腫れが起こりますが、なかでも気をつけないといけないのは、腎臓との関係です。
というのも、慢性扁桃炎が頻発するようになると、扁桃腺が炎症を起こすたびに、その原因となっている菌やウイルスを撃退しようとして、IgAと呼ばれる物質が生み出されます。このIgAが少量ならいいのですが、多量に作られてしまうと消費しきれず、全身を巡るようになります。その際、腎臓でまとまった量のIgAが沈着すると炎症が起こるのです。その結果、腎炎が慢性化し、慢性腎臓病へと発展してしまいます。
また腎炎が発症すると、体のあちこちの水がたまる「浮腫(ふしゅ)」と呼ばれる症状が起こったり、「高血圧」や「血尿」が出ることもあります。
腎臓が炎症を起こしていることで、37度台の微熱が永く続きます。体が常時だるくなり、食欲不振を招いたり、体力は少しずつ落ちていきます。
幼少期がピーク
扁桃炎は軽度であれば気がつかない程度のものですが、悪化したり慢性化すると、腎臓病を併発するなど決して軽視できないものだということが分かりました。
この扁桃炎は、五~六歳頃までの幼少期をピークとして年齢が増すごとに発症数が下降していくことが分かってます。しかし中には、扁桃腺がどうしても腫れやすいタイプの人がいて、成人して大人になってからも過労で免疫力が落ちてしまった場合などに、扁桃炎になってしまうケースもあります。
扁桃炎の悪化
急性扁桃炎の治療に失敗したり、また完治する前に途中で辞めてしまった場合などに、扁桃炎はしばしば「扁桃周囲炎(へんとうしゅういえん)」という、さらに痛みや腫れが激しくなる状態へ移行します。
これは、扁桃腺そのものの炎症より、周囲の組織に感染が広がってしまったために強い炎症となってしまった状態です。
理由は分かっていませんが両側に発症する扁桃炎とは違い、扁桃周囲炎は、どちらか片方だけに発症するケースが多く見られるのも特徴です。
また、扁桃周囲炎が重症化してしまうと、我慢できないほどの痛みを訴えはじめます。これは炎症を起こしている部位に膿がたまっているのが原因です。この状態を扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)と言います。
膿が溜まると症状が重たくなっていくため、初期段階では抗生剤を点滴で入れていきますが、それでも状態が改善しない場合には、手術によって膿そのものを取り除くために入院治療が必要になります。
膿の摘出手術をせず放置しておいた場合
抗生剤投与だけに限って、膿の摘出手術をせずに放置しておいたケースの報告があります。このケースでは抗生剤の効果があまりない患者で、手術を何度か勧められたようです。
しかし、そのまま抗生剤投与のみで経過をみていましたが、喉の奥に滞留していた膿が胸部へと広がってしまい、胸部膿瘍への状態が悪化し、命を落とすことになってしまったのです。
抗生剤の投与は効果的ではありますが、しかし場合によっては膿瘍の外側だけで膿瘍の中心部分にはまるで抗生剤が効いていないケースも多いのです。
ここまで重症化する課程においても、膿が溢れるほどの事態となっていれば、膿が下に下にと広がるところで気道が圧迫されて狭くなり、呼吸障害が起こります。とくに睡眠時の呼吸は苦しくなってひどいいびきになります。
しかしこの段階では、痛みをそれほど訴えない人もいるようで、まだ命を落とすほどの症状が進行していることが患者の様子からは見られないため、軽視した末、悲惨な事態になってしまうのでしょう。
扁桃炎の悪化と口臭
扁桃周囲膿瘍になってしまうと、誰もが口臭を出すようになります。これは「膿栓(のうせん)」と呼ばれる細菌の死骸の集まりが元になって、腐ったような臭いを出していると言われています。
扁桃腺は摘出しても影響はないのか?
扁桃腺は、体の防衛機能、つまり免疫に関する臓器のひとつです。その臓器を摘出してしまったら、免疫力低下など障害が起こらないのでしょうか。
ある研究調査では、扁桃腺を摘出した小児と、扁桃腺を摘出していない小児とのグループに分けて免疫力に差があるのかを見ました。この研究によれば、確かに扁桃腺を摘出した小児のグループには、免疫力が低下したことが分かる結果が出たということです。
しかし、それは手術後すぐの時期で、時間の経過と共にだんだんと免疫力は回復していき、数年経過した頃には両者の差異はほとんど見られない程度にまでなったということです。
扁桃炎の予防方法
扁桃炎は、扁桃腺に細菌やウィルスが感染することによって起こります。そのため、出来るだけ日頃から免疫力を高めておく必要があります。
十分な睡眠
すぐにでも出来る簡単な予防法方としては、何よりも睡眠をしっかりとることです。体力をつけておくことで、疲労が蓄積しないようにします。
寝る時にはマスクを着用しましょう。また乾燥がちな部屋の場合、加湿機をつけるようにすると、なおいっそう咽頭部を細菌やウイルスから守り、扁桃炎にならないよう予防することが出来ます。
十分な時間睡眠時間を確保することも重要ですが、睡眠をとる時間帯も重要になってきます。ホルモンバランスを整えるゴールデンタイムである22時から深夜2時までの時間帯に就寝していることが重要になります。この時間帯に成長ホルモンが十分分泌され、体内の免疫や修復を行いますので出来るだけこの時間に就寝できているようにしましょう。
生活習慣
早寝早起きなど、規則正しい生活も大切です。とくに朝早く起きて、朝の新鮮な空気をたくさん吸い込むことで、心身が清潔に保たれます。ゆっくり深呼吸を繰り返せば瞑想状態となり、副交感神経も優先され、体内の気や体液の循環も促します。
夜にしっかり眠れるように、日中運動を行うなどして、適度に疲労感を溜めておくことも睡眠の質を上げるためには重要です。適度に運動を行うことで代謝もしっかり行うことでより健康的な体質を手に入れることができます。
運動不足になることも体の健康にはマイナスな影響を与えてしまいますので出来れば運動を生活習慣の中に取り入れておくことが免疫力を上げる上では有効な手段でしょう。
うがい手洗い
また毎日のうがいや手洗い、歯磨きも忘れずに行いましょう。口腔はもちろん咽頭の清潔さを保つようにします。
特に扁桃炎の症状が出やすい子どもの健康を管理するために、しっかり子供の手洗いうがいや歯磨きなどの感染予防の管理、監督を徹底するようにしましょう。まずは扁桃炎の感染予防と言うよりは、風邪への感染を予防して免疫力を下げてしまわないようにすることが第一に必要になってきます。
風邪を引いて免疫力が下がった所に扁桃炎の原因であるウィルスなどが増殖をし、扁桃炎の症状が出てきてしまうので、まずは風邪などの免疫力を下げてしまう可能性のある病気への感染を防いでいきましょう。
栄養のある食事
食事で栄養が偏ることや、しっかりとした量の食事を取っていないことが直接的に免疫力を下げたり、強い体を作れない原因になります。
充分な睡眠、適度な運動に加えて、バランスの取れた食事も合わせて行っていくことで、十分な免疫力や病気に強い体を作ることが出来ます。
特に摂り入れたい食事、栄養分としては
ビタミンA・・・にんじん、ほうれん草、小松菜、にら、バター、卵黄
ビタミンB群・・・豚肉、ピーナッツ、うなぎ、大豆、まぐろ、いわし、レバー
ビタミンC・・・ブロッコリー、いちご、レモン、大根、キャベツ、唐辛子
ビタミンD・・・トロ、カツオ、いわし、サンマ、レバー
ビタミンE・・・ほうれん草、大豆、しじみ、かつお、えんどう豆
などがあります。これらのビタミンをバランスよく食事によって摂ることが体調を整える上で非常に重要になります。
お互いのビタミンにはそれぞれのビタミンや栄養素の吸収や効果や効率を助け合う効果があるので組み合わせて色んな野菜や肉類などを摂ることで効果を高めることが出来ます。
喉の乾燥を防ぐ
扁桃炎の予防のためには乾燥を防ぐことが特に重要な予防法になります。喉の粘膜を乾燥させないことが炎症を防ぐためには必須になってきます。乾燥した喉は特に菌やウィルスが繁殖しやすくなっていますので、乾燥している冬の時期や、乾燥している空間では注意が必要です。
くしゃみなどでもウィルスが飛沫しないようにマスクを着用することや、自宅に加湿器を設置することや、飴を舐めたり、こまめに水を飲むなどの対策をして喉を潤すことを忘れないようにしましょう。
また、喉がイガイガしてきたらうがいを行うことや、喉を痛めてしまうタバコを控えることや、口呼吸ではなく鼻呼吸を心がけることも喉への負担を減らさない為には重要です。
これらの行動を常習化していくことが感染の予防のためには大切になってきます。
扁桃炎になってしまった時の対処法
予防もしていたのに扁桃炎になってしまうこともあります。人の体調は毎日変化しているので、同じ対処策を繰り返すだけではケアが足りない場合もあります。
もし扁桃炎になってしまって痛みがある、発熱がある場合には我慢したりせず病院にかかりましょう。
鎮痛剤を飲む
ロキソニンが大活躍します。鎮痛効果があるだけでなく、抗炎症作用も強いため、扁桃炎のような症状にぴったりと合致します。
ロキソニンはこれまで処方箋がなければ入手出来ませんでしたが、最近では薬局で一般薬として入手することが出来るようになりました。
市販薬の他の鎮痛剤でも同様の効果がありますので、自分に合った鎮痛剤を使用しましょう。
抗生剤を飲む
悪化する前に、内科や耳鼻科にかかり抗生剤を処方してもらいましょう。病院で処方されるのは「ペニシリン」系の抗生物質が多いようです。
炎症を抑えて腫れを取り除き、痛みを抑えます。早期の対応で症状が軽度の場合だと、抗生剤を服用してから二~三日中に改善するとされています。
漢方薬を飲む
体から膿を排出するとか毒素を排出するといった場合に、頼りになるのは漢方薬です。解表(げひょう)と言って、皮膚下にある病原因を発汗して皮膚表に吹き出させたり、汗腺を開いて汗をかかせたり、毒や熱を排出したりするのが特徴です。
例えば、急性の咽頭炎や扁桃炎の初期でまだ軽度の場合には「排膿散(はいのうさん)」が効果的です。この漢方薬が得意とするのは、膿を体外に排出することや解毒です。また芍薬(しゃくやく)も構成生薬の中にあることから、止痛にも働きます。
慢性化した扁桃炎や扁桃周囲炎に効く漢方薬は「桔梗湯(ききょうとう)」です。桔梗湯は、炎症や化膿、咽頭痛があるものに適応します。
専門病院へ
扁桃炎の可能性が疑われた場合は耳鼻科を受診するのが最適です。風邪の症状に似ていますし、初期症状で扁桃炎かどうか確認できない場合には呼吸器内科のある内科などでも診察は行なえますが、耳鼻科のほうが専門分野なのでより詳しく検査を行うことが出来ます。
また、風邪の場合であっても耳鼻科でも診察、治療を行うことが出来ます。風邪も扁桃炎の症状も喉や鼻に主な症状が現れる病気なので内科でなくても耳鼻科でしっかりとした治療を行うことが出来ます。また、耳鼻科ではファイバースコープという道具がありますので、内科よりも詳しく喉や鼻の中の状態を観察する事が出来ますのでより正確な治療が行える場合もあります。
掛かり付けの耳鼻科がある人は、わざわざ掛かる病院を増やさなくても大丈夫なので、安心して耳鼻科を受診しましょう。
まとめ
扁桃炎そのものは感染したりしない病態だということが分かりました。
また、扁桃炎は小児に多く見られる症状で、成人からはほとんど見られなくなりますが、中には過労やストレスをきっかけとして扁桃炎が腫れる人がいます。
扁桃炎は軽度だと、カゼと間違うほどでいつの間にか治っている人もいます。しかしまた重症化していくと膿が溜まってしまい、抗生剤を点滴投与したり、場合によっては手術によって膿を取り除く必要もでてくる、軽視できない症状です。
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