風邪をひくと鼻血が出るという人は多いのではないでしょうか。日本人の60%は鼻血を経験したことがあると言われています。風邪の最中に鼻をかむことで、鼻血が出やすくなります。
そのため、風邪に鼻血はつきものと思う人もいるかもしれませんが、実は風邪以外の病気の可能性も潜んでいます。
鼻血と風邪の関係
なぜ鼻血がでるの?
鼻の中にある血管がやぶれて血がでてくることを鼻血といいます。鼻の中は、粘膜という薄い皮でおおわれています。ここにある血管はとても細く、切れやすいのが特徴です。
中でも、特に切れやすい血管が網の目状に広がっている部分で、鼻の穴のすぐ近くにあるため、鼻を強くかんだり、鼻くそほぼじったり、鼻の穴の中に指を入れるなどをすると粘膜を傷つけ、血管が切れて血が出てしまいます。この部分は、キーゼルバッハ部と呼ばれます。
また、くしゃみや咳などによって、一時的に血圧が上がって、鼻を刺激することによって鼻血が出やすくなります。花粉などによる影響でも鼻血は出やすくなります。一般的な鼻血の約80〜90%はこのキーゼルバッハ部からの集結です。
血の約10〜20%は、鼻の奥にある太い動脈の血管が切れることによって起こります。動脈は、キーゼルバッハ部にあるような毛細血管に比べて太く、多くの血液が流れています。もし、動脈が切れてしまうと、自分では止めることが困難なほど、大量に出血してしまいます。
この場合は入院や手術が必要になる場合もあるため、大量の出血が15分以上止まらないような場合は、すぐに病院へ行きましょう。
間違いだらけ!? 正しい鼻血の止め方
もし鼻血が急にでたら、あなたはどういう処置を取りますか?多くの人が鼻血を止めようとして、頭を上に向けたり、後頭部をトントンと叩く、安静のため横になる、などしているかもしれません。でも実はその方法はとっても危険です。
上をむいたり横になったりすると、血が鼻から喉へ流れてしまいます。そうすると固まった血が喉をふさいて窒息する可能性や、胃の中で固まった血を吐いてしまうことがあるのです。
正しい止め方は次のようになります。
- ティッシュを二つ折りにして、端からくるくると丸め、鉛筆ほどの太さになるように棒状にします。
- 棒状になったティッシュを鼻の穴にしっかりとつめます。コットンやガーゼでもいいです。
- 小鼻のへこんだ部分を指でつまみ5分ほどこの状態をキープします。
子どもの場合は、鼻の穴の大きさに合わせてもう少し小さく丸めてもいいです。鼻血は血管が切れて出血しているということなので、ティッシュで蓋をして、小鼻をつまみ圧迫止血してあげることが大切です。
それでも止まらない場合は、耳鼻咽喉科の電気凝固治療で止血する方法もあります。電気凝固治療は、麻酔液をひたした綿球を鼻の中に入れて治療をします。子どもの場合は、小学校低学年から治療が可能になる方法です。やる場合は、耳鼻咽喉科の医師と相談をしましょう。
風邪で鼻血がでるメカニズム
風邪をひくと、鼻血が出やすくなります。それは、風邪のウイルスが体内に侵入し、鼻の粘膜がウイルスを排除しようと大量の鼻水を出します。そこで、鼻をかむのですが、その時に鼻の内部の血管が広がります。血管が広がると、薄い粘膜は傷つき、鼻をかむという刺激を受けただけでも鼻血が出やすくなります。
同時に風邪を引くと、鼻づまりの症状もでます。つまった鼻水をすすったり、かんだりを繰り返すことで、同じように粘膜が傷つき鼻血が出やすくなります。
この場合は、つらいですがなるべく鼻をかんだりしないようにすることが鼻血を出にくくさせる得策です。
風邪以外にも考えられる鼻血の原因
鼻血が出ることで、風邪やちょっとの体調不良かと思う人もいるようですが、風邪と似た症状の病気も存在します。どんな病気の可能性があるのでしょうか。
鼻の粘膜に負担がかかっている病気
まず、風邪以外に鼻血が出る原因のひとつとしてアレルギー性鼻炎が考えられます。アレルギー性鼻炎はハウスダストやダニなどの通年アレルギー性鼻炎と、花粉症の様な季節性のアレルギー性鼻炎があります。どちらもかかると鼻水や鼻づまり、目のかゆみ、くしゃみなど風邪に似た症状が出てきます。
ハウスダストや花粉などのウイルスを排除しようと大量の鼻水が出て、体外に出そうとします。その結果、鼻の中にある血管が拡張し、鼻をかんだりすすったりすることによって、鼻血が出やすくなります。
また、片方だけ鼻がつまる、鼻中隔湾曲症という病気もあります。左右の鼻の穴を隔てている鼻中隔(びちゅうかく)という壁の部分が曲がっている病気です。アレルギーなどの外からの原因で起こる鼻づまりではなく、鼻そのものの構造によって、引き起こるものです。この症状が重くなると、空気の出入りが滞り、鼻の粘膜に負担がおき、片方の鼻から鼻血がで出るようになってしまいます。
血管がもろくなっている病気
高血圧や動脈硬化など血管がもろくなりやすい病気でも鼻血がでることがあります。
中高年の方の多くが陥ってしまう病気ですが、自覚症状がないため、風邪と勘違いしやすいのが特徴です。キーゼルバッハ部から出血するケースがほとんどですが、まれに鼻の奥の動脈から出血する場合があります。
高血圧は放っておくと、動脈硬化をおこしやすいリスクが高まります。鼻をかんだりぼじっていないのに頻繁に鼻血が出る、一度出たら止まりづらいなどの症状の場合は、早めに病院へ行くようにしましょう。気になる方は、血圧の検査をしてもらうと高血圧かどうかすぐにわかります。
自分で判断できるチェック項目は以下になります。
- 飲酒または喫煙の習慣がある
- 多忙でストレスが多い
- 塩分の多い食事が多い
- 肥満体型
- 高血圧の多い家庭
- 頭痛、めまいを感じる
40代以上のうち、2人に1人が高血圧と言われている時代です。十分に気をつけましょう。
また、鼻血が出たからといって慌ててしまうと血圧がさらに上がり、よけいに鼻血が出てしまいます。ティッシュを使って落ち着いて止血するようにしましょう。
高血圧については、高血圧の症状とは?めまいやしびれに注意!治療法も紹介!を参考にして下さい!
糖尿病
糖尿病が原因で、鼻血が出ることもあります。糖尿病は、血糖値をコントロールするホルモン・インスリンが正常に分泌されなくなります。よって、常に血糖値が高い状態となります。
この状態が続くと、恐ろしいことに体中の毛細血管が破壊されていきます。鼻の中の血管も同様に破壊されるため、鼻血が出やすくなります。また、血糖値が高いと、血流が悪くなり酸素や栄養が体のすみずみまで行き渡らなくなります。
その結果、免疫力の低下を招き、風邪はもちろん様々な病気に感染しやすくなります。鼻血や風邪の症状が頻繁に表れるような場合は、糖尿病の可能性もあるため、早めに病院へ受診しましょう。
血が止まりにくい病気
鼻血が繰り返し出る場合は、白血病の可能性も考えられます。白血病や血友病は、血が止まりにくいため、一度鼻血がでると、自分で止める方法だけではなかなか止血できないと言われています。
白血病は血液のがんと呼ばれ、がん化した細胞が骨髄内で増え、正常な血液細胞を減少させる病気です。これよって免疫力は低下し、風邪をひきやすくなります。白血病の可能性がある場合は、鼻血以外にも倦怠感や吐き気など様々な症状が現れます。さらに、鼻血だけでなく、歯茎からも出血をする場合もあります。
これは大人、子どもと年齢に関係なく可能性が考えられる病気です。万が一あてはまる場合は、病院で診察を受けましょう。早期に発見できれば、完治することが多い病気です。
腫瘍ができている場合
10〜18歳の思春期の男の子に多い良性腫瘍である「上咽頭繊維腫」という病気が鼻血の原因になっている場合もあります。上咽頭繊維腫は、鼻の奥の空洞部分に腫瘍ができることで、鼻血を繰り返したり、鼻づまりがひどくなります。
腫瘍が成長すると、鼻血の量が増えるだけでなく、中耳炎を引き起こしたり、眼球が突出するなどの症状も出てきてしまいます。原因ははっきりとしていませんが、思春期に発症しやすいことから、男性ホルモンが影響しているのではないかと考えられています。
ひどくなると、摘出手術が必要になります。
他にも考えられる鼻血の原因
薬の服用や女性にも起こりやすい
その他の鼻血の原因として、薬による副作用も考えられます。そのひとつにワーファリンと呼ばれる血液をサラサラにする薬があります。この薬は出血を止めにくくする効果があり、いったん鼻血がでると止まりにくくなってしまいます。
薬を服用中の方は、不必要に鼻を触らない、などの予防が大事です。他に、バファリンやヘパリンなどと呼ばれる薬も同様の作用があります。
また、女性ホルモンの乱れによっても鼻血がでることもあります。これは、次の4つが主な原因になります。
- 女性ホルモン(エストロゲン)の減少
- ストレス
- 無理なダイエット
- 飲酒や喫煙
これらによって、引き起こされる女性ホルモンの乱れが、鼻血となって表れます。また、無月経や経血が少ないまま整理を終えるといった月経障害による代償月経として鼻血がでることもあります。
なんとなく、鼻血が出やすいなということで終わらせず、耳鼻咽喉科で検査を受けて、鼻血の原因を特定することが大切です。
まとめ
鼻血にまつわる病気は風邪以外にもいろいろな可能性を紹介してきましたが、ほどんどの場合は、鼻の粘膜によるちょっとした傷によるものです。また、鼻のかみ過ぎやいじり過ぎによって、粘膜の傷がなかなか治らず、鼻血がクセになる場合もあります。
特に小さな子どもは鼻に指をぶすっと入れてほじってしまい傷つけがちです。とはいえ、病気の可能性もゼロではありません。長い間続く、大量に出血する、その他の違和感があるなどの場合は早めに病院で検査を受けるようにしましょう。始めは自覚症状も見つけにくいため、鼻血が早期発見の手がかりになる場合もあり