腎臓がんと宣告された、または腎臓がんの疑いがある場合生存率がどのくらいなのか。
腎臓がんの原因、治療法についても併せてまとめました。
腎臓がんとは
腎臓がんは文字通り腎臓に発生するがん細胞の事を指します。主に男性に発症率が高く、中でも50代から60代に多くみられる病気です。『腎がん』とも呼ばれ、がんの中では珍しい部類に入ります。
しかし2016年4月、芸人はんにゃのツッコミで知られる『川島章良』さんが31歳の頃腎臓がんが見つかり摘出手術を受けていたと報道されました。
川島さんは交際していた女性の妊娠をきっかけに結婚を決意し、人間ドックを受けてがんが見つかったそうです。早期発見の為、手術も成功し予後の経過も順調とのことですが若い方が侵されるケースもあるという事がわかります。
また腎臓がんの進行度はステージ1~4があり、ステージ4を末期がんの状態とします。
ステージ1はがんが腎臓内にとどまっていますが、ステージ2になると脂肪組織を侵し始めます。ステージ3になるとリンパ節や静脈などの血管に転移がみられステージ4では周辺組織に転移、または離れた臓器に転移している事が挙げられます。
腎臓について
そもそも腎臓とはどんな臓器なんでしょう。胃や心臓などと違って、腎臓がどの様な役割をもっているか知らない方も多いと思います。まずは腎臓についてまとめました。
腎臓はどこにある?
腎臓はそらまめ状の形をしており、位置としては腰のあたりに左右1つずつの合計2つあります。大きさは握りこぶしくらいでお腹の中にある臓器ですが、腹膜といわれる胃や腸などを包む袋と背骨の間の後腹膜腔と呼ばれる位置に存在しています。
構造は尿を作っている腎実質(ネフロン)と作られた尿が集まる腎盂(じんう)で出来ています。
腎臓はどんな役割をしているの?
(1)老廃物を尿として身体から追い出す役割
腎臓は血液に入っている塩分や不純物をろ過して尿として身体から追い出す役割をもっています。ネフロンと呼ばれるフィルターが一つの肝臓に100万個あり、血液中の余分な老廃物をキャッチして尿として排泄するように促します。
(2)血圧を調整する役割
腎臓には体内の塩分と水分の排出量を調節する事で血圧をコントロールする役割があります。一般的に塩分を取りすぎると高血圧になる、と言われているので『血圧を上げるには水分を下げて塩分を排出するのでは?』と思われがちですが実際は塩分量と水分の両方の排出量をあげる事によって血圧が上がります。
高血圧は腎臓が弱まり排出量のコントロールが乱れる事によって起こります。また、高血圧になることで腎臓にさらなる負担がかかり悪循環に陥るケースも多く存在します。
(3)血を作る役割
血液は骨髄の中にある細胞が、腎臓から出るエリスロポエチンという造血ホルモンの刺激を受けて作られています。腎臓がんが末期になると造血ホルモンの分泌が悪くなり貧血の症状が出るのはこのためです。
(4)体液の量を調節する役割
腎臓には体液の量を調整する役割もあるため、腎臓の機能が悪くなると体液のコントロールがうまくいかず、身体がむくんでしまう原因となります。
(5)骨を強くする役割
骨のもとはカルシウムですが、カルシウムを骨にするときに必要なのがビタミンDです。
しかし、ビタミンDがそのままの状態ではうまく骨になりませんが、活性化すると働きがよくなります。腎臓は、この活性化ビタミンDを作っているので骨を強くする役割も併せもっています。
腎臓がんの種類
腎臓がんは片方の臓器に出来る事が多く、2つ同時にがんに侵される例は非常にまれです。
また、がんが出来る場所によって大きく2つの種類に分かれます。
腎盂尿管がん
作られた尿が集まる腎盂に腫瘍が出来たり、尿管や膀胱、尿道の一部に出来るがんを腎盂がんと言います。血尿の症状が多くみられ肉眼でも分かる血尿が出ている場合は腎盂尿管がんの可能性が高いといえます。
腎細胞がん
腎実質(ネフロン)の尿細管にがんが出来るのが腎細胞がんです。
腎盂尿管がんに比べ発症率が高く一般的に腎臓がんと呼ばれるのは腎細胞がんを指している事が多いです。
腎臓がんの症状と進行度
腎臓がんは物言わぬがんと呼ばれるほど初期段階で症状が現れず、がんの直径が5cmを超えて初めて症状が現れます。人間ドックなどで1cmの腎臓がんが見つかったけれど、本人に初期症状が無く驚かれた患者の方も多いのではないでしょうか。
症状は大きく分けて3つありますので、もし当てはまるものがあればすぐに精密検査をしてもらうようおすすめします。
腎臓がんの症状その1 腹部の疼痛(とうつう)
腎臓がんは差し込むような強い痛みを伴いません。ズキズキ、シクシクと違和感に近い痛みが腹部にあるのが特徴です。
感じたことのない痛みと表現する方が多いので、変な痛みが続くようであれば受診しましょう。
腎臓がんの症状その2 血尿
腎臓がんの症状の中で最も分かりやすいのが血尿です。血尿は腎臓がん患者の半分に見られる症状です。腎盂(じんう)と呼ばれる尿を一時溜めておく期間ががん細胞によって破られると血尿が出ます。
初期段階では血がうっすら混じっているか分からない程度ですが、がんが進行するほどはっきりと赤い尿が出ます。
腎盂がんの場合は血尿が出やすく、強い痛みを伴います。
しかし、血尿は他の病気(膀胱炎や尿路結石、腎臓病等)でも確認される症状なので『血尿=腎臓がん』とは言えません。
腎臓がんの症状その3 腹部のしこり
腎臓がんが大きくなると、お腹の左右どちらかに痛みを伴わないしこりが出来る事があります。触診でがんが判明するケースも少なくありませんので、判断に迷う場合はお医者さんに触ってもらいましょう。
腎臓がんの症状 その他
- 吐き気
- 食欲不振
- 体重減少
- 全身倦怠感
- 発熱
- 貧血
- 背中やわき腹の痛み
これらの症状は他の病気でも見受けられますが、血尿や腹部の痛みと併発した場合は腎臓がんの可能性が十分考えられますので様子見せずにすぐ受診してください。
腎臓がんの転移
腎臓がんは他の臓器に転移した後にやっと発見される事が多いがんです。
また全身の4分の1もの血液を送り込む臓器の為、がん細胞が血液を通して運ばれやすく転移の危険が大きい病気です。実際にがんが発生した場所から離れた臓器への転移を遠隔転移と呼びますが、腎臓がんでは2割の方が遠隔転移している状態と言われます。
転移した場所別の初期症状、治療法をまとめました。
肺に転移した場合
肺に転移しやすいがんである腎臓がんですが、肺に転移した場合は
- 咳
- 血痰
- 呼吸困難
といった自覚症状があります。しかし、初期の場合は分からない事が多いです。
肺に転移した後で腎臓がんが見つかった場合ステージ4と診断され、治療してもあまり予後がよくないとされています。
脳に転移した場合
- 頭痛
- けいれん
腎臓がんが脳に転移した場合は放射線治療が行われます。ガンマナイフと呼ばれる放射線を腫瘍に集中させて治療し、脳の腫瘍などにはかなり効果の高い治療法として知られます。
骨に転移した場合
- 骨の激しい痛み
- 手足のしびれ
腎臓がんが骨に転移した場合、骨に強い痛みを伴ううえ、根治はかなり難しいと言われています。
骨の痛みに対しては放射線治療で軽減する事が出来ます。しかし骨の腫瘍を取り除く手術は骨の1部のみ腫瘍があり、その他の臓器が健康またはがん細胞が取り除かれているという条件が伴います。
腎臓がんの原因
腎臓がんは40歳以降の男性がなりやすい病気と言われていますが、はんにゃの川島さんのように30代前半で発症したケースも少なくありません。
腎臓がんの原因はまだはっきり分かっていませんが、がん患者の統計より原因と思われる要因が分かっていますので、知って生活習慣から改善していきましょう。
腎臓がんの原因1 肥満
腎臓がんに対する肥満のリスクは4倍とされています。
特に高脂肪食を好んで食べ続けた場合、血液がどろどろになって流れにくくなります。血液のコントロールやろ過をしている腎臓にどろどろの血液が送り込まれてきたら、腎臓の負担が増大しがんの発生リスクが高まります。
腎臓がんの原因2 喫煙
腎臓がんに対する喫煙のリスクは2倍とされています。
そもそも喫煙は他のがんに対してのリスクも高いのですが、その中でも血液の老廃物が原因になる腎臓がんは特に喫煙のリスクを受けやすいガンです。
リスクを下げる意味でも禁煙を心がけましょう。
腎臓がんの治療法
腎臓がんの場合腫瘍を薬や放射線で除去する事が出来ません。そのため手術療法が第一優先されますが、その他の治療法についてもまとめました。
手術療法
手術を行い、がんに侵された細胞を切除する治療法です。手術療法は切除する範囲で大きく2つに分けられます。
(1)根治的腎摘除術
腫瘍が出来た方の腎臓を、周辺の脂肪組織と一緒に切除する方法を根治的腎摘除術といいます。腎臓を1つ取り去る手術ですが、残った腎臓で十分に日常生活を送ることが出来ます。
(2)腎部分切除術
腎部分切除術はがんの大きさが小さく(4cm以下)、がんを切除した後も腎臓の健康な部分を残す事が出来る場合に行われます。腎臓の両方にがんがあったり、残った腎臓に問題がある場合に有効ですが、5パーセントの確立で再発する恐れもあります。
免疫療法
一部にはインターフェロンという腎臓の免疫を上げる注射を続けている方もいますが、様々な副作用があるため、続けていくのは困難といわれます。
主な副作用としては
- 食欲不振
- 身体の疲労感
- うつ病
- 肝機能障害
が挙げられます。
腎臓がんは進行のゆるやかながんと言われており、がんそのものが無くなっていなくても手術などを受けながら生きている方も多く存在します。
腎臓がんの生存率
ステージ別生存率
腎臓がんのステージ別に5年後も生存しているかどうかの確率を確認しましょう。
- ステージ1…75パーセント
- ステージ2…63パーセント
- ステージ3…38パーセント
- ステージ4…11パーセント
ステージが上がるほど生存率は低くなります。さらに転移があるかないかでも生存率が変わってきます。
転移がなかった場合
転移がみられない患者の場合、術後経過が良く5年後まで生存する割合は80パーセントにのぼります。
腫瘍が大きい、転移があった
腫瘍が大きいまたは他の場所へ転移があった場合、5年後まで生存する割合は30パーセント前後と転移なしに比べて大きく下がります。
腎臓がんの再発
通常がんは5年再発しない=完治 とみなされます。
しかし腎臓がんにおいては治療後10年~20年の間も再発の可能性がありますので、長期にわたって定期的な検査を行う必要があります。
腫瘍の大きさが4センチ以下で発見、治療出来た方の再発率は低く8割は初期治療のまま完治できるケースが多いようです。5センチを超えると再発率が高くなりますので、定期的な健診を行い早期発見につなげていきましょう。
まとめ
がんの中でも初期症状が少ない腎臓がんなので症状が出てしまってからは手遅れが考えられます。
早期治療で生存率がぐっと上がることを考え、症状が無くても定期的に人間ドックなどで腎臓の検査をしてもらいましょう。
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