腫瘍には様々なタイプのものがあります。細胞や組織、臓器に転移することもなく、生命予後に悪影響を及ぼさない良性腫瘍と呼ばれるものがひとつ。もうひとつは変異した細胞が増殖し、他の細胞や組織、臓器の機能を障害したり、生命予後を短縮してしまう悪性腫瘍と呼ばれるものです。
癌で亡くなったと言われる際、この悪性腫瘍が一枚絡んでいます。細胞の増殖や機能も遺伝子によって決められています。それがウイルスや発癌物質などの影響により突然変異を起こし、細胞増殖の異変に繋がる。しかし、すぐに悪性腫瘍が発生するのではなく、複数の遺伝子に異変が起きて悪性腫瘍に至る部分も大きいです。
今回は悪性腫瘍の中のひとつ、横紋筋肉腫について紹介させて頂きます。
この記事の目次
良性腫瘍と悪性腫瘍ってどう違うの?
横紋筋肉腫に行く前に良性腫瘍と悪性腫瘍はどう違うのかについて説明させて頂きます。この違いを理解することで本題に入りやすいのではないかと思うので、一読して頂けたらなと思います。
良性腫瘍とは
良性腫瘍は発育が遅く、変異した細胞が膨らむようにして増殖し、転移を起こさない腫瘍です。そのため、腫瘍の発生した部位を切除することにより、再発や転移をきたすことはなく、生命予後には関わってこないです。
しかし、脳など生命維持に関わる部位で発生した場合は死に繋がる可能性はゼロではないです。良性腫瘍に当たるものとして、子宮筋腫があります。
悪性腫瘍とは
悪性腫瘍は発育が速く、広がるように増殖し、転移を起こす腫瘍です。腫瘍がどんどん広がっていくため、腫瘍を切除する際は大きく切除する必要があるのです。
場合によっては全摘出する大きなケースもあります。切除しても体内に残ることがあり、そこから再発してしまう可能性もあります。離れた場所に転移したり、全身に及ぶ可能性もあるので死に繋がる可能性の高い恐ろしいものなのです。血流やリンパ系に転移が及ぶとかなり厄介で早期発見が必要と言えます。
上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍とはどう違うの?
本題に移る前にもうひとつ読んで頂きたいものがあります。上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍はどう違うのかです。腫瘍の発生した場所により、上皮性腫瘍なのか、非上皮性腫瘍なのかに分かれるのです。
上皮性腫瘍とは
上皮性腫瘍は皮膚や肝臓、腎臓、消化管で発生した腫瘍です。
非上皮性腫瘍とは
非上皮性腫瘍は筋肉、脂肪、骨、骨髄で発生した腫瘍です。
横紋筋肉腫とは何なのか?
良性腫瘍と悪性腫瘍の違い、上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍の違いについて理解できたと思います。ここで本題の横紋筋肉腫について移ります。
横紋筋肉腫とはどこの腫瘍?
横紋筋肉腫とは書いて字の通り、筋肉や脂肪に発生する腫瘍です。つまり、非上皮性腫瘍に当たります。
どんな人になりやすいの?
小児や青少年に発症しやすい腫瘍と言われています。成人に発生することは稀です。
良性腫瘍なのか悪性腫瘍なのか
これは悪性腫瘍に当たります。
横紋筋肉腫はどこに発生しやすいの?
横紋筋肉腫は眼のまわりや膀胱、前立腺、手足に発生しやすいです。
横紋筋肉腫の原因とは一体何なのか?
横紋筋肉腫の原因は詳しくは分かっていません。
神経線維腫瘍やリ・フラウメニ症候群など遺伝性疾患にかかっている場合は発症しやすいとも言われています。
横紋筋肉腫の診断方法
横紋筋肉腫は一体どのようにして診断していくのかについて説明していきます。
腫瘍はどこにあるのかを知るために
CT、MRI、PET、骨シンチグラフィ、レントゲンを用いて、腫瘍の大きさや部位、他の部位に転移してないかを検査していきます。
腫瘍の広がりってどうやって知るのか
転移を知るためには、肺のCT検査、骨シンチグラフィ―、骨髄穿刺、骨髄生検、PET検査を行っていきます。
病期(ステージ)を把握する
悪性腫瘍の進行の程度を把握する必要があります。それは腫瘍が発生した部位、腫瘍の大きさはどうなのか、腫瘍の周囲のリンパ節に転移の有無はどうなのか、腫瘍から遠く離れた組織に転移はないかにより決定されます。
腫瘍が発生した部位によって治療が行いやすいのか、そうでないかが決まってきます。横紋筋肉腫の場合は手足や膀胱などから発生すると治りにくいとも言われています。
腫瘍の大きさは直径5㎝未満か5㎝以上によって予後が変わってきます。
遠くに転移していると、強力な治療になるので厄介です。ましてや脳や脊髄に発生していると尚更です。
悪性腫瘍の病期を把握するのにIRSグループによる治療前ステージ分類というものが使われます。1~4段階あり、4段階に近づくにつれ、悪性腫瘍が進行しているということです。4段階まで行くとあらゆる部位に転移が見られ、重篤と言っても過言ではありません。なので、早期発見を行い、悪性腫瘍の治療を行うためにも役立つガイドラインとも言えます。
また、術後のIRSグループによる術後グループ分類も存在します。同じくⅠ~Ⅳ段階存在します。切除の具合、転移の有無といった所を基準に段階付けしていき、予後予測などを立てていきます。グループⅣは腫瘍が取り切れなかったどうかに関わらず、最初の診断時に遠隔転移がある場合でかなり重篤ということが分かると思います。
予後を知るためにはどういったことを見て行けばいいの?
横紋筋肉腫は基本的に治療できます。予後により、積極的な治療が必要かどうかが変わってきます。予後を知るためには、腫瘍の進行度合、腫瘍の発生部位、組織型、年齢、遠隔転移の有無はどうかなどにより決定されます。予後不良の場合は積極的に治療を行っていく必要があると考えられます。
横紋筋肉腫の症状にはどんなものがあるの?
横紋筋肉腫の症状として、腫瘤が見られることが多く、痛みを伴う場合があります。腫瘍の発生部位により症状が変わってきます。
泌尿生殖器に腫瘍が発生した場合、血尿や排尿障害、膣からの出血といった症状があります。顔面に生じた場合、呼吸困難や頭痛、眼の腫れといったものがあります。
脳を圧迫すると、視覚障害や聴覚障害、嚥下障害、意識障害といったものが見られます。手足に発生した場合、腫瘤が硬く、大きくなっているケースが多いです。
横紋筋肉腫の治療
横紋筋肉腫の治療について説明していきます。手術、抗がん剤、放射線療法を組み合わせて治療を行っていくのが基本となります。転移が分からない状態でも抗がん剤治療を初めていくのが一般的です。抗がん剤治療により、5年生存率も上昇しています。手術後も継続して行っていく程です。
手足に発生した場合は腫瘍の周囲の正常な組織を腫瘍と共に切除する広範切除術を行っていくのが基本です。その程度切除できるか等も見ることが重要になってきます。いずれにしても、形態温存と機能温存を最優先して行っていかなければならないです。
体内に腫瘍が残っている場合、リンパ節転移がある場合などにおいて、放射線治療を行っていく必要があります。放射線を照射する時期や量、範囲や腫瘍の発生部位と広がりなど細かく決められています。形態や臓器の温存という面で大きなメリットがあります。痛みなどの負担が少なく、通院する際に行うといった場合も多いです。高齢者など手術の負担に耐えられない肩に多く用いられます。
治療する際に行うことインフォームド・コンセントとは?
横紋筋肉腫など悪性腫瘍が診断された場合、治療の準備を行っていきます。その前に治療スタッフとの面談をまず行っていきます。そこで家族に診断と今後どのような治療が有効かなど必要な情報を提供していきます。
医師の説明として、最も効果的な治療法とは何なのか、副作用や治療時のリスク、治療の成功する可能性、入院期間はどのくらいかかるのか、退院後の手当てやどのようなことに注意しないといけないか、治療はいつから開始されるのかといったことです。これらの情報を提供して、治療を承諾するかどうかを決定します。場合によっては臨床試験に参加するといったケースもあるため、インフォームド・コンセント(説明と同意)が必要となるのです。このインフォームド・コンセントは悪性腫瘍に関わらず、様々な病気に自分や家族が発症した場合に出てくると思われますので、覚えておく必要があります。
治療内容なども難しいことも含まれてくるため、理解するのに時間がかかると思われます。分からないことは積極的に質問していくことが必要です。そうしないと、いざ治療を行っていく際に納得いかないといったことを少しでも起こさせず、最良の治療を行っていくことができないからです。
セカンド・オピニオンも重要な要素
診療情報から別の医療機関の医師から治療方針などの意見をもらうことも重要になります。セカンド・オピニオンを利用することにより、治療方針がその人にとって最良のものかどうかを判定します。検査結果が十分でない場合、追加検査を行ったりします。そうすることで最終的な治療方針が固まってくのです。
セカンド・オピニオンで今の治療チームが何を行っているのかを確認し、治療をより良いものにしていくこともできるのです。これにより、転院といった患者へのストレスや負担を軽減するといったメリットは大きいです。
横紋筋肉腫に気づいたどうするのか
横紋筋肉腫を発症していると分かった場合は小児科、耳鼻科、泌尿器科、整形外科など様々な診療科のスタッフが合同で治療に尽くしていくことになります。
それほど、横紋筋肉腫というのは一度発症したら厄介な病気とも言えるのです。
まとめ
今回、横紋筋肉腫について紹介をさせて頂きました。横紋筋肉腫は小児に発生しやすい悪性腫瘍で遺伝子に関わる病気を持っていると発症しやすいと言われています。
いざ治療する際もインフォームド・コンセントとセカンド・オピニオンを理解して、分からない事はなるべく無くし、十分納得のいく治療方針にしていくことが大切です。曖昧なまま治療が始まると不安なども大きいはずです。だからこそ、治療チームと十分話し合っていくことが重要です。