テレビを見ているうちに眠ってしまう。講義を聞いているうちにウトウトする。御飯を食べた後は眠くてたまらない・・・なんてこと、よくありますよね。睡眠不足の時などはもちろんですが、そうでなくても、快適な状態にいると、なんとなく眠くなります。
でも、昼間、ウトウトする時間が長ければ、要注意です。「傾眠傾向」という意識障害の1種かもしれません。普通の居眠りとは違うのです。特に、認知症高齢者にはよく見られる症状の1つです。
傾眠傾向の原因と症状、治療法、認知症との関連と対応の方法について、お伝えしますね。
傾眠傾向とは?
「傾眠傾向」は、軽度の意識障害です。「傾眠症」とも言います。
放っておくと、ついウトウトしてしまいますが、本格的な入眠状態ではないので、弱い刺激(声をかける・肩をたたくなど)で簡単に覚醒することができます。
[意識障害]
「意識障害」とは、意識が混濁して、外部からの刺激(痛みや大声での呼びかけなど)に反応しなくなったり、状況を正確に把握できなくなったりする状態のことです。
外部から与える痛み刺激や呼びかけに反応しなくなることを「意識混濁」、幻覚や錯乱が起きることを「意識変容」と言います。
意識障害は、その程度によって5段階に分けられます。
➀意識清明
意識が正常な状態です。問題なく意思の疎通も状況把握も行うことができます。
②傾眠
ウトウトしている状態です。肩をたたいたり、呼びかけたりすれば、簡単に目を覚まします。放っておけば、また眠ってしまいます。
③昏迷
強い痛み刺激や大声で呼びかけたりしないと、なかなか覚醒しません。
④半昏睡
強い痛みなど不快な刺激を与えると、覚醒しなくても、手で払ったり、叫び声を上げたり、「逃避反応」を起こします。
⑤昏睡(深昏睡)
最も重度の意識障害です。外部からのどのような強い刺激に対しても、反応しません。
[傾眠傾向の主な症状]
「傾眠傾向」は「傾眠症」ともいいます。「昏蒙(こんもう)」とほとんど同じ意味です。
意識が低下しています。ウトウトしていて、すぐに眠ってしまう状態です。外部からの軽い刺激、肩や腕をたたいたり、呼びかけたりする程度で、簡単に覚醒します。
目が覚めても、注意散漫で、無気力です。応答や行動がノロノロしています。眠る前の記憶がなかったり、曖昧(あいまい)だったりします。放っておくと、また眠ってしまいます。目が覚めた時、どこにいるのか、今日は何月何日か、わからなくなることが多いようです。特に認知症の患者さんは、見当識障害が発症するので、こうした症状が強くなります。
傾眠が重度になると、嗜眠(しみん)、ついで昏眠(こんみん)になります。さらに重症化すれば、昏睡状態に陥ります。
嗜眠
放っておくと、すぐに眠ってしまい、かなり強い刺激を与えないと、覚醒しません。反応しない事も多くなります。昏迷と同じようなもので、中程度の意識障害です。
かなり強い刺激とは、つねったり、大声で呼びかけたりすることです。
昏眠
半昏睡と同じ意味です。精神活動はほとんど失われています。強い外部刺激には、逃避反応などを示しますが、眠ったまま排泄するようになり、言葉による接触はできません。
居眠り・うたた寝
傾眠傾向と居眠り・うたた寝はちがいます。
居眠りは、座ったままウトウト眠りこんでしまうこと。うたた寝は、正式に寝床に入らず、ソファや畳の上などに横になったまま眠りこんでしまうことです。
居眠りもうたた寝も、自分で目を覚ますことができます。ちょっとした物音などでも、目が覚めます。目が覚めると、意識がぼんやりしていることはありません。自分が眠ってしまったことを自覚しています。
傾眠傾向の原因
傾眠傾向が発症する原因は、脳の神経細胞が損傷・破壊されることが多いようです。そのため、傾眠傾向は認知症の症状の1つになります。内科的疾患や薬剤の副作用が原因になることもあります。
傾眠傾向の治療や患者さんへの対応は、原因によって異なります。
[認知症]
認知症は、脳の神経細胞が何らかの原因で損傷・破壊されることで発症します。アルツハイマー型認知症やレピー小体型認知症のように、脳にある種のタンパク質が蓄積して脳神経細胞を破壊し、脳を委縮させた結果発症する場合と、脳血管性(型)認知症のように、脳出血や脳梗塞により血行が滞り、酸素や養分が欠乏するため、脳神経細胞が破壊されて発症する場合があります。
アルツハイマー型認知症は女性に多く発症し、徐々に進行していきます。脳血管性認知症は、脳血管障害に伴って、突然発症します。
認知症の症状には、中核症状と周辺症状があります。傾眠傾向は周辺症状の1つ睡眠障害の1種です。認知症を発症すると、体内時計を調整する神経伝達物質の量が減少します。そのため、睡眠障害を起こしやすくなります。
一般的に、高齢者は眠りが浅くなります。朝早く目覚めたり、夜中に起きたりすることが珍しくありません。認知症高齢者は、体内時計の調整が不十分なので、余計に、夜中に目覚め、日中傾眠傾向になる「昼夜逆転」が起きやすくなるのです。
認知症になると、時間・年月日・自分の居場所がわからなくなります(見当識障害)。朝・昼・晩の区別もつきにくくなり、傾眠傾向が起こりやすくなります。また、認知症が悪化すると、意欲が低下して、無気力になり、常にウトウトしているようになります。傾眠傾向になりやすい状態です。
認知症と傾眠傾向については、次の「認知症と傾眠傾向の関係」で書きますね。
[慢性硬膜下血腫]
「慢性硬膜下血腫」とは、強く頭を打ったために、頭蓋骨の下の硬膜と脳の間に血が溜まってできた血腫(血の塊)です。血腫が脳を圧迫するので、様々な脳の機能が障害されます。
頭を打った時は、何でもありません。1~2ヶ月後に、頭痛や歩行障害、認知症症状が発生します。認知症に伴って、傾眠傾向が発症します。
血腫の小さいうちは、頭痛が起きます。血腫が大きくなると、頭がボーッとしてはっきりしない意識の低下、物覚えが悪くなる記憶力低下など、認知症症状が現れ、性格や行動に変化が生じます。さらに血腫が大きくなると、片足が麻痺するなどの歩行障害や傾眠傾向などの意識障害が発生します。
血腫は、小さければ自然消滅し、症状も消えますが、大きくなると外科手術などの治療をしなければならないこともあります。
慢性硬膜下血腫は、高齢者に限らず、だれにでも起こる病気です。頭を強く打った後に、心身に変化が起きた場合は、すぐに神経内科か脳神経外科・脳外科を受診してください。
[内科的疾患]
肝臓や腎臓など内臓の疾患で代謝異常が起きたり、ウィルスや細菌の感染で高熱を発したりすると、1日中ぼんやりした状態になることがあります。傾眠傾向になることもあります。今日が何月何日なのか、自分のいる場所がわからなくなることもあります。
内臓の疾患が治ったり、発熱が収まったりすれば、傾眠傾向などの症状も消えます。中高年の場合は、認知症との区別がつきにくいので、要注意です。
[薬物の副作用]
病気を治療したり、体調を整えたりするために、薬を服用しますが、薬の中には眠気を催すものが少なくありません。薬物によっては、傾眠傾向や過眠症を引き起こすことがあります。
ことに抗ヒスタミン剤・抗てんかん薬・抗精神病薬は、傾眠や過眠症を引き起こしやすいようです。抗ヒスタミン剤は、花粉症やアレルギー性鼻炎などによく処方されます。身体の機能を覚醒・活性化させるヒスタミンを抑制するので、どうしても眠くなるのです。
精神安定剤やパーキンソン病の治療薬は意識障害を引き起こすことがあり、傾眠傾向が生じることがあります。
薬を服用した時、薬が変更された時に、傾眠症や過眠症が起きたら、すぐにお医者さんに伝えることが必要です。
[うつ病]
うつ病は、長期間落ち込んだ気分が続く精神疾患です。脳の神経に情報を伝える神経伝達物質が減少すると、脳の機能に異常が生じます。そこへ本人の性格や生活環境、日常生活から生じるストレスなどが複雑に絡み合って、うつ病が発症すると考えられています。
脳の神経伝達物質が減少するため、意識障害が起こり、傾眠や過眠を引き起こします。これを、「うつ病性傾眠」といいます。
うつ病性仮性認知症
高齢者がうつ病を発症すると、その症状から認知症と間違えることが多くなります。これを「うつ病性仮性認知症」といいます。ただ、記憶障害は、ほとんど見られないか、極めて軽度です。
[過眠症]
傾眠傾向と似たような症状の睡眠障害が「過眠症」です。日中、強烈な眠気に襲われて眠りこんでしまう病気です。原因はまだ不明で、治療法も確立されていません。
過眠症には「特発性過眠症」「反復性過眠症」「ナルコレプシー」があります。
特発性過眠症
夜間の睡眠が6~10時間と、十分にとれていても、日中、眠くてたまらず、1~4時間眠ってしまいます。人によっては、夜間の睡眠が10時間以上ということもあります。つまり、夜に何時間眠ろうと関係なく、昼間、長時間眠ってしまう病気です。
夜間も日中もぐっすり眠るノンレム睡眠が主体です。ノンレム睡眠とは、身体も脳も休んでいる状態の深い眠りです。しかし、日中、眠ってしまった後、目を覚ましてもスッキリした気分になれず、眠気がとれません。
覚醒した時、自分のいる場所や状況、日時がわからなくなることがあります。
反復性過眠症
とにかく眠り続けます。1日に16~18時間、中には20時間も眠り続け、トイレと食事の時しか起きません。
長時間眠る傾眠期が3~10日間続くと、一般的な睡眠時間の間欠期に戻ります。そして、数ヶ月経つと、また眠気が襲ってくる傾眠期に入ります。傾眠期と間欠期が周期的に繰り返されるので、「反復性過眠症」「周期性過眠症」といいます。
間欠期には、過眠症症状は全くありません。
ナルコレプシー
睡眠障害の代表というと、「不眠症」と「ナルコレプシー」です。
ナルコレプシーは、傾眠症と似て、夜間の睡眠は浅く、しょっちゅう目を覚まします。昼間、強い眠気に襲われて眠りますが、20~30分程度で目が覚めます。眠りもレム睡眠で、脳は覚醒時と同じように活動しています。
昼間、眠ると、一応スッキリした状態になります。笑ったり、驚いたりという感情の高ぶりとともに突然身体の力が脱けてしまう「情動脱力発作」が起きます。また、寝入りばなに、身体が自分で動かせない金縛り状態になる「睡眠麻痺」が生じます。
認知症と傾眠傾向の関係
認知症の患者さんによく見られる症状の1つが傾眠傾向です。認知症は、脳の神経細胞が破壊されて発症しますが、患者さん本人の性格や環境によって、現れる症状が異なります。
[認知症の症状]
認知症の症状は、中核症状と周辺症状があります。
中核症状
脳の神経細胞が破壊されたことによって発生する症状です。認知症の患者さんには、だれにでも生じる症状です。
(記憶障害)
直近の記憶から昔の記憶まで、スッポリ抜け落ちてしまいます。新しいことが覚えられなくなったり、人の名前などが思いだせなくなったり、物忘れが激しくなったりします。昔経験したことや、服の着方・料理の仕方なども、忘れてしまいます。
(見当識障害)
「見当識」とは、自分が置かれている状況を把握・認識する能力です。時間や季節がわからなくなります。今日が何月何日か、何曜日か、今、何時なのか、季節がいつなのか、わからなくなります。朝・昼・晩の区別も難しくなります。
自分がどこに居るのか、場所がわからなくなります。迷子になったり、徘徊したりするようになります。自分の相手がだれなのか、わからなくなります。親しい知人・友人も、家族もわからなくなり、進行すると、鏡に映る自分の顔がわからなくなります。
日時や場所がわからなくなると、傾眠傾向が発症しやすくなります。
朝・昼・晩の区別がつかなくなるため、昼夜逆転が起きやすくなります。昼間は傾眠傾向が生じて、ウトウトした状態が続き、夜になると、大声で叫んだり、大音量でTVをつけたり、仕事に行くと言い出したり、家から出て行って徘徊したりするようになります。
傾眠傾向があると、目覚めた時に月日や場所がわからなくなりますが、認知症の患者さんは見当識障害があるため、混乱状態が強くなります。詳しくは、見当識障害ってなに?症状や原因を知ろう!対応策や予防法、治療方法は?を参考にしてください。
(実行機能障害)
判断力が低下して、行動して目的を達成することができなくなります。服を着る場合、何のために、どの服を選べばよいのかわからず、服をコーディネートすることができません。
(高次機能障害)
失語・失認・失行です。失語とは、聞く・読む・話す・書くができなくなります。
失認とは、身体の機能は正常ですが、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚による認知が正しく行われず、状況を把握できない状態です。
失行とは、身体に障害がないのに、目的を果たすためにどう行動してよいか、わからなくなることです。ズボンをはきたいのに、はき方がわからない状態です。
周辺症状
「行動・心理症状(Bhavior al and Psychological Symptoms of Dementia)」略してBPSDといいます。周辺症状は、認知症患者さん本人の性格やその環境(生活環境・社会環境)により異なるので、十人十色、同じ症状はないと言ってもいいほどです。でも、よく見られる症状というものが、いくつかあります。
(徘徊・失禁・弄便)
見当識障害のため、自分の居る場所や自宅の場所がわからなくなり、あちらこちら、うろつき回るようになります(徘徊)。
尿意や便意を感じる機能が低下するため失禁しやすくなります。また、トイレの場所がわからなくなって、失禁することもあります。
失禁を自分で始末しようとしたことから、素手で便をいじったり、服や体に塗りつけたりする弄便(ろうべん)が起きることがあります。
(妄想・幻覚・錯覚)
「○○に財布を盗られた」という「物盗られ妄想」が生じます。財布を置いた場所を忘れてわからなくなると、「盗られた」と言い出すのです。
だれもいないのに「だれかが部屋の中に入って来た」とか、ベッドに電流が流れているとか、幻覚や錯覚が生じます。
妄想や幻覚・錯覚を頭から否定すると、馬鹿にされたと怒ったり、不安が増したりして、認知症が悪化することがあります。
(せん妄)
認知症患者さんが、過労や息切れ、身体の痛み、便秘など体調不良になると、せん妄を発症することがあります。急激な錯乱や混乱状態が起きます。身体の不調を治療することで、せん妄は収まります。
詳しくは、せん妄とは?症状・原因・治療法、認知症との違いを知ろう!を読んでおきましょう。
(うつ症・抑うつ症)
無気力・無関心・無感動など、意欲が低下して何をする気も起きなくなります。気分が落ち込んでしまいます。常にウトウトしている状態になり、傾眠傾向になりやすいようです。
高齢者は、認知症とうつ病を併発することもあります。また、高齢者がうつ病を発症すると認知症と間違われることも多くなります(うつ病性仮性認知症)
(暴力・暴言・介護拒否)
認知症になると、自分の意思や感情、希望を正確に伝えることができなくなります。自分の身体能力や精神能力が低下していくことへ、不安を感じ、イライラします。
このため、介護者の態度や仕方に不満や不快感があると、理性で抑えていた暴言や暴力に訴えてしまいます。若年性認知症や男性認知症患者さんが暴力を振るうと、介護士さんが危険になります。
介護への不満や不快感から、介護を拒否することもあります。
(不眠・睡眠障害・昼夜逆転)
高齢者が認知症になると、睡眠・覚醒・体内時計の調整に関係している神経伝達物質の量が減少します。そのため、不眠や睡眠障害が起きる危険性が高くなります。
[不眠・睡眠障害・昼夜逆転]
一般に高齢者は、眠りが浅くなり、夜中によく目覚めることが多くなります。これは、加齢とともに、体内時計の調整機能が低下して、身体の各部に司令を出し、「夜は休息、昼は活動」というリズムを保ちにくくなるためです。また、関節炎など身体に痛みがあると、目が覚めやすくなり、よく眠れません。
認知症になると、睡眠や覚醒、体内時計を調整することに関係する神経伝達物質が減少するので、余計に「夜は休息、昼は活動」というリズムが狂ってしまうのです。そのために、不眠や睡眠障害が起きてしまいます。
不眠
ベッドに横になる時間は十分にあるのに、寝つきが悪い・熟睡できない・すぐに目覚めるなどの症状を「不眠」といいます。睡眠の量・質ともに低下する不眠と、睡眠の量は十分あるのに、質が低下している不眠があります。
睡眠障害
「睡眠障害」とは、睡眠全般に対する病気です。夜間の睡眠が障害され、昼間、眠気が生じるというものです。過眠症・ナルコレプシー・日中傾眠などがあります。
昼夜逆転
認知症では、見当識障害があるため、朝・昼・晩の区別がつきません。夜の眠りが浅く、ちょくちょく目を覚ますので、昼間、眠りこむことが多くなります。これを「日中傾眠」といいます。
日中はウトウトしている時間が長くなります。夜になると、大声で騒いだり、大音量でTVをつけたり、外出しようとしたりします。昼は眠ることが多く、食事を摂ろうとしませんが、夜になると空腹を訴えます。
夜に眠らせようとして部屋を暗くすると、不安感や恐怖感が生じます。夜、落ち着かないので、介護する家族や、介護士さんの負担が大きくなります。
[傾眠は神様の贈り物?それとも危険?]
高齢の認知症患者さんは、一生懸命人生の長い道のりを歩いて来たので、疲れています。脳も十分働いたために、休息を必要としています。ウトウト眠った状態で過ごすことは、悪いことではないように思われます。
しかし、傾眠傾向にあり、意識が低下していると、食べ物を飲み込む時に「誤嚥」する可能性が高くなります。誤嚥性肺炎など起こすと、生命が危険になります。
また、日中眠ることが多くなると、食事を十分摂らなくなり、栄養不足や脱水症状が起きます。体力や免疫力が低下して、持病が悪化することがあります。
眠ってばかりいると、筋力が落ち、身体機能がさらに低下してしまいます。傾眠は、決して神様の贈り物ではなく、生命の危険をもたらすものです。
傾眠傾向に対応する方法
傾眠傾向に対応するには、声をかけたり、朝陽を浴びて体内時計を整えたりすると良いようです。薬剤に頼る方法は、あまりオススメできません。
傾眠傾向は、生命に関わる危険性があるので、しっかり対応する必要があります。
[声をかける・話しかける]
傾眠傾向では、軽い刺激で目を覚ましますから、できるだけ声をかけたり、話しかけたりします。眠っていることが多いと、筋肉が衰え、身体の活動機能が低下してしまいます。
雑談をしたりするだけでなく、軽い運動をしたり、散歩に連れて行ったりして、活動させるようにします。
ことに高齢者・認知症患者さんには、介護する家族やヘルパーさんが声かけするようにします。デイサービス・デイケアなどに行って、できるだけ活動的に過ごすようにすることが大事です。昼間、活動すると、夜、よく眠れるようになります。
[眠気を催す薬は控える]
抗ヒスタミン剤・抗アレルギー剤、抗不安剤・精神安定剤、偏頭痛薬、パーキンソン病治療薬は眠気を催すことが多いので、できるだけ控えるようにします。
これは、お医者さんとよく相談する必要があります。素人判断で、薬を控えたり、止めたりするのは、とても危険です。
[昼寝をする]
思い切って30分ほど昼寝をします。傾眠では、ウトウトしてもスッキリ眠気が取れませんから、短時間、グッスリ眠るようにします。ただし、午後3時前には昼寝を終えるようにします。30分以上の長い昼寝は、むしろ夜よく眠れなくなって逆効果です。
そのため、昼寝する前に、コーヒーや緑茶、紅茶などカフェインの強い飲み物をとるようにします。カフェインには覚醒作用があり、30分ほどすると効いてきますから、ちょうどいい時に目が覚めるようになります。
[朝陽を浴びる]
朝陽を浴びることで、体内時計を調整するようにします。朝陽を浴びながら、軽く体操したり、散歩したりすることをオススメします。
認知症患者さんは、朝陽を浴びるとともに、昼間はできるだけ太陽光を部屋に採り入れるようにして、朝・昼・晩の区別をつけるようにします。
まとめ 傾眠傾向は生命に関わる危険がある
傾眠傾向は、軽度の意識障害です。ウトウトした状態で、放っておけば眠ってしまいます。でも完全に入眠している状態ではないので、声をかけたり、軽く肩をたたいたりするだけで、目が覚めます。目が覚めても、眠気がスッキリせず、またウトウトと眠ってしまいます。
目が覚めた時に、自分の居る場所や日時などがわからなくなります。眠る前の記憶がはっきりせず、「眠ってしまった」という自覚がありません。
居眠りやうたた寝は、短時間でも、目が覚めると、一応スッキリした気分になります。「眠ってしまった」という自覚もあります。
傾眠傾向に陥る原因は、慢性硬膜下出血や内科的疾患、薬の副作用、うつ病などがあります。高齢者では、認知症が傾眠傾向の大きな原因となります。
加齢とともに、自律神経系の働きが悪くなり、睡眠・覚醒・体内時計の調整機能が低下します。そのため、高齢者は、夜間の眠りが浅く、ちょくちょく目覚めるようになります。「夜は休息、昼は活動」というリズムが保てなくなります。
認知症が発症すると、月日や時間、場所がわからなくなります。朝・昼・晩の区別もつきにくくなります。また、睡眠・覚醒・体内時計を調整する神経伝達物質の量が減少するので、睡眠と覚醒のリズムが狂い、傾眠傾向が起きます。「昼夜逆転」して、昼はウトウトして眠りこむことが多くなり、夜に活動的になって、大声を出したり、出かけようとしたりします。
認知症では、意欲が低下して無気力になる抑うつ状態になりますから、ぼんやり、ウトウトすることが多くなり、傾眠傾向になりやすいようです。
傾眠傾向を放っておくと、眠ることが多くなり、筋肉が衰えて、身体機能が低下します。昼間眠ってばかりいるため、食事も十分に摂らず、体力や免疫力が低下して、持病が悪化することもあります。意識が低下しているので、高齢者は食物を誤嚥することが多くなり、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性もあります。
傾眠傾向はそのままにしておくと、生命に関わる危険性があります。特に、認知症高齢者は、症状を悪化させることが多くなります。
傾眠傾向の患者さんには、できるだけ声をかけたり、話し合ったりして、ウトウト状態から引き出すようにすることが、必要です。
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