「尿酸値」と聞くと憂鬱になられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回の記事では尿酸値の原因と尿酸値が高くなってしまったときにどうすればいいのか、その6つの対策について書きました。
①尿酸値と痛風の説明②尿酸値が高くなる原因③尿酸値を抑える方法、という構成になっています。
尿酸値と痛風の説明
健康診断の結果で血清尿酸値が7.0mg/dLを超えるとお医者様から注意を受けますよね。まずは尿酸について見ていきましょう。
血清尿酸値が高いと痛風になりやすい
尿酸は全ての人間の血中に一定量存在しています。通常は血液に溶けて循環し、尿の中にこし取られて体の外に排出されます。一部は、消化管から排泄されることもあります。体内にためられている尿酸の総量は「尿酸プール」と呼ばれることがあります。
私たちの体の中では、常にプリン体が分解され、尿酸が生成されています。作られた尿酸はおしっこと一緒に体外に排出されることによって毎日尿酸プールのうち半分以上が入れ替わっています。そのため、基本的には体内に一定量以上はたまらないようなシステムになっています。
尿酸は血しょう1dLあたり7.0mgしか溶けないため、尿酸値がこの値より高くなると尿酸が血液中で結晶を作るようになります。それを尿酸塩と言います。尿酸塩が関節などに溜まると、それに対して白血球が攻撃します。これによって痛風のあの激痛が発生しているのです。
鳥は痛風にならない?
人間などの哺乳類は動物の体にとって有害なアンモニアを腎臓で尿素に変え、おしっこと一緒に体の外へ排出しています。アンモニアは代謝が続く限り生産されるため、人間はアンモニアから尿素を作り続けています。
鳥の場合はアンモニアを水に溶けにくい尿酸に変えることで、おしっこを出さずに、すべてフンとして排出しています。そのため、鳥は血中に尿酸が溜まり過ぎて痛風になったりしません。溜まってもフンとして排出できるからです。
鳥のフンの白い部分が尿酸塩の結晶なのですが、それが私たち人間の血液の中に溜まっているのを想像すると、確かにそれは体に悪そうではありませんか?
尿酸値が高くなる原因
尿酸値が高くなる原因は大きく分けて遺伝的なものと環境的なものの2種類があります。
遺伝要因
遺伝的に尿酸値が高くなる傾向のある人は一定数存在しています。しかし、遺伝子の発現によって尿酸値がどれくらい影響を受けるかについては個人によってかなり異なります。
腎臓の尿細管に発現し、物質輸送に関係する遺伝子の変異によって尿酸値が高く出るケースが多いようです。
痛風は男性に多い病気で、家族に痛風の患者がいると発症しやすいと言われています。痛風患者の親族にも痛風の患者がいらっしゃる事が多いようです。
その背景として、遺伝的要因が関係しているのではないかと考えられています。ただ、痛風患者の家族の方にも痛風患者が多い要因については、やはり家族で同じ食生活をしているということも考慮に入れなければならないでしょう。
環境要因
環境的な要因としては(1)食習慣(2)飲酒(3)ストレスや激しい運動(4)病気の影響(5)薬の影響の5つが考えられます。
(1)食習慣
肉類中心の食生活は尿酸値の上昇を招くとされています。特にレバーや魚肉は尿酸のもとになるプリン体を多く含んでおり、注意が必要な食品です。魚肉は白身魚よりも青魚や赤身の魚によりプリン体が多く含まれているようです。特に、魚の内臓には多くのプリン体が含まれているので、頭や内臓ごと食べるような食品、例えばちりめんじゃこや煮干しなどは注意が必要です。
プリン体は水に溶けるため、鶏がらスープなどの肉や魚からダシを取ったラーメンやうどんなどのスープにも気をつけなければいけません。鍋物などをするときは、煮込んだ具材に含まれているプリン体が溶け出している煮汁にも注意しましょう。鍋物を食べた後に残る煮汁で作った雑炊には多くのプリン体が溶け出しているため、そのような雑炊は尿酸値が高くなる代表的な食事のひとつと言えるでしょう。
そのため、尿酸値に気を付けるのなら、麺類には特に気を付けましょう。できるだけスープを飲まないようにする必要があります。麺類以外にも、中華料理や韓国料理の汁物も尿酸値を高くする食事です。
それら以外では、実は干しシイタケなどのキノコ類にも多くのプリン体が含まれています。尿酸値が高い人はプリン体を多く含む料理や食品をできるだけ避けて食事をすることが大切です。
最近では子供の生活習慣病がよく取り上げられますが、小児の尿酸値が高いという傾向も出てきているようです。食の西洋化とともに食習慣の変化としてクローズアップされる機会も増えています。高尿酸血症を起こしやすい食生活や生活習慣が子供にも影響を与えている可能性もあるのです。
(2)飲酒
アルコール飲料を飲むと尿酸値が上昇します。アルコールが体内で分解されるときに尿酸が作られるからです。
また、アルコールが持つ利尿作用によって排尿が促進され、そのために血液中の尿酸値が高められたり、肝臓でアルコールを分解する際に乳酸が作られて尿酸が体外に排出されにくくなったりするのだと考えられています。プリン体を分解するときに尿酸が作られるため、特にプリン体を多く含むビールを飲むと尿酸値は大きく上昇します。一方、長期的なワインの飲酒は逆に尿酸値を下げる場合もあるようです。アルコールの摂取量は一日に20~30mL程度が適量なのではないかと言わています。
アルコールや食事制限の方法としてノンアルコールビールを飲むことはおすすめしません。ノンアルコールビールを作る際にもプリン体が多く含ま麦芽を使用しているためです。そのため、ノンアルコールであるからといってプリン体が少ないということにはならないからです。もし飲むのなら、プリン体をカットしたノンアルコールビールを選びましょう。
(3)ストレスや激しい運動
ストレスが健康にとってよくないことは明白です。実際に、ストレスは尿酸値を上昇させるようです。運動もやり方によっては尿酸値を一時的に上昇させてしまうようです。例えば激しい運動、特に無酸素運動も尿酸値を上昇させてしまう危険があります。激しい運動をすると、筋肉をよく使い、全身の新陳代謝を高めますので、その際に尿酸も多く産生されます。ストレス長い時間ゆっくりと体を動かすような有酸素運動によってじょうずに発散させるようにしたほうがよいでしょう。
(4)病気の影響
腎機能の低下や血液に関する病気の影響で尿酸値が上昇する場合もあります。特に腎臓は血液中の老廃物や毒素を排出し、血を洗浄する役割があります。尿酸もそのときにこし取られるため、腎機能の低下は尿酸値にも大きな影響を与えると言えるでしょう。
(5)薬の影響
アスピリンやぜんそくの薬の一部などは副作用として尿酸値を上昇させるものがあります。
尿酸値を低く抑える方法
上記のような要因によって尿酸値が上昇するようです。では、上昇した尿酸値を下げる、または尿酸値が高くならないよう予防するためにはどうすればよいのでしょうか。6つの対策を挙げてみました。
プリン体の少ない食品を食べるようにする
野菜や穀類、魚肉ソーセージ、かまぼこ、鶏卵などはプリン体含有量が少なく、血中尿酸濃度を抑えるのに役立ちます。特にひじきやワカメ・昆布などの海藻類は、尿をアルカリ化し、尿に尿酸を溶けやすくすることで排出を促し結晶化を防止する作用があると言われています。
アルコールを控える
アルコールの摂取量を制限する、ビールのようなプリン体を多く含む酒類を避けるなどの飲酒習慣によって尿酸値を低く保つことができます。休肝日をもうけることも効果があると言われています。
尿酸の排出量を増やす
水に溶けにくい尿酸ですが、それでもおしっこと一緒にある程度排出されます。特にややアルカリ性の尿には溶けやすいと言われており、尿をアルカリ化することで一度により多くの尿酸を体外に排出できるようです。
水分はできるだけ普通の水やお茶で多めに摂って、尿量を増加させることで尿酸の排泄量をさらに増加させることができるでしょう。
サプリメントを摂取する
アンセリンという機能性物質に対して、ある程度尿酸値の上昇を抑える効果が認められています。
そのような機能性物質を含むサプリメントを摂取することで尿酸の生産を抑制し、尿酸の体外への排出を促進できると考えられます。
適度な運動をする
尿酸値を低く抑えるためには、無酸素運動のような激しい運動は避けた方がよいでしょう。激しいスポーツをされる方は運動量も多いのですが、肉類も多く食べる人が多く、高尿酸血症の人が多いと言われています。
1日30分以上のウォーキングなど有酸素運動を中心に尿酸値を上昇させない程度の軽い運動を行うとよいでしょう。運動によるストレス解消も期待できます。
薬を飲む
尿酸の排泄量が低下している場合には尿酸排泄促進薬が有効です。慢性的に尿酸値が高い場合、尿アルカリ化薬とともに処方されるケースが多いようです。尿路結石を起こしている場合や、腎臓の機能が低下している場合などには尿酸生成抑制薬を優先的に処方される場合もあるようです。