上腕骨近位端骨折とは?症状や治療方法を知っておこう!

高齢者の骨折には「4大骨折」と呼ばれるものがあります。①股関節の「大腿骨近位部骨折」、②手首の「橈骨遠位端骨折」、③背骨の「脊椎圧迫骨折」、そしてきょう紹介する④腕の骨折「上腕骨近位端骨折」です。

そもそも「上腕骨ってどこ?」「近位端って何?」というところから解説します。

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手の骨とは

肩

「手はどこ?」と言われたら、大抵の人は、肩から手の指の先までを指すのではないでしょうか。この「肩から手の指の先」まではさらに、「肩から肘」「肘から手首」「手首から指」の3つに分かれます。

「上腕骨」は「肩から肘」の1本の骨の名前です。ちなみに「肘から手首」までを「前腕骨」といいます。

上腕骨とは

上腕骨は太くて長い骨です。大人ですと30センチ以上あります。少し大げさに表現すると、「太い棒の両端に球体を付けた」ような形をしています。

上腕骨のうち、球体と球体の間の棒のことを「上腕骨幹部」といいます。肩をつくっている球体を「上腕骨近位端」といいます。肘をつくっている球体を「上腕骨遠位端」といいます。脳からの距離によって「近位」と「遠位」と命名されています。

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上腕骨近位端骨折

こけし

上腕骨の「近位端」という部分が折れることを、上腕骨近位端骨折といいます。

折れやすい構造

突然ですが、こけしを想像してみてください。もしこけしを地面に落としたら、どこが割れやすいでしょうか。首の部分ですよね。頭の部分も、胴体の部分も、床に落としたくらいでは割れないでしょう。

首の部分が最初に割れるのは、割れやすい構造になっているからです。こけしの胴体はまっすぐです。それが首を境に急に球体に変わります。形が急に変わると、変わった部分に力が集中してしまうのです。

上腕骨は、こけしと同様に、まっすぐな棒と球体でできています。ただし上腕骨の球体は、近位端と遠位端の2個付いていますが。ですので上腕骨も、衝撃が加わると棒の形が球体に変わる部分が折れやすいのです。

では次に、同じ球体でも、なぜ遠位端より近位端の方が折れやすいのかみてみます。

遠位より近位が折れやすい理由

肘をつくっている上腕骨遠位端より、肩をつくっている上腕骨近位端の方が折れやすいメカニズムは、次の通りです。

人は転倒しそうになったとき、とっさに「手」を地面に向けて出すでしょう。「手のひら」が最初に地面に着けば手首が骨折しますが、「肘」が最初に地面に着いても肘は滅多に骨折しません。

プロレス技の「エルボー」を思い出してください。エルボーは肘を突き出して相手のレスラーを殴る技です。しかしエルボーを繰り出したレスラーの肘は全然平気です。肘はそれくらい強いのです。

ですので、高齢者が転倒して肘を地面に着いたとき、その衝撃は肘を通りぬけて、肩に向かって走ります。そして上腕骨の弱い部分である「上腕骨近位端」が折れるのです。

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上腕骨近位端骨折の治療【手術編】

釘

上腕骨近位端骨折の治療は、大きく分けて「手術」と「保存療法」に分かれます。まずは、手術からみてみましょう。いずれも全身麻酔をして行います。

髄内釘固定法

手術のうち「髄内釘固定法」は、メスで患部を切り開き、上腕骨をむき出しにします。そこから上腕骨の近位端から遠位端に向けて直径5ミリ程度の細長い「穴」を掘ります。骨の中に「貫通しないトンネル」をつくるのです。ここに「細長い釘」を挿入し、骨の外からボルトでとめます。

例えば上腕骨近位端骨折で、3つパーツに分かれてしまったとします。その3つのパーツすべてをボルトで「細長い釘」に止めれば、3つが再び1つの上腕骨に戻るのです。

「髄」は、骨の内部のことです。「細長い釘」を髄の中に埋め込むので「髄内釘」というのです。確実に固定できるので、安定感があります。

プレート固定法

プレート固定法も、金属でばらばらになった骨をつなぎ止めるという点では、髄内釘固定法と同じです。ただ、骨の髄に「トンネル」を掘らなくてよい分、髄内釘固定法よりはマイルドな手術といえます。

上腕骨に「板状の金属」=「プレート」を張り付け、それをボルトで骨に止めます。こうした治療器具の進化は目を見張るものがあり、より自然に近い形で固定できるようになっています。

人工骨頭置換術

髄内釘固定法もプレート固定法も「上腕骨を補強」する治療法です。比較的軽症の患者に行われます。一方「人工骨頭置換術」は、上腕骨近位端の損傷が激しく「添える」だけでは肩を動かすまで回復しない場合に行われます。「上腕骨を人工物に置き換える」のです。

まず上腕骨近位端を完全に除去します。そこに人工の上腕骨近位端を取り付けます。かなり大がかりな手術ですが、手術後の肩の動きはさらに確実になります。

ただ、所詮は人工骨ですので、数十年で劣化する欠点があります。その場合、再手術が必要になるのですが、上腕骨近位端の人工骨頭置換術を受ける人は、最初の手術を受ける時点で高齢の場合が多いので、再手術に耐えられない可能性があります。手術のタイミングの見極めはとても難しいです。

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上腕骨近位端骨折の治療【保存療法編】

三角

保存療法とは、手術をしない治療という意味です。上腕骨近位端骨折の患者は、高齢者が多いです。高齢者の場合、全身麻酔ですら危険がともなうので、整形外科医は極力、手術以外の治療を選択したいと考えます。

三角巾とバストバンド

ギプスすら使わない医師もいます。使うのは三角巾とバストバンドです。バストバンドとは、肋骨が折れたときに肩と胸を固定するバンドです。これをかけてから、さらに三角巾で腕全体を覆います。

とても簡単な治療法ですが、もちろん重症の場合は採用されません。変な言い方になりますが「うまい具合に折れた」場合、これだけで1~2週間で痛みが取れます。

リハビリ

痛みが取れたら、医師はレントゲンで骨折場所の治り具合を見て、リハビリを処方します。最近は、完全に治りきる前にリハビリを指示する医師が増えています。上腕骨近位端骨折でも、肩を動かさなければ、リハビリはいつでも行えます。肘を動かしたりすることで、いよいよ肩を動かすリハビリ本番に備えることができるのです。

治りが遅いが

三角巾とバストバンドとリハビリによる治療は、生活に支障がなくなる程度まで回復するのに1年近くかかります。気の長い治療といえます。しかし医師の指示通りにリハビリを行うことで、大きな手術によるリスクを負うことなく、確実に治ります。大変ですが、高齢者向きの治療といえるでしょう。

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治療法の選択

高齢者

手術にするか保存療法にするかは、傷の具合だけでは決まりません。医師と患者、そして患者家族がじっくり話し合って選択します。

生活の質

治療法の選択で重視されるのは、QOLです。「生活の質」という意味です。上腕骨近位端骨折は、いわゆる「命に関わらない病気」です。ですので治療の最大の目標は、生活の質の「向上」、または「維持」、または「最小限の低下」となります。

この3つの選択は、簡単ではありません。生活の質の「向上」が見込まれる治療のリスクが高いとき、場合によっては治療後に生活の質が低下してしまうことがあります。そうなると「維持」的治療、または「最小限の低下」でくいとめる治療を選択しておけばよかったと後悔することになります。

上腕骨近位端骨折の手術は、骨を露わにするので、感染症などのリスクがあります。また全身麻酔というリスクも小さくありません。生活の質の向上とリスクが背中合わせの治療といえます。

年齢

上腕骨近位端骨折を含む高齢者が起こしやすい病気は、治療を選択するときに「年齢」という要素が重要になります。残りの寿命の年月と、生活の質の両方を考慮しないと、治療によって老後の生活が悪化することになりかねません。実際、骨折は治ったけどその後寝たきりになったという例も数多く報告されています。

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まとめ

高齢者の骨折を考えるときに重要なのは、治療法より予防です。

家族や介護職員は、高齢者の歩き方、立ち方、座り方をつぶさに観察して、危険が潜んでいないかどうかを検討する必要があります。高齢者自身も、動き方を見直す意識を持つ必要があります。

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