何か急に大声を上げたり、興奮状態になったり、時に暴力をふるうこともある症状を起こしている人が回りにいませんか?
これは認知症と間違えるケースが多いのですが、実はこのような症状が突然起こるのは、せん妄という病気です。正式には病気というより、そのような症状自体をせん妄と呼びます。おそらくほとんどの人は、認知症と勘違いされます。
今回はそのせん妄についてお伝えします。
せん妄の症状
幻視と妄想
主な症状が幻視などです。その症状がさまざまのようで、回りの人もかなり困惑することが多いようです。幻視は死んだ人と話をしていたり、その死んだ人が身近な人たちであったりなどで、本当に会話し、時に笑い、時に泣いていたりするということです。
ですが、当人にとっては真剣です。ですが、回りの人はとてもそのようなことは信じませんので、認知症になったのかとさえ思ってしまいます。
認知症に似た症状
実際、認知症との区別が若干しにくいとのことですが、かなり微妙ではありますが、突発的におきるのと、徐々に症状が悪化してくるので、かなりの違いがあります。
不眠
不眠は気にする人のほとんどは、高齢者です。高齢の方は、夜の睡眠が不足しがちと思っています。実際には不足していることはなく、不足していないからこそ眠れないのです。ですから眠れなくてもあまり気にしなくてもいいのですが、ほとんどの人が気にしすぎます。眠れないと大変なことになるというような感覚を持っているようです。このせん妄では、昼夜が逆転するような不眠状態が続きます。
実は、睡眠というのは眠くなったら寝てしまうものですから、眠れなくてもあまり問題はありません。
現在も現役の医者で、100歳を優に超えている日野原さんは、週に何日かは徹夜をしています。普段もあまり睡眠を多く取っていません。このように失礼な言い方になりますが、高齢になると、食事の量も減りますし、身体もあまり動かしませんし、代謝も悪くなりますので、若い時ほど疲れません。疲れないのですから、眠れないのが普通だと考えてください。無理に睡眠薬を飲むことまではする必要はありません。
このせん妄の患者は、やはり眠れないということの関しては、気になってしまうということです。
感情の起伏
せん妄にかかった場合、気持ちが乗らない、何となくぼんやりしてしまうことが多いとのことです。一方では、逆に起伏が激しく、急に怒り出したりと感情障害を引き起こします。
認知症との違い
せん妄と認知症では微妙に違います。以下、まとめます。
発症時期
- せん妄:発症した日が明確
- 認知症:いつから発症したが、はっきりとしない
症状の期間
- せん妄:一過性である期間だけ
- 認知症:持続性があり、かかったらほぼ治らない
意識の違い
- せん妄:意識障害が認められる
- 認知症:意識は正常で状況を把握している
以上のように、かなりの違いが認められます。特にその期間が、せん妄は短期であり、認知症はその症状はかなりの期間もしくは以後ずっとその状態が続きます。
ただせん妄の場合は、感情の起伏が激しくなる場合も多く、暴力的な素行を伴うこともままあります。
つまり、急に発症するのが認知症との違いです。通常、認知症は段々と悪化していきます。ですから自分でもあまり気付かないうちに進行している場合が多く、そういえば、最近物覚えが悪いな、とか昔の事しか思い出せないという状況です。
ですが、せん妄は、急に物覚えが悪くなったり感情の起伏が激しくなって自分でも抑えることができなくなったりという症状となります。
せん妄の種類
夜間せん妄
夕方頃よりせん妄がおきるという、特殊なものです。特にアルツハイマー病や脳血管障害の人に多いようです。
手術後せん妄
手術のあとにせん妄は起こりやすいとのことです。これは、麻酔などのストレス、入院のストレスが影響しています。ある意味やむをえない部分ではありますが、特に高齢者に多い症状で、人がそばにいたり、会話をする環境にあれば、若干治まりが早くなるようです。この場合は原因がはっきりしているので、治療の方法は、投薬までは必要ないかと思われます。
薬剤性せん妄
一番多く起こるのが、この薬剤によるせん妄です。先に書きました、抗精神薬などが一番影響を受けます。つまりその薬の副作用で起こることです。
また、高齢者以外では、違法ドラッグなどの例があります。よく映画やドラマに出てくるように、ドラッグを常習して幻覚や妄想の症状が出るのが特徴です。
アルコールせん妄
もともとアルコール中毒の人が、たまたま飲酒を止めた際に、数日に渡りせん妄の症状を引き起こすことです。あまりせん妄の症状とは見なされず、酔っ払い扱いされるケースとなるようです。
せん妄の原因
環境の変化
特に高齢者に多いのですが、家を引っ越して環境が変わった場合、ある意味脳へ負荷がかかった場合に、せん妄が起きやすくなります。多少のストレスがかかっていることが原因となり、これは、環境の変化がかなりの負担になるということを表しています。
脳障害
脳障害とまとめてしまいましたが、脳炎や髄膜炎なども影響を受けやすいとのことです。これは高齢者に限らず、若い人でも起こります。
また、脳に腫瘍が出来ている場合も起こりえます。脳障害の影響で脳の機能が部分的に低下してしまうことが影響をおよぼします。
ストレス
環境の変化というところでもまとめましたが、ストレスは過度の負担となり、せん妄が起きやすいようです。特に身内などの関係者が亡くなった時や、仕事上でのトラブル、人間関係、近所との関係などが複雑に絡むと、影響を受けます。
体調不良
便秘など、軽度の体調不良により起きることが結構あります。これは、食事の偏りなども影響しています。きちんと栄養価の高い食事をとることが、せん妄を引き起こすことから避けることができます。
また、高齢者に多いのですが、筋肉が低下することにより、体内の水分不足で体調がおもわしくないことも影響します。水分の補給はこまめに、また食欲がなくてもある程度の食事できちんとした栄養を確保することが大事となります。
薬の弊害
せん妄は、抗精神薬などの薬を飲むときにおこる可能性が高くなるということが言われています。また、認知症患者、パーキンソン病の患者の薬はそのような症状が出やすくなります。そしてこの場合はせん妄との区別がつきにくいというのが現状です。
そして、先にも書きましたドラッグの影響です。常習性の高いものですので、治すのは相当の時間がかかります。
せん妄の治療法
投薬
現在はせん妄そのものを治す薬はありません。ですが、気分的に落ち着くような薬を使用することで改善されるのであれば、試すことも可能です。
このような薬は、興奮などを抑えるもので、あくまでも常用するものではなく、時に飲んでみて調子を見てみるというぐらいの感覚でよろしいかと思います。
原因の改善
ストレスなどを受けていることが要因とあれば、そのストレスの改善、睡眠の影響であれば、正しい睡眠を取ることで、改善が認められます。このストレスはちょっとしたことでも感じてしまうほど、割と敏感になっています。
他にも例えば、薬が時間通りに飲めなかったこと、テレビのチャンネルを変えられてしまうことなどです。このようなほんの小さなことでもストレスを感じ、感情的になることもままあるようです。本当にこんなことが?と思うことが左右しますから当人もそうですが、回りの人の注意も必要かと思われます。
弊害を起こす薬の中止
抗精神薬などを服用していて、それが原因かと思われる場合は、医師の相談のもとで中止することで、改善に向うことがよくあります。いわゆる副作用と同様で、片や良かれということで服用していても別の方で悪影響をこうむる場合があるのです。
あくまでも医師との相談での対処となりますが、薬というのは基本的に人工的なものであり、万能であるとはいえないということも考慮した方がよろしいかと思います。
予防法
体調管理が重要
特に睡眠が重要です。せん妄になる人は、昼夜逆転の生活をすることが多いようです。この昼夜逆転の生活をすることで、せん妄の症状が出やすくなります。
元の生活にもどすには若干の要領が必要となりますが、これがある意味予防法にもつながります。昼に寝てしまうことは、逆に夜に眠れなくなることにつながりますので、絶対に昼寝はしてはいけません。
家族などの協力
環境が重要だということは述べましたが、急激な変化をさせないこと大切です。家族の人はその辺を配慮する必要があります。ただ、過保護になるほどのことは避けるべきです。
術後の不安解消
どんな手術であれ、入院していることで不安を感じないような工夫をする必要があります。それには、術後は、早々の離床、散歩などを早めに行うことで不安を取り除き予防できます。
それと、入院していることの気を紛らわすことをするのも一つの手段です。何か集中することをさせることなどは非常に有効です。
まとめ
せん妄と認知症、似たような症状ですが、違う病気であることがお分かりになったかと思います。ある意味自然になってしまったのなら、仕方ない部分もありますが、薬の弊害や薬物の影響で症状が出てしまうことは、はなはだ遺憾に感じます。
薬物はもっての他ですが、特に薬は本来、その治療に効果を上げるためのものです。それが別の病気を発症してしまうというのは、なんのための治療なのか、意味をなしていないと思います。
医師はその辺のことも考慮しての治療に当たっていただきたいと、思うばかりです。とはいうものの、一過性のものであれば、根気よく治療にあたえば、このせん妄は認知症と違い完治する治るものなので、とりあえずのところは安心ではないかと思います。
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