腸結核とは?原因や症状を知ろう!治療には薬が必要なの?

結核という病気は、誰しも一度は耳にしたことのある病気でしょう。一般的には、肺の病気として知られています。それでは、腸結核はいかがでしょうか?

「えっ、腸にも結核があるの?!」と思われる方も少なくないのではないのでしょうか?

「最近、下痢気味でお腹の調子がずっと良くない・・・」あるいは、「最近、事務仕事のせいか、ずっと腰が痛くて・・・」などと思われているあなた、実は、腸結核かもしれません。

そんな方のために、今日は腸結核についてお話ししたいと思います。

腸結核とは

大腸

腸結核とは、結核菌が腸にまで侵入して炎症を起こしてしまう病気です。

一般的に知られている結核の場合、通常結核菌が肺に侵入して炎症を起こす慢性伝染病です。結核は、その昔、「労咳」とも呼ばれ、「不治の病」として恐れられていました。一度喀血すると、もう助からないとまで言われていたのです。かの維新の志士、高杉晋作も、労咳を患って30歳を前に他界しています。

結核の約9割は、肺結核なのですが、残り1割はその他の部位に感染することがあります。例えば、腸に感染するこの腸結核、脊椎に感染する骨間接結核(カリエス)、皮膚に感染する皮膚結核、喉に感染する咽頭結核などなど、いろいろな部位に感染します。

それでは、腸結核とはどのような病気なのか、ご説明していきましょう。

まずは、辞書で定義を確認しておきます。

腸結核

結核菌の感染による腸の炎症で、慢性下痢、腰痛微熱などを呈する。多くは肺結核時に結核菌を含む痰(たん)を飲み込むことにより起こる。抗結核薬などの進歩とともに近年では稀な疾患となった。

マイペディア

定義を読むと、結核菌の感染による腸の炎症であることがわかりますね。

それでは、結核菌とは、一体どのような菌なのでしょうか?

結核菌は、結核の病原菌であり、マイコバクテリウム属の運動性のない桿菌(かんきん)です。その大きさは、約1〜4μm(マイクロメートル)×約0.3〜0.5μmで、莢膜(きょうまく)や鞭毛(べんもう)、芽胞(がほう)を持っていません。

莢膜とは、細菌の細胞壁の外側にある被膜上の壁のようなもので、細菌がゲル状の粘質物を分泌し、細胞の表面を覆っています。この莢膜により、細菌は白血球の免疫機能を回避することができるのです。

また、鞭毛とは、菌類などに見られる運動性の糸状構造です。中心に2本、周囲に9本ある軸糸と原形質性の鞘からなり、基本構造は繊毛と同じなのですが、通常長くて細胞あたりの数が少ないときに鞭毛と言います。主に、移動や捕食、他物への付着、感覚器などの働きをします。

芽胞とは、細菌が形成する耐久性の高い細胞の構造のことです。胞子膜や皮膚、芯部といった構造を備え、芯部には、DNAやリポソーム、酵素などが含まれ、半結晶の状態にあります。

結核菌にはいくつかの型があるのですが、そのうち、主に、ヒト型(まれにウシ型)が人に結核を起こさしめるのです。

このように、腸結核とは、腸に炎症をもたらす結核菌が肺ではなく、腸にまで侵入し、腸内で炎症を起こさしめ、その結果発症してしまう病気なのです。

腸結核の原因

肺結核

腸内結核の原因には、結核菌が直接腸に侵入する原発性腸結核と肺結核などで感染した結核菌を含む喀痰(かくたん)を飲み込むことによって、結核菌が腸に侵入する続発性腸結核があります。

  1. 原発性腸結核
  2. 続発性腸結核

原発性腸結核

原発性腸結核は、口から結核菌が直接腸内に侵入し、腸で炎症を引き起こします。これは、小腸が分泌する腸液の殺菌力がその他の消化器官に比べて弱いために発症します。

しかし、原発性腸結核は全体的には少数派でその割合は極めて少ない腸結核の原因となります。

続発性腸結核

続発性腸結核は、肺結核などにより体内に生息する結核菌が、喀痰(かくたん)を飲み込むことによって腸粘膜に侵入し、発症します。

回腸や盲腸付近の回盲部にできることが多いようです。

通常、肺結核は、空気感染であり、くしゃみや咳、唾液といった飛沫感染なのですが、続発性腸結核の場合、すでに体内で結核を発症しており、その結核菌が腸に侵入する形となります。医学用語としては不適切かもしれませんが、いわば、体内での二次感染、あるいは転移といったたとえの方が理解しやすいかもしれませんね。

また、時には他臓器より、血管やリンパ管を介して結核菌が侵入する場合もあります。

腸結核の症状

生理前 下痢

腸結核の症状は、時に右下腹部回盲部周辺に痛みを感じ、しこりのようなものを感じることがあります。病巣部が出血すると、血便などが出る場合もあります。

それでは、腸結核の具体的な症状についてご説明していきましょう。

  1. 下痢
  2. 腰痛
  3. 微熱
  4. 腹痛
  5. 倦怠感

下痢

腸結核に感染すると、腸の機能が低下して慢性的な下痢の症状を引き起こします。

普通に食事を摂っていてもお腹を下してしまうのです。これは、食生活や食事の問題もありますが、腸結核の場合はその病気が原因となります。

腰痛

ときに、腸結核は腰痛を引き起こす原因となる場合があります。

一見すると、腸と腰は関係ないようにも思われますが、実は密接な関係にあります。腰のすぐ周辺部に腰の部位があるので、腸に異常をきたすと、その影響が腰にまで及ぶことがあるのです。

したがって、たとえ腰痛であっても、ただの腰痛だからといって気にかけることなく放置することは危険なのです。

微熱

腸結核は、微熱も引き起こすことがあります。

風邪をひいているわけでもないのに、なぜか微熱があるのです。詳細は不明ですが、これは腸の炎症が引き起こしているものと考えられています。

腹痛

腸結核は、腸に炎症を起こしているので、当然腹痛も伴うことがあります。特に、右下腹部にある回盲部周辺が痛むことが多いようです。これは、腸結核が回腸、盲腸、上行結腸といった回盲部付近に発症しやすいためです。

倦怠感

腸結核を発症すると、身体に倦怠感を覚えるようになります。

睡眠をとって体調は良いはずなのに、なぜか体がだるく感じるようになります。

「なんか体がだるいなあ・・・」は、決して体調が悪いだけではなく、身体からの危険信号でもあるのです。

その他、急激な体重の減少がみられたりすることもありますが、逆に、無症状のまま、定期健診などで

偶発的に発見されることも珍しくありません。何の治療も受けずに、そのまま自然治癒してしまうケースもあるのです。

ただし、腸結核は悪化すると、腸内の表面部に小結節を生じてしまい、繊維性の癒着を引き起こす原因となり、腸閉塞を発症する場合もあります。

また、瘢痕による粘膜の集中がみられ、輪状または帯状の潰瘍が見られることもあります。

潰瘍などは、クローン病などの炎症性腸疾患の疑いもあり、結核菌の存在有無によってその判断が下されます。生検組織の培養やPCR法(便の結核菌培養)などがその診断方法となります。

腸結核の治療法

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腸結核の治療法は、そのほとんどが抗結核薬の投与、つまり薬の内服による内科的治療法になります。抗結核薬とは、結核菌の生長を抑制し破壊する化学療法薬のことです。PAS(パス)、イソニアジド、抗生物質のストレプトマイシン、サイクロセリン、リファンピシンなどがあり、併用することが治療の原則とされています。

副作用が強いものも多く、使用上の注意を要するものも少なくありません。以前は、サルファ剤という薬剤も日本で使用されていたのですが、現在では使用されていません。

もちろん、悪化すると外科的治療法に至るケースもありますが、それは稀な場合です。

薬剤投与による内科的治療法

それでは、主な投与薬剤についてご説明していきましょう。

  1. イソニアジド
  2. ストレプトマイシン
  3. リファンピシン

イソニアジド

イソニアジドは、結核化学療法薬の一つで、イソニコチン酸ヒドラジドの別名です。

無色の結晶または白色の粉末で、匂いはなく、味はわずかに苦く感じます。

特異的抗菌作用という結核菌の発育を阻止する特色があり、一般的に効果の増強と耐性阻止のために他の抗結核薬と併用するのが原則とされています。

また、常用する量と中毒となる量との幅が広いことが特色で、副作用が現れても服用を中止すれば治ります。

ストレプトマイシン

ストレプトマイシンは、化学式C21H29O12Nで抗生物質です。略してSMと呼ばれることもあります。1944年ワクスマンらが、土壌中の放線菌の中から発見した配糖体です。グラム陽性菌、グラム陰性菌、抗酸菌などに広範囲な抗菌スペクトルを備えています。

結核菌感染症をはじめ、髄膜炎、尿路感染などのグラム陰性桿菌(かんきん)感染症に、硫酸塩として使用され、また水素添加したジヒドロストレプトマインシも同じくよく用いられます。

両者の硫酸塩の等力価混合物が複合ストレプトマイシンとして市販されています。

ただ、副作用もあり、めまい、耳鳴り、難聴などが挙げられます。

リファンピシン

リファンピシンは、結核菌に対して強い抗菌力を持つ薬剤です。

RNAポリメラーゼと呼ばれる抗結核薬で、たんぱく質の生成を抑制することによって結核菌が増殖していくのを阻害します。

リファンピシンも、結核菌の耐性を阻止するため、単独で使用されることはなく、他の薬剤とともに投与されます。一度耐性ができてしまうと、その薬剤はもう結核菌に対して効果を発揮することができなくなってしまうので、医師の指示をきちんと守って半年以上薬剤の服用を続けることが必要です。

また、非結核性抗酸菌症やハンセン病にも効き目があります。

手術による外科的治療法

腸結核は、ほとんどの場合薬剤内服で治癒するのですが、腸管の幅が狭くなってしまった場合は、手術による外科的が必要となります。

これは、腸管の幅が狭くなってしまったために、内容物が腸管を通過することが困難となり、腸閉塞や腹膜炎を併発することもあるためです。

おわりに

医師の診断

前述のように、腸結核は現代では稀な病気となり、その治療も薬剤の内服で治癒することがほとんどです。

ただし、医師の指示をきちんと守らずに途中で薬剤服用をやめてしまったりすると、結核菌に薬剤に対する耐性を備えさせてしまう結果となります。すると、その薬剤は、結核菌に対して効能がなくなってしまいます。

したがって、医師の内服指示をきちんと守って、薬剤治療を続けることが重要となってきます。

また、なるべく消化の良い食事を摂取するように心がけ、腸を休めてあげましょう。腸の安静は、腸結核の治癒のためにも、健康のためにも必要なことです。暴飲暴食を避け、出来る限り、規則正しい食生活を心がけましょう。

  
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