就職活動において、いくつかのステップを潜り抜けると、場合によっては企業側から健康診断書の提出を求められるケースがあるようです。
たしかに、就職活動には履歴書・学業成績証明書・卒業(修了)見込み証明書など、いくつか企業側から提出を求められる書類があります。そんな就職活動に必要となる書類の中で、盲点となりがちなのが「健康診断書」です。そのため、企業側から健康診断書の提出を求められて、焦ってしまう就活生もいるようです。
そこで今回は、就職活動における健康診断書の要否、健康診断での必要な検査項目、健康診断書の取得・提出などについて、ご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。
就職活動における健康診断書の要否について
そもそも就職活動の段階で、企業側から健康診断書の提出を求められることはあるのでしょうか?たしかに、企業側の採用担当者の視点で考えれば、採用候補となる応募者の健康状態を把握したいでしょう。
一方で応募者・求職者からすると、健康診断書が採用選考に影響する可能性を懸念してしまいます。そこで、まずは就職活動における健康診断書の提出の要否について、ご説明したいと思います。
一般的には、健康診断書の提出を求められることは無い
一般的に言って、就職活動において採用内定に至っていない段階(採用選考の段階)で、企業側から健康診断書の提出を求められることはありません。
というのも、採用内定に至っていない段階で企業側が応募者の健康診断書の提出を求めると、企業側に応募者の健康状態を理由とした就職差別の疑いが生じることになるからです。実際に雇用機会の公平性の観点から、労働者の就労環境などを所管する厚生労働省の指示・方針によって、企業側は採用内定前の応募者に対して健康診断書の提出を求めることを避けるケースがほとんどです。
健康診断書の提出を求められても、通常は採用内定後
就職活動において企業側から健康診断書の提出を求められるとすれば、通常は採用内定後となります。このように採用内定者に企業側が健康診断書の提出を求めるのは、いわゆる「雇入れ時の健康診断」の代用としてです。
雇入れ時の健康診断とは、労働安全衛生規則第43条によって、事業者(企業・会社)が労働者を雇い入れた時に義務付けられている健康診断のことです。労働安全衛生規則とは、労働者の安全・衛生・健康を確保するための労働安全衛生法という法律に基づいて定められた細則(厚生労働省令)です。この規則第43条は、企業側が労働者の労務管理をするためと、仮に労働者が入社後に病気となった際に企業側の責任範囲を明確にする目的があります。大きな会社の場合、会社の指定する医療機関や産業医(労務環境について指導助言する医師)の下で採用内定者を対象に健康診断を実施するか、入社直後に健康診断を実施します。
ただし、労働安全衛生規則第43条但書によって、労働者が健康診断書を提出すれば、それをもって「雇入れ時の健康診断」に代えることができることも定められています。そのため、小さな会社の場合、採用内定者に対して直近3ヶ月以内に受けた健康診断で発行された健康診断書の提出を求めることにより、「雇入れ時の健康診断」の代用とするケースもあるようです。
ちなみに、事業者(企業・会社)は雇用する労働者に対して1年に1回の健康診断(定期健康診断)を受けさせる義務があると、労働安全衛生規則第44条で定められています。
健康診断書の提出を求められるケースも稀にある
とはいえ、就職活動において採用内定に至っていない段階(採用選考の段階)で、企業側から健康診断書の提出を求められることも稀にあります。
その理由は、職種によっては、一定の健康状態が必要になる場合があるからです。たしかに、採用選考の段階で健康診断書の提出を求めることは、就職差別の疑いを生じかねません。しかし、前述した厚生労働省の指示・方針も強制力はありません。また、別の法律である職業安定法では、業務の目的の達成に必要な範囲内で個人情報を収集することが認められており、健康状態(健康診断書)も個人情報に含まれると考えることもできるのです。
ですから、就職活動において採用内定に至っていない段階(採用選考の段階)で、企業側から健康診断書の提出を求められることが絶対にないとは言えないわけです。そのため、あらかじめ健康診断書を用意しておいても良いかもしれませんね。
健康診断での必要な検査項目について
それでは、このような就職活動における健康診断書の要否を踏まえた上で、健康診断書を用意する場合に、どのような検査内容の健康診断を受ければ良いのでしょうか?一口に健康診断と言っても、様々な内容の健康診断が存在します。そこで、就職に関わる健康診断で必要となる検査項目について、ご紹介したいと思います。
就職に関わる健康診断で必要となる検査項目
そもそも通常は大学で毎年定期健康診断を受けているはずですから、その際の健康診断書(あるいは、大学発行の健康診断証明書)の提出を求める企業が多いようです。
別途健康診断を受けるケースでは、就職に関わる健康診断で必要となる検査項目について、企業側から指定や指示があれば、それらに従う形で健康診断を受ければ問題ありません。特に企業側から指定や指示がなければ、基本的に労働安全衛生規則第43条に定められている検査項目をカバーする健康診断を受けましょう。
労働安全衛生規則第43条に定められている検査項目
労働安全衛生規則第43条には、事業者(企業・会社)が「雇入れ時の健康診断」において検査すべき項目も定められています。その項目とは、以下の通りです。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧測定
- 貧血検査(血色素量、赤血球数の検査)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査(尿糖、尿蛋白)
- 心電図検査
医師による問診
既往歴及び業務歴の調査、自覚症状の有無については、医師による問診です。他覚症状の有無は、問診の際に医師の所見によって確認がなされる症状のことです。
身体測定
身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査は、いわゆる「身体測定・身体計測」と呼ばれるお馴染みの検査です。同様に、血圧測定もお馴染みですね。
血液検査
貧血検査(血色素量、赤血球数の検査)、肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)、血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)、血糖検査は、まとめて「血液検査」と呼ばれます。血液を採取後に専門機関で分析されます。
ちなみに、血糖検査は空腹時の血糖値を測定するので、当日の朝食は食べずに検査(採血)となるのが一般的です。
尿検査
尿検査は、学校の健康診断で何度も経験があると思います。当日の起床後に自分で尿を採取して提出します。
検査機械を使う検査
胸部エックス線検査は、いわゆる胸部レントゲン撮影のことです。また、心電図検査は、ベッドに寝て足・腕・胸などに電極を取り付けることにより、心臓が発する微弱電気の波形を計測し、心臓の異常の有無を確認する検査です。
健康診断書の取得・提出などについて
このように健康診断書を用意する場合に受けるべき健康診断の検査内容について、ご理解いただけたものと思います。それでは最後に、その健康診断書の取得や企業側への提出などについて、その他に気を配るべき注意点はあるのでしょうか?そこで、健康診断書の取得や提出についての注意点をご紹介したいと思います。
健康診断を受ける医療機関
前述の通り就職に関わる健康診断書の検査内容は、ごくごく一般的なものばかりです。それゆえ、かかりつけのクリニックや総合病院などの医療機関で受けることができます。
また、意外かもしれませんが、全国各地に存在する保健所でも健康診断を実施しているところが少なくありません。選択肢の一つとして、調べてみてはいかがでしょうか。
ですから、医療機関の立地や健康診断の検査料金など踏まえて、選択すると良いでしょう。ただし、医療機関によって予約制だったり、検査日に曜日の限定があったりしますので、事前の確認が必要です。
健康診断書の取得費用
健康診断書の取得費用は、検査費用(検査料金)と診断書発行費用(発行料金)の合計です。基本的に健康診断は健康保険適用外となりますので、全額自己負担となるのが通常です。
病院・クリニックなどの場合、その医療機関によって異なりますが、概ね7,000円から15,000円が相場のようです。公立病院や保健所などのほうが、低額な傾向となっているようです。
健康診断書の有効期限
健康診断書の性質上、有効期限が存在しないのが一般的です。というのも、健康診断書は健康診断を受けた時の身体の状態にすぎず、健康状態は日々変化していくからです。
ですから、一般的な考え方として企業などに提出する場合は、3ヶ月以内に受診した健康診断書にすべきでしょう。
ちなみに、企業によっては提出すべき健康診断書について、その年度内のものとしているケースもあります。その場合は、大学などの定期健康診断における健康診断書(健康診断証明書)で大丈夫です。
まとめ
いかがでしたか?就職活動における健康診断書の要否、健康診断での必要な検査項目、健康診断書の取得・提出などについて説明してみましたが、ご理解いただけたでしょうか?
就職活動では、履歴書・学業成績証明書・卒業(修了)見込み証明書などに加えて、企業側から健康診断書の提出を求められるケースもあるようです。そのほとんどのケースが採用内定後なのですが、中には採用内定前に健康診断書の提出を求められるケースもあるようです。
そして、その健康診断書についても、大学の定期健康診断における健康診断証明書で足りる場合もあれば、自分で健康診断を受けなければならない場合もあるなど、応募先企業によって様々です。
ですから、就職活動においては健康診断書の提出もあり得ると認識し、いざ提出を求められても焦らないように事前準備しておくことが肝要です。
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