マッサージをしようにも、自分では手が届かない背中のこり。そもそも、身体が「こる」とは、どのような状態かをご存知でしょうか。
私たちが持つ何百という筋肉は、伸び縮みし、脳から指令を出されて「収縮」することで、腕を動かしたり、物を掴むことができるのです。
しかし、何らかの原因によって、筋肉が「弛緩(伸びる)」できない状態が続くと、血流が悪くなり、脳と筋肉の間で誤作動を起こし始めます。すると、脳はずっと筋肉に収縮するよう指令を出し、その状態が続くのです。この継続的な収縮状態のことを、私たちは「こり」と呼んでいます。
ここでは、私たちの身体を支える、背中のこりについて、原因や改善方法をご紹介いたします!
背中がこる原因とは?
誰かにマッサージをしてもらって筋肉をほぐせば、その直後はラクになるかもしれません。しかし、根本的な原因を改善しなければ、何日か経つとすぐに元に戻ってしまいます。まずは、何が背中のこりの原因となっているのかを明確にし、改善方法を考えましょう!
姿勢の悪さ
これは、最も多い原因の一つと言っても過言ではないでしょう。姿勢の悪さといっても、猫背の人だけではありません。
パソコンやスマートフォンを長時間使用する人は、肩が身体の内側に入り込む「巻き肩」になりやすくなります。猫背や、巻き肩の姿勢は、肩甲骨が開き、肩甲骨周辺の筋肉が張った状態になるので、筋肉に負担がかかり、こりを招いていしまうのです。
ストレス
「ストレスは万病のもと」というのは、どうも間違いなさそうです。心身の不調を招くストレスは、背中のこりにおいても大きく関係しています。
人間には、正反対の働きをする、【副交感神経(リラックス状態に働く)】と【交感神経(緊張状態で働く)】が備わっており、これら2つから成り立っている自律神経が、私たちの身体の機能をコントロールしてくれています。
しかし、ストレスによって自律神経が乱れ、交感神経が優位に働く状態が続くと、筋肉も緊張状態にさせるため、血流が滞り、背中のこりを引き起こします。また、自律神経の乱れによって背中のこりを訴える人の多くが、肩甲骨の間、やや左よりに違和感を抱くようです。
食生活の乱れ
一見、関係なさそうに見えますが、なんと食生活の乱れも背中のこりに大きく関係しています。東洋医学では、「食滞(しょくたい)」と言って、食べ過ぎ・飲み過ぎ等による消化不良は、背中に症状を引き起こすと考えられています。
また、先に挙げたストレスによって、胃もたれや食欲不振が生じ、健康的な食生活ができなくなる場合も同様です。人間にとって「食」がどれほど大切か、改めて考えさせられます。
内臓の不調
「ストレス」や「食生活の乱れ」も大きく関係する、内臓の不調。これも、背中のこりを起こす原因の一つです。この場合、内臓疾患によって、臓器そのものに痛みが生じる前に、最初の症状として、背中がこることがあるので、要注意です。
例えば、心筋梗塞など、心臓に問題がある場合、背中の左側や肩甲骨の間に、こりが生じることがあります。
また、脊髄の内側で背中の中央神経と、とても近いところを通っている、すい臓に問題がある人も、背中のこりを訴えることがあります。みぞおちの痛みが食わる場合、すい臓の病気が悪化している恐れがあります。
さらに、「食生活」の項目であげたように、胃腸が弱っているときは、ちょうど胃の後ろあたりに、滞りや違和感を感じるようです。このように、内臓からのSOSが、背中のこりとなって現れることがあるようです。
運動不足・過度の運動
人間の筋肉は、動かしているときに比べ、じっと動かさずにいる方が、緊張しやすくなります。このような筋肉の緊張は、血流を悪くさせ、こりを招く大きな原因となることは、すでに冒頭でも述べた通りです。
また、運動不足で背筋や腹筋が弱くなると、肩甲骨周辺などの一部の筋肉にだけ、負担をかけてしまい、こりが生じます。筋肉は、全身に血液を巡らせるポンプの役割もしていますので、運動不足による筋肉の衰えが、こりの原因になるというのも納得できるのではないでしょうか。
このように、「使わなさすぎる」状態も問題ですが、「使いすぎ」も良くありません。過度な運動や、無理な体勢などによる筋肉疲労も、背中のこりやハリを引き起こします。
柔軟な心身をつくろう!~背中のこりを改善する方法~
原因を見ただけでも、いろいろな改善アプローチができそうです!早速、背中のこりを和らげるための、改善方法を見ていきましょう!
ストレスに強い身体づくり
ストレスフルな現代社会の中で、ストレスを全く感じずに生きていくのは、なかなか難しいものです。「避ける」よりも、ストレスを感じても、それを跳ね返すことができる、強い心身をつくる方が、今の時代には合っているのかもしれません。
自然界ではどのような現象においても、「リズム」があります。人間の身体にも呼吸や心拍などがあり、休むことなくリズムを刻んでいます。こうした、ある一定のリズムは、人間に安心感を与えてくれると言われています。
好きな音楽を聴いたり、買い物に出かけるなどのリフレッシュ方法もたくさんありますが、これらのリズムを上手に利用してみるのも一つの手です。
「生活リズム」という言葉があるくらいですから、まずは、自分が一番健康な状態でいられる生活リズムを探し、ストレスを感じたり、疲れたときには、その生活リズムを思い出すのです。そして、実際にそのリズムを取り戻すよう心がけながら何日か過ごすと、思いのほか早く元気を取り戻せているケースが、少なくはないのです♪
丁寧な食事を心がける
栄養バランスのとれたメニューや、消化の良い物を食べることも、もちろん大切です。しかし、それだけでなく、食事そのものを楽しむことも、食生活の改善には欠かせません。
忙しくて、コンビニのお弁当になってしまったとしても、よく噛んで食べることで、消化を促してくれますし、食べ過ぎも防げます。
あるいは、スーパーなどでお惣菜を買ったとき、パックのまま食卓に出すのではなくて、お皿に盛り付けて食べると、慌ただしい食卓で、ないがしろにされがちな「いただきます」という気持ちを改めて感じられるかもしれません。
お気に入りの食器を探すのも、食事を楽しむ方法の一つですね♪ゆっくりと、丁寧な食事は、私たちをリラックスさせてくれます。
内臓疾患は、早めの治療を!
背中のこりから、内臓疾患を発見できることもあるかもしれません。いろいろ試してみても改善しない場合や、内臓の痛みを伴う背中のこりを感じたときは、病院で診察してもらうのが一番安心できるでしょう。
あるいは、背中のこりが、ゆくゆく内臓の不調を招く場合もありますので、先に診察してもらって内臓に問題がなければ、ここでご紹介する改善方法を試してみるのも良いでしょう。
病院へ行くのは、どうしても億劫になりがちですが、今の自分の身体が、どのような状態かを知っておくことは、健康維持のためにも欠かせません。
定期的な運動やストレッチ
「運動しよう!」と意気込みすぎると、長く続きにくいので、まずは、続けられる運動を習慣づけることをおすすめします。
例えば、職場から帰宅する際には、いつもより一駅前で降りて歩いて帰ったり、階段がある場所では、エスカレーターやエレベーターを使わないなど。また、歩くときの姿勢に気をつけるだけでも筋肉の使い方が変わるので、使っていなかった筋肉たちに「ON」のスイッチを入れることができます。他にもすぐに始められることが色々ありそうです!
他に、背筋を鍛える(しなやかにする)&緩めるストレッチも効果的です。「使ったら、緩める」これが、筋肉の上手な使い方です。家でもできる簡単なそれぞれのストレッチをご紹介します。
<しなやかな背筋をつくるストレッチ>
①四つん這いの状態で床に手をつき、つま先を立てます。手は肩幅、足は腰幅に広げます。さらに、肩の下に手首、腰の下に膝がくる位置に整えましょう。
②手でしっかりと床を押し、両腕の間に身体が沈み込まないよう、注意します。そこから、肩を一度耳に近づけ、肩甲骨を引き寄せるように、後ろへ引きます。胸が大きく開いた状態です。(※このとき、腰が反れている場合は、おへその下に力をぎゅっと入れて、腰に負担がかからないようにしましょう。)
③②の基本姿勢から、ゆっくりと息を吸い、視線を正面よりやや上方を見るように、背中を反らします。お腹に力をいれることも忘れずに♪
④次に、息を吐きながら背中を丸めます。背中の中心が空から引っ張られているようなイメージで、おへそをのぞき込みます。しつこいようですが、このときもお腹に力を入れるのを忘れないようにしましょう。腰を守るために、体感を強い状態にしておくことは、とても大切なのです。
<背筋を緩めるストレッチ>
①四つん這いの状態で床に手をつき、つま先を立てます。手は肩幅、足は腰幅に広げます。さらに、肩の下に手首、腰の下に膝が来る位置に整えましょう。
②①の基本姿勢から、5~10cmほど、膝を後ろに移動させます。
③その状態で一度息を吸い、ゆっくりと息を吐きながら、腰を後ろに引き、眉間を床につけます。ちょうど、爪先立ちで正座したままうつ伏せになって、両手を前方に伸ばしたような状態です。
④余分な力はすべて抜き、ゆっくりと呼吸を繰り返します。眉間は重く大地に根付いた状態です。呼吸するたびに、顔、口の中、背中、お腹、全ての筋肉が緩まるのを感じましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?背中のこりが、私たちに教えてくれることがたくさんあります。ここであげた改善方法だけでなく、身体を冷やさないことも、血流を良くするための基本中の基本です!
背中は、身体の骨格を支える背骨がある、大切な場所です。自分では手の届かない場所ですが、マッサージなどの外側からのケアだけでなく、根本的な原因を見極め、内側から改善していくのが、改善への一番の近道とも言えるのではないでしょうか。
また、ここで紹介した改善方法は、予防策でもあります。普段から身体が喜ぶ生活を心がけることが、巡りの良い、健やかな身体づくりへの第一歩です!
「これ、試してみよう!」と思ったことから、少しずつ始めてみませんか?
関連記事として、
これらの記事も合わせてお読みください!