最近、「湿疹や肌あれがひどくて・・・」または、「食事をすると、頭に靄がかかったような状態になる・・・」などなど、原因不明の体調不良で苦しんでいる方も多いのではないでしょうか?
そんな方、実は、「グルテン過敏症」かもしれません。今日は、そのような原因不明の症状でお悩みの方のために、グルテン過敏症についてお話しします。
グルテン過敏症とは
アレルギーのしくみ
アレルギーは、対象となるアレルゲンが摂取されると、マクロファージと呼ばれる免疫細胞が直ちに免疫複合体を処理しようとします。
しかし、免疫細胞の処理能力には、限界があり、身体から抗原を排除するマクロファージの能力を上回る抗原が多く摂取されてしまうと、免疫複合体が長期にわたって身体内を循環して、身体組織へ沈着していきます。
グルテン過敏症とは、小麦に含まれているタンパク質グルテン食物の摂取、あるいは、吸入によりアレルギー反応を発症する「遅延型アレルギー」のことを言います。
通常、「lgE抗体」と呼ばれている即時性のあるアレルギーは、アレルゲンにさらされてから15分以内に初期反応が出現します。その後、後期反応が4〜6時間後に現れ、浮腫や炎症などの症状が、数日にわたって続くこともあります。
これに対して、遅延型アレルギーは、「lgG抗体」と呼ばれる、血液中で最も多い遅延型アレルギー抗体とされています。このタイプのアレルギーは、アレルゲンに暴露されてから、初期反応が現れるまでに、数時間から数日間を要するために、「遅延型」、つまり、「遅れて炎症反応が発症する」とされているために、発症をなかなか自覚することができない、あるいは、医師の診断が難しいとされているのです。
遅延型フードアレルギーは、即時型アレルギーに比べて、重症となるケースは少ないのが特徴です。ただ、即時型アレルギーに比して、症状の発症・発現が遅れるために、病状と原因食物との因果関係を把握することがさらに難しく、遅延型フードアレルギーの原因が食物にあることを突き止めるのが困難なのです。
その結果、アレルギーの原因が不明のまま、数年にもわたってアレルギー症状に苦しんでいる患者さんが少なくないのが現状です。
グルテン過敏症の症状
グルテン過敏症のような遅延型フードアレルギーには、「不定愁訴(ふていしゅうそ)」と呼ばれている原因不明の自覚症状が見られます。患者さんからの訴えのことを主訴(しゅそ)と言いますが、その主訴が強いにもかかわらず、非常に主観的で多岐にわたっており、客観的所見に乏しいことが多いようです。
具体的には、頭が重いといった症状から、イライラなどの焦燥感、疲労感や倦怠感、不眠症などの自覚症状があり、なんとなく体調が悪いことは自覚しているのですが、病院での検査では、原因が見つからないことも多いようです。
また、ビタミン欠乏症や必須栄養素などの栄養失調、グルテン過敏症に代表される遅延型フードアレルギーを原因とする不定愁訴も少なくありません。
遅延型フードアレルギーの症状
グルテン過敏症のような遅延型フードアレルギーに起因する症状は、不定愁訴の代表されるように数多くあります。
- 遅延型フードアレルギーの症状①ー消化器系
- 遅延型フードアレルギーの症状②ー尿路系
- 遅延型フードアレルギーの症状③ー精神神経系
- 遅延型フードアレルギーの症状④ー頭頚部系
- 遅延型フードアレルギーの症状⑤ー胸部および呼吸器系
- 遅延型フードアレルギーの症状⑥ー筋肉や運動器系
- 遅延型フードアレルギーの症状⑦ーその他
遅延型フードアレルギーの症状①ー消化器系
グルテン過敏症のような遅延型フードアレルギーが消化器系に影響を及ぼすと、消化不良や吐き気、嘔吐、過敏性腸症候群、下痢、便秘、膨満感、胃潰瘍、肛門掻痒(こうもんそうよう)、腹部のけいれん痛、疝痛(せんつうーはげしい発作性の間欠的腹痛。腹部内臓の諸疾患に伴う症候で、胆石症発作や腎石発作、腸閉塞などに際して現れる)などの症状を引き起こします。
一言で、「消化器系」と言っても、実際には、消化器系だけでもさまざまな症状の原因となることがわかります。
遅延型フードアレルギーの症状②ー尿路系
遅延型フードアレルギーが、尿路系に悪影響を及ぼすと、頻尿や排尿時の激痛、子供の場合は夜尿症といった症状の原因となります。
遅延型フードアレルギーの症状③ー精神神経系
グルテン過敏症が、精神神経系に悪い影響を与えると、極端に感情の起伏が激しくなったり、常に、不安感を抱えたり、憂鬱な精神状態であったりします。また、過食症や集中力の欠如、あるいは集中力不足といった日常生活へも支障をきたす時もあります。さらには、疲労が蓄積して、過労の状態に陥ったりします。お子様の場合ですと、活動が多くなりすぎる活動過多の状態に陥り、不機嫌な状態が続くなどの症状が見られるようになります。
遅延型フードアレルギーの症状④ー頭頚部系
遅延型フードアレルギーが、頭頚部系に影響を及ぼすと、耳感染や鼻詰まり、反復性の副鼻腔炎、頭痛、偏頭痛、咽頭炎、口のびらんなどの症状を引き起こします。例えば、風邪もひいていないのに、鼻が詰まったり、気づいたら頭痛を感じるなどの症状が主な例です。
遅延型フードアレルギーの症状⑤ー胸部および呼吸器系
グルテン過敏症が、胸部や呼吸器系に影響を与えると、喘息や不規則な心拍などの原因となる時があります。特に、小児時の喘息は、お子様にとっては非常な苦痛を伴う症状ですので、留意された方が良いでしょう。
遅延型フードアレルギーの症状⑥ー筋肉や運動器系
遅延型フードアレルギーが、筋肉や運動器系に悪影響を与えると、筋肉痛や関節痛、関節の炎症、関節リウマチなどを引き起こす原因となることがあります。年齢を重ねてからの関節痛や関節の炎症は、苦痛ですし、関節リウマチについては言うまでもなく、痛みを伴います。
遅延型フードアレルギーの症状⑦ーその他
グルテン過敏症は、その他にも人体に悪影響を及ぼします。
たとえば、水分貯留、体重の増加などから湿疹、じんましん、過剰発汗などの自律神経系まで損傷を与えることもあります。
グルテン過敏症の原因と検査
特定の食物に対するグルテン過敏症アレルギーの発症メカニズムは、いまだにはっきりとは解明されてはいません。
先に述べた通り、特定の食物に対してアレルギーが発症し、その特定の食物がグルテンだということなのですが、詳細なメカニズムや原因については、現代医学をもってしても完全に解明されているわけではないのです。
しかし、特定の食物(ここでは、グルテンとなります)にアレルギー反応を示すことはわかっているので、その食物を突き止めるための検査は存在します。この検査もまた、まだ完全な検査ではないのですが、一定程度の成果を上げていることは事実のようです。
遅延型フードアレルギー検査
- 96種類の食物アレルギー検査
- 16種類の吸入抗原アレルギー検査
- セリアック病検査
などがあります。
この検査自体、確立されたものではないにせよ、海外では、多くの医師に、この検査の食物反応によって、病状が悪化しているのではと考えられているようです。この検査は、絶対的な指標ではなく、あくまで可視化された指標の一つとして捉えられているのが現状です。
もちろん、患者さんの側も、この検査結果をもとに、食生活あるいは日常生活の改善といった生活習慣を見直す良い機会でもあります。ご自分の健康のためにも、どんな食物に対してアレルギー反応を持っているのかを把握しておくことは大切でしょう。
個人データの重要性
健康に関する一般的な話ももちろん大切なのですが、グルテン過敏症などの遅延型アレルギーでは、毎日の食生活などのためにも個人データが重要となってきます。
毎朝、健康のために、パンと牛乳やヨーグルトなどの乳製品を食べている方にとっては、グルテン過敏症のような小麦にアレルギーがあると、健康どころか、逆に、体調を崩してしまいます。例えば、胃腸の調子が悪くなったり、皮膚に炎症が出たり、鼻が詰まるようになったりするなど、さまざまな症状が現れてくることがあります。
この場合、一般的な情報よりも、個人に関するデータの方が重要なのです。
このような事態を避けるためにも、遅延型フードアレルギー検査を受けて個人のパーソナルデータを確認しておき、その後の食生活に反映させていくことが大切です。
遅延型アレルギー検査の結果
遅延型アレルギー検査の結果は、0(無反応)〜VI(極めて高い)まで7段階あります。
- 0ー無反応
- Iー非常に低い
- IIー低い
- IIIー中程度
- IVー高い
- Vー非常に高い
- VIー極めて高い
先に述べた通り、この検査は、食材すべてについて検査していないので、あくまで一つの指標です。
グルテン過敏症の治療法
冷静な対応
まずは、遅延型フードアレルギー検査で陽性が出たとしても、冷静に受け止めましょう。検査結果に対する過剰な反応は避けるようにすることです。検査結果を見て、「食べられるものがない!」と、驚く方もいらっしゃるようですが、決してそんなことはありません。もちろん、他にも食べるものはあります。
また、お子様の場合には、遅延型フードアレルギーに対して過剰に反応して食物を選びすぎると、栄養不足を引き起こして、お子様の成長を阻害する要因にもなりかねません。食材のローテーションに気を配って、栄養が偏ってしまわないように留意しましょう。
食物ローテーションによる治療
先ほどの検査の場合、クラスIII(中程度)の反応以上がチェック対象となります。
クラスIII(中程度)の反応のときには、4daysローテーションという食事方法が推奨されているようです。
4daysローテーションとは、4日に1度、反応のあった食物を摂取する方法です。つまり、反応が出た食物を1度摂取したら、その後3日間はその食物を摂取しないように間隔をあける方法です。そして、4日後に、再びその食物を摂取して、再度3日間間隔をあけるのです。ときには、1週間に1度、あるいは1度の量を減らすなどの工夫も必要かもしれません。
クラスIV(高い)の反応があった場合は、少なくとも3ヶ月、クラスV(非常に高い)およびクラスVI(極めて高い)は、6ヶ月間はアレルギー反応の出た食物は摂取せずに、6ヶ月に再検査して数値を確認して食事ローテーションの効果を確認しましょう。
特定の食材のローテーション
一部の特定の食材、たとえば、乳製品や卵、小麦、イースト、アワビ、カキといった食材は、遅延型フードアレルギーに高い反応を示す傾向にあります。上記の食材を日々摂取していると、健康に近づくという印象もありますが、こちらも食材を日替わりで調理して、ローテーションを組んで摂取する方が無難なようです。
食材をローテーションすることで、同じ食物の過度な摂取を避け、食物へのアレルギー反応が高まっていくのを防ぎましょう。
おわりに
グルテン過敏症についてのお話でしたが、遅延型フードアレルギーが、徐々に蓄積されていくボディーブローのような潜在性の病気であることがお分かりいただけましたでしょうか?
日々の食習慣で、こんなにも健康を害してしまう危険性があるんですね。
規則正しい食生活はもちろんのこと、食材をローテーションして栄養バランス良く食事を摂取することが、グルテン過敏症についてはとても大切なのです。
検査結果を見て驚くのではなく、冷静に対処して食材をローテーションすることでグルテン過敏症を避けるようにしましょう。