「私なんか、どうせ〇〇だから」と、必要以上に自分を卑下したり、いじけてしまった経験をした人は、意外と少なくないのではないでしょうか?このような必要以上に自分を卑しめて、いじけてしまうような態度、あるいは必要以上に自分の存在を貶めて他人にへりくだるような態度のことを、「卑屈(ひくつ)」な態度と言います。
この点、日本人の美徳は謙譲の精神にあると言われるように、控え目で慎ましい姿勢は謙虚な態度だと思われるかもしれません。しかしながら、謙虚な態度と卑屈な態度とでは、実は大きな差があるのです。そして、卑屈な態度でいると、人生が悪循環に陥りかねないのです。
そこで今回は、卑屈と謙虚の違いを明らかにした上で、卑屈な性格となる原因、卑屈な人に見られる特徴、卑屈な性格の改善方法などについて、ご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。
「卑屈」の意味と「謙虚」との違い
そもそも「卑屈」という言葉は、どのような意味を有するのでしょうか?そして、控え目な姿勢という点では共通性があると思われる「卑屈」と「謙虚」の違いは、どこにあるのでしょうか?
そこで、まずは「卑屈」という言葉の意味と、「卑屈」と「謙虚」の違いについて、確認しておきたいと思います。
「卑屈」の意味
「卑屈」という言葉の意味について、複数の国語辞典を調べてみると、概ねの次のような意味の記載があります。
- いじけること。いじける様子。
- 必要以上に自分の存在を卑しめること。そのようなさま。
- 自分の存在を卑しめて、他人にへつらうこと。そのような様子。
つまり、卑屈とは、客観的に見てもその必要がないのにもかかわらず、自分の存在を自分自身で蔑んでしまい、その状態に甘んじていじける行動やその様子のことを言うのです。
そして、自ら自己評価を下げてしまっていると言う点で、卑屈という言葉は非常にネガティブな考え方、すなわち後ろ向き思考・マイナス思考を表現する言葉であるとも言えるでしょう。
「卑屈」の類義語
このように必要以上に自分で自分自身の価値が低いとみなすことを、「卑屈になる」と言います。そこで、「卑屈」という言葉が有するニュアンスを感じていただくために、「卑屈になる」の類語・類義語を紹介したいと思います。
- 卑下する
- 下手に出る
- 自虐的になる
- 自嘲的になる
- 自己評価が低い、自分の価値を下げる
「卑屈」と「謙虚」の違い
「謙虚」という言葉は、いくつかの国語辞典によると次のような意味を有します。
- 控え目で慎ましいこと。控え目で慎ましい様子。
- 自分の地位や能力などに思いあがることなく、素直な態度で人に接すること。そのさま。
このような謙虚の意味からすると、たしかに控え目な姿勢で相手を立てるという意味で共通するようにも見えます。しかしながら、「謙虚」には自分の地位や能力などに自信を持っていても、それをひけらかすことなく相手を立てようとする心理が含意されるのに対して、「卑屈」には必要以上に自己評価が低い、いわば劣等感から相手に対してへりくだる心理が含意されると言えるでしょう。
ですから、卑屈と謙虚という言葉は、同じ控え目な態度を意味する日本語であるものの、そこに含まれるニュアンスは大きく異なるのです。つまり、卑屈がネガティブなニュアンスを含み、謙虚はどちらかというとポジティブなニュアンスを含むと言えるでしょう。
卑屈な性格となる原因
このように卑屈という言葉は、客観的に見てもその必要がないのにもかかわらず、自分の存在を自分自身で蔑んでしまい、へりくだる行動やその様子のことを言います。
それでは、このような卑屈な性格になってしまうのは、どのようなところに原因があるのでしょうか?そこで、卑屈な性格となる原因について、ご紹介したいと思います。
自分の価値判断基準が確立されていない
卑屈な性格になってしまう原因の一つとして、自分自身の価値判断基準が確立されていないことが挙げられるでしょう。つまり、卑屈な性格の人は、周りの人の価値観や判断基準あるいは世間で一般的とされる価値観や判断基準によって、自分の価値判断基準が大きく左右されてしまうのです。
その結果として、自分の幸福や成功を測る基準が、周囲で成功し幸せだと思われている人や世間一般で理想的な生活をしている人と自分自身を比較することになるのです。そして、このように常に自分と他人を比較して、自分が劣っていることを認識させられることによって、深層心理に劣等感や自己嫌悪といった負の感情が植え付けられ卑屈な性格が形成されていくと考えられるわけです。
例えば、ママ友が集まるコミュニティーでありがちなケースでは、夫の年収を自慢する人が現れると、そのグループ内の価値判断基準の一つが夫の年収となってしまい、それによって序列が決まってしまうことです。そのグループの中で序列が低い人で、かつ自分の判断基準が曖昧な人は、グループ内で卑屈な態度をとるようになってしまいます。
自己肯定感が低く自分に自信がない
このような自分自身の価値判断基準が確立されない理由として、自己肯定感が低くて自分自身に自信が持てないことが挙げられます。それゆえ、自己肯定感が低くなった要因や自分に自信が持てない要因も、卑屈な性格になってしまう原因だと言えるでしょう。
そして、自己肯定感が低くなった要因や自分に自信が持てない要因としては、主に次のようなことが挙げられます。
- 目標達成の経験が少ないこと。
- 周囲から褒められ認められる経験が少ないこと。
- 過保護で自分で判断や選択をする機会がなかったこと。
- 虐待などのトラウマ。
目標達成の経験が少ない
仕事・勉強・ダイエットなど物事が何であれ、自分自身に期待して目標を立てたにもかかわらず、その目標を達成できずに失敗に終わると、男子女子関係なく人間は気持ちが沈んでしまいます。それが何度も繰り返されると、徐々に自分に対する疑念が湧いてきて自信を失っていき、自己肯定感が低下してしまう可能性があります。
このように目標達成の経験が少ないと、自信が失われ自己肯定感が低下することによって、卑屈な性格を形成してしまう可能性があると言えるでしょう。
周囲から褒められ認められる経験が少ない
子供から大人へと成長する過程で、親や周りの大人から褒められたり、認められたりする経験によって、自己肯定感が育まれて自分なりの価値判断基準も形作られていきます。
それゆえ、成長過程において周囲から褒められ認められる経験が少ないと、自己肯定感が育まれにくく価値観にも歪みが現れる可能性があります。ですから、成長過程において周りから認められる経験が少ない場合には、自己評価が必要以上に低下して、卑屈な性格となってしまう可能性があるのです。
過保護で自分で判断や選択をする機会がない
同様に子供から大人へと成長する過程で過保護に育てられると、物事を自分で考えて判断・選択する機会がなく、物事にチャレンジする機会も得られません。すると、チャレンジができないことで達成感や自信を得ることができないので、自己肯定感が育まれません。また、物事を判断・選択することもないので、価値観や価値判断基準の形成も進みません。
このように成長過程において過保護すぎると、自己肯定感や価値判断基準が形成されにくく、卑屈な性格の人を生み出してしまうかもしれないのです。
虐待などのトラウマ
虐待や育児放棄(ネグレクト)は、子供にしてみれば自己の存在を否定される行為だと言えます。それゆえ、虐待などがトラウマ(心的外傷)となっている人は、自己肯定感が低くなりがちで、自己評価も必要以上に低くなってしまいます。
ですから、成長過程において虐待などのトラウマを負ってしまった場合、卑屈な性格となってしまう可能性を否定できないのです。
卑屈な人に見られる特徴
このように卑屈な性格になる原因には、自分自身の価値判断基準が確立されていないことや、自己肯定感が低く自分に自信がないことなどが挙げられます。
それでは、実際に周囲から卑屈な性格だと見られてしまう人には、どのような特徴が現れるのでしょうか?そこで、卑屈な人に見られる主な特徴について、ご紹介したいと思います。
マイナス思考・ネガティブな言動
卑屈な性格の人に見られる特徴の一つとして、最も顕著な特徴がマイナス思考やネガティブな言動だと言えるでしょう。
卑屈な性格の人は、無意識的に他人と自分を比較してしまい、必要以上に自分の評価を低く見積もりがちです。そのため、劣等感や自己嫌悪といった心理から「どうせ自分なんか・・・」と自分の置かれた状況を悲観してしまい、マイナス思考へと陥ってしまうのです。そこで反発心から様々な努力をして這い上がろうとするのではなく、卑屈な人は自分が置かれた状況に甘んじてネガティブな言動を繰り返す傾向があります。
そのネガティブな言動によって、さらに劣等感や自己嫌悪といった負の感情が強化されてしまい、卑屈な人はマイナス思考の悪循環にはまってしまうのです。
何に対しても臆病で、すぐに謝る
卑屈な性格の人には、すべての物事に対して臆病になっていて、すぐ口癖のように謝ってしまうという特徴も見られます。
卑屈な性格の人は、前述のように自己肯定感の低さからマイナス思考に陥りがちで、周りの人に話しかけられた場合に、自分に心当たりが無くとも「自分が何か失敗したかもしれない・・・」と考えてしまい、先に謝ってしまうわけです。
また、周囲の人が良かれと思って意見した場合も、卑屈な性格の人はマイナス思考から怒られたと受け取ってしまい、そこでも謝ってしまうのです。
このように卑屈な性格の人は、自己評価の低さによるマイナス思考から、「ごめんなさい」や「すみません」といった謝罪の言葉を発しやすい傾向があるのです。
ちなみに、卑屈な性格の人が口癖のように謝ってしまうのは、最初に謝ってしまえば大きなトラブルは回避できそうだという無意識的な打算の心理からのものだと思われます。
不幸な自分に自己陶酔しがち
卑屈な性格の人に見られる特徴として、不幸な自分や可哀想な自分に自己陶酔してしまう傾向があることも挙げられるでしょう。
自己陶酔と言うと、プライドの高い人やナルシストの専売特許のように思われる人もいるかもしれません。しかしながら、自己陶酔は卑屈な性格の人にも現れることがあるのです。卑屈な性格の人は、必要以上に自分の存在を卑しめて、その状態に甘んじていじけることが多いので、いわゆる悲劇のヒロイン・悲劇のヒーローのような自分であることに酔っていると分析することもできるのですね。
このような不幸な自分に自己陶酔するタイプの人を、別の目線・視点から見ると、自己肯定感の低さや自己評価の低さから引き起こされる心のダメージを、悲劇のヒロイン・悲劇のヒーローに自分を置き換えることによって柔らげているのかもしれません。
理想や願望が高い傾向がある
卑屈な性格の人の中には、理想や願望が高くて完璧主義的な傾向がある人も少なくないので、これも特徴の一つと言えるかもしれません。
前述のように卑屈な性格の人は、自分の幸福や成功を測る基準が、世間一般で成功し幸せだと思われている人と自分自身を比較することになりがちです。そのため、卑屈な性格の人が掲げる目標や理想は高くなってしまい、完璧な自分を追い求めることになるのです。
しかしながら、目標や理想を高く掲げることの問題点は、目標や理想を達成することの難易度が上昇してしまう点にあります。そして、ほとんどのケースで目標や理想の達成には至らず、自己肯定感が低下する悪循環へと迷い込んでしまうのです。
また、目標や理想を高く掲げる割に成功者と言われる人たちほど真摯に努力するわけでもないところは、卑屈な性格の人の不足点と言えます。そして、目標や理想を達成できないことについて言い訳して、マイナス思考を強化してしまうのですね。
卑屈な性格の改善方法
このように卑屈な性格の人には、とてもネガティブな言動が目立ちます。そして、周りの人にとっては、卑屈な性格の人は面倒な人以外の何者でもありません。
それでは、自分が卑屈な性格かもしれないと自覚したら、どのようにして卑屈な性格を改善すれば良いのでしょうか?そこで、卑屈な性格の改善方法について、ご紹介したいと思います。
他人と自分の比較をやめる
卑屈な性格を改善する方法・コツの一つは、他人と自分自身を比べることを意識して止めることにあるでしょう。
前述のように卑屈な性格を形成してしまう原因の一つに、自分の価値判断基準が定まらず、世間一般の価値観や判断基準に引きずられることにより、成功者とされる他人と自分を比較してしまうことにあります。
それならば、他人と自分自身を比較することを意識的に停止することが、卑屈な性格から抜け出る第一歩になると言えるでしょう。そもそも、人は生まれた場所も異なれば、育った環境も異なる上に、生まれ持った性質や個性も異なります。ですから、他人と自分を比較して良い意味で競争心を持つことは否定しませんが、気持ちが落ち込みマイナス思考になってしまうのならば、他人と自分を比較することはナンセンスだと言えるのではないでしょうか。
SNSを止めてみる
卑屈な性格を改善する方法として、ちょっと荒療治ではありますが、SNSを止めてみるのも効果があるかもしれません。
というのも、現代の世の中はIT技術の発展によって高度情報社会となり、SNSなどによって自分にとって必要でない情報までもが、目に飛び込んでくるからです。不必要な情報でも自分の目に映れば、私達の頭の脳は様々なことを思考してしまい、その中には羨ましさや妬みといった感情につながるものもあるでしょう。そのような負の感情が、卑屈な性格へとつながる可能性も十分にあります。
また、既に卑屈な性格となっている人にとっては、SNSによってもたらされる不必要な情報は、他人と自分を比較することになるので、百害あって一利なしと言えるでしょう。
このようにSNSの影響力は意外と大きく、他人と自分を比較してしまうことが治らないのであれば、SNS断ちをしてみると良いかもしれませんね。
一つでも自信の持てる分野を探す
卑屈な性格を改善する方法として、自分に自信を持てるようになることが最も重要かもしれません。そして、自分に自信を持てるようになるには、何か一つでも良いので自分が得意だと言える分野を探し、その得意分野を突き詰めることです。
一つでも得意な分野があれば、その分野における話題については自信を持って会話をすることができ、自然とコミュニケーションも活発になるでしょう。そうすれば、相手が自分を見る目にも変化が現れることを感じられ、周囲との人間関係も良くなり、自ずと卑屈な性格も改善に向かうでしょう。
ポジティブシンキング
卑屈な性格を変えるには、意識的にポジティブシンキングを心掛けることも、有効な方法の一つと言えるのではないでしょうか。
前述のように卑屈な性格の人は、自己評価の低さからマイナス思考・ネガティブ思考になりがちです。マイナス思考やネガティブな言動を繰り返すと、劣等感や自己嫌悪などの負の感情で心が一杯になり、より卑屈な性格になる悪循環に陥ります。
それゆえ、物事をポジティブな方向で捉えるように心掛け、考え方もプラス思考へと意識的に持っていくことが大切になります。「失敗は成功の母」という発明王エジソンの名言にもあるように、前向きな考え方や努力によって卑屈な性格から抜け出せるのです。
まとめ
いかがでしたか?卑屈と謙虚の違いを明らかにした上で、卑屈な性格となる原因、卑屈な人に見られる特徴、卑屈な性格の改善方法などについて説明してみましたが、ご理解いただけたでしょうか?
たしかに、卑屈な姿勢は、控え目で相手を立てるという点では、謙虚な姿勢と似ているかもしれません。しかしながら、卑屈はネガティブなニュアンスを含意し、謙虚はポジティブなニュアンスを含意しているので、卑屈と謙虚の間には大きな差があるのです。そして、卑屈な姿勢でいると、マイナス思考となりがちで、ネガティブな言動も多くなり、人生が悪循環に陥りかねないのです。
ですから、もし自分が卑屈な性格かもしれないと自覚された場合は、本記事などを参考にして卑屈な性格の改善に取り組んでみてください。
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