腎臓と言うと…そらまめの形をした左右1つずつある臓器であり、尿の生成をしているというイメージを持たれる方が大半かと思います。
しかしそれ以外にも、体内の塩分・カルシウムなどのイオン濃度や血圧の調節をするという、とても大切な働きも兼ね備えています。そんな大切な臓器が病気になってしまった場合、どのようになってしまうのでしょうか?この記事では腎臓病の原因に焦点を当てて、解説いたします。
腎臓病とは…?
腎臓病を最も簡単に説明するならば「腎臓の働きが悪くなる病気」と言う事が出来ます。腎臓病にもいくつかの種類があり、種類によって原因や症状が異なっているようです。
腎臓病は近年、生活習慣病の1つとして認識され始めました。毎日の食生活・生活習慣が鍵となる事も多い病気という事です。また、腎臓や肝臓という臓器は、静かに症状が進行する傾向にあるため、自覚症状が出始めた事にはかなり症状が進行しているケースが多いそうです。こまめに尿検査や血液検査をする事が大切だと言えるでしょう。
腎臓病の種類別の原因は?
腎臓病は、上記記載の通りいくつかの種類がある病気で、種類によって若干原因が異なっています。腎臓病にはどのような種類があるのか、代表的な症状について、種類別に詳しく御説明いたします。
慢性腎炎(慢性糸球体腎炎)
慢性腎炎は別名・慢性糸球体腎炎とも呼ばれており、腎臓病の中で最も重篤な病気であり、最も症状を引き起こしやすい疾患群としてまとめられています。たんぱく尿と血尿が1ヶ月以上に渡って持続する状態を指し、糸球体を中心に慢性的な炎症が見られるものを指します。慢性腎炎を更に区分したものに「IgA腎症」という疾患があります。
IgA腎症とは、慢性腎炎の半数近くを占め、糸球体にIgAという免疫グロブリンが沈着している事からこのような名前が付けられました。どのような抗原が原因で引き起こされる疾患なのかははっきりしていませんが、患者さんの血液中のIgA値が上昇し血尿が見られる場合が多い事が特徴だと言われています。
これら慢性腎炎の原因としては、免疫反応の異常による腎機能の低下が殆どだと言われており、進行が進むと最終的には人工透析が必要になるため、注意しなければなりません。
詳しくは、IgA腎症とは?症状・治療法・原因・検査方法について詳しく紹介!を参考にしてください!
ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群とは、尿中に大量のたんぱく質が排出されてしまうため、逆に血液中のたんぱく質量が低下してしまい、体にさまざまな弊害が起こる病気を指します。症状として多いのは顔や手足から始まる浮腫であり、これが全身に広がり、腹水や胸水が溜まる事もあります。また、血液が凝固しやすくなるため、血栓症にも注意が必要です。
ネフローゼ症候群となる原因としては、糸球体の障害により、血液を濾過して尿を生成する時、本来生成されるはずのない高分子たんぱく質が含まれてしまう事にあります。尿は体外に排出される訳ですから、体内のたんぱく質量が減るため、低たんぱく尿症となる事もあります。
この際に排出される高分子たんぱく質の多くはアルブミンなため、低アルブミン尿症と呼ぶ事もあります。詳しくは、ネフローゼ症候群とは?原因や症状、治療方法を知っておこう!を参考にしてください!
糖尿病性腎症
糖尿病性腎症とは…血糖値の高い状態が長期間続くことにより、腎臓が正常に機能しなくなってしまう症状を指します。これは血液中の老廃物を濾過する働きをしている糸球体の細かい網目が大きくなってしまい、たんぱく質などの大きい粒子でさえも尿として排出されてしまうためです。
体に必要な成分は比較的大きい粒子で構成されているため、糸球体のざるのようなものでこしとられ体内に戻るのが普通です。しかしながら、それすらも体外に排出されてしまうため、体が必要としている栄養素を取り入れる事が出来ないという状態に陥ってしまいます。これが重症化すると、糸球体は尿の生成でさえ辞めてしまうので、体内の老廃物を取り除く治療をしなければならなくなります。
尿検査を行なう際「たんぱく尿」が認められるかを検査しますが、それはたんぱく質のような大きな粒子が尿と共に排出される場合、腎臓の機能が弱っている事が考えられるためです。いつ検査してもたんぱく尿が検出されるという状態になった場合には、症状が進行している可能性が高いため、早急に改善に向けて努める事が大切です。
腎腫瘍
腎臓に発生する癌の事を指し、腎細胞癌と腎盂癌に大きく分ける事が出来ます。90%近くは腎細胞癌とも言われており、50代から60代の男性に多い傾向にあるようです。
痛みなどの自覚症状が少ないという意味で、発見が難しい癌だとも言われており、痛みが全く出ない血尿が認められる事が重要症状のようです。しかしこの状態まで来ていると早期診断としてはやや遅く、次第に脇腹の痛みも生じてきます。癌に直接は関係しない全身症状から発見に至るケースも多く、体重減少・貧血・発熱が見られる事もあるそうです。
発症する原因としては生活環境が関係していると考えられており、喫煙・動物性の脂肪が原因ではないかと言われています。乳製品・肉類・洋菓子などの食べ過ぎには注意が必要で、これにより生活習慣病にかかりやすくなるとも言います。
近年は超音波検査で偶然に発見されるという事が多くなり、早期発見・早期治療が可能となっています。人間ドックや健康診断をしっかりと受診する事が大切だと言えそうです。
腎不全
腎不全とは、腎臓の働きが通常の30%以下に落ちてしまった状態を指します。一過性の腎不全である急性腎不全は原因を改善することで治りますが、慢性腎不全となってしまった場合は現代の医学では回復させる事が出来ません。
腎不全が進行してくると、体内の有害物質を体外に排出したり、水分量・ホルモンの調節が通常通りできなくなったりすると言う事が起こりえます。中でも、体に酸が溜まった際に引き起こされる尿毒症は深刻で、思考力の低下・全身のだるさ・食欲低下・息苦しいといった症状が現れるのです。原因となる物質は正確には分かっていませんが、尿素窒素やクロムの数値が平行して増える変化が起きるという事が分かっています。
ホルモン量の調節に関しては、レニンの過剰分泌による血圧上昇が引き起こされ、カルシウム不足では骨がもろくなる事も考えられます。腎臓病が進行することによって腎不全になるため、定期的な検査を怠らず、比較的軽度な段階から治療にうつれるように気を付ける事が大切だと言えるでしょう。
詳しくは、腎不全とは?原因や症状、治療方法を知っておこう!を読んでおきましょう。
人工透析について
腎臓の働きが10%以下になると、血液の濾過・体内の水分量の調節・老廃物の排出などが正常通りできなくなるため、人工透析が必要となります。人工透析には大きく分けて2種類あり、血液透析と腹膜透析に分けられます。
血液透析とは、血液を一度体内から取り出し、血液中の老廃物などの余分なものを取り除いたのちに、体内に戻す方法です。これに対して腹膜透析とは、自身のお腹の中に透析液を入れて体内で血液の浄化や老廃物の排除を行なう方法です。
1週間に3回程度、透析を行なうのが一般的なため、それが継続的に行なえるようにご自身の体調管理にも気を付ける必要があります。腎不全などで透析が必要な患者さんでも、自身で食生活・生活習慣に留意し、定期的に治療を受ける事で、元気に生活している方もたくさんいらっしゃいます。
腎臓病の患者さんが留意すべきこと
食生活に気を付ける
腎臓の機能を高めてくれる食材として挙げられるのは、イワシ・カツオといった魚、シジミ、鶏肉・豚肉、ハト麦、小豆…などです。しかし何においても、同じものだけを食べていれば良いわけではなく、あくまでもバランスの良い食生活を心がける事が大切だと言えます。
これ以外にも、塩分量や刺激物を避け、低たんぱく・高炭水化物の料理を心がけるのが理想的だと言えます。とは言え、逆に制限しすぎて、必要な量だけ摂取出来ていないのも逆効果ですので、医師の適切なアドバイスの元、実践していく必要がありそうです。
生活習慣に気を付ける
まずは腎臓病に限らず、不規則な生活を送るのは良くありません。睡眠は十分にとり、過労による疲労の蓄積を防ぎ、ストレスが溜まらないようご自身でリフレッシュする時間を取る事が大切となります。リフレッシュする方法として、運動はとても良い解決方法で、心肺機能が高まり適度な筋肉がつくため、脂肪の消費が増えます。免疫力も高まるため、病気にかかりにくくなる傾向にあります。
しかし、ストレスが溜まるために過度な飲酒や喫煙に走るのは逆効果です。お酒は適度な量にし、様々な病気の危険因子である喫煙は辞めましょう。一番大切なのは、ご自身の気分の晴れるような趣味を定期的に行なうように心がける事です。
定期的に検査を受けるようにする
腎臓病は自覚症状として出るのが、比較的進行してからである事が多いため、定期的に人間ドックや健康診断などで検査をしておく事が大切です。
検査は尿検査による、たんぱく・潜血の有無、血液検査によるクレアチニン量・尿素窒素の量の異常値を調べるものになります。他にも体の異常が認められる場合には、受診の際に伝えるようにすると良いでしょう。
まとめ
腎臓は老廃物を出すという意味では、正常通り働かなくなったらとても不便な臓器です。回復が見込まれない場合もあるため、腎臓病であるないに関わらず、普段から食生活・生活習慣に留意する事が大切です。
血尿が認められたり、痛みがある場合は、早めに受診するように心がけるようにしましょう。少しでも早く発見し、医師の指導の元で適切な治療を受けるのが一番です。