腰が通常よりも反った状態にある「反り腰(そりこし)」について、ご存知でしょうか?反り腰は、特に女性に多く見られる良くない姿勢の一つで、様々な悪影響を身体にもたらすとされています。慢性的な腰痛・ぽっこりお腹・下半身太りなどの症状に悩んでいる人は、もしかすると原因が反り腰にあるのかもしれません。
反り腰は、自分では気づきにくいために、そのまま放置されているケースが少なくありません。しかしながら、反り腰をそのまま放って置いても悪影響しかなく、自然に治ることもありません。
そこで今回は、反り腰の原因、反り腰による悪影響を踏まえて、反り腰の治し方や改善方法などについて、ご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。
反り腰とは、どんな状態?
そもそも反り腰(そりこし)とは、どのような状態のことを言うのでしょうか?反り腰の原因、反り腰による悪影響、反り腰の治し方について触れる前に、反り腰の基本的な知識を知っておく必要があります。
そこで、まずは反り腰に関する基本的な知識について、ご紹介したいと思います。
反り腰とは?
反り腰とは、首から骨盤にかけて人の上半身を支える背骨(脊椎)のうち腰部が通常よりも大きく湾曲して、横から見ると腰部が弓のように反った状態のことを言います。
そもそも人の脊椎(背骨)は、首の頚椎、胸の胸椎、腰の腰椎、骨盤に近い仙椎と尾椎で構成されており、これらが1本につながって頭部を支える形になっています。この脊椎は、人の身体を横から見ると、直線に近い非常に緩やかなS字になってるのが通常の姿です。
しかしながら、反り腰の場合には、S字の湾曲が通常の場合より大きくなってしまうのです。その結果として、胸より上部は前傾姿勢気味に前方へと突き出るようになって背中は猫背になり、腹部も前方に突き出る形になって、いわゆる「ぽっこりお腹」の状態になる上に、お尻は後ろ側に突き出る状態となります。この反り腰によって形成される姿勢の状態は、俗に「出っ尻鳩胸」と呼ばれることもあります。
ですから、反り腰になると、もともと直線に近い非常に緩やかなS字を描く脊椎が、文字通りの湾曲があるS字カーブに近い脊椎となり、本来の人が有する正常な姿勢とはかけ離れた姿勢になるわけです。
反り腰の判断方法
自分が反り腰であることを日常生活の中で自ら気づくことは、正直言って難しいと思います。そこで、反り腰の人に多く現れる特徴と反り腰の判断方法について、簡単にご紹介したいと思います。
反り腰の人に多く現れる特徴
反り腰の人には、次のような体型的特徴や身体症状が現れる傾向があります。
- ぽっこりお腹
- 猫背
- お尻が垂れ気味
- お尻と太ももを中心に下半身が太り気味
- 背中の張り
- 慢性的な腰痛
- 腰から身体を前方に倒すと痛みが走る
反り腰の判断方法
前述した反り腰の人に多く現れる特徴に複数該当して、反り腰である可能性が疑われる場合は、次のようなセルフチェック法で反り腰か否かを確かめましょう。
- フローリングなどの硬い床の上に、仰向けに寝ます。
- 床と腰部の間に手を差し込みます。
- 床と腰部の隙間が、開いた手の平1枚分程度であれば、正常な状態です。
- 床と腰部の隙間が、手の平1枚以上の場合は、反り腰の疑いがあります。
- 床と腰部の隙間に拳が入ってしまう場合は、ほぼ確実に反り腰です。
反り腰の原因
このように反り腰は、本来直線に近く非常に緩やかなS字を描く脊椎の湾曲が大きくなることによって、人が有する正常な姿勢から異常な姿勢になってしまうことを言います。それでは、どうして人は反り腰になってしまうのでしょうか?
そこで、反り腰になってしまう原因について、ご紹介したいと思います。
運動不足による筋力低下
反り腰になる最大の原因は、運動不足に起因する姿勢を維持するための姿勢筋の筋力低下と関節可動域の低下にあると考えられています。
姿勢筋の筋力低下
姿勢筋とは、人が正しい姿勢を維持するために働いている様々な筋肉の総称です。主要な姿勢筋としては、背筋(脊柱起立筋など)、腹筋(腹斜筋・腹直筋・腸腰筋など)、お尻の殿筋(大殿筋・中殿筋など)、足の筋肉(大腿四頭筋・ハムストリングなど)などが挙げられます。
これらの主要姿勢筋が運動不足によって衰えると、主要姿勢筋全体の筋バランスが崩れてしまい、正しい姿勢を維持することができなくなります。つまり、主要な姿勢筋の筋力低下で筋肉バランスが崩れることによって、人の身体は地球の重力や自分の体重に対抗することができずに、正しい姿勢を保てなくなるのです。
その結果として現れる症状の一つが、反り腰や猫背といった異常姿勢なのです。
関節可動域の低下
運動不足が続くと、股関節などの関節が硬くなって可動域が狭くなってしまいます。この関節可動域の低下も、反り腰になる一因と考えられています。
主要姿勢筋の筋力低下とともに関節可動域が狭くなって身体の柔軟性が失われると、身体にかかる負担や負荷を上手く分散することができなくなります。そして、身体の一部に負担や負荷が集中することになり、身体に歪みが生じてしまうのです。このような身体の歪みの現れの一つが、反り腰と言えるでしょう。
生活習慣による姿勢の悪化
反り腰になってしまう原因として、日常生活における生活習慣によって姿勢が次第に悪化してしまうことも挙げられます。例えば、長時間のデスクワーク、女性が履くハイヒール、うつ伏せでのスマホ使用などは、反り腰を招きやすいとされています。
長時間のデスクワーク
仕事などで椅子に長い時間座っていると、腰椎(脊椎)と大腿骨をつなぐ腸腰筋というインナーマッスルや体幹が次第に衰えてしまいます。この腸腰筋は、特に腰椎の緩やかなS字を保つための直接的な働きをしています。それゆえ、座り姿勢を続けることによって、腸腰筋を使う機会が少なくなると、腸腰筋の筋力が衰えてしまい、腰椎の緩やかなS字を保つことができなくなるのです。
このように座り姿勢が多くなる生活習慣によって腸腰筋の筋力が衰えると、腰椎が重力や上半身の体重に抗しきれずに、S字の湾曲が大きくなることで姿勢が悪くなり、反り腰につながるのです。
女性が履くハイヒール
女性が履くハイヒールは、両脚を美しく見せるためには欠かせないファッションアイテムですが、実はこのハイヒールを履く生活習慣が、反り腰を招く要因になる可能性が高いのです。
ハイヒールを履くということは、つま先立ちの状態になるということで、いわば常に下り坂に立っているようなものなのです。下り坂に立っていると、人は自然と前のめりな体勢になりますから、後方に重心を移動してバランスを取ろうとします。
しかしながら、ハイヒールを履いていると膝関節が伸びにくく、どうしても骨盤が前傾気味になってしまいます。骨盤が前傾気味の状態で重心を後方に移動させようとすると、上半身を後方へと移動させることになり、腰椎のS字カーブを大きくせざるを得なくなるのです。
したがって、女性がハイヒールを履いていると、常に骨盤が前傾気味になる一方で、上半身は後方に反らせることによって身体のバランスをとることになり、必然的に反り腰を招いてしまうわけです。
うつ伏せ姿勢でのスマホや読書
うつ伏せの姿勢で寝転がってスマホをいじったり、うつ伏せ姿勢で読書をすることも、反り腰となる原因の一つです。
うつ伏せ姿勢でスマホをしたり読書をする場合、肘を立てたり胸の辺りにクッションや枕を挟むことによって、人の自然な姿勢よりも背骨を反ることになります。このような姿勢を頻繁にしていると、反り腰になる危険性を自ら高めてしまっていると言えるでしょう。
反り腰による悪影響
このように反り腰は、運動不足からくる筋力の低下や日常で何気なく行っている生活習慣が原因となって現れます。それでは、反り腰になった場合、どのような悪影響が生じるのでしょうか?
そこで、反り腰によって生じる悪影響について、ご紹介したいと思います。
腰痛・肩こり・背中の張り
人の頭部の重さは個人差があるものの約5㎏を超えるとされ、その重さを背骨と筋肉で支えています。
この点、人の背骨は、前述のように直線に近い非常に緩やかなS字になってるのが通常の姿です。そのため、その背骨が地面に対して垂直に近い形で頭部を支えるため、通常は余計な筋肉の力を使わずに頭部を支えることができます。
しかしながら、反り腰の場合は、背骨(脊椎)の途中の腰骨(腰椎)が反った状態になっているため、正常な姿勢では使うことのない様々な筋肉を無意識的に働かせることで、頭部や上半身を支えているのです。それゆえ、筋肉の疲労や緊張から慢性的な肩こりが現れたり、背中の筋肉に張りを感じるようになるのです。
また、反り腰は前述のように筋力が低下することによって生じますから、頭部や上半身を筋力で支えきれずに、頭部や上半身の重さが反り腰となっている腰骨への負担となってしまいます。そのため、腰に余計な負担がかかり続けることによって、慢性的な腰痛が生じることもあります。
このように反り腰は、正常な姿勢でなくなることによって、腰痛・肩こり・背中の張りといった症状を引き起こし、酷いケースでは腰骨(腰椎)に負荷がかかりすぎて変形し腰椎椎間板ヘルニアなどの病気を招くこともあるとされています。
ぽっこりお腹
反り腰になると、その影響によって骨盤に歪みが生じます。骨盤の歪みによって、本来は閉じている骨盤に開きが生じ、その骨盤中央付近のスペースに胃腸などの内臓が落ち込んで、内臓の位置が下がった状態になります。また、反り腰になると、腰骨と骨盤が前傾気味になり、腹筋も緩みがちになります。このように内臓の位置が下がり、腹筋が緩む結果として、下腹部がぽっこりと前方に突き出てしまいます。
ですから、反り腰の悪影響として、下腹部がぽっこりと前方に突き出る「ぽっこりお腹」が挙げられるのです。ダイエットをして、ある程度体重が落ちたにもかかわらず、下腹部だけがぽっこりとしているのならば、反り腰を疑う必要があるでしょう。
下半身太り
反り腰の悪影響の一つとして、下半身太りを挙げることもできます。
反り腰になると、骨盤の歪みが生じるのは前述の通りです。そして、骨盤の歪みは、骨盤付近の血液やリンパ液の流れを停滞させてしまいます。そのため、心臓から下半身に向けて送られる血液の流れが悪くなるほか、下半身から心臓に向かう血液の流れも停滞しがちになり、しかもリンパが回収する下半身の不要な水分や老廃物も停滞してしまいます。
その結果として、不要な水分や老廃物が下半身に溜まり、下半身のむくみが生じやすくなるのです。加えて、停滞した老廃物と脂肪が結合してしまうと、いわゆるセルライトが現れる可能性が高くなります。
ですから、反り腰になると、主要姿勢筋の筋力低下と相まって、お尻が垂れ気味になったり、お尻や太ももを中心に下半身が太り気味になるのです。
反り腰の治し方・改善方法
このように反り腰になると、下腹部が前方に突き出たり、下半身太りが生じるなど、ボディラインや見た目に大きな影響が現れます。それでは、反り腰になってしまった場合、どのようにすれば改善できるのでしょうか?
そこで、反り腰の治し方や改善法について、ご紹介したいと思います。
普段の姿勢を見直す
まずは、日常生活における普段の姿勢を見直すことからはじめましょう。特にデスクワークなどで座り姿勢でいる時間が長い人は、座り姿勢を見直す必要があります。
座り姿勢を見直す
正しい座り姿勢は、骨盤を立てて骨盤の上に上半身がくるイメージです。椅子に腰かけて骨盤を立てるようにした上で、肩や胸が猫背にならない程度に胸を持ち上げて、骨盤・坐骨の上に無理なく体重を乗せるようにしましょう。反り腰に加えて上半身が前傾して猫背気味の人は、姿勢矯正ベルトを使用すると良いかもしれません。
また、反り腰を治すための座り方として、丹田座りという座り方があります。大きく足を開いて椅子に腰かけて、反り腰と猫背の丁度真ん中になるようなイメージで姿勢をとります。そして、おへそから約5㎝ほど下の位置にある丹田を意識し、丹田(下腹部)に力を入れるようにするのがポイントです。
歩き姿勢・立ち姿勢を見直す
歩く場合にしても、立つ場合にしても、座り姿勢の場合と同様に骨盤を立てることを意識することが大切です。その上で、息を吐きつつ、下腹部とお尻に少し力を入れた姿勢が、基本的な正しい姿勢となります。この正しい姿勢を意識しながら、立ったり、歩いたりしましょう。
また、可能ならばヒールの高い靴は避けて、靴底・ソールが硬くない靴を履くように心掛けると良いかもしれません。
ストレッチや筋トレを行う
反り腰を改善するには、ストレッチや筋トレ(筋肉トレーニング)が最も手軽で効果的な方法だと言えるでしょう。様々なストレッチ法や筋トレ法が存在しますが、ここではバランスボールなどの器具が不要で誰にでも実践できるストレッチ法や筋トレ法を、ご紹介したいと思います。
腹筋の筋トレ
腹筋の筋トレというと、どうしても仰向けの状態から両手を頭部に当てて上半身を起こす方法をイメージしがちですが、それでは反り腰の人にとっては負担が大きい場合があります。そこで、次のような腹筋の筋トレ方法を、実施してみてはいかがでしょうか。
- 床に仰向けの状態になります。
- 両足を閉じて伸ばした状態で、かかとと膝を徐々に持ち上げます。
- 両足を伸ばしたまま持ち上げて、股関節の角度が約30度の位置で10秒程度静止します。
- 両足を床に徐々に床に下して、その後10回1セットで2~3セット繰り返します。
腸腰筋のストレッチ
反り腰になると骨盤が前傾気味になるため、腸腰筋に負荷がかかる傾向があります。そのため、腸腰筋ストレッチをすることは、腸腰筋の無駄な緊張をほぐすことになり、反り腰の改善にもつながります。
- 右足は立て膝、左足は膝・脛・足の甲を床につけて、上半身の姿勢を正します。
- 骨盤と上半身を立てて正しい姿勢のまま、前方へ徐々に重心を移動させます。
- 右膝の角度が鋭角になり、左太腿の付け根が伸びた状態を30秒程度キープします。
- 左右の足を逆にして、同様に繰り返します。
徐々に身体を動かす習慣を身につける
反り腰の原因の一つは、前述のように運動不足にあります。ですから、徐々に身体を動かす習慣を身につけることが、反り腰の改善には重要です。
といっても、いきなりハードな運動をすると腰に負担がかかりますから、ラジオ体操・ヨガ・ウォーキングなどから始めてみると良いでしょう。ラジオ体操やヨガは全身運動で体幹も鍛えられますから、姿勢矯正エクササイズとしては最適な存在です。
このような比較的軽めの運動から、徐々に身体を動かす習慣を身につけていきましょう。
整形外科・整体治療院
反り腰による腰痛などの症状が酷い場合には、まず整形外科などの病院を受診して専門家である医師に相談すべきです。というのも、腰椎椎間板ヘルニアなどの病気の可能性が考えられるからです。腰椎椎間板ヘルニアなどの病気の場合は、自己流の改善法を実施するのではなく、医師の診断に従って治療に専念しましょう。
特に病気などが発見されなかった場合は、整体治療院などで整体師に相談してみるのも一つの改善法と言えるかもしれません。骨格の歪みなどが見つかるかもしれませんし、専門家としての改善法のアドバイスも期待できます。
まとめ
いかがでしたか?反り腰の原因、反り腰による悪影響を踏まえて、反り腰の治し方や改善方法などについて、ご理解いただけたでしょうか?
たしかに反り腰は、自分では気づきにくいために、そのまま放置されている場合が少なくありません。しかしながら、反り腰をそのまま放って置いても悪影響しかなく、自然に治ることもありません。反り腰を放置していると、腰痛・ぽっこりお腹・下半身太りといった悪影響が現れます。
このように反り腰という状態は、人にとってプラスになることはなく、むしろマイナスなことしかないのです。ですから、日頃から自分自身の姿勢に対して意識することを心掛け、正しい姿勢を保つことが大切になるのです。
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