就職活動・転職活動や講演会の講師・本の著作者の紹介などで「略歴」という言葉がよく使われます。略歴は「経歴を略したもの」ですが、実際に略歴を書こうとすると迷うことが多いですよね。
略歴の役割や意味は書き方によって異なります。就職活動・転職活動の書類選考では、略歴で自己アピールします。略歴の書き方で、採用担当者の印象が違ってきます。
略歴の意味と役割・経歴との違い・略歴の書き方と重要ポイントについて、お伝えしますね。
略歴とは?
講演会の講師や本の著者を紹介する時に、必ず「略歴」という言葉が使われます。また、就職活動・転職活動の履歴書にも、必ず「略歴」を書く欄があります。就活・転職では、「略歴と職務経歴書の違い」「略歴・経歴・学歴」の違いがよくわからないで悩みますよね。
[略歴は「経歴」を簡単に略したもの]
「略歴」は文字通り「経歴」を簡単に略したものです。「経歴」とは、「生まれてから現在に至るまでにしてきた事柄、学業・仕事・身分・地位などに関する事柄の全て」を意味します。これらの事柄を全て記載するのは、書く方も読む方も大変です。それで、多くの場面で「略歴」が使われます。
「略歴」とは、「生まれてから現在に至るまでのおおまかな経歴」を意味します。
略歴の最低限度必要項目は?
一般的に略歴を求められた時の最低限度必要項目は、下記の通りです。
- 最終学歴
- 勤務先と勤続年数
- 勤務先における担当業務
略歴の内容は目的や記入欄に合わせて変える
略歴の内容は、略歴を書く目的・略歴を求められる理由によって変えます。
講演会では講師の略歴が集客に大いに影響します。実績(○○講演会では1,000人を超す参加者)や専門分野(離婚専門弁護士)を具体的に書きます。医師の略歴では、所属病院と役職・専門分野・所属学会・活動歴を記します。患者が必要とする医師かどうか、わかるようにします。
就職活動・転職活動では、まず履歴書で自己アピールする必要があります。応募する企業の求めに応じた略歴を書くようにします。履歴書の記入欄の範囲に合わせて、略歴を書きます。
[就職活動・転職活動の略歴]
就職活動・転職活動では、応募先の企業に必ず履歴書を提出します。略歴は、履歴書のフォーマットに合わせて書くようにします。学歴と職歴を合わせて略歴とする場合もあります。学歴欄が略歴欄と別に設けられている場合は、略歴欄には職歴を明記します。
企業が必要とする情報を明記する
就活・転職の略歴は、応募した企業側が必要とする情報のみ明記します。余計な情報を書くと、応募企業の採用担当者が迷惑します。
学歴は中学校卒業年次から
学歴は、一般的に中学校卒業年次から明記します。高校・大学・専門学校・大学院等の学校名と入学年次・卒業年次を明記します。専門コースを特に勉強した場合は、自己アピールのために記載します。
資格取得のための学校は記載する必要がない
仕事に役立つ資格を有している場合は、履歴書の資格を書く欄に明記してアピールします。資格は略歴欄には書きません。資格取得のために通った学校は、略歴に書く必要はありません。
転職の多い人や社会経験の長い人は略歴と職務経歴を別にする
転職回数が多い人や社会人経験の長い人は、どうしても職務経歴が長くなります。略歴と職務経歴を別に記載すると、応募企業の採用担当者が読みやすくなります。略歴を記載した履歴書に職務経歴書を添付します。
履歴書・略歴・職務経歴書の違い
「履歴書」は、その人の基本的なプロフィールを定型フォーマット1枚に記載したものです。氏名・生年月日・現住所・連絡先・学歴や職歴などの略歴・資格や免許・賞罰などを記載します。志望動機や特技などを記載する欄を設けている履歴書もあります。
「略歴」は履歴書の中に必ず記載します。記載する欄があります。
「職務経歴書」には、履歴書のように定型フォーマットはありません。一般的な書式があるだけです。履歴書とは別にA4紙1~2枚にまとめます。職務経歴書は「何ができるか」「応募先の企業にどれだけ役に立てるか」を書いたものです。これまでの業務経験と仕事に役立つスキルや知識について記載します。
就職・転職活動の略歴の書き方は?
略歴を書くことを求められるのは、就職活動・転職活動が最も一般的です。就職・転職活動では、まず履歴書の略歴で自己アピールします。書類選考に通らなければ、次に進めません。特に転職活動をする人は、略歴の書き方をしっかりマスターして自分の武器の1つにします。
[略歴を書く前にキャリアの棚卸をする]
履歴書に略歴を記入する前に、準備が必要です。自分のキャリアを見直して、自分をアピールするポイントを明確にします。頭の中で考えるだけではなく、パソコン画面にでも紙にでも書き出して視覚化します。
①今までの自分のキャリアを洗い出して整理する
転職活動をする人は、これまでの自分の職歴を下記のポイントに従って洗い出し整理して、時期ごとにまとめます。マネジメント経験・業績面での貢献度・顧客満足度・営業員なら売り上げなども書き出してみます。
- 勤務先(事業内容・従業員数・年商・本社所在地・設立年月日)
- キャリアの転換点(入社・退社・昇進・降格・配置転換・異動)
- 所属と役職
- 職務内容・仕事内容
- 実績・業績・会社に対する貢献
新卒や第二新卒など就職活動する人は、これまでのアルバイト・ボランティア・部活動・インターンシップの経験を洗い出して整理します。
- アルバイト先・インターンシップ先(業種・事業内容・従業員数・年商)
- ボランティア活動先・所属したクラブ
- 仕事内容・活動内容
- 学び得たこと・身に着いたこと
②特殊なキャリア・経験を洗い出す
受賞歴・特殊な経験・失敗経験・特殊なキャリアを洗い出して、整理しまとめます。これは、転職活動者も就職活動者も同じです。
受賞歴は、社内賞でも外部の賞でもかまいません。受賞する難易度や概要を明記します。社内の賞は外部の人にはわかりにくいので、受賞の内容と理由をハッキリ書きます。
新規事業の立ち上げやイベントの開催など、日常業務では経験できない特別な経験を整理します。成功体験だけでなく失敗経験も書き出してみます。成功からも失敗からも、学ぶことは沢山あります。学んだことや失敗した時の対処方法を書き出します。
③職業能力を整理する
①と②で書き出したことを見直して、自分の職業能力を整理して明確にします。仕事をするうちにできるようになったこと・身につけたこと・自信のあること・努力したこと・得意分野・知識やスキルなど、企業にアピールできるポイントを整理して、箇条書きにします。
④応募企業に合わせて内容を取捨選択する
応募する企業によって、求める人材や能力が異なります。応募する企業に合わせて、略歴に書く内容を取捨選択する必要があります。③の職業能力のアピールポイントの中から、応募する企業が求める能力を取り出してまとめます。全てのアピールポイントを書くと、採用担当者が読みにくくなります。200~300字にまとめます。
[略歴を書く時の3つのポイント]
実際に履歴書に略歴を書く時の重要なポイントは3つです。
①年号は西暦か和暦に統一する
学歴や職歴を書く時には、入学年次・卒業年次や入社年次・退社年次が必要です。年号は、和暦か西暦かどちらかに統一します。在学年数・勤続年数を計算しやすいのは西暦ですが、どちらでもOKです。生年月日はと平成○○年△月☓日、入社年月日は20○○年△月☓日と、和暦と西暦が入り混じるのはNGです。
年次は正確に書く
入学・卒業の年度や入社・退社の年度が曖昧になっていることが、よくあります。略歴を書く時はきちんと計算して、正確な年次・年月日を書きます。
②正式名称を書く
学校名や企業名は、きちんと正式名称を書きます。「天保学院大学」「天保学院高等学校」を「天保大」「天保高校」などと略称で書くのはNGです。企業名も「南北工業株式会社」「株式会社東西電気工業」と書き、「南北工業(株)」「(株)東西電工」などと書かないようにします。企業名は略称で親しまれていることが多いのですが、略歴書や職務経歴書にはきちんと正式名称を書きます。「株式会社」を「(株)」と省略するのもNGです。
大学は学部や学科まで書く
新卒や第二新卒が就職活動をする時は、略歴には大学など学校名だけでなく学部や専攻した学科を明記します。「天保学院大学経済学部」だけでは、専攻した学科がわかりません。「天保学院大学経済学部国際経営学科」「寛永大学人文学部心理学科」などと書けば、採用担当者がよくわかります。
略歴の手を抜いたと思われる
学校名や企業名を略称で書いたり学科を書かなかったりすると、企業の採用担当者は「この応募者は、略歴を書くのに手抜きをしている」と感じる可能性があります。
③時系列順に書く
日本の履歴書では、略歴を時系列順に古いものから書きます。略歴はその人の人生の歴史ですから、古いものから新しいものへと順序立てて書く方が読み手にわかりやすくなります。
職務経歴書は新しい職務から書いてもOK
中途採用の求職者・転職希望者は、応募企業に対して「即戦力になる」ことをアピールします。そのため、最も新しい職歴から逆の順序で書いたり、アピールしたい職歴から書いたりしてもOKです。無論、時系列順でかまいません。
④文字の大きさを揃える
略歴(履歴書)を書く時は、できるだけ文字の大きさを統一します。文字に大小があると読みにくいので、採用担当者の印象が悪くなります。履歴書・略歴を書くには、パソコンと手書きの2つの方法があります。パソコンで書く場合は、自動的に文字の大きさが揃います。
手書きにする場合は、全体のイメージを想像して文字の大きさを決めます。鉛筆で薄く線を引いて区切るのも良い方法です。長い企業名や学校名は2段になってもかまいません。下書きなどして練習してから書くことをオススメします。
[略歴で採用担当者にアピールするには?]
就職活動・転職活動では、履歴書の略歴で採用担当者にアピールします。書類選考の段階では、企業側に自分をアピールする方法は略歴だけです。履歴書に志望動機を書く欄があれば、略歴と連携してアピールします。
①1年以上続いたアルバイトは職歴になる
1年以上続いたアルバイトは職歴に入ります。転職希望者・中途採用の就職活動者は略歴の中にしっかり記載します。学歴欄と略歴欄が分かれている履歴書では、職歴として略歴欄に書きます。新卒の就活生ではなく、第二新卒や中途採用を希望する就職活動者はアルバイト経験をフルに活かしてアピールします。
新卒の就活生も、長年続いたアルバイトを略歴の中に明記します。新卒の就活生は職歴がないのが普通ですが、1年以上続いたアルバイトは職歴になります。履歴書の中で学歴欄と略歴欄が分かれていたら、略歴欄に書きます。
応募企業と関係のあるアルバイトは必ず明記する
応募している企業と関係のある業種・業界のアルバイトなら、立派な自己アピールになります。アルバイトで身につけた知識・経験・スキルを必ず略歴に明記します。
志望動機にも結び付ける
応募した企業と関連のあるアルバイトは、志望動機にも結び付けることができます。略歴と志望動機を結び付けてアピールします。
②略歴・資格を見直して自分の長所や強みを見つける
就職活動・転職活動では、「自分にはどのような能力がどれだけあるか」「自分にはどれだけ魅力があるか」を自分自身でしっかり把握する必要があります。自分自身の能力や魅力を客観的に把握できなければ、応募した企業側に自己アピールすることができません。
略歴を書く準備をすると、自分の能力・資格・特技・知識などを見直すことになります。そこから、改めて自分の長所や強みを見つけることができます。自分の長所や強みを発揮できる企業に応募して、アピールするようにします。
[就職・転職活動の略歴の例文]
就職活動・転職活動における一般的な略歴の例文です。学歴+職歴を略歴としています。
- 2003年3月 天保学院中等科卒業
- 2003年4月 天保学院高等科入学
- 2006年3月 天保学院高等科卒業
- 2006年4月 寛永大学経済学部経営学科入学
- 2008年9月~2009年6月 米国に語学留学
- 2011年3月 寛永大学経済学部経営学科卒業
- 2011年4月 株式会社東西電工に入社 営業部第三課に配属
- 2014年7月 一身上の都合により退職
- 2014年11月 南北産業株式会社に入社 営業部企画課に配属
- 2016年4月~2017年10月 静岡支店開設チームに配属 副主任
- 2017年11月 営業部広報課に配属 係長に就任
いろいろな場面における略歴の書き方
略歴が必要になるのは、就職活動・転職活動だけではありません。いろいろな場面で略歴を書くことがあります。略歴を書く時は、就職・転職活動と同様に事前準備が大事です。書くべきことをきちんと整理します。
①講演会など講師の略歴
講演会やセミナーに参加する人は、まず講演のタイトルを見て興味を持ちます。それから講義内容を見て参加を考え始め、講師の略歴を見て「この人の話を聞いてみようか」という気持ちになります。講師の略歴は集客に大いに関係するので、できるだけ魅力的に書きます。「こんなすごい人が話をするのか」と思わせるような略歴にします。
略歴には下記の項目を必ず記載します。
- 名前 読みにくい名前にはふりがなを付けます
- 肩書 講演やセミナーのタイトル・テーマにふさわしい知識があることを肩書で示します。できるだけ具体的に書きます。単に「弁護士」と書かず、「遺産相続専門弁護士」と書きます。
- 実績 実績は第三者的な表現にします。「○○株式会社設立」「代表取締役就任」「プロジェクトに参画」などと書きます。
- 最終学歴
②医師の略歴
医師の略歴の書き方には定形はありません。学歴は高校入学からでOKです。大事なことは、患者が必要としている病院の医師かどうか、すぐにわかるような書き方にします。
所属する病院については、急性期病院・療養型病院・高度医療専門病院・地域密着型病院などの区別をハッキリ書きます。病院名・病院の場所・病床数・医局派遣の有無・救急患者の対応の有無・診療科目・役職を明記します。
非常勤医師のみを長く続けている人は、非常勤の勤務先を職歴として明記します。
医師の略歴は、一般的には下記の項目の順序で書きます。
- 所属病院と部局および役職
- 専門分野
- 所属している学会
- 活動履歴 出身大学・医師免許取得年月日・研修医としての勤務先・勤務する病院での活動内容・博士号の取得など
- 受賞歴(ある人のみ)
③著者の略歴
本の著者は、著書の最後に略歴を載せます。
- 生年月日と出身地(都道府県名・国名)
- デビュー作
- 文学賞の受賞歴と受賞した作品名
- 代表的な著書およびシリーズもの
④学会の発表者の略歴
学会で発表する場合の略歴は、学会活動と社会活動に分けて記載します。自分自身の研究分野や専攻などに関連する事項を、2つの活動に分けます。活動を始めた年次と活動を終えた年次を明記します。現在も続けている場合は「現在に至る」と書きます。学歴は、高校入学時からで大丈夫です。
⑤英文の略歴
海外の企業に就職を希望する場合は、英文で略歴を書きます。
英文略歴は新しい順に書く
英文の略歴では、大事なこと・新しいことから先に書きます。学歴・職歴は最終学歴・最終勤務先から新しい順に書きます。ムダな情報を省いて、必要な情報を箇条書きにします。
職歴は重要なものだけ書く
職歴は、経験した職業を全部書く必要はありません。応募する企業にとって重要と思われる勤務先を3~4に絞って記載します。勤務した会社名・肩書・勤務期間・仕事内容・実績(達成したこと)を明記します。勤務していた会社の業務内容・業績・年商など会社概要も書く必要があります。
一般的なレジュメ
英文の略歴では、コンビネーションレジュメが一般的です。その他に、クロノロジカルレジュメやファンクショナルレジュメなどがあります。
⑥お見合いの略歴
お見合いの履歴書は「身上書」「釣書(つりがき)」と言います。お見合いをする前に、お互いに履歴書を渡します。氏名や生年月日や学歴・職歴の略歴を記します。身長・体重・趣味・得意なことなども書いて、自分のことを相手に知ってもらうようにします。
まとめ 就職・転職の略歴は必要な情報を選んで書く
「略歴」とは「経歴を簡単に略したもの」「生まれてから現在に至るまでのおおまかな経歴」です。経歴は「生まれてから現在に至るまでの学業・仕事・身分・地位に関する事柄の全て」です。経歴は読むのも書くのも大変なので、たいていの場合、略歴が使われます。
略歴は、目的によって書き方や役割が異なります。講演会などの講師の略歴は、集客できるものにします。医師の略歴は、患者が必要とする医師かどうか明らかにします。就職活動・転職活動では、応募する企業に提出する履歴書の中に略歴を記載します。就活生・求職者が企業に必要な人材かどうか、採用担当者にわかるように基本的なプロフィールを書きます。
就職活動・転職活動では、まず書類選考に通らないと次へ進めません。書類選考では、略歴で自己アピールします。自分が、応募した企業で役立てる人間であることを書きます。
企業によって求める人材や能力が異なります。略歴を書く前に、自分の長所や強みや能力を洗い出します。転職活動者は自分のキャリアの棚卸をして、知識・経験・スキルを整理します。その中から、応募企業が必要とする人材や能力についての情報を取捨選択します。
略歴には必要な情報のみを選択して記載します。自己アピールするために何もかも書くと、応募企業の採用担当者が混乱するだけです。採用担当者に「我が社が求める人物らしい」と思われるように、略歴を書きます。
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