おでこや目の周りに痛みを感じる頭痛、誰もが経験されていると思います。頭の前半分の部分は前頭葉と呼ばれており、思考や創造、実行、理性の制御に関して重要な役割を担っています。
痛みを感じた時に前頭葉が痛むと意識する方はいないと思いますが、前頭葉の痛みは様々な原因で起こります。ここでは、前頭葉で引き起こされる頭部の痛みの原因や対処法や治療法について詳しくご紹介します。
前頭葉と痛みについて
ここでは、前頭葉の概要と、頭痛が起こる仕組みについてご紹介します。
前頭葉とは?
人間の脳は大きく分けて、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉、島葉、辺緑葉の6つの脳葉に分類する事が出来ます。
中でも前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉の4つは大脳の一部で、大きい脳溝を境として区分けされており、それぞれの役割が異なります。今回の題材である前頭葉とは、頭前半分の位置に存在し、意欲、創造、実行、理性の制御に関わり、脳全体の司令塔とも呼ばれています。
前頭葉の役割
1950年にロボトミー手術という前頭葉摘出手術が世界中で盛んに実施されていました。動物実験でチンパンジーの前頭葉を摘出したら、チンパンジーが大人しくなったという結果を受けて、精神病患者の前頭葉を摘出したら、病状の緩和が見込めるのではないかと5万人もの患者がこの手術を実施しました。
しかし、実際は前頭葉がとても重大な役割を果たしていることが、この手術を通して、発見されました。この手術を受けた患者は、無関心、無頓着、注意力が散漫、状況の理解が困難、理性をコントロールできず、衝動的な行動に出るなどの症状が見られました。これにより前頭葉の役割が明らかにされたと言われています。
前頭葉の具体的な役割は下記の5つです。
- 自分の置かれている環境や状況を認識、察することが出来る
- 行動の選択肢を考えて見つけ出す
- 計画を立て、決定し実行する
- 起きた結果を評価する
- 理性を制御する
前頭葉の重要性
前頭葉が脳を占める割合は、人間29%、チンパンジー17%、犬7%、猫1.5%と言われています。
このように占める割合も大きいことや、人間の脳自体も他の動物と比べて大きいことから、前頭葉の発達部分が他の動物と人間の違いを表しているといっても過言ではありません。前頭葉は、人が人である為に一番関係し、重要な部分であると言われています。
頭痛が起こる仕組み
頭痛が起こるメカニズムは未だに解明されていない部分も多くありますが、脳内にある骨膜や太い血管、頭皮、筋肉、神経などが圧迫されたり炎症を起こすことで、頭部に痛みを感じると考えられています。
主な原因は、ストレスや食生活の乱れなど生活習慣が大きく関わり、血行不良を起すことで痛みを引き起こします。また、脳腫瘍、くも膜下出血や脳出血などの疾患により、脳内の血管に障害を起こすことで痛みを引き起こす場合もあります。
頭痛の原因によっては、このような深刻な疾患の場合があります。脳はとても重要な役割を占めている為、ダメージを受けた場合、合併症や二次障害、呼吸障害、言語障害、運動障害、麻痺といった大きな後遺症が残る危険性があります。
前頭葉で起こる頭痛の原因
前頭葉で起こる場合の頭痛は、風邪や疲労などによる一時的なものでも起こります。
しかし、頭痛が長引いている、慢性化している、頻繁に発症する場合は、別の原因が考えられます。ここでは、前頭葉で起こる頭痛の原因とそれぞれの症状と対処法についてご紹介します。
偏頭痛(片頭痛)
偏頭痛は、不規則な生活やストレスなどが原因となり、片側のみに起こる頭痛のことです。これらが原因となって、頭の中の血管が拡張して炎症を起すことで、周囲にある三叉神経という太い神経を圧迫して刺激したり、周りの血管を圧迫して酸素の供給量が低下することで痛みを感じます。
日本の8%の方が偏頭痛持ちと言われ、特に女性に発症する率が高く、男性と比較すると4倍ほど差があります。原因として、質の悪い睡眠、チョコレートや柑橘類、赤ワインなどのチラミン成分の入った食べ物の過剰摂取、不規則な生活習慣、ストレス、ホルモンバランスの乱れ、低気圧、空腹、遺伝などの様々な原因が挙げられています。
症状
ズキンズキンと脈を打つように痛む方やガンガンした痛みを感じ方が多いです。頭痛以外にも吐き気を催すことがあります。偏頭痛は4時間~72時間ほど痛みが生じ、ピーク時の痛みは1~2時間程度だと言われています。
慢性化している方は、月に1~2回の痛みが発生し、頻度の高い方は週に1回~2回発作が起きます。偏頭痛は原因がストレスなどが多いため、休息を取ることで改善されます。鎮痛剤や頭痛薬を使用して我慢される方もいますが、頻繁に発症した状態になっている方は、一度医療機関を受診されることをおススメします。
対処方法
偏頭痛が起こった場合、対処方法として下記5つを実践することで頭痛緩和が期待出来ます。
- 偏頭痛の起こっている患部を冷やす
- 暗く静かな部屋で休息を取る
- チラミンを含んだ食べ物の摂取を控える
- コーヒーなどのカフェインを摂取する
- テレビ、スマートフォンを止めて目を休息させる
偏頭痛が引き起こる根本的な原因はストレスや生活習慣の乱れが多いため、質の高い睡眠やバランスの取れた食生活や生活リズムを改善すること、ストレス解消をすることが根本治療に繋がります。
緊張型頭痛(筋収縮性頭痛、緊張性頭痛)
頭痛もちの約7割は緊張型頭痛だと言われています。
首や肩こりからくる血行不良が原因となり、頭全体の筋肉が緊張収縮することで、血行不良を生じて酸素不足となり頭部に痛みが生じます。
症状
痛みは頭全体が締め付けられたような鈍痛や、キリキリした痛みが30分~7日間にかけて続きます。
頭痛以外にも、めまいやふらつき、全身の倦怠感などの症状を伴う場合もあります。緊張型頭痛の症状を訴える方のほとんどが首や肩に凝りを感じています。
対処方法
緊張型頭痛の場合も休息を取ることで改善されます。頭痛薬で一時的に緩和されますが、根本的な改善は期待出来ません。
緊張型頭痛を感じたら休息すること、適度に体を動かして筋肉をほぐしたり、体操、マッサージしたり、肩や首を中心に体を温めたり、温かいお風呂に入って血行を促進することで、頭痛の症状が緩和されます。
群発頭痛
群発頭痛は、ある一定の期間に集中して、片側のみ激しい痛みを伴うのが特徴的です。群発地震のように頭痛が起きることから群発頭痛と名づけられたと言われています。20代~40代の男性に見られやすい頭痛であり、女性の患者数と比較すると4倍ほど差があると言われています。
症状
痛みは、出産するよりも痛い、目の奥がえぐられるような痛みなどと表されるほど、激しく耐えられないほどの痛みを伴うのが特徴的です。頭痛以外の症状は涙や鼻水、充血、発汗なども現れます。痛みが始まると1ヶ月~2ヶ月ほど一定期間に毎日のように頭痛が起こります。
群発期間中は、1日に1回~2回ほど発作が起こり1回の痛みは15分~3時間ほどです。毎日ほとんど同じ時間帯に痛みを伴います。発作の頻度は半年に1回、2~3年に1回などの頻度で起こります。
アルコールを摂取することで誘発されやすくなると言われています。飲酒してから40分~1時間ほど経過した後に発作が起きる為、群発期間中はどんなにお酒好きの方でもお酒を控えると言われています。また、タバコや急激な気圧の変化なども誘発する原因となります。
対処方法
群発頭痛の治療方法としては、薬物療法と酸素吸入法です。発作時はトリプタン系薬剤を投与することで、頭痛の緩和が期待できます。しかし、群発頭痛は鎮痛剤を使用しても、効果がない場合が多いです。
その他の方法として、病院で純酸素吸入法も取り入れられます。100%の酸素をフェイスマスクを通じて投入する治療方法で、酸素を吸入してから5分ほどで痛みが和らぐ場合が多いです。
眼精疲労
眼精疲労とは、疲れ目の慢性化したものです。日ごろパソコン業務や勉強、TVゲームなどを行っている方は、眼精疲労になりやすいです。目の周りには筋肉が集まっています。その為、目を使いすぎると、この筋肉が疲れて凝り固まった状態が引き起こされます。
凝りが引き起こることで血行不良が生じて肩や首、頭の筋肉も血行不良を引き起こし、酸素不足や老廃物が溜まり始め、痛みを引き起こします。また、精神的ストレスも血流を悪くし、眼精疲労を招きます。
症状
眼精疲労は頭痛以外に、光をみると、まぶしい、目がぼやける、目が霞む、目の奥が痛い、視力低下など様々な目の症状が現れるのが特徴的です。他にも肩こりや発熱、吐き気や倦怠感などを引き起こす場合もあります。
対処方法
眼精疲労による頭痛の場合は、目のツボマッサージをして血流をよくすることで、頭痛緩和が期待できます。
目のツボマッサージの仕方
- 目をギュッとつぶり、パッと見開く動作を5秒間ずつ交代で行います
- 目を左回りと右回りにグルグルまわします
- 目のツボを刺激する為、目頭から目尻に向かって指のひらで押してマッサージをします
- 目の上に温かいタオルを乗せて10分間目を休息させます
- 冷たいタオルを乗せて10分間目を休息させます
- 最後に肩、首などをマッサージしたり、まわすしてほぐします
上記で紹介した頭痛の場合は、ツボ押しやストレス解消法を試したり、休息をとったり、生活習慣を変えることで痛みを改善することが出来ます。
しかし、クモ膜下出血、脳出血、脳腫瘍、髄膜炎などの脳疾患が原因となり頭痛を起こしている場合は、病院で治療が必要になります。頭痛の頻度が多い方、激しい頭痛を伴う方、吐き気を伴う頭痛を感じたら、すぐに頭痛外来もしくは脳神経外科を受診しましょう。
眼精疲労については、眼精疲労が原因の頭痛って?改善方法やケア方法を紹介!を参考にしてください。
脳疾患が原因で生じる前頭葉の痛み
ここでは、脳疾患が原因となって起こる前頭葉で起こる痛み、症状と治療方法についてご紹介します。
くも膜下出血
くも膜下出血は、脳動脈瘤の破裂により、脳を覆っている、くも膜と軟膜の間に血液が流れ出る状態です。脳動脈瘤とは動脈に出来るコブのことで、脳動脈瘤は動脈の枝分かれしている部分に発生しやすく、大きくなると周りにある神経や脳の働きを妨害し始めます。
しかし、ほとんどの場合は動脈が切れるまで無症状の方が多く、くも膜下出血による頭痛を感じて初めて気づく方がほとんどです。くも膜下出血は、脳動脈瘤の破裂による原因が8割~9割を占めると言われ、その他の原因は脳血管の壁が破裂して出血する脳動脈解離や怪我、血液などの病気で血が止まりにくい為に出血するなどの原因が挙げられています。
脳は脳を保護している3つの膜が存在し、外側から、硬膜、くも膜、軟膜と呼ばれています。くも膜と脳の間には、太い動脈や脳脊髄液が循環している為、血管が破れると脳脊髄液と血液が混ざった状態になります。この出血が保護膜を刺激することで痛みを引き起こします。
症状
痛みは、激しい痛みを伴い「突然バットで殴られたような痛み」や「経験したことない激痛が走る」などと説明する患者が多く、嘔吐したり意識障害を起こす方もいます。
一部の方には、手足に麻痺が現れる方もいます。頭が痛いと言って頭痛を訴えた方が直後に、気を失って倒れたり、嘔吐した場合は、くも膜下出血の可能性が高いので、すぐに救急車を呼ぶことが重要です。
詳しくは、くも膜下出血の前兆をチェック!頭痛に要注意?を読んでおきましょう。
治療方法
くも膜下出血が起こった場合、再発防止の為の手術とリハビリを行います。脳動脈瘤が原因ので引き起こされた、くも膜下出血の場合は、再発作がいつ起きてもおかしくない状態にあります。破裂した脳動脈瘤は再度破裂しやすくなり、破裂してから24時間以内は特に注意が必要と言われています。
再破裂すると、出血量が増えて脳へのダメージが更に大きくなり、大きな後遺症を残したり、生命の危険にさらされる場合があります。再発を防止する為に、脳動脈瘤に流れる血流をとめる手術を行います。手術方法は2つあり、1つ目は開頭をして脳動脈コブの付け根部分を金属製のクリップで閉じるクリッピング術、2つ目は付け根の大腿動脈から動脈瘤までカテーテルを差し込み、プラチナ製のコイルを入れて血液の流れを止める、コイル塞栓術があります。
手術方法は、脳動脈瘤の大きさや発症した場所、年齢などを考慮して検討されます。また、くも膜下に流れた血液は、脳に影響を与えるだけでなく、脳動脈が細くなる脳血管攣縮を引き起こします。血管が細くなると、酸素や栄養素が不足し脳梗塞を招きやすくします。その為、4日~15日程度は脳梗塞が起こらないか十分に注意して観察する必要が出てきます。
脳出血
脳出血は、脳内の血管が何かしらが原因となって破裂して出血し、その血液が脳を圧迫する状態のことです。高血圧が原因となって脳出血を起す確率は全体の7割だと言われています。
高血圧以外では脳動脈瘤などの脳の疾患や、脳の外傷、血液疾患が原因として挙げられています。近年では高血圧の内科的治療が成果をあげていることもあり、脳出血の死亡率は減少しています。
症状
頭痛以外に嘔吐、意識障害、片麻痺、同名性半盲などの症状が起こります。血腫(けっしゅ)が大きくなると、内圧が高まり脳ヘルニアを起し、重症の場合は死に至る場合があります。
また、脳出血により後遺症として運動障害や認知症などの二次障害が発生する可能性も高いです。詳しくは、脳出血の前兆とは?頭痛やしびれなどの症状に注意!を読んでおきましょう。
治療方法
高血圧性脳出血の場合は、血腫による脳へのダメージを軽減させ、再出血や血腫拡大を防ぐ為の治療を行います。
主な治療内容は内科的治療による、頭蓋内圧亢進に対して抗浮腫薬を投与、高血圧の管理、電解質のバランス管理で、必要に応じて外科治療を行います。
脳腫瘍
脳腫痕とは、脳内に腫瘍が出来ることを指し、それが脳内を圧迫することで痛みが起こります。
脳腫痕が出来る原因は明らかにされていませんが、食生活やストレスなどが原因として考えられています。脳腫瘍は良性と悪性があり、悪性のもの方が出来やすいと言われています。
症状
脳腫痕が出来た場合、頭痛以外に吐き気や嘔吐などの症状も現れます。脳腫痕が出来たことで、頭蓋の内圧が高まり、このような症状が起きます。急激に頭痛が起こるわけではなく、毎日定期的に頭痛が発生します。
特に寝起きに頭痛、吐き気、嘔吐を伴いやすいと言われています。症状は日に日に悪化し、頭痛が強くなってきたり、嘔吐の回数が増えてきます。嘔吐の仕方は急に噴射するように嘔吐をする為、放射性嘔吐と呼ばれています。嘔吐した後は、気分がスッキリするのが特徴です。また、腫瘍が出来る場所によっては、話ずらい、歩行困難、手足のしびれや麻痺、視界が狭まる、人格が変わる、痙攣発作、異常な喉の渇きなどが起こる場合もあります。
詳しくは、脳腫瘍の初期症状について!吐き気や頭痛に要注意!を参考にしてください。
治療方法
発症する場所や年齢によって治療方法や治療期間が変わってきます。基本的には、良性腫瘍でも悪性腫瘍であっても、外科手術に腫瘍を摘出する必要があります。良性のものの場合、全摘出すれば完治することも多くあります。
しかし、腫瘍の出来る場所によっては、摘出することで脳にダメージを与える場合もあります。その場合は全てを取り除くことは難しいと言われています。
髄膜炎
脳や脊髄は髄膜と呼ばれる薄い膜で覆われています。この膜がウイルスや細菌感染することで、髄膜炎を引き起こします。ウイルスが炎症を引き起こすものを無菌性髄膜炎(ウイルス性髄膜炎)、細菌で炎症を引き起こすものを、細菌性髄膜炎(化膿性髄膜炎)と呼びます。
発症後2日以内に発症した患者の5~10%が死に至る危険な疾患です。成人全体の致死率は20%で、生存者のうちの30%が様々な後遺症が残っていると言われています。
症状
髄膜炎が起こると激しい頭痛がずっと続くのが特徴です。頭痛は髄膜炎の初期の段階で起こります。他には、40度以上の発熱、全身の倦怠感、寒気、食欲不振、吐き気や嘔吐などの症状が挙げられます。
また、首筋あたりが固まったように動かなくなり、前に曲げずらい状態や硬直した状態になります。症状が悪化すると、意識障害や痙攣を引き起こし、命の危険が伴います。
治療方法
髄膜炎になった場合、入院治療が必要になります。内科的治療が主な治療方法で、抗生剤を静脈内に投与します。しかし、髄液や脳は体の奥深い部分に位置する為、届きにくく効果が現れにくいと言われています。
詳しくは、髄膜炎に大人がかかるとどんな症状?治療方法は?を読んでおきましょう。
おわりに
頭の前半分の領域に痛みを感じた場合、ただの風邪かなと判断してしまうのは危険です。ほとんどの痛みは、風邪や疲労など一時的なもので起こります。しかし、頻度が高く、定期的現れている場合は、頭痛持ちになっている可能性があります。
定期的に現れている場合は、原因のほとんどが生活習慣が関係しています。鎮痛剤を服用して我慢している方も多いですが、長期間続いたり、頻繁に発生する場合は、病院を受診しましょう。また、脳疾患からくる頭痛は頭痛以外に吐き気を伴うことが多くあります。
このポイントを見逃さずに、吐き気を伴う頭痛を感じた場合は、頭痛外来もしくは脳神経外科を早急に受診することが早期治療に繋がります。
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