肌の「ターンオーバー」という言葉について耳にしたことが無いという方は、多くはないのではないでしょうか?少しでもお肌のお手入れや美容に関心があれば、「ターンオーバー」という言葉自体は聞いたことがあるでしょう。
しかしながら、肌のターンオーバーについて詳しくご存知の方は、案外少ないのかもしれません。実は、肌の構造や肌のターンオーバーの仕組みについて、しっかりと理解していなければ、スキンケアの効果も半減してしまうかもしれません。
そこで今回は、肌の構造や肌のターンオーバーの仕組みなど、肌のターンオーバー全般についてまとめてみましたので、参考にしていただければ幸いです。
肌の構造
肌のターンオーバーの仕組みを理解するには、肌の構造に関する基本知識が必要不可欠となります。また、肌の構造を知識として知っておくことで、自分のスキンケアの方法がどのように肌へ影響を及ぼしているのかも理解できるでしょう。
そこで、まずは肌の構造に関する知識について、簡単におさらいしておきたいと思います。
肌(皮膚)の構造
肌(皮膚)は、外側から表皮・真皮・皮下組織の三層構造となっています。そこで、簡単にそれぞれの役割について、ご紹介します。
表皮とは?
表皮は、皮膚の三層のうち最も外側を覆う組織のことで、外界からの刺激から身体を守る役割を果たしています。肌のターンオーバーは、この表皮で生じている現象です。
表皮は、さらに細かく見ていくと、外側から角質層(かくしつそう)・顆粒層(かりゅうそう)・有棘層(ゆうきょくそう)・基底層(きていそう)に分類されます。
真皮とは?
真皮は、皮膚の三層の中間にある組織で、表皮を下から支える役割を担っており、いわば表皮の土台のような役目を果たしています。
また、真皮は、主にコラーゲンと呼ばれるタンパク質、エラスチンと呼ばれる弾性繊維、保水力に優れたヒアルロン酸などで構成されますが、中でもコラーゲンが約70%を占めています。そのため、皮膚の弾力性はコラーゲンやエラスチンに由来し、肌の内側の保湿や潤いはヒアルロン酸に由来しています。
ちなみに、真皮の中には線維芽細胞と呼ばれる細胞が存在し、コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸を産生するとともに、コラーゲンやエラスチンが古くなると分解する役割も果たしています。ですから、加齢や紫外線の影響で線維芽細胞の働きが鈍ると、真皮の弾力性と潤いが徐々に失われて表皮の土台としての役割を十分に果たせなくなり、その結果として皺(しわ)・たるみ・ほうれい線が出現するのです。
皮下組織とは?
皮下組織は、皮膚の三層のうち最も内側にある組織のことで、表皮や真皮を支える役割を担っています。そして皮下組織の中には、大きな血管(動脈・静脈)が走行しており、その血管から真皮や表皮につながる細かな血管へと分岐していきます。
皮下組織のほとんどが脂肪、いわゆる皮下脂肪で構成されています。この皮下脂肪が外界からの衝撃を吸収する緩衝材の役割、外界からの断熱材としての役割、体温の保温材としての役割を果たしています。
皮下脂肪というと、ともすると肥満など悪いイメージを抱きがちですが、人体の生命を維持する観点からは必要不可欠なものと言えます。
表皮の役割
前述のように表皮は、皮膚の三層構造のうち最も外側の層のことで、角質層・顆粒層・有棘層・基底層によって構成されています。
肌のターンオーバーは表皮で生じる現象ですから、表皮の役割について少し詳しくご紹介したいと思います。
基底層
基底層では、真皮の中を走行する毛細血管から栄養を受け取ることによって細胞分裂をすることで、表皮の元となる基底細胞を生み出します。
この基底細胞は、さらに分化を繰り返しながら有棘細胞、顆粒細胞、角質細胞へと変化していきます。この基底細胞から角質細胞までを総称して角化細胞(ケラチノサイト)と呼びます。
色素細胞(メラノサイト)
ちなみに、基底層には色素細胞(メラノサイト)も存在していて、紫外線を受けるとメラニン色素を合成して、表皮の色を茶褐色から黒色に変化させます。これは、いわゆる肌が日焼けのような状態になることで紫外線を吸収し、表皮より内部の真皮などに紫外線のダメージが及ばないようにしているのです。
この色素細胞(メラノサイト)、角化細胞(ケラチノサイト)、あとで説明するランゲルハンス細胞を合わせて表皮細胞と呼びます。
有棘層
有棘層では、基底層で生まれた角化細胞である基底細胞が表皮の外側に押し上げられながら分化することで、有棘細胞になります。
ランゲルハンス細胞
有棘細胞の間には、ランゲルハンス細胞が存在しています。ランゲルハンス細胞は一種の免疫細胞であり、皮膚に侵入してくる細菌・ウイルスなどを感知して白血球などの免疫細胞を呼び寄せる働きをします。
そのため、ランゲルハンス細胞は、免疫システムの異常反応であるアレルギー反応と深い関わりがあることが近年の研究で明らかにされています。ですから、アレルギーの一種であるアトピー性皮膚炎による肌の炎症のはランゲルハンス細胞と関わりがあるとされているのです。
顆粒層
顆粒層では、有棘層から表皮の外側に押し上げられた有棘細胞が顆粒細胞に変化します。顆粒層では、顆粒細胞同士が密着するような形で存在することから、外界からの細菌・ウイルスといった異物の侵入を防ぐバリア機能としての役目も果たしています。
また、顆粒層では、肌表面の保湿に関わる天然保湿因子(NMF)やセラミドが産生されます。
角質層(角層)
角質層は、角層とも呼ばれます。角質層では、顆粒層から押し上げられた顆粒細胞が角質細胞に変化します。角質細胞は、細胞の核が無くなってしまい、いわば死んだ細胞なので、徐々に垢(あか)として剥がれ落ちていきます。
角質層は、この抜け殻のような角質細胞と角質細胞の間を埋める天然保湿因子とセラミドを主要成分とする角質細胞間脂質(角質細胞間皮質)で構成されます。角質層が天然保湿因子と角質細胞間脂質で保湿されることで、角質層は顆粒層とともに肌のバリア層として機能します。
ちなみに、この角質層の表面に毛穴から皮脂や汗が分泌されることで、皮脂や汗が保湿やバリアとしての役割をサポートする形になります。
ターンオーバーとは?
このような肌の構造についての知識を踏まえて、それではターンオーバーとは、どのような現象のことを言うのでしょうか?
ターンオーバーの定義について、ご紹介したいと思います。
ターンオーバーとは?
ターンオーバーとは、表皮における新陳代謝の過程のことで、言い換えれば角化細胞という意味での肌細胞の生まれ変わりのことを言います。
つまり、表皮の角化細胞が基底細胞として生まれてから、有棘細胞、顆粒細胞、角質細胞と分化・変化を重ねて、最終的に垢となって剥がれ落ちるサイクルのことを、ターンオーバーと呼ぶのです。
したがって、肌の表面部分である表皮は、ターンオーバーが生じることによって、常に細胞の入れ替わりが起きているのです。このような肌のターンオーバーを目で捉えることは難しいのですが、皮膚に切り傷や擦りむき傷ができた場合に、かさぶたが出来て時間の経過とともに自然と剥がれ落ちてしまうのはターンオーバーによるものと言えるでしょう。
ターンオーバーの周期
このような肌のターンオーバーの周期は、身体の部位によっても違いが生じますし、人それぞれ個性があるように個人差も生じます。それでも、敢えて肌のターンオーバーの周期を数字として示すならば、28日間(4週間)から56日間(8週間)と言われています。
例えば、顔の肌のターンオーバーにかかる期間は、最短で基底細胞から顆粒細胞への変化に約14日間と角質細胞に変化してから剥がれ落ちるまでに約14日間の合計28日間で、他の身体の部分よりは早くなっています。一方で前腕部などは28日よりも少し時間がかかり、手指や足指などの末梢部分に至っては更に時間がかかるとされています。
ターンオーバーが乱れる原因
このような肌のターンオーバーの周期は常に一定であるわけではなく、様々な要因によってターンオーバー周期が乱れてしまうことがあります。
そして、ターンオーバーの周期が乱れると肌悩み・肌トラブルなどが生じてしまいます。そこで、ターンオーバーの周期が乱れる原因について、ご紹介したいと思います。
生活習慣の乱れ
日常生活における生活習慣が乱れると、肌トラブルにつながることは多くの方がご存知でしょう。特に、睡眠・食事・ストレスは、肌のターンオーバーと深い関係にあります。
睡眠の不足
睡眠不足が続くと、ターンオーバーの周期が乱れることにより、肌トラブルに至ります。これは、細胞分裂を促進させる成長ホルモンが主に睡眠中に分泌されるため、睡眠が十分でないと成長ホルモンの分泌が少なくなるからです。成長ホルモンの分泌が減少すると、肌の新陳代謝・ターンオーバーが正常周期で実施されなくなります。
食生活の乱れ
皮膚細胞の新陳代謝に限らず、人の身体の細胞は必要な栄養素がなければ生まれ変わることも成長することもできません。
肌のターンオーバーには、ビタミンやタンパク質などの栄養素が必要不可欠です。一方で、中性脂肪やコレステロールなどの脂質の取り過ぎは皮脂の過剰分泌につながり、ニキビなどの肌トラブルを引き起こして肌のターンオーバーの周期に影響を与える可能性があります。
ですから、バランスの良い食事ができなければ、ターンオーバーの周期の乱れにつながるのです。
過剰なストレス
過剰なストレスに長く晒されていると、自律神経のバランスが崩れることがあります。自律神経は心臓や血管などの循環器の動きを支配していますので、自律神経が乱れると血流が悪くなり、肌細胞の新陳代謝に必要な栄養素も届きにくくなります。
したがって、過剰なストレスもターンオーバーの周期を乱す要因になるのです。
間違ったスキンケア
肌のターンオーバーが乱れる原因として、より直接的に影響するのが間違ったスキンケアです。良かれと思って行ったスキンケアが、逆に肌のターンオーバーの周期が乱れる原因となることがあるのです。
洗顔のし過ぎ
洗顔をする際に、顔のべたつきの要因となる皮脂を洗い落そうとして、必要以上に肌をこすったり、何度も洗顔したりすることは、肌のターンオーバーの周期が乱れる原因となります。
というのも、過剰な洗顔は、表皮の角質層を無理に剥がすことになるからです。前述したように肌の表面の角質層は保湿機能を有していて、肌のバリア層となっています。そのため、間違った洗顔方法ではターンオーバーの周期を早めることになり角化細胞が未熟な状態で表面に押し出してしまうことになるのです。ですから、洗顔のし過ぎは、肌の表面から水分を失わせて乾燥肌をもたらすなど、肌トラブルの原因となります。
成分の強いスキンケア用品
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」という諺があるように、良かれと思って使用した成分の濃い洗顔料・メイク落とし・化粧水などのスキンケア用品が、肌のターンオーバーの周期が乱れる原因となることもあります。
理由は洗顔のし過ぎと同様で、必要以上に角質を落としてしまったり、必要以上に皮脂を奪うことによって、肌のバリア機能が失われてしまうからです。
ピーリング・酵素洗顔
角質ケアの一環として、ピーリングを行う方もいるかもしれません。しかしながら、ピーリングは自然に剥がれ落ちる角質を強制的に剥がすものですから、ターンオーバーの周期を早めることになり角化細胞が未熟な状態で表面に押し出すことにつながります。
また、酵素洗顔もピーリングと同様の問題を発生させかねません。
紫外線の受けすぎ
紫外線を受けすぎると、表皮の下の真皮がダメージを受けてしまい、真皮の中の線維芽細胞が傷つきます。そのため、コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸の産生が鈍くなることで、皮膚細胞の老化が早まりシワ・たるみなどが生じるのです。そして、細胞の老化が早まれば、ターンオーバーの周期が遅れることになります。
また、紫外線によって表皮の角化細胞もダメージを受けるので、ダメージを受けた細胞の入れ替えをするために、表皮においては紫外線がターンオーバーの周期を早める原因になります。
さらに、紫外線を受けすぎると、真皮を保護しようと基底層でメラニン色素が産生されますので、色素沈着といった別の肌トラブルを招くことにもなりかねません。
女性ホルモンのバランス変化
女性ホルモンは、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)のことです。女性の体内では、卵胞ホルモンと黄体ホルモンのバランスが一定の周期で変化します。
この女性ホルモンのうち卵胞ホルモンは特に女性らしさを作り出すホルモンで、女性器や乳房など女性特有の部位を発達させるほか、美肌ホルモンと呼ばれるほど肌の新陳代謝と深いかかわりがあります。
ですから、卵胞ホルモンが減少してしまうと、肌のターンオーバーにも影響が及ぶ可能性があるのです。
加齢・老化
加齢や老化は、肌のターンオーバーの周期が遅らせる原因となります。
一般的に新陳代謝が最も高まるのは思春期くらいまでの子供の時期で、成人以降は徐々に新陳代謝が低下・鈍化していきます。そのため、40歳代前後になると20歳代前後に比べてターンオーバー周期が10日前後増えるとされています。
ですから、年齢の経過とともに傷や怪我が治りにくくなる原因は、このような新陳代謝の低下にあるわけです。ターンオーバーの周期が低下すれば、必然的にシミが増えたりするなど肌トラブルが増加する傾向にあります。
ターンオーバーを正常化する方法
それでは、肌のターンオーバーが乱れてしまった場合、どのようにして肌のターンオーバーを正常化すれば良いのでしょうか?
そこで、肌のターンオーバーを正常化する方法について、ご紹介したいと思います。
規則正しい生活習慣
肌のターンオーバーを正常化するには、基本的にターンオーバーを乱す原因を取り除く必要があります。ですから、規則正しい生活習慣を取り戻すことが、肌のターンオーバーの正常化につながります。
具体的には、十分な睡眠をとることで成長ホルモンの分泌を促し、バランスの良い食事を心がけることでターンオーバーに必要な栄養素を摂取し、自律神経を乱すようなストレスを溜めこまないようにすることが大切です。
エイジングケア化粧品の利用
エイジングケアとは、加齢による肌の変化をお手入れすることで、肌の老化を抑制することです。エイジングケア化粧品は、セラミドやヒアルロン酸を含んだものが多く保湿成分に優れ、敏感肌の方でも使いやすい肌に優しい作りになっているものがほとんどです。
肌のターンオーバーを正常化するには、成分の強いスキンケア用品は使わずにエイジングケア化粧品を利用したり、正しい洗顔方法を実践することが重要です。
加齢や老化は誰にでも訪れますが、エイジングケア化粧品を使うことで肌細胞の老化を少しでも抑制することが、正常なターンオーバーを維持・回復することにもつながります。
紫外線対策
紫外線が含まれる太陽光を浴びることは、ビタミンDの合成やセロトニンの分泌といった身体に良い効果ももたらしますが、一方で前述したように紫外線の浴び過ぎは肌の老化を招きます。
ですから、紫外線カット(UVカット)の化粧品を利用したり、日差しの強い時は日傘を使うなどの紫外線対策をすることが、正常なターンオーバーを維持・回復することにつながります。
まとめ
いかがでしたか?肌の構造や肌のターンオーバーの仕組みなど、肌のターンオーバー全般についてご理解いただけたでしょうか?
たしかに、ターンオーバーという言葉自体は聞いたことがあっても、ターンオーバーの仕組みなど詳しくご存知の方は少ないかもしれません。
しかしながら、肌の構造や肌のターンオーバーの仕組みについて、しっかりと理解しておくことが実は効果的なスキンケアを行うためには必要不可欠なのですね。
本記事が、効果的なスキンケアを実施するきっかけになれば、うれしく思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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