ライソゾーム病はどんな病気?種類や症状を知ろう!それぞれの原因や治療法も紹介!

私たちの体には生命活動によって産生された老廃物を分解・再利用する機能が備わっています。それは細胞内で絶えず行われていて、いわばゴミ処理場の役割を持っています。

ライソゾーム病はそんなゴミ処理機能に異常が起こり、体に様々な症状を発症してしまう病気です。また、遺伝子の欠損によって発症するため、生まれつき病気を持っています。

では、ライソゾーム病とはどんな病気なのか。そしてどんな種類があり、具体的に起こる症状とはどういったものなのか。これらのことについて詳しくみていきましょう。

ライソゾーム病とは

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ライソゾーム病とは細胞内にあるライソゾームと呼ばれる酵素に異常がある病気です。ライソゾームは日々の代謝で排出された老廃物を分解する役割を持った小器官です。

ライソゾームの内部には酵素と呼ばれる蛋白質が複数存在してします。この酵素が老廃物と反応し、分解します。ちなみにライソゾームはリソゾーム、リソソームとも呼ばれます。

ライソゾーム病は老廃物を分解する酵素の数が少ない、酵素の働きが弱い、もしくは欠損しているいったことがみられます。結果、代謝の過程で産生された老廃物がきちんと分解されず、体内に蓄積してしまいます。この老廃物は体にとって有害ですから、様々な症状を発症することがあります。

医療費助成制度の対象

ライソゾーム病は遺伝子疾患の1つで、新生児の8,000人に1人という割合で発症します。指定難病、及び小児慢性特定疾患に指定されている病気であり、医療費助成制度の対象になっています。

遺伝子と病気

私たちの体は遺伝子という設計図のもの構成されています。遺伝子は細胞分裂の際、コピーを作る上でとても重要なものです。しかし、この遺伝子に何かしらの異常が起きてしまうと、病気を発病してしまうことがあります。

遺伝子は染色体と呼ばれる、乗り物の中に存在しています。染色体は23対(46本)から構成され、そのうち22対は常染色体、残り1つが性染色体と呼ばれます。

性染色体はその名の通り、男女で性質が異なります。男性の場合、X染色体、Y染色体がそれぞれ1本ずつ。女性の場合、X染色体が2本存在します。

ライソゾーム病はこれら常染色体に何かしらの欠損が生じ、酵素の活性低下・欠損が起こることで発病します。生まれつきの病気であり、治療が困難であることが多いです。

ライソゾーム病と一言にいっても、酵素の欠損状態によって様々な種類に分類されます。そして、それぞれ症状や治療法も異なります。では、事項でそれぞれの特徴についてみていきましょう。

糖原病Ⅱ型

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糖原病Ⅱ型は糖症やポンペ病ともいわれます。ライソゾーム病の病態の一つで酸性α-グルコシダーゼという酵素の欠損・活性低下によって発症します。4万人に1人の割合で発症するといわれています。

この病気に発病するとグリコーゲンという物質の代謝が難しくなります。これが各々の臓器に蓄積することで、症状を発症します。糖原病Ⅱ型は「乳児型」「小児型」「成人型」の3つの種類があります。

乳児型は生後半年以内に症状を発症します。症状として発育不全、心機能の低下、筋力の低下などがあります。発症後18ヶ月以内に死亡します。死因は呼吸障害、心不全です。

小児型は乳児型より少し遅めの6〜12ヶ月の時期に発症します。症状は比較的遅いです。筋力低下は起こるものの、心機能の低下はみられません。成人型は10歳以降に発症します。小児型同様、筋力の低下が起こりますが、心機能の低下は非常に稀です。症状が軽微なため、60歳以降で診断されるケースもあります。

具体的な症状について

糖原病Ⅱ型では心機能や筋力の低下などが起こりますが、これら症状についてもう少し詳しくみていくことにしましょう。

心機能の低下・障害

心機能の低下や障害として、具体的には心肥大、弁の機能不全、心筋梗塞などがみられます。これらは放置すると重篤な症状を招くことがあり、早急な対応が必要です。

筋力の低下

骨格を支える筋力そのものの機能が低下するので、頭が反り返ってしまうなどの症状がみられます。症状が進行すると、体が動かなくなるといったことも起こります。

成長の遅延

乳児期ではお母さんの乳を飲むことが生きるために重要なことですが、母乳を飲む力が弱いため、栄養を十分に補給できず、成長が遅延することがあります。

呼吸困難

呼吸をする筋肉さえも弱ってしまい、呼吸困難を招くことがあります。また、呼吸が浅いため、感染症リスクが高まり、気管支炎や誤嚥性肺炎を発症することもあります。

診断の方法

ライソゾーム病の1つである糖原病II型は非常に稀な病気です。症状も人それぞれで、重症のケースもあれば、軽症のケースもあり、診断が難しいことがあります。

しかし、放置したままですと確実に病気が進行します。生活に支障が起き、周囲に負担をかけてしまうこともあるでしょう。早期発見・早期治療が重要なポイントになります。糖原病II型の診断にはいくつかの検査を行います。

酵素活性

酵素がきちんと働いているかどうかの検査をします。これは他のライソゾーム病でも同様の検査を行っていきます。筋組織を採取し、蓄積物の量を検査することもあります。

遺伝子検査

血液を採取し、酸性α-グルコシターゼの遺伝子について検査します。変性がある場合、病気を疑うことができます。

その他

ライソゾーム病は遺伝疾患の一つです。このため、家族内に発病者害ないかどうかを確認します。

糖脂質代謝異常症

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私たちの体を構成する脂質は糖鎖という成分がくっついた状態で、細胞内に存在します。糖鎖とはその名の通り、糖が鎖のように繋がりあった化合物です。脂質と糖鎖が結びついた物質を糖脂質といいます。糖脂質には血球細胞膜や神経細胞膜に多く存在します。

ライソゾームはこれら糖質や脂質を分解する役割がありますが、酵素欠損があると正しく分解することができません。このような状態を糖脂質代謝異常症といいます。

どの酵素が欠損した、もしくは機能が低下しているかによって症状の出方がことなります。また、病気そのものの重症度も異なり、遺伝子の状態によって変わります。糖脂質代謝異常症には具体的に以下の病気があげられます。

ゴーシェ病

非常に稀な病気で33万人に1人の割合といわれています。グルコシルセラミドという物質の進行性の蓄積が起こります。ゴーシェ病は3つのタイプに分類され、I型(非神経性)、Ⅱ型(急性神経型)、Ⅲ型(亜急性神経型)があります。

I型の特徴は幼児期から高齢者まで幅広く発症が認められることですが、思春期までの発病がほとんどです。症状は肝臓や脾臓の肥大、血小板の減少、貧血、骨症状(骨の痛み)がみられます。非神経性と名の通り、神経に異常はみられません。

Ⅱ型は神経異常が特徴です。主な症状としては哺乳障害、眼球運動の異常、咽頭痙攣などが起こります。生後数年で呼吸障害を起こし、死に至るケースが多数です。

Ⅲ型はI型、Ⅱ型の中間的な症状を発症します。発症は小児期。Ⅱ型とは異なり数年で亡くなることは少ないですが、寿命は20代から30代までです。Ⅱ型と同様の神経障害を発症します。

ゴーシェ病の治療法

ゴーシェ病は糖脂質の分解酵素の欠損によって起こります。このため、外部から糖脂質の分解を促進する酵素を補充する、「酵素補充治療法」という方法を行うことがあります。これにより、糖脂質の分解を促進することが期待できます。

ニーマン・ピック病

ニーマン・ピック病は常染色体に異常が起こることで発病します。一部、遺伝子に活性欠損が生じることで、様々な症状を発症し、患者自身を苦しめることがあります。この病気にはA型、B型、C型があります。

A型は臨床症状・経過は特に問題ないようにみえます。しかし、生後半年後ぐらいまでに肝脾腫、リンパ節の肥大、精神運動発達遅滞がみられるようになります。およそ3歳ぐらいまでには神経発達が後退し、死に至ります。末期ともなると、硬直が始まり、周囲の刺激に反応しなくなります。

B型は発病者の間で症状に差があります。乳児期から幼児期にかけて肝脾腫の発見に伴って診断されます。神経症状はみられません。軽症のケースでは成人になるまで病気と診断されないこともあります。一方、重症のケースでは、呼吸障害、肝障害などの病気を発病し、命の危険もあります。

C型はA、B型と比べ、軽度な症状を発症します。乳児期から成人期に発症し、肝脾腫、神経の異常から病気がわかります。乳児期は特に異常はみられないものの、3歳ぐらいまでに神経症状を発症します。

ムコ多糖代謝異常症

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ムコ多糖とは私たちの細胞に欠かせない成分の1つです。細胞の水分を蓄える役割があります。この水分があることで、栄養や老廃物の運搬が可能となります。体の循環機能を司っているといってもいいでしょう。

ムコ多糖代謝異常症はこのムコ多糖を分解することができず、体内に蓄積していまう病気です。ムコ多糖はいくつかの種類に分類され、以下のものがあります。

ムコ多糖症Ⅰ型

ムコ多糖症Ⅰ型には重症・軽症例があります。重症例としてはHurler病があり、軽症例としてScheile病があります。中間的な症状を示すこともあり、人それぞれ症状や進行が異なります。

Hurler病はムコ多糖症の中でも最も重篤な症状を発症します。寿命は長くとも10歳。生後半年から2年の間に肝臓・脾臓の肥大、骨の変形、関節の拘縮などがみられます。その他、発達障害がみられ、身長は100cmに達することはありません。

Schele病は比較的、軽度な病気です。5歳以降に症状を発症し、関節の拘縮、大動脈弁の異常、肝脾腫などを発症します。10歳から20歳の間で診断されることが多いです。

ムコ多糖症Ⅱ型

Hunter病とも呼ばれます。こちらの病気も重症・軽症例が存在します。I型と同様の症状を発症しますが、角膜の混濁が見られないという特徴があり、I型と区別する一つの材料になります。

重症例では知能障害を発症し、その他、骨の変形、関節の拘縮、肝脾腫が起こります。進行は遅いです。5歳から6歳程度で発育が停止し、10歳から15歳程度で死亡します。

軽症例では知能障害はみられません。骨や関節に同様の異常がみられますが、発育の停止はみられません。症状の進行に伴い聴覚障害等の症状が起こり、QOLを低下させます。寿命は幅が広く20歳代から50歳代といわれています。

ムコ多糖症III型

Sanfilippo症候群とも呼ばれます。初期症状として発達の遅れ、異常行動がみられます。これらは2歳から6歳のうちに起こります。その後、乱暴な行動、発達の遅延、多毛がみられます。

症状が進行すると神経変性症状を発症します。具体的には言語障害、睡眠障害などが起こります。周囲の人とコミュニケーションが取れなくなっていきます。III型には骨の変形は軽微であり、診断が難しいことがあります。

ムコ多糖症Ⅳ型

Morquio病とも言います。ムコ多糖症の中でも骨の変形が顕著に現れる病態です。身長の発育が低下し、100cm程度までしか成長しません。知能障害は起こりませんが、角膜の混濁がみられます。

骨の変形としては外反股、低身長、四肢の変形がおこります。症状の進行によっては体の麻痺症状をきたします。寿命は20〜30代といわれています。

ムコ多糖症の診断

ムコ多糖症では骨の変形が主な診断材料です。また、尿中のムコ多糖を分析し、異常が見つかるようであれば病気と診断することができます。

糖蛋白代謝異常症

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糖鎖が蛋白質に結合した物質を糖蛋白質といいます。

ライソゾームはこの糖蛋白質を分解していますが、その酵素が何らかの原因で欠損し、蓄積してしまう病気を糖蛋白質異常症といいます。以下の病態があります。

シアリドーシス

シアリターゼという酵素の欠損が起こる状態です。各々の臓器にシアル酸を含んだオリゴ糖が蓄積し、様々な症状を発症します。常染色体性劣性遺伝です。シアリドーシスには軽度のI型と重度のII型があります。

I型では視力障害、歩行障害を発症します。発症年齢は10歳から20歳。ムコ多糖症のように骨の変形や顔面の変貌などはみられません。また、知能障害などもみられません。

II型には先天型と乳児型があります。先天型の場合、胎児期もしくは出生後間もなく死亡します。乳児型では生後1年のうちに顔面異常、骨の変形、発達遅延、肝臓・脾臓の肥大などが起こります。その他、視力低下や白内障、角膜の混濁がみられます。

ガラクトシアリドーシス

カテプシンAという酵素の活性低下に伴い発症します。この病気も3つの種類に分類されます。

I型は早期乳児型とも呼ばれ、この期間に発症します。浮腫や腹水を主症状とし、肝脾腫、骨変形、角膜混濁がみられます。進行に伴い、腎臓障害や心不全などを発症し、早くて出生数ヶ月、長くとも数年で死亡します。

II型は若年・成人型とも呼ばれます。5歳から10歳以降に発症します。視力障害、痙攣、角膜混濁などが見られます。

Ⅲ型は晩期乳児型とも呼ばれます。生後数ヶ月以内に発症し、他の病態と同様、肝脾腫などがみられます。神経症状を発症するケースは少ないようです。

α-マンノシドーシス

非常に稀な先天性代謝異常症です。確率としては50万人に1人ともいわれていて、日本人でも数例の報告例があるのみです。常染色体性劣性遺伝です。これもタイプI、タイプIIに分類されます。

タイプIは乳児型と呼ばれます。乳児期から精神運動発達遅延、骨の変形、筋力の低下などがみられます。症状の進行が早く、角膜混濁、難聴などの症状を発症します。

タイプIIは若年型・成人型とも呼ばれます。幼児の期間に運動機能の遅れ、知能障害、難聴を発症し、神経症状が進行していきます。

フコシドーシス

α-フコシダーゼの活性欠損にょって発症します。肝臓や脳などに糖蛋白が蓄積し、様々な症状を発症します。発症患者数は非常に稀な病態です。

重症例では乳児期に発症し、骨の変形、関節の拘縮、肝脾腫などが主症状です。知能障害の進行が早いというのも特徴です。神経変性が発症・進行し、小児気に死亡します。

軽症例では生後1年から2年経ってから発症します。症状はゆっくりと進行しますが、精神神経症状、骨になんらかの症状を発症することがあります。

まとめ

ライソゾーム病は様々なタイプが存在します。症状が軽度で進行が遅いというものから、出生してすぐに亡くなってしまうケースもあります。また、発症が非常に稀というのも1つの特徴です。

ただ、発症が稀といっても発症してしまった場合は他人事ではありませんよね。遺伝子の異常によって起こる症状は、心身にかなり大きな負担を課してしまうでしょう。

この病気は冒頭でも述べたように指定難病に指定されています。そして、中には未だ具体的な治療法が見つかっていないものもあります。

周囲の家族や本人に大きな負担を課してしまうライソゾーム病。発症の疑いや何かしらの異常がみられらとき、まずは病院で検査を受けるようにしてくださいね。

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