皆さん、ランゲルハンス細胞という細胞を知っていますか?この細胞はお肌を美しく保つ為に、パトロールのような役割をする細胞です。
この細胞は年齢や紫外線など様々な原因で減少してしまいます。そうなるとシワ、シミなどの肌トラブルだけでなく、老化現象が起こります。この細胞を活性化するのが美肌を保つ鍵です。ここでは、ランゲルハンス細胞について詳しくご紹介します。
ランゲルハンス細胞について
ランゲルハンス細胞とは、表皮有棘層に存在する樹状細胞の1つです。ドイツの医学者であるパウル・ランゲルハンスが発見したため、発見者の名前をとって名づけられました。
ここでは、この細胞の概要と働き、肌を健康に保つ仕組みについてご紹介します。
ランゲルハンスとは?
ランゲルハンス細胞は皮膚免疫細胞として存在し、お肌の水分を体内にとどたり、皮膚バリア機能をつくって肌を乾燥から守る働きがあります。このランゲルハンス細胞は、樹状突起という樹枝状の形をした突起物があり、先端にはレセプター(受容体)がついています。1つの細胞に約3000個ものレセプターが存在します。
このレセプターの部分で細菌やウイルス、カビ、化学物質、放射線、紫外線、温熱、寒冷などの外部から異物、刺激を察知したり、皮膚の内部状況を常に脳に連絡し、バランスを整えさせるお肌のセンサーのような役割があります。
このランゲルハンス細胞を活性することは皮膚免疫力を高めることに繋がり、肌トラブルを防ぐと注目されています。ランゲルハンス細胞は炎症を起す為、以前にはアトピーはランゲルハンス細胞が過剰反応を起したのではないかという考え方もありましたが、実際はそうではありません。
実験ではランゲルハンス細胞が欠如したり機能していないと過剰な免疫反応を起こし、ランゲルハンス細胞が正常な場合には過剰反応をみせることなく、適度に抗原を対処していたと報告されています。その為、皮膚炎などの肌トラブルで悩まされている方も、この細胞の働きや活性化の仕方を知ることで症状を緩和したり、治療に役立てることが期待できます。
ランゲルハンス細胞の働き
ランゲルハンス細胞の働きは大きく分けて2つあります。1つは皮膚内部の免疫情報を脳に伝達すること、2つ目は皮膚外部から侵入した異物を確認して排除するように働きかけることです。
皮膚内部の情報を脳に伝達
ランゲルハンス細胞は、遊走性で表皮内を自由に移動することができ、皮膚の状態を常にいい状態に保てるように皮膚内部をパトロールする役割があります。何か異常が発見されると免疫反応が起こり、神経伝達物質を通じて脳に情報送ります。
そして、脳からも情報が伝達され、ランゲルハンス細胞は受け取った情報に応じて皮膚を変化させようと働きかけます。
皮膚外部からの侵入物を確認
皮膚には外部からの刺激から肌を守るバリア機能が存在します。中でも、角質層は表皮の中でも一番外側の部分にあり、乾燥を防ぐのに一番重要な部分です。この角質層は死んだ細胞や細胞間脂質で構成されています。この角質細胞はたった0.02mmしかないにも関わらず、お肌にとって重要な役割をしてくれます。
しかし、この角質層を始めとしたバリアは紫外線などの物理的な要因で壊されてしまう場合があり、そうなると細菌やウイルス、病原性微生物、大気汚染物質、ハウスダストなどが侵入しやすくなってしまいます。
表皮のバリア機能が壊された時に、活躍するのが免疫細胞のランゲルハンス細胞です。突起物のレセプターで抗原を取り込み、リンパ管を通って特定のリンパ節へと移動して情報を別の免疫系(T細胞)に連絡し、これによりヘルパーTリンパ球が刺激されて免疫応答が開始されます。
この免疫細胞のT細胞が皮膚に移動して抗原を見つけるとサイトカインを放出されて、これによりTh1とTh2になります。Th1細胞は、細胞性免疫の主な働きを示し、Th2細胞は主に液性免疫反応を誘導し、B細胞を活性化させて、抗体情報にあわせた生産物をつくりだして、侵入物を排除したり、炎症などを引き起こさせます。このランゲルハンス細胞が常に活性化している状態であれば、健康な肌を保つことができるのです。
肌を健康に保つ仕組み
pHという数値を元に肌の状態を区別することができます。人の肌は一般的にはpH4.5~6.0の弱酸性に保つ働きがありますが、紫外線やストレスなどが原因となってその力が弱まり、アルカリ性に傾きます。
体には、自己防衛機能が備わっているので、アルカリ物質が肌について肌がアルカリ性に傾くとランゲルハンス細胞が脳に伝達して肌表面を弱酸性に傾けるように働きます。これをある程度繰り返すと、免疫機能が鍛えられて肌を健康に保つことが出来ます。
弱酸性をうたっている基礎化粧品は、pH5.0~6.0の間で設定されているものが多く、本来の肌の状態に近いものだといえます。弱酸性の化粧品、弱酸性の洗顔は肌にいいというイメージがありますが、これを使い続けて肌にアルカリ性に傾くことがないと、ランゲルハンス細胞が働く機会がなく、活性化されずに肌トラブルになります。
一方で、アルカリ性に傾いたままの状態でも、肌トラブルの原因になります。健康的な肌の方の場合は、洗顔をアルカリ性のものを使い、保湿や化粧水などは弱酸性のものを使うのがランゲルハンス細胞を活性化させるのにはオススメです。
アルカリ性のものは洗顔力が強いので、洗顔料で使われているものが多いです。その為、1日に何度も洗顔するとアルカリ性に傾くので1日1回の洗顔に押えましょう。また、肌の状態は個人差もあり皮脂分泌が盛んな脂性肌の方は酸性に傾き、乾燥肌の方はアルカリ性に傾いています。
他にも年齢を重ねるごとにアルカリ性に傾いたり、湿疹やアトピーの皮膚疾患の方もアルカリ性に傾きます。アルカリ性に傾きやすい人は、洗顔も化粧品も弱酸性のものを使うのがオススメです。
phとは?
pHの値は下記のように区別されています。
- ph1.0~3.0:強酸性
- ph3.0~6.5:弱酸性
- ph6.5~7.5:中性
- ph7.5~11.0:弱アルカリ性
- ph11.0~14.0:強アルカリ性
ランゲルハンス細胞が弱る原因とは?
ランゲルハンス細胞が活性化していれば、皮膚の生体恒常性機能が保たれ、お肌を健康に保つことができます。
このランゲルハンス細胞が常に活性化させるには、この細胞が弱ってしまう原因を知り、それを避けることが重要です。ここでは、ランゲルハンス細胞が弱る原因についてご紹介します。
加齢
ランゲルハンス細胞は加齢により、その機能が衰えます。
ランゲルハンス細胞の鎮静化酵素の量を比べたところ、26~30歳よりも49~58歳の方が減少しているという研究結果があります。
活性酸素
活性酸素とは、体内で酸素を利用して代謝することで生まれるものです。この活性酸素は通常、体内に入ってきた細菌などを排除する働きがあり、白血球やマクロファージなどの免疫機能の1部として働きます。
活性酸素は毒性が強い為、増えすぎると体に害となり、体内の細胞を細胞を酸化させ、シミ、ソバカス、しわや老化の原因を作ります。また、肌のトラブルだけでなく、動脈硬化、糖尿病、ガン、老人性痴呆などの原因にもなります。呼吸をするだけでも活性酸素が発生しますが、増えすぎる原因になるのは下記のようなものが挙げられます。
活性酸素を大量に発生させるもの
- 大気汚染
- 電磁波
- たばこ
- 激しいスポーツ
- ストレス
- 紫外線
- 医薬品
- 排気ガス
- 加工食品、食品添加物、化学合成食品
- 殺虫剤
- X線(レントゲン)
石油系合成界面活性剤
石油系合成界面活性剤はシャンプーやクレンジング剤などによく使われている成分の1つで、洗浄力や脱脂力、強いたんぱく質変性作用があります。肌を溶かして細胞にダメージを与えるため、使い続けることでランゲルハンス細胞も壊されてしまいます。
これにより、シミやしわ、吹き出物などの肌トラブルや頭皮などに大きなダメージとなる可能性があります。石油系合成界面活性剤といっても種類はたくさんあります。下記のような石油系合成界面活性剤が入っていないクレンジング剤やシャンプーを使いましょう。
一般的な石油系合成界面活性剤
- ラウリル硫酸Na
- ラウレス硫酸Na
- ラウリルスルホン酸Na
- ラウリルベンゼンスルホン酸Na
- オレフィン(C12-C14)スルホン酸Na
- パレス-3硫酸Na
酸性化化粧品の長期使用
一般的なスキンケア化粧品は弱酸性でできているので、基本的には刺激的なものは少ないですが、気にするべきは使用期限です。一般的な化粧品は未開封の場合は、製造後3年以内に使用するべきと言われています。化粧品は腐るものなので、長期の使用はしないようにしましょう。
ステロイド
ステロイドは免疫抑制剤です。アトピー患者さんによく使用されるこのステロイドは、ランゲルハンス細胞を減少させてしまいます。
ステロイドを成人男性に1日2回塗ったところ、5日後にはランゲルハンス細胞を半分にまで減少させたという報告があります。アトピーを完治するのであれば、ステロイドを使用しない治療をするのがオススメです。
ランゲルハンス細胞を活性化させる方法
ランゲルハンス細胞は、上記で紹介したものが原因となって減少するため、原因となるものを避けることがお肌を健康に保つのに重要です。
また他にもランゲルハンス細胞を活性化するためにするべき事をご紹介します。
洗顔と基礎化粧品の使いわけ
スキンケア基礎化粧品などで「弱酸性です」とうたっている商品がたくさんあるので、酸性化の化粧品を使うのはいいという認識がある方も多いと思います。しかし、体や顔を洗うボディーソープや洗顔料はアルカリ性で出来ているものが多いです。
その理由はアルカリ性の方が洗浄力に優れているからです。その為、アルカリ性の洗顔料を無意識のうちに選んでいる方も多いと思いますが、こちらに関しては問題ありません。本来、人の体は短時間でアルカリ性を中和する機能がある為、アルカリ性でもすぐに弱酸性に戻ります。しかし、アトピーなどの皮膚疾患の方は肌がアルカリ性の為、弱酸性のものを使うのがオススメです。
一方で、気をつけるべきはスキンケア化粧品です。こちらに関しては弱酸性のものを使うのがお肌を弱酸性に保つのに重要です。ほとんどのスキンケア化粧品は弱酸性なので、特に気にする必要はありません。
食生活の見直し
活性酸素が多く作られないようにするには、食生活の見直しが大変重要です。添加物を多く含んだ食べ物、古い油を使った揚げ物やジャンクフード、レトルト食品は控えるようにして、出来るだけ新鮮な食べ物の摂取を心がけることが大切です。
緑黄色野菜などに含まれるビタミンC,E,βカロチンを摂取しましょう。これらは脂質の酸化を防ぐと言われています。下記のような食品の成分が抗酸化作用があると言われています。積極的に毎日の生活に取り入れましょう。
ビタミンC
ビタミンCは主に血液中に含まれた活性酸素を抑制する働きがあります。ビタミンCが多く含まれている食べ物は、レモン、いちご、アセロラ、キウイ、ゆずなどの果物やパセリやブロッコリーピーマンなどの緑黄色野菜です。
ビタミンE
ビタミンEは細胞膜の酸化を防ぐ働きがあります。細胞膜は活性酸素に酸化されやすいため、活性酸素が多く生産されると老化を引き起こします。ビタミンEにも活性酸素を抑制する効果があり、若返りのビタミンとも呼ばれています。
ビタミンEが多く含まれているものは、ゴマ、うなぎ、ピーナッツ、アーモンド、あんこうの肝、めんたいこ、すじこなどです。
亜鉛
亜鉛にも細胞の酸化を防ぐ働きがあります。食品添加物の中には亜鉛の働きを邪魔するものや、外に排出しようとする性質を持っているものがあります。それらが含まれている加工食品を摂取している生活の場合は特に亜鉛が不足している可能性があります。
亜鉛が多く含まれている食材は、牡蠣、レバー、ビーフジャーキー、パルメザンチーズ、ほや、牛肉(肩)、牛ひき肉などが挙げられます。
セレン
抗酸化物質の生成の1つにセレンがあります。これはミネラルの1種で亜鉛と一緒に摂取するのが効果的です。セレンが多く含まれている食べ物は、イワシ、シラス、かつお節、アンコウの肝、レバー、卵、フランスパンなどです。
ポリフェノール
ポリフェノールにも抗酸化作用があります。アサイーやブルーベリーなどのベリー類にはポリフェノールが多く含まれていることで有名ですが、最近注目されているものはマキベリーです。このマキベリーは最近知られるようになってきた食材の1つで、南米に育つマキの実のことです。
ポリフェノール量はアサイーの5.4倍、ブルベリーの14倍といわれ、アントシアニンという抗酸化作用も多く含んでいます。生のマキベリーは手に入りずらくマキベリーの粉末は手軽に購入することができます。
カテキン
カテキンにも抗酸化作用があり、緑茶に多く含まれています。最近の研究では脳内の活性化酸素を排除する働きがあると報告されています。
規則正しい生活
質の高い睡眠と適度な運動をすることで活性酸素を抑制することができます。質の高い睡眠をすると、強力な抗酸化作用を持つメトラニンが分泌されるようになります。不規則な睡眠をしたり、睡眠が浅いとメトラニンが分泌されずに活性化酸素が増えてしまいます。質の高い睡眠がとれるように寝る環境を整えるように工夫しましょう。
また、過度な運動をすると、酸素量が増えて活性化酸素が増えてしまいますが、適度な運動はストレスを発散して活性化酸素を抑制することができます。
ランゲルハンス細胞の病気と治療法
ランゲルハンス細胞は減少することで肌トラブルを引き起こしますが、逆に増加することでも体に害を及ぼします。
ここでは、ランゲルハンス細胞組織球症という病気の概要や症状、原因、治療方法についてご紹介します。
ランゲルハンス細胞組織球症 (LCH)
ランゲルハンス細胞が関わる病気の1つにランゲルハンス細胞組織球症があります。この病気はランゲルハンス細胞が異常に増えることで起きる炎症と考えられています。様々な症状が出るので、発見しずらく患者さんの多くは整形外科、耳鼻科、脳外科、皮膚科、呼吸器科などの様々な専門科を受診する傾向にあります。
LCHはがんとしての性質を持っていると言われていますが、現在ではがんであるかどうかの結論には至っていません。その理由としてLCHは治療をしなくても自然と治る場合があるからです。しかし、活動性の病変である場合もあり、これらの事からがんの1種とは決めがたいと言われています。
病気には単一臓器型か多臓器型の2つのタイプがあります。単一臓器型は病気の部位が1つの臓器のみで、多臓器型の場合は2つ以上の臓器が対象となります。日本でこの病気にかかる人は年に60人~70人と言われ、多くはありません。
多臓器型は1歳未満に多く発症し、単一臓器型の年齢は幅広い年齢に現れます。単一臓器型の場合、患者の7~8割は子供で、男児に多くみられる傾向にあります。大人も稀に発症しますが、どちらの場合も乳幼児に多い病気です。
原因と症状について
ランゲルハンス細胞は免疫系に関わる細胞の1つです。主に皮膚などに存在していますが、このランゲルハンス細胞が皮膚や骨、リンパ節で異常に増加することで、LCHが発症します。ランゲルハンス細胞が増加する原因は分かっていません。
LCHの病変部位にはリンパ球や好酸球、破骨細胞様多核巨細胞などの細胞が集まり、これらが互いに刺激をしてしまうため、瘤を作ったり、骨を溶かしたりして壊すようになります。
主な症状は骨や皮膚の病変です。多臓器型の場合は、皮膚や骨以外にも肝、脾、肺、胸腺、骨髄などに様々な病変がみられるようになります。初めは骨が腫れる、骨の痛み、発熱という症状が現れます。多臓器型の場合は、他にも皮膚にブツブツができたり、リンパ節が腫れる、肝臓や脾臓が腫れる、尿がたくさんでて喉が渇く、尿崩症なども見られます。
治療方法
どの部位にどれだけの病変があるかによって治療の仕方が変わってきます。免疫染色と呼ばれる、臨床検査を行うと特定の抗原を調べることができます。
単一臓器型の場合は特別な治療をしなくても良くなることもあるので、様子を見守る場合もあります。多臓器型の場合は、後遺症が残ったり命に関わる危険もあるので、抗がん剤を用いた化学療法が行われます。
おわりに
ランゲルハンス細胞の活性は健康な肌を保つのに重要です。ランゲルハンス細胞は増えすぎても減りすぎても体に害を引き起こします。増加しすぎて病気を起すのは稀ではありますが、頭の片隅に置いておくことで、似たような症状が現れた時に病気発見の手がかりを掴みやすくなります。
また、加齢や紫外線などの様々な原因でランゲルハンス細胞が減少します。今回ご紹介したランゲルハンス細胞が弱まる原因となる物は避け、活性化する対策を日常生活に取り入れていきましょう。
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