今日は何月何日で、今何時なのか?自分はどこに居るのか?その人はだれなのか?・・・そんなことがわからなくなるのが、見当識障害(けんとうしきしょうがい)です。
見当識障害は認知症の初期から見られる中核症状の1つです。見当識が正常かどうかは、簡単な問診でわかりますから、お医者さんの認知症診断の基準にもなります。
高齢化社会になるにつれて、認知症の発症も増えています。認知症を完治することはできませんが、進行を遅らせたり、症状を軽減できる薬剤が、色々開発されています。認知症を早期に発見することで、重症化するのを防ぐことができます。
見当識障害の症状と対応策や予防法、認知症の症状と治療についてお伝えしますね。
見当識障害とは?
「見当識」とは、自分が置かれている状況、つまり、今日は何月何日か、今は何時か、どこに居るのか、目の前の人はだれか・・・などを認識する能力です。
「見当識障害」とは、年月日や時間、場所、人物がわからなくなることです。
[見当識障害は認知症の中核症状の1つ]
認知症の症状には、中核症状と周辺症状があります。
認知症は、脳細胞が壊れることによって発症します。中核症状は、脳細胞が壊れることにより、だれにでも起こる症状です。周辺症状は、「行動・心理症状」とも言われます。認知症患者さんの気質・性格・生活環境などによって、症状が異なります。
中核症状と周辺症状については、次の「認知症の症状」に、くわしく書きます。
見当識障害は、中核症状の1つですから、認知症を発症すると、だれにでも起きます。認知症発症の初期から起こり、少しずつ悪化していきます。認知機能が働いている時は、「物忘れがひどい」くらいに考えて、見当識障害と気づかないこともあります。
認知機能
「認知機能」とは、理解・判断・論理の知的機能のことです。精神医学的には、知能に類似した意味になりますが、心理学的には、知覚・判断・決定・推論・想像・記憶・言語理解など、いろいろな要素を含む総合的な概念になります。
[見当識障害の症状]
見当識障害の症状は、➀時間、②場所、③人物 の順序で現れます。
➀時間や日付、季節がわからなくなる
見当識障害は、まず時間認識に起こります。「今日が何月何日何曜日なのか」わからなくなります。高齢者は退職すると、日付や曜日がわからなくなることがよくあります。専業主婦でも、夫が退職すると、曜日を間違えることがよくあります。しかし、「今日が何月なのか」わからなくなることは、見当識が正常とはいえません。
「今日が何月何日か」わからなくなるのが、見当識障害の初期症状なのです。日付がわからなくなると、長い間待ったり、待ち合わせ時刻を守ったり、予定に合わせて準備したりすることが、だんだん、できなくなります。
見当識障害が進行すると、朝・昼・晩の区別もつかなくなり、季節がわからなくなります。季節に合わせた服装を選ぶことができなくなります。
②自分が居る場所が、わからなくなる
次に、場所が認識できなくなります。外出先で、自分がどこに居るのか、急にわからなくなることがあります。病院に行ったのに、そこが病院であることがわかりません。外出して、迷子になることが、しばしばあります。やがて、徘徊するようになります。
見当識障害が進行すると、よく知っている場所・見慣れている場所でもわからなくなります。自宅で、トイレの場所や自分の寝室がわからなくなったりします。
③その人がだれか、わからなくなる
さらに、人が認識できなくなります。アルツハイマー型認知症の場合、人に対する見当識は比較的長く残存しますが、認知症進行とともに人を認識できなくなります。
家族の顔はわかっても、それほど親しくない人は、だれなのか、わからなくなります。また、家族でも、孫を実子と思い込むなど、相手と自分の関係を間違えることがあります。
見当識障害が進行すれば、家族のこともわからなくなってしまいます。鏡に映る自分自身がわからなくなります。
[見当識障害によって起こるトラブルや事故]
見当識障害により時間・場所・人がわからなくなるので、さまざまなトラブルや事故が起こります。
家族とのトラブル
知人や周辺の人とトラブルを起こすだけでなく、家族との間にもトラブルが生じます。
予定や約束を忘れてしまったり、迷子になったり、家族や知人を「知らない」と言い張ったりします。トイレの場所がわからなくなり、他の場所で用を足したり、失禁したりします。
家族の負担が大きくなり、患者さんとの間に感情的な亀裂が入ることも少なくありません。
徘徊
自分がどこに居るのか、自分の家はどこなのか、わからなくなるために、迷子になったり、徘徊したりするようになります。遠くに出かけなくても、近所でも、場所がわからなくなります。また、徘徊するうちに、思わぬ遠い所まで行ってしまうことがあります。
最近では、自動車を運転して徘徊する高齢者が増えています。自動車で徘徊するうちに、ブレーキとアクセルを踏み間違えたりして、悲惨な交通事故を起こすことが問題になっています。
見当識障害が起きている高齢者は、独りで外出させないようにして、必ずだれかが付き添うようにします。それでも、うっかりすると、独りで出かけてしまうことがありますから、近所の人達や民生委員と連絡を取り、徘徊しているのを見かけたら、連絡してもらうようにするなど、あらかじめ対処の方法を考えておくことをオススメします。
見当識障害のある高齢者には、自動車の運転をさせない方が無難です。自動車のキーなどはしっかり管理するようにします。
脱水症状
見当識障害を起こすと、季節がわからなくなりますから、真夏でも冬服を着こんでしまうことがあります。厚着して冷房もかけないので、脱水症状を起こします。
患者さん本人に「夏服に着替えるように」言っても理解できませんから、家族や介護する人が少し強めに冷房をかけたり、スポーツドリンクを飲むように勧めたりします。
[見当識障害の対応の方法]
見当識障害は認知症の初期症状として現れます。認知症の患者さんを怒ったり、責めたりしても、本人はなぜ怒られるのか、原因がわかりません。
自尊心を傷つけられて興奮し、症状が悪化することもあります。
➀失敗しても、怒ったり責めたりしない
約束を忘れたり、迷子になったり、失禁したり、家族や親しい友人を「知らない」と言い張ったりしても、患者さんを怒ったり、責めたりしないでください。認識の機能が失われているので、なぜ怒られるのかわからず、不安になるだけです。自尊心を傷つけられて、興奮することもあります。
患者さんが友人や知人に失礼なことをした時は、本人のいないところで、認知症であること、見当識障害であることを話して理解を求めます。
②患者さんの言うことを否定しない
年月日や自分の年齢を間違えても、否定しないようにします。家族や介護者はできるだけ話を合わせるようにします。
自分の家に居るのに。「家に帰る」と言い出すことがあります。家族や介護者は冷静に対応し、患者さんの注意をそらすようにします。「ここが安心できる場所である」ことを、わかってもらうように、できるだけ穏やかに優しく話します。
③カレンダーや時計を上手に利用する
見当識障害が発症した初期に、カレンダーや時計を上手に利用すると、進行を食い止めたり、遅らせたりすることができます。
見やすいカレンダーを、目につくところに置き、「今日は、○月○日○曜日」などと、患者さん本人に声に出して言ってもらうようにします。
時計はアナログでもデジタルでも、患者さんが読みやすい物でOKです。同じように、「今は○時○分」と、声に出して教えてもらうようにします。
④アルバムなどを利用して、家族や友人を忘れないようにする
家族や介護者は、患者と一緒にアルバムなどを見て、昔の思い出話などをしてもらい、家族や親しい友人の顔を忘れないようにします。
⑤散歩をして脳を活性化させる
徘徊や迷子になるのを恐れて、患者さんを家の中に閉じこめると、脳への刺激が少なくなり、脳の機能が低下して、見当識障害が進行するばかりです。
家族か介護者が付き添って、のんびり散歩することは、見当識障害のリハビリテーションになるだけでなく、気分転換にもなります。外部刺激により、脳が活性化します。
認知症の症状
見当識障害は認知症の中核症状です。認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり(壊れてしまったり)、脳の細胞の機能が低下したりして、様々な障害が生じる疾患です。障害が生じるために、日常生活に支障が起きたり、困難が生じたりします。
脳はヒトの活動をコントロールする司令塔ですから、脳細胞が死んだり、機能低下したりして脳の働きが悪くなれば、当然、精神活動にも身体活動にも障害が生じるのです。
認知症の症状には、中核症状と周辺症状があります。認知症にはいくつか種類があり、症状の出方や治療法が異なります。
[認知症の種類]
認知症には、何種類かありますが、代表的なものは4種類です。➀アルツハイマー型認知症、②脳血管型認知症、③レピー小体型認知症、④前頭側頭型認知症です。
認知症の約60%がアルツハイマー型なので、認知症=アルツハイマーと思われがちです。次に多いのが脳血管型認知症で、約20%を占めます。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、男性より女性に発症しやすく、また、患者数も増加しています。アルツハイマー型認知症の原因は、脳全体にアミロイドβやタウという特殊なタンパク質が溜まり、脳神経細胞が死んでしまい(壊れてしまい)、脳神経細胞が減少することのようです。
脳神経細胞が減少するため、認知機能に障害が起こります。また、脳全体が委縮するので、だんだん身体機能が低下し、やがて失われていきます。
アルツハイマー型認知症の代表的症状は、記憶力障害です。
脳血管型(脳血管性)認知症
脳血管型認知症は、女性より男性に発症することが多いようです。
脳梗塞などで脳の血管が詰まったり、脳出血を起こしたりして、脳に十分な酸素が送れなくなると、脳神経細胞が死んで(壊れて)しまいます。そのために、認知機能や身体機能に障害が生じます。
アルツハイマー型と異なり、認知症が徐々に進行するのではありません。脳血管障害(脳梗塞や脳出血)が起きると同時に、突発的に認知症が発症します。脳血管障害が生じた脳の部分により、認知機能や身体機能の起こる障害が異なります。いわゆる「まだらボケ」になります。判断力はあるのに、記憶力障害が起きているなどということになります。
レピー小体型認知症
脳幹や大脳皮質にレピー小体というタンパク質が溜まるために、脳神経細胞が壊れて減少してしまいます。
レピー小体型認知症の代表的症状が、見当識障害です。
前頭側頭型認知症
若い人に発症するので「若年性認知症」ともいいます。前頭葉と側頭葉が委縮して起きる認知症です。
[中核症状]
脳神経細胞が壊れてしまうために起きる症状です。脳神経細胞が破壊されると、認知機能が低下してしまいます。
➀記憶力障害
アルツハイマー型認知症の代表的症状です。昔のことや直近の記憶が、スッポリ抜け落ちてしまいます。普通の「モノ忘れ」と違うのは、記憶が抜けることに自覚がありません。記憶力が低下している自覚がないので、社会生活・日常生活に支障を生じます。
最近の記憶から抜けていき、認知症の進行とともに記憶力障害が悪化します。
新しいことが覚えられなくなります。どこに置いたかを忘れて、1日中探し物をしたいることがあります。体験したことを思いだせなくなったり、体験したことをすっかり忘れてしまったりします。料理や洗濯など、身体で覚えたことを忘れてしまいます。言葉の意味を忘れて、「あれ」「それ」などと言うことが多くなります。
②判断力障害
「実行機能障害」「遂行機能低下」ということもあります。
行動の目的が定まりません。行動が自立できません。行動の効果が期待できず、行動を成し遂げることができなくなります。行動することに支障が起きるのです。
判断力が低下しているため、何をどうしていいのか、わからなくなります。衣服のコーディネートができなくなったり、スーパーで買い物をしてもお金を払わなかったりします。万引きと間違えられることが、よくあります。
③失語・失認・失行の高次脳機能障害
(失語)
大脳の言語野に病変が生じ、「話す・聞く・読む・書く」という言語情報に関わる機能が失われることを「失語」といいます。
口数が少なくなり、話すセンテンスが短くなります。目の前の物の名前が出て来ません。文章を読めても理解できません。あるいは、文章を理解できても、音読できません。相手の話を音として聞けなくなったり、聞くことは出来ても話すことがうまくできなかったりして、復唱することができません。漢字やひらがなが書けなくなったり、計算することができなくなったりします。
(失認)
身体の器官(目・耳・鼻・舌・皮膚など)は正常で問題がないのに、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)による認知力がしっかり働かないために、状況を正しく把握することができない状態を「失認」といいます。失認には、視覚失認・聴覚失認・触覚失認などがあります。
隣家の御主人が庭の手入れをしているのを見ても、「見知らぬ男が、隣の庭にいる」「だれかが、庭を荒らしている」などと思ってしまうのです。
(失行)
「失行」とは、身体を動かすことはできるのに、目的を遂げるためにどう行動すればいいのか、わからなくなることです。
服を着ようとしても、ズボンのはき方がわからなくなりったり、鍵を開けるのに、鍵穴に鍵以外の物、例えばボールペンなどを差し込んだりします。
④見当識障害
前の「見当識障害とは?」にくわしく書いてあります。
[周辺症状]
周辺症状は「行動・心理症状」略してBPSD(Behaivioral & Psychological Symptoms of Dementia)といいます。
周辺症状は、患者さんの気質・性格・生活環境・社会環境によって異なり、種々雑多な様相を呈します。ですから、中核症状のように症状を分類することが難しくなります。なぜなら、認知症の発症は、脳神経細胞の破壊や脳の萎縮だけでなく、その人の気質や性格、生活環境・社会環境、体験などが大きく関わっているからです。例えば、見当識障害の発症のきっかけは、転勤や降格、転居、家族との死別などであることが多いのです。
多くの患者さんに起きやすい周辺症状が、いくつかあります。
➀物盗られ妄想
記憶力障害が進行すると、物をどこに置いたか、どこにしまったかを忘れてしまいます。1日中探し物をしていることが多くなりますが、そのうちに、「財布を○○さんに盗まれた」「△△さんがお金を盗った」などと、家族や介護するヘルパーさんを疑うようなことを言い出します。
②幻覚と錯覚
「知らない人が寝室に入って来た」「ベッドに電流が流れている」など、幻覚や錯覚が生じます。否定しても、患者さん本人は納得しません。家族や介護のヘルパーさんは、幻覚や錯覚の存在がないことを確かめて、安心させるようにすると、落ち着きます。「寝室に知らない人が入って来た」という場合は、寝室のクローゼットの中まで、患者さんと一緒に見て、「だれもいない」ことを確認して、安心させます。
③うつ症状
気分が落ち込み、何をする意欲も気力もなくなります。認知症によるうつ症状です。
認知症を発症した後で、うつ病を併発することもあります。
認知症によるうつ症状と、うつ病の症状はよく似ています。「うつ病による仮性認知症」というものがあります。認知症とうつ病の治療は異なるので、混同しないようにします。
画像診断で脳に異常があれば、「認知症によるうつ症状」と診断されます。うつ状態にあることの自覚がなく、気分の落ち込みも、うつ病による仮性認知症ほど強くありません。
④暴力・暴言・介護拒否
認知症になると、思うように行動できないことが多くなり、イライラがつのります。正常な時は理性で抑えていた性格や感情がむき出しになります。家族や介護者に不満があると、暴力をふるったり、暴言を吐いたり、着替えやトイレ介助など介護されるのを嫌がったりします。
⑤睡眠障害と昼夜逆転
認知症になると、睡眠と覚醒など体内時計を調節する神経伝達物質の量が変化します。そのため、不眠などの睡眠障害が起きやすくなります。また、高齢者は夜の睡眠時間が短くなり、朝早く目が覚める傾向が強くなります。そのため、夜の睡眠時間が減少して、昼間眠るようになり、昼夜逆転が起きます。
⑥失禁・弄便(ろうべん)など
見当識障害でトイレの場所がわからなくなったり、尿意を感じる機能が低下したりするため、失禁するようになります。
オムツをするようになると、オムツにした大便を自分で始末しようとしたことがきっかけで、大便を自分の身体やベッド、布団に手で塗りつける「弄便」が始まることがあります。
⑦せん妄
認知症の患者さんは、身体の痛みや過労、息切れ、便秘などの身体の不調により、「せん妄」という意識障害を起こします。急激に頭が混乱し、錯乱状態になります。しかし、これは、身体の不調を治療すれば、回復します。
家族や介護者は、認知症患者の体調に細かく気を配る必要があります。詳しくは、せん妄とは?症状・原因・治療法、認知症との違いを知ろう!を参考にしてください!
見当識障害の対応策と予防
見当識障害は、認知症の初期から出現します。見当識障害に適切な対応策を取ることで、認知症の進行を遅らせることができます。また、見当識障害の予防が認知症予防にもなります。
見当識障害は、認知症を治療することで症状を緩和することができます。認知症に早く気付いて、薬物療法やリハビリテーションを始めることが大事です。
[見当識障害の対応策と予防]
➀時間の見当識障害の対策
カレンダーや時計を利用して、年月日や時刻を患者さん本人に声に出して確認してもらうようにするのが、リハビリ療法です。
日常会話の中に、「もう春だね」とか「明日は12月24日、クリスマス・イブだよ」などと、意識的に日付や季節を取り入れます。
午前中に日光を浴びるようにします。家の窓を開けて、日光を入れるようにして、昼の明るさを身体で感じ取るようにします。昼夜の区別がつくようにします。
②場所の見当識障害の対策
見当識障害は、転居や施設入所、入院などで発症したり、悪化したりします。
転居・子供との同居・施設入所の場合は、患者さんが慣れ親しんだ家具や思い出の品物をできるだけ持って行くようにします。
病気などで入院した時は、家族や親しい友人がちょくちょく会いに行って、患者さんを安心させます。
トイレの場所がわからなくなったら、患者さんの部屋をトイレの近くに変えたり、「トイレ」と大きく書いた紙をドアに貼るなどします。一緒にトイレまで行き、ここがトイレであることをくり返し伝えることがリハビリになります。
③人の見当識障害の対策
アルツハイマー型認知症では、人の見当識は比較的長く残ります。レピー小体型認知症では、早くに家族の顔がわからなくなったり、鏡に映る自分がだれだか認識できなくなります。
親しい知人や家族の顔や関係を間違えても、頭から否定しないようにします。否定したり、説得したりすると、患者さんは不安になってパニックを起こしたり、「馬鹿にされた」と怒って興奮したりします。不安や興奮は、症状を悪化させます。
患者さんを安心させることが何よりも大事です。
④見当識障害の予防
「抗認知症食」を摂ることで、見当識障害の予防をします。「抗認知症食」とは、低カロリーで、血糖値上昇(GI値)をゆるやかにし、体内の活性酸素を消去する働きのある物質(抗酸化物質)βカロチン・ビタミンC・ポリフェノールなどを多く含んだ食材を使った食事です。タンパク質・脂肪・炭水化物(糖分)をバランス良く摂るようにします。
良質な睡眠を十分にとります。生活習慣病の治療と予防をし、規則正しい生活を心がけ、適度に運動するようにします。人と交際するように努め、脳のトレーニングをしたり、趣味を持ったりして、新しい知識や経験を得るようにします。
見当識障害の予防は、そのまま認知症の予防になります。
[認知症の治療]
認知症は、何より早期発見と早期治療開始が大事です。治療は、薬物療法とリハビリ療法が主体です。認知症を治すことはできませんが、進行を遅らせたり、症状を抑えたり、軽減させることはできます
認知症診断
物忘れが激しくなり、「認知症かな?」と思ったら、「長谷川式認知症スケール」の認知症簡易診断プログラムでセルフチェックしてみることを、オススメします。長谷川式認知症スケールは、病院の診断でも使われます。
まず、かかりつけのお医者さんに相談します。そこで紹介状をもらって、大病院の「物忘れ外来」「脳外科」「神経外科」「精神科」「心療内科」のいずれかを受診します。「認知症外来」のある病院もあります。
病院では、一般的な身体検査・一般的脳検査・脳の画像検査・知的機能を測定する心理検査を行います。心理検査とは認知症検査です。
早期に認知症と診断されれば、早くに治療が開始されるので、治療効果も上がります。放っておくと症状悪化となり、患者本人だけでなく、家族の負担も増大します。
認知症の薬物療法
脳血管型認知症の場合もアルツハイマー型認知症の場合も、薬物療法は効果が高いようです。脳血管型は、脳梗塞・脳出血の治療と再発予防をすることで、認知症の症状を改善できます。
現在、アルツハイマー病にはかなり効果的な薬が開発されています。進行を遅らせるどころか、進行が止まったと思われるほどです。認知症の症状もかなり改善されます。
徘徊などが重症の時は、抗精神薬を投与することがあります。患者さんが薬の服用を忘れないように、家族や介護のヘルパーさんの助けが必要です。
認知症リハビリ
認知症リハビリは、脳のさまざまな機能に刺激を与えて活性化させることです。簡単な計算をしたり、文章を音読したり、字を書き写したりします。昔の出来事や体験を思い出して話すのが「回想法」というリハビリです。
音楽を聞いたり、絵を描いたり、粘土細工をしたりして、脳に刺激を与えるのが、「音楽療法」「芸術療法」です。前述した「見当識障害の対応策」も、認知症のリハビリになります。
まとめ 見当識障害は認知症の初期症状です
見当識障害とは、「今は何年何月何日何曜日か」「今は何時か」「ここはどこか」「自分は今どこに居るのか」「目の前にいる人はだれか」がわからなくなることです。
見当識障害の原因は、認知症の原因と同様、脳の神経細胞が壊れた(死んだ)ことですが、発症のきっかけは、転居や子供との同居、親しい者との死別、降格のショックなどです。
見当識障害が進行すると、季節や昼夜の区別がつかなくなったり、迷子になったり、徘徊したりするようになります。親しい友人や家族の顔がわからなくなります。トイレの場所がわからなくなり、失禁することもあります。
見当識障害が起きている患者さんへの対応は、家族や介護するヘルパーさんには、かなりの負担になります。つい、患者さんを怒ったり責めたりしてしまいますが、患者さんは何が原因で怒られているのか、わかりません。不安がつのったり、自尊心を傷つけられて興奮したりして、症状が悪化するだけです。
家族や介護者さんは、患者さんを安心させることを第一にして、冷静に穏やかに対応することが大事です。見当識障害は、記憶力障害とともに、認知症の初期症状です。見当識障害に早く気付いて、お医者さんに相談すれば、認知症の早期から適切な治療を受けることができます。
認知症の治療は薬物療法とリハビリ療法が主体です。完治することはできませんが、進行をかなり遅らせたり、症状を緩和・改善したりできます。もちろん、それには、初期段階から治療を開始することが必要です。
見当識障害に気づくことは、認知症診断にもなります。見当識障害の予防は認知症の予防にもなります。日付や曜日がわからなくなることが多ければ、「年寄りには、よくあること」などと軽く見ないで、すぐにお医者さんに相談することをオススメします。
関連記事として、
・自我同一性の確立について!自分のことを知るにはどうすればいい?
・離人症の症状をチェックする方法は?診断方法や原因、治療方法を知ろう!
・全般性不安障害の症状をチェック!治療方法や検査法を知ろう!
これらを読んでおきましょう。