私たちの身の回りには様々な虫が存在します。身近なものですと絨毯なんかにいるダニでしょうか。あまり悪さはしませんが、数が多くなるとかゆみやアレルギーの原因になるので厄介です。
やけど虫という虫も、その名の通り体に皮膚炎を発症させる悪い虫です。人によっては後遺症が一生残ることも。では、そんなやけど虫についてみていくことにしましょう。
やけど虫とは?
やけど虫は正式名称「アオバアリガタハネカクシ」と呼ばれ、ハネカクシ科・アリガタハネカクシ亜科に属します。体長は6mm程度でとても小さな虫です。
頭部がアリのように黒く、胸部がオレンジ色、鞘翅が黒色、腹部がオレンジ色。尻尾の部分が黒色と、黒とオレンジ色が交互に並んだ独特の色をしています。
夜間、家の外にある街灯や、カーテンから漏れる光に引き寄せられて集まります。季節としては6月〜7月の夏が始まる前に発生し、家の外でよくみられます。基本的には日本全土に生息し、誰でも触れ合う機会があります。田んぼや畑、川辺などの水や土のある場所にいます。雑草や石の下といった水が溜まりやすい場所を好みます。
産卵する卵は10個ほど。寿命は約1年程度です。アリガタハネカクシ類の虫は春から秋にかけて活動するものもあり、同様にその季節は注意が必要でしょう。その名の通り羽が隠れているため、一見して飛ばないようにも見えます。しかし、羽を使って飛来することもあるので、あまり刺激しないことが大切です。
やけど虫が起こす「やけど」とは
やけど虫の名の通り、アオバアリガタハネカクシにはやけどを発症させる毒があります。ただ、やけどといっても実際に皮膚が高温になることで発症するのではなく、毒によって火傷のような水疱ができてしまいます。
やけど虫はペデリンという有害物質を持っています。これが皮膚に触れることで炎症症状を発症させます。毒は体表にも存在するので、やけど虫を潰したときだけではなく、触れただけでも毒を浴びてしまいます。
毒に触れた後、2時間ほどで患部のかゆみを感じ始めます。その後、痛みを感じ、腫れ、水疱などを発症させます。適切な処置をしなければ痕が残ることもあるので注意が必要です。
やけど虫によって発症する炎症を「線状皮膚炎」と呼びます。その名の通り、線状に炎症症状が発症します。かなりの痛みを発症するでしょう。症状は適切な処理がなされなければ1週間から長い時で1ヶ月程度続くことがあります。毒を浴びた段階できちんと処理をすることが大切です。
毒は成虫だけではなく、卵や幼虫の状態でもあります。このため、払い落したり、潰してしまうと毒を含んだ体液が皮膚についてしまい、同様に炎症症状を起こしてしまうことがあります。
目には特に注意!
夏場は特に虫が発生しやすい季節です。自転車を運転していると目や顔に虫が当たったことがある、という人もいるかもしれませんね。ただ、やけど虫に限っては特に注意が必要です。
毒であるペデリンが目に入り込むと、強い炎症を招きます。角膜炎や虹彩炎といった重篤な症状を発症することがあり、失明の可能性もあります。
やけど虫の毒を手に浴びてしまった。そしてパニックになり、その手で目をこすってしまった。そうなるともう大変です。そういった場合はすぐに病院へいくようにしましょう。
益虫でもある
やけど虫は水を好む場所に生息することから、稲の田園にもいます。稲の栽培ではしばし、害虫による被害がありますが、やけど虫はこの害虫を捕食してくれることがあります。つまり、益虫なのですね。
人に触れると皮膚に炎症を起こすやけど虫も農業では稲を守ってくれるとても大切な虫でもあったのです。近づかないようにしながらも、距離を保って付き合っていく必要があるのかもしれません。
やけど虫の対処法
では、やけど虫の毒を浴びてしまった時、どういった対処をすればいいのでしょうか。放置すると重症化する炎症。具体的には以下の対処をするようにしてください。
まずはとにかく洗う
やけど虫の毒が触れてしまった部位はとにかく洗い流すようにしてください。また、他の部位に極力飛び散らないよう細心の注意を払うようにしましょう。
衣類に毒がついてしまった場合も同様です。毒に触れないよう衣類を脱いで、すぐさま選択するようにしてください。触れるだけで危険という認識を持ってくださいね。
軟膏を塗る
軽度の症状であれば軟膏を塗ることで症状を抑えることができます。毒に触れてしまったら、なるべく早く薬を塗って対処するようにしてください。軟膏は市販のもので対処可能です。皮膚炎に効果のあるものを選んでください。
軟膏を塗るときは他の場所へ体液が飛び散らないように注意してくださいね。触るだけで炎症症状を発症させることがあるので要注意です。
違和感があったら医療機関へ
毒を洗い流したり、軟膏を塗っても症状が悪化した。かゆみが激しくなり、痛みも感じる。患部が腫れ上がっている。そういった違和感があるときはすぐさま医療機関・皮膚科へ行くようにしてください。
よく病院嫌いな人はそのまま症状を放置してしまうということがあります。しかし、それはただ症状が悪化していくだけなので、早め早めに病院へ行くようにしてくださいね。
やけど虫の対処の注意点
やけど虫の毒は触るだけで危険です。軽い気持ちで対処をしてしまうと、その後の症状が悪化してしまうなんてこともあるため、きちんとした意識を持つことが大切です。
対処する上で注意したいことは以下があげられます。
とにかく患部を触らないように
毒を浴びてしまった部位は極力触らないようにしてください。炎症症状にしろ、痒い症状にしろ、患部に刺激を与えることは症状悪化に繋がるからです。
仮に炎症症状を起こしてしまっていても、治療をしているのであれば、患部には触れないことが大切でしょう。
他の部位をこすったりしない
例えばやけど虫の毒が手についてしまったとき、その手で目をこすったりしないようにしてください。他の部位に毒が拡散してしまうと症状の拡大につながります。
特に先に述べたように目への毒の塗布は失明の可能性があるので要注意です。毒を浴びたときは冷静に対処するようにしてください。もちろん、こするということもしないようにしてください。
症状を放置しない
やけど虫は小さい虫です。それゆえ持っている毒が弱いと思われがちです。たとえ毒を浴びてもきちんと対処しなかったり、症状を放置してしまう人がいます。
確かに最初のうちは軽いかゆみがあるだけで、それほど重症のように思えません。しかし、時間が経つほど患部が腫れ上がり、痛みも感じるようになります。
この段階になってくると個人ではどうしようもできません。また、後遺症が残る可能性もあります。毒を浴びたとき、小さな違和感でもあればすぐに対処するようにしてください。
医療機関では全身を診てもらう
自分が気づかない部位で毒を浴びてしまっていることがあります。
手だけだと思っていたら足にもかかっていた。症状が出てくることもありますが、念のため全身を診てもらうようにしましょう。
その後は安静にする
毒を浴びてしまい、皮膚の炎症症状が出たものの、きちんと対処したとします。その後はきちんと安静にするようにしましょう。かゆみや痛みでそれどころではないかもしれませんが、まずは体を休めるようにしてくださいね。
やけど虫の対策
やけど虫の特徴や実際に毒を浴びてしまった時の対処法はわかったかと思います。では、次にそもそもそういった状況にならないための対策法についてみていくことにしましょう。
水気のある場所になるべく近寄らない
やけど虫が活動的になるのは6月〜7月でした。この時期に水気がある場所へ近づいてしまうとやけど虫と遭遇してしまうかもしれません。なので、なるべくこういった場所には近づかないようにしましょう。
水気のある場所とは、先に述べたように水田、田畑などがあげられます。また、石の裏側などむやみにひっくり返さないようにしましょう。特に子供の遊びでは注意したいものです。
窓を開けっ放しにしない
暑くなる季節、どうしても窓を開けておきたいと思うかもしれません。しかし、やけど虫が外から侵入し、被害をもたらしてしまうということがあります。
そのため、なるべく窓は開けっ放しにするのではなく、きちんと網戸をして、家の中に虫が入らないようにしましょう。入ってきてしまったら厄介なので注意が必要です。
忌避殺虫剤を散布する
最近では散布することで虫そのものの侵入を拒む殺虫剤があります。これを家の周りに散布しておくことで、やけど虫が来るのを予防することができます。
家の網戸に散布しておけば、効果が持続します。夏場は涼しい風を通しておきながら虫の侵入を防ぐことができます。ぜひ、試してみてください。
野外で見かけてもむやみに殺さない
その特異な姿から、なんとなく毒々しいことがわかるやけど虫。一方で子供の格好の遊び対象となってしまうことがあります。しかし、相手は毒をもつ虫。手を出してはいけないのです。
野外で見かけても踏み潰したり、触らないことが基本的な予防法です。触るだけでも皮膚の炎症が起こりますから、見つけたらそのまま逃げることが正しいでしょう。
窓ガラスに工夫をする
やけど虫は光によって来る修整があります。このため、ガラスフィルムに紫外線を遮断するフィルムを貼ることで、虫の飛来を防ぐことができます。
また、シンプルにカーテンを厚手のもに変えたり、夜は早めに消灯してしまうなどが虫を寄せ付けない方法です。反対にあえて街灯を設置して、虫を一箇所に集め、そこで殺虫剤を散布するというのもいいでしょう。
その他の注意点
やけど虫の厄介なところは死んでいても毒は残っているということ。子供なんかは興味があって死骸を触ってしまうなんてことがあるかもしれませんが、そこで炎症を招いてしまうのです。
なので、死骸を見つけてもとにかく触らないこと。そして、その場から立ち去ることがやけど虫の正しい対処法といえるでしょう。くれぐれも触らないようにしてくださいね。
布団についていたということも…
外で布団を干していたら、やけど虫がついていた。気がつかずにそこで寝てしまったら毒を浴びてしまった。そういったことも少なからずあるようです。
布団を外に干すととても気持ちが良いものですが、こういったケースがあるとたまったものではないですよね。せっかくの布団干しが台無しになってしまいます。
何か洗濯物を外で干し、取り込む時は1枚1枚確認するといいかもしれませんね。やけど虫は色に特徴があり、見つけやすいですから用心するようにしましょう。
アロマランプで駆除をする
やけど虫の撃退方法としてオススメなのがアロマランプです。エッセンシャルオイルを気化させ、匂いを拡散する機会ですよね。これが実は効果を発揮するのです。
関係しているのがフィトンチッドという成分。これは植物から発せられる臭い成分の1つで、虫が嫌がるという性質があります。もちろん、人間には無害です。以下のアロマにフィトンチッドが含まれています。
- スギ
- モミ
- ヒノキ
例えばヒノキ風呂に入るとリラックスすることができますよね。一方で虫にとってはいやな臭いなので近寄ってきません。まさにやけど虫対策として効果的なのです。
やけど虫以外の危険な虫
日本にはやけど虫以外にもまだまだ危険な虫がいます。
そして、それは自分が思っているほど身近にいて、あなたを狙っているかもしれません。危険な虫として以下があげられます。
チャドクガ
チャドクガはいわゆる毛虫の一種。多くの毛に覆われていて、その毛を毒針毛といいます。その姿は触ったら危険だということが一目でわかります。北海道を除くすべての地域に生息していて、葉の裏や家の庭などで見つけるのも難しくないでしょう。
攻撃されるということはありませんが、触ってしまうとかぶれることがあります。毒針毛は非常に細いので、服の間を抜けて中に入ってしまうことがあるので、見つけたら速やかにその場を立ち去るのが懸命です。
トビズムカデ
誰もが嫌いなムカデ。最大で20cmほどに成長することもあります。姿も赤い頭と黒い体で毒々しく、その姿を見ると驚いてしまうかもしれませんね。
トビズムカデは肉食性でねずみなどを捕食することもあります。噛まれると激しい痛みを伴うので、見つけた時は静かに立ち去りましょう。仮に噛まれた時はすぐさま病院へ。
ヒトスジシマカ
よくみかける蚊の一種。その名の通り、身体中に線が入っているのが特徴です。噛まれることで伝染病に感染してしまう危険があり、デング熱やジカ熱はこの蚊から感染します。
ニュースで話題になることもありますから、大切なのはそういった場所に行かないこと。そして、夏場は特に虫除けスプレーなどで対策を取るようにしましょう。
オオスズメバチ
スズメバチの中でもとりわけ危険な虫です。攻撃性が高く、刺されると死亡するケースも。体長も大きく、3-5cm程度。近くによると羽の音が大きく聞こえます。
黒い布を敵として判断する習性があるため、そういったものを身につけないことが対策の1つです。そしてなにより、巣に近づかないようにしましょう。
カバキコマチグモ
体は白い小さなクモです。クモといえば放射状の巣を作り、捕食する虫ですが、このクモは違います。巣を作らず、草むらを移動して活動しています。
毒は非常に強く、噛まれると激しい痛みと患部の腫れを引き起こします。神経毒が含まれているため、噛まれた際は早急な対処が必要です。
一番の対策は近寄らないこと
危険な虫というのはその風貌がかなり特異であることが多いです。やけど虫であるアオバアリガタハネカクシもオレンジ色と黒の交互色となかなかみかけない色をしています。
こういった虫を見かけると、興味を持つ子供がいます。しかし、触ってしまうとその被害を受けてしまうことも。危険な虫から身を守る最大の対策は近寄らないことなのです。
危険な虫は見た目からかなり危険であることがわかります。やけど虫であれば体が交互に黒とオレンジ色をしていて、触ってはいけないように思われます。蜂も同じような色をしていますよね。危険な虫は危険な外見をしていることが多いので注意してください。
まとめ
日本には様々な虫がいます。カブトムシやクワガタムシは子供の大人気な虫ですよね。夏場になると山に入って取りに行くという子供もいるかもしれません。
一方でそういった山の中には色々な危険が同時に存在します。やけど虫だけではなく様々な虫が存在し、近づいてしまうと被害を受けてしまうなんてこともあるでしょう。
その虫が危険かどうかの判断は難しいですが、形が異様であったり、色が独特であれば巣穴に近づかないに越したことはないでしょう。また、体に異変が起きた時はすぐさま病院へ行くことが大切です。
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