ニュースや新聞で一度は聞いた事のある「くも膜下出血」。死亡原因としてもよく聞かれ、とにかく恐ろしい病気である事はご存知の通りです。これまではいきなりかかる病気とされていましたが、実はいろいろな前兆がある事が分かって来ています。
また、罹りやすい体質や生活習慣についても傾向が見られます。前兆を見過ごさず予防的な治療を受ける事で回避出来、発症した場合にもすぐに対処できるという事で、ぜひ気を配るべき点についてまとめました。
くも膜下出血とは
人の脳は三層の髄膜で覆われており、その中間にあるのがくも膜です。
くも膜下出血の理由は脳動脈瘤の破裂です。脳とくも膜の間にある脳動脈瘤が破裂して出血が起こると、くも膜の下に血液が広がるためにくも膜下出血と呼ばれています。
破裂すると非常に重篤な症状となるケースが多く、約半数が破裂と同時に死亡し、病院で治療を受けても正常に社会復帰ができるのはその半分ともいわれています。処置が遅れる事で、再出血を起こす場合もあります。
このように、頭蓋の内圧が上がる事や脳が血液に晒される大変恐ろしい病気であるにも関わらず、脳動脈瘤自体はよほどの事でない限りは何の症状もないため、健康に見えていた人が突然倒れる事があります。
くも膜下出血の症状と前兆
くも膜下出血の症状や前兆について紹介します。
出血時の症状
出血が起こった時に起こる症状は以下の症状です。
・強烈な頭痛
・意識障害
・嘔吐
・目の痛み
バットで殴られたような痛みといわれるような非常に強い痛みが出るのが特徴です。ただし、逆に頭痛を感じないという例も見られます。また、突然意識を失い、いびきをかいて寝たように見えるという例も見られます。
くも膜下出血の前兆とは
突然起こる病気でありどうにもならないと思われていたくも膜下出血ですが、特徴的な前兆と考えられる症状があります。すぐに医療機関を受診する事が大変重要な病気なので、前兆として上げられる症状を確認しておきましょう。
・血圧の乱れ
急に血圧が上がったり下がったりする症状を起こした何日か後に、くも膜下出血を発症したという例が多く見られます。これだけで判断するのはなかなか難しいですが、普段から自分の血圧を知っておくと安心です。
・頭痛や目の異常
くも膜下出血の前には脳動脈瘤があるため、前段階として動脈瘤から少しずつ出血したり、こぶが周りの神経を圧迫する事で様々な症状が見られる場合があります。
急な頭痛やもやもやするなどの違和感、目が痛んだり物が二重に見える、まぶたが重いなどの症状がある場合は脳動脈瘤の影響である可能性があります。
軽い症状だと感じられても脳で何か起こっている事には変わりないので、すぐに医師の診断を受けるべきです。
特に気をつけるべき人
くも膜下出血を起こしやすい人には以下の特徴があります。自分や周りの人が当てはまる場合は予防策を講じ、前兆を見逃さないよう気をつけましょう。
高血圧
くも膜下出血は血圧との関わりが非常に大きい病気です。動脈瘤の部分はもろくなっているので、血圧が上がるとその部分から出血する恐れがあります。力んだ時等に血管が切れやすいというのはこのためですが、普段から血圧が高いとよりこの危険性が増します。
喫煙
ニコチンにより血管が収縮する事で血圧が上がるため、上記と同様に動脈瘤が破裂するリスクが上がります。血管の収縮が一時的だったとしても、血管がだんだんダメージを受けている事には変わりがないので、やはり喫煙はリスクになります。
また、くも膜下出血については一日に吸っている本数が多くても少なくても、リスクは同程度です。減煙ではなく禁煙しなければいけないようです。
遺伝
他の多くの病気がそうであるように、脳動脈瘤には遺伝的な要素が大きく関わります。
破裂する前に発見できれば対処ができるので、親戚などで脳動脈瘤、くも膜下出血を起こした方がいらっしゃる場合は、若いうちからの健診を受けておくと安心です。
輸血歴
輸血歴のある人はない人と比べて、くも膜下出血死亡リスクが高いという研究結果が出ています。男性で特にこの傾向が高いと言われています。
ただ、理由については輸血を介した感染ではないか、免疫が低下したせいではないか等、まだ諸説ある状態です。
ストレス
女性の場合は、ストレスが大きなリスクになるという研究結果が出ています。
ストレスによって飲酒や喫煙の量が増えるせいもありますが、精神的なストレスで血管の内皮が傷つく可能性まで指摘されており、ストレスは非常に大きなリスクとなります。
くも膜下出血の予防
では、くも膜下出血の予防方法について紹介します。
生活習慣の見直し
リスクを高める要素から考えると、
・禁煙
・過剰な飲酒を避ける
・血圧を上げる塩分の多い食事を避ける
・ストレスを溜めすぎない生活を送る
といった対策が予防となるといえるでしょう。
また、高血圧気味の方は日頃から血圧を測り、いつもと違う変動が合った場合はすぐに診察を受けましょう。
食事
血管を丈夫にする食材として「サ・カ・ナ・ス・キ・ヤ・ネ」という物があります。
サ(魚の脂)…血液をさらさらにする。サンマ、アジ、ブリなど。
カ(海草)…血液をどろどろにする成分の吸収を抑える。昆布、わかめなど。
ナ(納豆)…血の塊を溶かす。
ス(酢)…体内の老廃物を排出し、血管をきれいに保つ。
キ(きのこ)…コレステロールを下げ、血液をさらさらにする。
ヤ(やさい)…塩分を排出し、ビタミンにより血管を守る。ブロッコリー、ほうれんそう、トマトなど。
ネ(ねぎ)…血をさらさらにし、血液凝固を抑える。
身体に良いでおなじみの食材がずらりと並んでいます。くも膜下出血についてもこれらの食材が予防に役立ちます。
和食は身体に良いといわれますが、このリストを見ているとそれも納得です。
ねぎも野菜の一つではありますが、特に血をさらさらにする働きを持っているので、野菜とは別枠でぜひ食事に加えてみて下さい。
脳ドック
リスクが高い方や遺伝的に心配な方は、ぜひ脳ドックを受けましょう。
動脈瘤を発見できるのはもちろん、定期的に受診する事でその動脈瘤が大きくなっているのかどうか等様々な方面からの診断を受ける事ができます。
予防治療
動脈瘤が見つかった場合には治療を行う事があります。国によって考え方がいろいろありますが、日本では大体2~3mmの動脈瘤は手術をせずに経過観察をする事が多いようです。また、変な形をしているなど破裂のリスクが高いものやサイズの大きいものは治療を行います。
治療は動脈瘤の根元を洗濯ばさみで挟むクリッピングや、こぶの中にコイルを詰めるコイリングなどがあります。どちらもぼこっと出っ張っている部分をなくす事で破裂のリスクを下げる方法です。成功率は非常に高い方法ですが、何を選んでも頭を開ける事になるので慎重な診断が必要です。
まとめ
脳で起こり命の危険にもなりうるくも膜下出血は非常に恐ろしい病気です。なりやすいタイプの方は特に、前兆としてどのような症状が出るかを知っておき、何か合った場合に対処できるようにしましょう。強い頭痛や吐き気がある場合はすぐに救急車を呼び、意識障害が起きた場合は周りの人に助けを求める事を覚えておいて下さい。
日本では現在、脳ドックで早めに脳動脈瘤を見つけて処理するという方法が主になっているようです。また、動脈瘤に対する治療法も様々なものが日々進化しています。早めに脳ドックを受診し、破裂する前に治療する事が大切です。
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