失読症という言葉を聞いたことはありますか?失読症は文字が読めないと聞いたことがある人もいるのではないかと思います。文字が読めない以外にも様々な症状があります。実はこの失読症、誰にでも起こる可能性があるのです。
どんな症状が出るのか、なぜ失読症が起こるのかなどについて書いていきたいと思います。
失読症とは
失読症(しつどくしょう)は発達性読字障害、難読症などともいわれ、文字を読んだり書いたりすることが困難になってしまうものです。
読んだり書いたりが難しいということから、読み書き困難、読み書き障害と呼ばれることもあります。並べられている文字の中から単語を見つけるといったことが困難になることもあります。失読症は学習障害の一つとされており、脳が異常を起こすことで言葉が理解できなくなってしまうようです。
失読症は生まれつきで発症している場合と事故などの怪我で脳を傷つけてしまうことで発症する場合があります。目や耳に異常がなくても失読症になることがあり誰にでも発症する可能性があるのです。
子供の約3~5%に失読症がみられるとされており、女の子よりも男の子に多くみられるといわれているようですが、症状に気付いていない場合もあるため実際のところ男女比率に差はないという意見もあるようです。
失読症の原因
失読症を発症する明確な原因はわかっていないようです。通常であれば言語の音を正しく処理して文字と結び付け文章を読んだりしますが、失読症の人は脳が言語の音を正しく処理することができないとされているのです。
また家族内発症が多いといわれており、遺伝子が関係しているという研究結果もあるようです。
失読症の症状
文字を間違って読んでしまう、本などの文字を読むスピードが遅い、文字の並びを変えて読んでしまう、文章の行を飛ばしたり単語を飛ばしてしまう、初めて見る文字や単語を覚えることが難しい、正確な発音で言葉を発することが難しい、長い時間本などを読むことができない、文字を書くことが難しい、文字を入れ替えて書いてしまうなど他にも様々な症状が現れます。
文字と音を結びつけることが困難なため「しゃ、しゅ、しょ」などの小文字が入っていたりすると読めなくなってしまうということもあります。一文字ずつなら読めるのに単語になってしまうと読めなくなってしまう場合があります。言葉を発したりする時には音を認識しながら話したりするのですが、失読症の人は音を認識し記憶しておくということが難しいと思う人もいるようです。
失読症には上記に挙げたような症状の他に、文字がぼやける、文字が逆さまに見える、文字が歪んで見えるなどの症状のように文字の見え方に問題が出てしまうことがあるようです。そのために文字が読めなくなってしまったり、文字を入れ替えて読んでしまったりするということが起こるようです。
失読症を発症した子供は話し始める時期が遅い、正しい発音ができないというような症状があり、文字を入れ替えて読んでしまうということが多く起こるようです。
失読症の治療法
失読症の治療には直接的指導が多く取り入れられるようです。様々な方法で正しい発音を覚えさせる訓練を行ったり、読解力をつける訓練を行います。
音と共に単語を作ったりすることで、音と文字の結びつきを学ばせるという方法がとられるようです。またパソコンなどの機器や物を使って読む力をつける方法もあるようです。
学習障害とは?
学習障害は知的発達に問題はないものの、一部の能力に問題が生じてしまうものです。問題というのは覚えることが困難であったり、理解ができなかったりということを指します。
小学生になるまでは学習障害という判断が難しく、年齢が上がっても一部の能力だけが欠けているために努力不足や勉強不足と判断されてしまい、学習障害であると思わない人の方が多いのです。
学習障害の種類
学習障害には主に3つの種類に分けられます。読むことが困難な「読字障害:ディスレクシア」、書くことが困難な「書字表出障害:ディスグラフィア」、算数や推論が困難な「算数障害:ディスカリキュリア」というものに分けられます。
学習障害は「聞く、書く、話す、読む、計算する」といった能力のどれかが困難になることが多く、全てが困難になるということは少ないです。人によって困難に思うことはそれぞれ違い、算数は苦手でそれ以外の教科は得意である、ひらがなは書けるけどカタカナは書けないなど様々です。
誰でも得意なものや不得意なものは、あるため一部の能力が欠けてしまっていても不思議に思わないことの方が多いのです。それにより成人になっても気付かないこともあります。
学習障害の原因
学習障害の根本的な原因はまだわかっていないようです。ですが、先天性の遺伝などにより脳神経に異常が起こることで発症するのではないかと考えられていることもあるようです。
学習障害の症状
学習障害の症状について幼児、小学生、中学生、高校生と成長過程を得て大人になりますが、それぞれの時期によって現れる症状を書いていきたいと思います。
「1歳~小学校入学前の幼児」
症状として、カラダの動きが不自然になるときがある、文字や言葉をなかなか覚えない、折り紙を折るなど細かい作業ができないなどがあげられます。しかしこの時期は非常に判断が難しく成長にも個人差がみられる時期にあたります。
ただ単に成長がゆっくりなだけでこれからできるようになることもありますし、これらの症状が出ているからといって学習障害だとはいいきれません。
「6歳~12歳の小学生」
症状として、漢字が読めない・書けない、授業についていけない、文章の行を飛ばしてしまう、文字を書くのに時間がかかる、数字を読むことができない、時間がわからない、計算ができないなどがあげられます。小学校にあがると授業が始まり得意教科や苦手教科が出てきます。
しかし文字を書いたり読んだりが難しいと感じていたり、できていない場合には学習障害が疑われます。算数が苦手教科という子は多いですが、極端にできなかったり数字が読めないといったことがある場合も学習障害の可能性があります。
「12歳~15歳の中学生・15歳~18歳の高校生」
症状として、習ったことのある漢字でも読めないことがある、長い文章を書くことができない、英単語が読めない・書けない、文章問題を解くことができないなどがあげられます。中学生や高校生になると学習面で明らかな違いが出てくるようです。
勉強が嫌いで怠ったりすることが出てくる時期でもありますが、一つの教科だけが著しく差があるなどの場合は学習障害の可能性も考えた方がよいでしょう。
「18歳~成人」
症状として、話がまとめられない・理解できない、注意されても同じミスを繰り返す、電話をしながらメモができない、お金の計算や管理ができないなどがあげられます。大人の場合仕事などに支障が出てしまうことも少なくありません。
成人を迎えてから学習障害と診断された場合、子供の頃から発症していた可能性もあります。思い当たる節がある時は合併症を発症していることもあるため検査をした方がいいかもしれません。
学習障害の治療法
今のところ学習障害を治すための治療法はないとされていますが、学習障害の人は周囲の人たちの支えがとても必要です。日常の生活はもちろんのこと、仕事や学業の場でも一人では困難なことも周りからの手助けがあることで、不得意なことがあっても乗り越えていけるのです。
また地域に設置されている保健センター、発達障害者支援センターなど様々な機関で相談することも可能なため、利用してみるのもいいかもしれません。
子供の場合はやる気を損なうような言葉をかけたりすることで、不登校など閉じこもりやすくなってしまったり、精神面でダメージを受けてしまいうつ病になってしまうこともあります。そのようなことが起こらないようにするためにも、「やればできる」というような前向きな言葉をかけでやる気を出させてあげることも必要であるといえます。
失読症の大変さ
失読症は知名度が高いとは言えないため、失読症患者にとっては大変なことがたくさんあります。どんなことがあるか書いていきたいと思います。
周りからはわからない
失読症は周囲からは気付かれにくいという点があります。子供から大人まで年齢関係なく発症しますが失読症のことを知らない人も多いために、文字を読めなかったり、文字をかけなかったりなどの症状が出ていても、聴力や視力などに問題がないため周りの人は気付かないのです。
幼児に発症した場合、文字がかけなかったり読むことが難しいということは珍しいことではありません。そのために親も気付かないことが多いのです。小学校に入学する頃になっても、本を読んだり文字を書いたりすることが困難であった場合に異変を感じ始めるのです。小学生になる頃になっても読み書きが難しそうであったり、発音がおかしいなと感じた場合は失読症の疑いがあるため検査を受けてみた方がよいでしょう。
失読症を発症したまま小学校や中学校へ進学すると授業についていくことが困難になってきてしまいます。文字をかいたり文章を読むスピードが遅いために周りと同じ速さで進むことができないのです。学校へ通うと自宅で字を書いたりする時間も少なくなることから気付きにくいようです。また授業についていけなかったり朗読に時間がかかってしまうこともあり、みんなと同じようにできないということからいじめられてしまうということも少なくないようです。
大人の場合も失読症であると気付かれにくく、文字がかけなかったり読み間違えたりすると、やる気がない、努力不足、頭が悪いというように悪く言われてしまうこともあるのが現状です。
時間がかかる
勉強や仕事で文字を書いたり、様々な手続きなどで書類を読んだり書いたりなどの場合、文字を書いたりすることに時間がかかってしまうため思うように進まないということがあります。
文字を書くだけでなく機械の操作などに慣れていない場合、見たことのない字や記号が出てきたりするとわからなくなってしまい時間がかかってしまうといったことも起こるのです。
誤解されやすい
繰り返しになってしまいますが、失読症は気付かれにくい症状のため誤解されてしまうことが多いです。学業に関していえば人一倍努力をしていてもなかなか結果として現れなかったりします。学業でいえばテストの点数が悪いと「サボっている」「努力が足りない」といわれてしまったりすることで、やる気を失い閉じこもりがちになってしまうこともあります。
仕事に関していえば会話は問題なくできますが、文字を書いたりなどの作業がゆっくりになってしまったりすることで「やる気がない」「仕事ができない」という風に評価されてしまうこともあります。学業の場、仕事の場さらに家庭でも失読症という症状について理解が得られていないことが問題点の1つであるといえます。
失読症は治る?
失読症は治るのかという点はとても気になることだと思います。失読症について調べても完治するということは残念ながら出てきませんでした。
しかし個人差はあるけれど治療や訓練を行うことで治ることもあるという情報はありました。完全には治らなくても訓練などを重ねることで症状が緩和されたり、良い方向へ向かうこともあるため訓練や治療を続けて行うことが大切であるといえます。
家庭でできる訓練
子供が失読症の場合に保護者ができる訓練方法を書いていきます。基本的には話し言葉はきちんと理解ができるので、本などに書いてあるわからない単語や読めない言葉がある時には、まずはその言葉を読み聞かせることが大切です。その時に絵なども交えて読むのもいいでしょう。本人がわからなかった単語や文字を理解できるようになるまで繰り返し行います。
漢字が読めなかった時には振り仮名をふり、発音が違うことがあれば読んであげましょう。言葉を変な所で区切ってしまう時には、区切る部分にしるしをつけることもわかりやすく効果的です。読めるようになってきたら振り仮名やしるしを消して、少しずつ短めの文章などを読ませ音読できているかを確認しましょう。小学生は授業で使う教科書を読む練習も必要です。前もって練習することで学校で学ぶときには読めるようになっていることもあるかもしれません。これもまずは読み聞かせから始めます。
本などの音読ができたら、読んだ本はどんな話だったのかということを聞いて話してもらいます。どんな話だったのか言えないこともあるかもしれませんが、その時には違う日にまた音読し子供と一緒に考えてあげましょう。音読している時はそばで聞いてあげることも大切です。失読症の訓練はすぐに結果が出ることは少ないかもしれません。ですが焦らずに毎日少しずつでも続けていくことが最も重要なのです。
ただし、嫌がっているのにもかかわらず、無理にやらせてしまうと逆効果になってしまう可能性が高いです。本人のペースで無理のないようにゆっくり訓練をしていくことが必要です。できなかった時も「どうしてできないの」と怒ってしまうのはよくありません。「もう一回やってみよう」と優しく声をかけてあげることで、やればできるんだという気持ちにさせてあげましょう。
自宅での訓練は必要ではありますが、時には息抜きも必要です。勉強ばかりしていると頭やカラダ、気持ちの面でも疲れてしまいますよね。子供が好きな遊びをしたりカラダを動かしてリフレッシュしながら進めていくことも大切な訓練方法です。
パソコンなどの機器を使った訓練
パソコンやオーディオブックなどの機器を使うことで失読症の症状を補う方法もあります。この方法を使うのは高校生や成人した失読症の人たちが多いです。人によっては文章は見ただけでは覚えられず書くのにも時間がかかってしまうため、友達などに覚える文章を読み上げてもらいその声を録音して聞いて覚えるという方法を取っている人もいます。
パソコンの画面を読んでくれるスクリーンリーダーというものもあり、それらを使うことで失読症をカバーすることもでき、パソコンなどの機器も簡単に操作できるようになるかもしれません。
まとめ
失読症は日本ではあまり知られていない症状で知名度も少ないです。文字の読み書きが困難な病気ですが、目や耳に障害がなくても発症するため気付かれにくいのが特徴でもあります。
知名度も少ないため失読症に対する理解が低いことも問題としてあげられています。子供の頃に発症しても気付かないまま大人になる人も多いです。
文字を書いたり本を読んだりなどの訓練を重ねていくことで症状が改善していくこともあるため、継続することが必要です。失読症かもしれないと思うようなことがあった場合には、病院で検査することをオススメします。