乾癬性関節炎について!症状・原因・治療法を紹介!発症しやすい部位はどこ?

乾癬性関節炎という病気をご存じでしょうか?「かんせんせい・かんせつえん」と読みます。乾癬性関節炎というからには乾癬という病気と、関節炎という症状が合わさったものだと予測できますね。

乾癬は誰もが知っているというわけではありません。しかし決して稀な病気ではなく日本では10万人以上の患者がいると推定される皮膚疾患です。

関節炎は関節や骨、軟骨といった組織が摩耗・変形し炎症が起きて痛みを伴う症状です。乾癬性関節炎とは一体どういったものなのでしょうか?あなたにも起こるものなのでしょうか?

乾癬性関節炎について正しく理解し、この病気を予防する術を学んでいきましょう。

乾癬性関節炎とは?

乾癬

皮膚の病気である乾癬に関節炎を伴った場合を乾癬性関節炎(Psoriatic Arthritis:PsA)といいます。皮膚の細胞が垢になって剥がれ落ちるまでの角化(かくか)という症状が通常の進行と比較し10倍程速く進んでしまい手や足、さらには身体の各部位に腫れ・痛み・熱・機能障害を伴う炎症を併発します。

国内での乾癬罹患率は0.01%~0.1%程度で約10万人いると推定されます。関節炎を発症するケースはこの内10%未満と言われ稀な病気として捉えられています。主に20代で罹患するケースが多く男女比の差はありません。

角化のメカニズム

角化(かくか)とは皮膚の最も深層にある基底層(きていそう)で、ケラチノイド(角化細胞)が毎日細胞分裂を繰り返し新しく生まれ変わり表皮の角質細胞に変化する過程のことです。この細胞活性化は後から生まれ変わる新細胞によって徐々に表面の皮膚へと押し上げられ、最終的に表皮の角質細胞に変化します。

角質は古くなると垢(あか)となり剥がれ落ちます。その間はおよそ4~6週間で、表皮角化の過程で完全に生まれ変わります。乾癬では後述する様々な要因により皮膚下の毛細血管が拡張して表面が充血する紅斑(こうはん)と、皮膚や粘膜の一部に炎症や爛れ(ただれ)が起こる発赤症状を伴います。

鱗屑

乾癬になると皮膚表面の角質が硬く盛り上がりポロポロとフケのような皮(垢の一部)となって大量に剥がれ落ちます。また壊死した角質細胞が表皮で剥がれかかっている銀白色の鱗屑(りんせつ)が関節やその他の部位などの身体中に現れます。

この乾癬に伴って関節に痛みを呈する状態を乾癬性関節炎と呼びます。基本的に身体中どこでも発症しますが、関節炎といえば指関節と言われるように指に発症するケースが比較的多く報告されています。

詳しくは、鱗屑ってなに?症状や原因となる病気を紹介!治療法や対策法は?を読んでおきましょう。

乾癬性関節炎の発症部位と症状

完全なる乾癬

乾癬性関節炎はその約70%が乾癬(皮疹)先行型症状を示し、20%は関節炎先行型、残りの10%程度は同時期に起こります。基本的には全身に起こりますが、特に末端部位に比較的多いとの報告があります。

発症する部位は?

乾癬性関節症は肘や膝などの外部とよく接触したり擦れたりする部位や頭部、または爪、手指や足指といった四肢の末梢、さらに首・足首・踵・足裏等に発症します。またタイプは違いますが恥骨・生殖器・尻間部、脇の下や乳房等、皮膚が皺になりやすい場所にできる場合もあります。乾癬の場合、皮疹(皮膚にできる発疹)ができますが、比較的自覚症状はないようです。

爪の病変はその特徴としてぶ厚くなったり、デコボコになったり時には剥がれたりします。手指・足趾で起これば末梢性関節炎、アキレス腱等は腱膜炎、足首・踵・頸等で起これば(腱)付着部炎となり腫れや痛みを伴って発症します。また乾燥した冬等は特に痒みを伴うケースが多く見受けられます。

関節炎

関節炎の症状が先に現れる関節炎先行型は診断が難しく、へバーデン結節等の変形性関節症と誤って診断するケースもあるため注意が必要です。

関節症状として腫れ・痛みを伴う乾癬性関節炎ですが、その現れ方は主に3つに分類されます。全体の30~50%は骨格筋の両端にあって骨に付着する腱(けん)の炎症(腱付着部炎)です。またリウマチに類似し全身の関節に痛みが現れる(30~50%)場合と、主に脊椎(脊柱)や骨盤に痛みが現れる脊椎炎とに分類されます。

この他に関節の変形が顕著な重症例をムチランス型関節炎があります。腱膜炎、指趾炎、付着部炎等は腫れや疼痛が比較的初期に現れますが、ムチランス型関節炎ではかなり重篤な症状となり骨の変形も破壊的で元に戻ることはありません。

関節炎全体の中で25%は手指、特に遠位指節間(DIP)という指の第1関節に病変を認めます。特に指炎と言われる指の第1関節付近がソーセージのように赤く腫れあがるのが特徴的です。関節リウマチが第2関節や指の付け根に起こるのとは明らかに違っており鑑別診断に役立ちます。

脊椎炎

また全体の5%程ですが、仙腸関節(せんちょうかんせつ)という骨盤の関節、さらに腰や背骨(脊椎)に発症するケースもあり、脊椎関節炎とか強直性関節炎(きょうちょくせいかんせつえん)とも呼ばれます。

身体の中心部に発症するため四肢の関節炎と比較して痛みが激しく進行すると骨と骨の間が固まってつながる強直が起こります。

その他の炎症性症状

頻発することはありませんが目の炎症として結膜炎やぶどう膜炎を起こす場合があります。目の痛みや視力が一時的に落ちる等の症状を呈します。

乾癬性関節炎一口メモ

乾癬というと目に見えるインパクトもありどうしても感染(症)をイメージしやすく、うつる病気だと誤解されがちですが、乾癬は決して人にはうつりません。感染症と誤解されることがありますがまったく違います。

乾癬性関節炎の原因

免疫疾患

乾癬という病気と関節炎の症状が現れるためその原因もそれぞれに分けて考えると理解しやすいでしょう。

乾癬性関節炎の原因は未だはっきりしていません。HLA(ヒト白血球型抗原:白血球の血液型を指す)との相関が非常に高いことから遺伝性要因、また皮膚炎・腱付着部炎を合併することから自己免疫系の異常により発症するというのが一般的です。ただし類似疾患である関節リウマチとは罹患部位や血液・生化学的な 所見などの病態が異なります。

元々乾癬に発症しやすい体質であることに加え、外部からの様々な誘発要因、例えばストレス、感染症、薬剤の影響等が重なったために引き起こされます。その他成人病(糖尿病・高脂血症)や肥満なども影響すると言われています。

関節の痛みや腫れは免疫システムの異常により炎症を誘発するサイトカインという物質が体内でたくさん生成されて、皮膚や関節で腫れや痛みを引き起こしているというのが一般説です。

リウマチとの関係性

乾癬性関節炎は症状的にみて関節リウマチとほぼ同じと考えて差し支えありません。但し血液検査でリウマチ因子がでることはありません。リウマチ因子とはRF(Rheumatoid Factor)と呼ばれ関節リウマチや膠原病患者の体内で検出される自己抗体、いわゆるたんぱく質の一種です。

皮膚の疾患である乾癬は自己免疫疾患である膠原病のひとつされ、特に関節リウマチと遺伝子の特徴や形質が似通った類似性疾患と捉えられています。なぜなら膠原病が血管・皮膚・筋肉・関節・内蔵などの結合組織に対し同時多発的に炎症を起こす全身性結合組織疾患で、同時に関節症が多いこともありリウマチ性疾患にも含まれているからです。

医師の間では膠原病は体内の結合組織に対し過剰な免疫分泌により腫れや痛み等の炎症が起こる病気だと考えられており、リウマチに対してもほぼ同じ捉え方をしています。同じようにこの過剰な免疫分泌がたまたま皮膚に起こったケースを乾癬と呼んでいるわけです。

乾癬性関節炎では皮膚の病変に関する懸念より関節炎での組織変性による痛みが問題視されるため優先的に治療が行われます。

リウマチについては、リウマチの初期症状をチェックしよう!指のしびれに要注意!を読んでおきましょう。

乾癬性関節炎の対策

治療法

乾癬性関節炎による腫れ・痛みは日常生活や仕事に支障をきたすため、生活の質であるQOL(Quality of Life)の低下を招く引き金となります。従って可能な限りの早期発見・早期診断が重要なのです。

またネット等でわかる範囲で関連情報を集めておくことも大切です。知識を持っているのといないでは医師からの説明の理解度がまったく違います。以下は特定病症を探す場合に特に役に立つと思います。参考にしてください。

KOMPAS:慶応義塾大学病院医療・健康情報サイト

医療施設への受診

できれば皮膚科・整形外科のある総合病院、または大学病院への受診が望ましいでしょう。ただし直接の受診では時間も経済的な負担も増えるため、お近くの皮膚科または整形外科を受診し診断を仰いだ上で紹介状を書いてもらうというのが正規の手続きかと思います。

検査

主にX線や血液検査等での診断が用いられます。

関節炎による骨増殖により関節間がやたらと狭くなったり変形したりします。特に遠位指節間関節(DIP)のpencil-in-cup変形という骨が鉛筆の先端のように尖りその上にキャップが乗っかるような状態と、DIP関節全体の浸食症状(erosion)が見られます。

血液検査ではリウマトイド因子が陰性となります。関節リウマチではないためそれ以外の病理を疑うことになります。

鑑別診断

関節炎・脊椎炎・腱付着部炎を有する炎症性関節疾患では乾癬性関節炎との明確な分類が重要です。以下は(CASPAR) (2006年)による乾癬性関節炎の分類基準となります。

下記項目それぞれを1点として3点以上を乾癬性関節炎と分類しています。但し現在乾癬に罹患している場合は2点以上を鑑別診断の基準とします。

1.現在乾癬にかかっている*、または過去に乾癬があった、または兄弟姉妹や両

親、祖父母に乾癬の方がいる

2.典型的な乾癬の爪病変(爪剥離症、陥凹、過角化)がある

3.リウマトイド因子という血液検査が陰性

4.指全体が腫れる指炎がある(あった)

5.手、足のX線検査で特徴的な所見(関節近傍の新骨形成)がある

治療法

関節リウマチを中心とする自己免疫疾患に対する治療法と基本的に変わりません。特に生物学的製剤と呼ばれる新たな治療薬がここ10年の間に使用されるようになってきました。

但し抗リウマチ薬を優先して使用し、それでも効果が上がらない場合に生物学的製剤を使った抗サイトカイン療法(痛みの原因となるサイトカインを抑制する)が一般的です。

生物学的製剤

生物学的製剤は今までの科学的に合成された薬剤と違い、生物が生産したタンパク質を主とした薬です。従来の薬剤と比べその効果は非常に高く副作用はほとんどありません。但し保険が適用されていても非常に高価なのがネックです。

関節炎の炎症の主な原因物質はサイトカインと呼ばれ、関節内に流入・蓄積することで引き起こされますが、中でもTNFα(ティーエヌエフアルファ)と言われる腫瘍を壊死させる因子が関節そのものの破壊や腫れ・痛みに深く関わっています。

生物学的製剤は痛みの原因物質であるこのTNFαを直接叩く(TNFα阻害薬)ことができるため、リウマチを含む乾癬性関節炎に対しても非常に有効なのです。

現在、日本で乾癬性関節炎に適応が認められている生物学的製剤は以下の4種です。

  • インフリキシマブ(製品名 レミケード)
  • アダリムマブ(製品名 ヒュミラ)
  • ウステキヌマブ(製品名 ステラーラ)
  • セクキヌマブ(製品名 コセンティクス)

以下は主に関節リウマチの治療薬として認められています。

  • エンブレル(製品名 エタネルセプト)
  • トシリズマブ(製品名 アクテムラ)
  • アバタセプト(製品名 オレンシア)
  • ゴリブマブ(製品名 シンポニー)
  • セルトリズマブペゴル(製品名 シムジア)

この内レミケード、ヒュムラはTNFα阻害薬に属し、その他は生物活性を中和するヒト型抗ヒトIL17Aモノクローナル抗体に反応する働きがあります。

レミケードとヒュムラは痛みの元凶となる抗サイトカイン療法にて多く使用されます。炎症の働きを抑制し、関節炎だけでなく皮膚・爪・指炎・付着部炎すべてに効果があることが立証されています。

ウステキヌマブも大義としては関節の炎症を抑制する薬ですが、TNFα阻害薬のエタネルセプトとの比較では乾癬の皮膚症状を優位に改善させたとの報告があります。但し重篤な副作用がでる場合もあり投薬に当たっては主治医としっかり相談しておくべきでしょう。

生物学的製剤は今後、後発薬も治験を終え新たに出回ること可能性があります。高額ですがそれを差し置いても治療効果がありそれだけ魅力的だということです。

但し副作用は軽度とはいえ報告されています。発疹等のアレルギー症状ですが稀に現れることもあります。また免疫機能が低下する為、感染症(肺炎・風邪等)を引き起こす可能性もあります。

NSAIDs

乾癬性関節炎にはNSAIDs(非ステロイド抗炎症薬)が推奨されています。半年以上服用し効果がない場合、抗リウマチ薬、特にアザルフィジン・リウマトレックス等の使用が考えられます。リウマトレックスはどちらかと言えば乾癬による皮膚病変に効果が認められています。

外用薬療法

皮膚や爪の病変が主の場合、塗り薬を用いた外用療法が一般的です。ステロイド外用薬で炎症を抑え、ビタミンD3外用薬で皮膚表面の細胞増殖を抑えます。

ステロイドは白血球の増殖や活性を抑制し毛細血管の拡張により発生する紅斑を抑える働きがあります。

ビタミンD3は乾癬を発症した表皮細胞の特に鱗屑や皮膚の肥厚改善に効果的です。使い方は両剤とも軟膏クリームなので自分で塗ること可能です。副作用はほとんどありませんが、回数や塗る量など使い方を誤ると食欲不振や全身の脱力感等が見られることもあります。

光線療法(紫外線照射法)

外用薬との併用もしくは外用薬に効果を認めない場合に紫外線照射法が用いられます。近年頻繁に使われるのは紫外線の中のUBV(中波長紫外線)という成分で、中でも有害波長を除去し、治療効果の高い波長を使った「ナローバンドUBV療法」というものです。

さらに「ターゲット型エキシマランプ」といって治癒しづらい部位や照射しにくい部位の治療法も普及しています。またUBAという長波長紫外線による照射は光線の感受性を高める薬剤をあらかじめ塗ってから治療する「PUVA療法」も一般的です。

内服療法

症状が重症化した場合はMTX(メトトレキサート:製品名リウマトレックス)やシクロスポリンA(製品名 ネオーラル)等の内服薬を使用する場合があります。

まとめ

まとめ解決

皮膚の慢性疾患である乾癬に腫れや疼痛を伴う各部の関節炎を併発する病気を乾癬性関節炎といいます。

初期の関節炎を伴うケースでは遠位関節型の他、アキレス腱等の腱膜炎、指趾炎、付着部炎等があり、これらは比較的軽度の初発症状に分類されます。しかし多関節型、脊椎炎型、ムチランス型と言われる関節炎は多数の関節に同時多発的に発症することや、関節の異常な変形を伴うため重篤なケースとして扱われます。

症状が悪化すると想像を絶する関節の痛みを伴うため、疑いのある場合は早期に専門医を受診し必要な治療をうけるべきです。最近では生物学的製剤という新たな治療法も確立され高い改善率が立証されています。

完治する可能性もあるとされる乾癬性関節炎ですが、予後における食生活を含めた生活環境の改善は自分でできる最も有効な手段と言えるでしょう。

関連記事として、

関節炎が起きる原因や男女比、治療法を知ろう!予防するにはどうすればいい?

化膿性関節炎って?原因や症状、治療方法を知ろう!

これらを読んでおきましょう。

  
/* */
  
スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする