目覚まし時計のアラーム音で一度は起きて目を開いたものの、朝のまどろみの中でついつい二度寝をしてしまった経験のある人は、少なくないのではないでしょうか?眠気に促されるままに二度寝をしていると、何とも言えない幸福感に包まれた感覚に陥ります。
しかしながら、ついつい二度寝をしてしまったことが原因で学校や会社に遅刻してしまうと、周囲の人に迷惑をかけてしまうこともあるでしょう。社会人に至っては、自分に対する周囲の信用を自分自身で壊してしまうことになりかねませんし、そのような状況になれば自己嫌悪に陥り精神的にも良くありません。
そこで今回は、二度寝をして後悔しないために、二度寝の原因を明らかにしつつ、二度寝の防止方法・防止対策について、ご紹介したいと思います。
睡眠に関する基礎知識
二度寝の原因や防止対策を理解するには、睡眠に関する基礎的な知識を知っておく必要があります。
そこで、その理解の前提となる睡眠についての基礎的な知識について、おさらいしておきたいと思います。
睡眠の目的
人間が睡眠をとる最大の目的は、脳や筋肉など身体を休息させることにあります。
人間が起きて覚醒している間は、脳は休みなく働いていますし、運動していなくても姿勢の維持のために意外と筋肉が働いていたりするのです。もちろん、運動していれば、筋肉はより疲労しています。このような脳や筋肉といった身体の疲労を解消するために、人間は睡眠をとるのです。
そして、睡眠中には、脳内の脳下垂体から成長ホルモンが分泌されることにより、体内の各組織細胞の再生修復・新陳代謝を促し、身体の疲労の解消・回復が図られているのです。
睡眠サイクル
人間の睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠を交互に繰り返すという睡眠サイクルが存在します。
レム睡眠とは、身体の筋肉が弛緩・休息をする一方で、脳は活動状態にあるので、いわば浅い眠りの状態と言えます。これに対して、ノンレム睡眠とは、筋肉は完全な弛緩・休息ではなく活動モードにあり、一方で脳は休息状態に入り活動が低下するので、いわば深い睡眠状態と言えます。
そして、就寝後の約1時間程度でノンレム睡眠の深い眠りに入ると、その後は個人差はありますが約90分ごとにレム睡眠とノンレム睡眠を交互に繰り返して、脳と筋肉を交代で休ませるのです。
体内時計
人間の身体には体内時計が備わっていて、日中は脳や身体が覚醒・活動状態になり、夜になると脳や身体が休息状態になるように、1日周期のリズムが設定されています。このような日中は覚醒し、夜は睡眠という体内時計による1日周期のリズムは、睡眠覚醒リズムと呼ばれます。
この体内時計における覚醒と睡眠の切り替えに重要な役割を果たすのが、睡眠ホルモンとも呼ばれるメラトニンという生理活性物質(ホルモン)です。
体内時計は、朝の太陽光を浴びるとリセットされると同時にスタートして、身体は覚醒して活動状態となります。また、体内時計のリセットにより、メラトニンの分泌が停止されます。そして、タイマーが発動するように起床から概ね14~16時間の経過で、メラトニンは分泌を再開します。メラトニンには、自律神経に働きかけて身体の深部体温を低下させる作用があり、その結果として人間は眠気を感じて入眠するのです。
ちなみに、メラトニンは、トリプトファンというアミノ酸を原料に体内で合成されるセロトニンという神経伝達物質を、体内で再合成することで生成されます。
二度寝の原因
それでは、なぜ人は二度寝をしてしまうのでしょうか?二度寝をしてしまう原因について、何となく寝不足や前日の夜更かしだろうと思い当たる節がある人もいるかもしれませんが、突き詰めて二度寝の原因を調べた人は多くないでしょう。
そこで、効果的な二度寝の防止対策をするためにも、二度寝の原因について明らかにしておきたいと思います。
寝不足・睡眠不足が最大の原因
想像通りだと思いますが、二度寝の最大の原因となっているのは、寝不足・睡眠不足です。
前述したように、人間の睡眠の目的は、脳や筋肉など身体を休息させることにあります。そして、睡眠中には成長ホルモンが分泌されることにより、身体の疲労を解消・回復が図られているのです。
しかしながら、夜更かしをして夜遅い時間までゲームに熱中したり、スマホをいじっていたりすると、必然的に睡眠時間が短くなってしまいます。睡眠時間が短いと、身体の疲労を回復させるのに十分な成長ホルモンが分泌されません。
そのため、身体の疲労が十分に解消・回復しないまま起床時間を迎えると、気持ちよく起床することが出来なくなるのです。気持ちよく起床ができないということは、睡眠の質や量が足りていない状態ということですから、眠気に勝てず二度寝をしてしまう可能性が高くなるのですね。
体内時計の乱れと不眠
夜更かしや仕事上の交代勤務など生活習慣が乱れると、メラトニンの分泌が不安定になることで体内時計が狂い、睡眠覚醒リズムも乱れてしまいます。
また、夜の就寝前にスマホやパソコンなど使っていると、スマホの画面やパソコンモニターから発せられる強い光によって、体内時計が狂ってしまい、睡眠覚醒リズムが乱れます。
このように体内時計が乱れると、布団やベッドに入って就寝したとしても、スムーズに入眠することができなくなる可能性があります。そして、入眠時間が遅くなればなるほど、実質的な睡眠時間が短くなりますので、結果として寝不足・睡眠不足を招いたり、不眠症状を招いてしまうのです。
ですから、体内時計の乱れが睡眠不足や不眠症状を引き起こし、二度寝をしてしまう可能性を高くしているのです。
季節の変わり目における自律神経の乱れ
季節の変わり目は、気候が変化するために気温や気圧が不安定となり、人間の自律神経は乱れやすくなります。自律神経は体温調整の役割も担っており、体外の環境が目まぐるしく変化する季節の変わり目は、体外環境の変化に適応しようと自律神経には負荷がかかります。
そのために、入眠時にメラトニンによる働きかけがあっても、上手く身体の深部体温が下がらずに、寝つきが悪くなったりすることがあるのです。
ですから、季節の変わり目における自律神経の乱れが原因となって、睡眠不足となり二度寝をしてしまう可能性があると言えるでしょう。
睡眠サイクルのタイミング
前述したように、人間の睡眠では、レム睡眠とノンレム睡眠を交互に繰り返すサイクルが存在しています。個人差はあるものの、概ね約90分ごとに浅い眠りであるレム睡眠と深い眠りであるノンレム睡眠が繰り返されています。
そのため、脳が活動している浅いレム睡眠の段階で目覚ましアラームが鳴れば、スムーズにスッキリと目覚めることができます。
これに対して、脳が休息している深いノンレム睡眠の段階でアラーム時計が鳴ったとしても、脳が活動を開始するまで時間がかかり、いわゆる寝ぼけた状態となるので、スムーズに起きることができないのです。
ですから、何らかの理由で就寝時間や入眠時間がズレれば、起床時間に訪れている睡眠状態も異なります。つまり、起床時間にレム睡眠が訪れていれば問題なく起きることができても、起床時間にノンレム睡眠の状態にあれば、ベッドや布団で寝ぼけているうちに二度寝をしてしまうこともあるのです。
病気の可能性も
二度寝があまりにも頻繁に起こる場合は、もしかしたら睡眠障害の可能性もあります。そして、睡眠障害と一口に言っても、不眠症・過眠症・起立性調節障害など様々なものがあります。
不眠症
不眠症は、様々な要因によって入眠できなくなったり、睡眠を継続できず途中覚醒してしまう症状が現われる睡眠障害です。
前述したような体内時計の乱れなどが原因の一つと考えられています。睡眠の質が低下するので、睡眠不足による二度寝を招く可能性があります。
過眠症
過眠症は、十分な量の睡眠をとっているにもかかわらず、様々な要因によって昼間も眠気に襲われて眠ってしまう症状が現われる睡眠障害です。体内時計の乱れや脳の機能異常などが原因となって過眠症となります。ただし、客観的に寝不足と過眠症を判別することは難しく、専門家である医師の診断が必要になります。
過眠症は、基本的に日中・昼間の眠気が主症状ですが、二度寝のような症状が現われることもあるとされています。
起立性調節障害
起立性調節障害は、思春期の子供に多く見られる病気で、原因不明の頭痛・腹痛・全身倦怠感・立ちくらみなどを主症状とする病気です。
そして、起立性調節障害では、朝起きようと思っても身体が動かず、起きることができないという症状が良く見られます。親が起こしても、子供に起こされた記憶がない場合もあり、客観的には二度寝のように見えます。
二度寝の防止方法
それでは、どのようにすれば、二度寝を防ぐことができるのでしょうか?誰もが、可能であれば質の良い睡眠をとって、朝は二度寝の誘惑に駆られることなく、気持ちよく目覚めたいと思っていると思います。
そこで、二度寝を防ぐ方法や二度寝の防止対策について、いくつかご紹介したいと思います。
睡眠の質的改善と睡眠不足の回避
前述のように、二度寝の最大の原因は、身体を休息させるための睡眠が不足していることにあります。ですから、二度寝の撃退法としては、スムーズに入眠して睡眠不足を避けることと質の高い眠りを実現することだと言えます。
食事は就寝3~4時間前までに済ませておく
食事をすると、食べた物を消化するために胃腸が活発に働き始めますので、身体が休息に入るのを邪魔して睡眠の質を低下させてしまいます。
食事をして満腹になると眠くなるのは食後の血糖値が上昇することが原因であって、睡眠の質を高める観点からは就寝前に食事をすることは、おすすめできません。ですから、食事は就寝3~4時間前までに済ませておくと良いでしょう。
入浴は就寝1~2時間前までに済ませておく
人間が睡眠に入る際は、メラトニンの作用で身体の深部体温が徐々に低下します。そして、深部体温が低下することで、脳・内臓・筋肉などの休息を図っているのです。
深部体温を下げるには、メラトニンの分泌の他に、入浴して身体が温まった後に自然と湯冷めさせていくことも効果的とされ、眠気を誘うには有効な方法と考えられています。
また、入浴には血行改善効果や心身のリラックス効果もあることから、睡眠の質的改善の準備として非常に優れていると言えます。
就寝前は飲酒・喫煙・コーヒーを控える
お酒・たばこ・コーヒーには、それぞれアルコール・ニコチン・カフェインといった覚醒作用がある物質が含まれます。就寝前にこれらを摂取すると、当然ながら睡眠の質は低下してしまいます。
ですから、これらを就寝前に摂取することは、控えましょう。
体内時計を整える
体内時計の乱れは、ともすると不眠の症状を招いて睡眠不足を引き起こしかねません。ですから、二度寝の防止対策とし、体内時計を整えることも必要となってくるでしょう。
生活習慣の見直し
体内時計の乱れには、夜更かしの他にも運動不足・暴飲暴食・ストレスといった生活習慣の乱れが関係しています。そのため、二度寝防止のために体内時計を整えるには、生活習慣の見直しを避けて通ることはできません。
仕事上の交代勤務などはやむを得ませんが、可能な限り規則正しい生活を送ることが、体内時計の安定につながります。
起床後に光を浴びるようにする
前述のように朝の太陽光を浴びると体内時計はリセットされるとともに、身体は覚醒して活動状態に入ります。つまり、起床後に浴びる光には、覚醒作用があるのです。
ですから、起床後にはカーテンを開けて太陽光を浴びることが、体内時計の乱れを修正することにつながります。また、最近は光目覚まし時計など光を使った目覚ましグッズも販売されていますので、こちらを利用してみるのも良いでしょう。
就寝前に強い光を浴びないようにする
就寝前にスマホの画面などから発せられる強い光を浴びると、体内時計が狂ってしまう原因になります。ですから、就寝前には、スマホの使用などを控えて強い光をなるべく浴びないようにすることが、体内時計を整えることにつながるでしょう。
部屋の環境を整える
二度寝を防止する観点からは、睡眠環境や寝起きの環境を目覚めやすい環境にすることも大切になってきます。つまり、自分が睡眠をする部屋の環境を整えることが重要となってくるのです。
目覚まし時計は手の届かない場所に置く
目覚まし時計のアラーム機能で一旦は目覚めるものの、アラームを手で止めて、また寝てしまうことは二度寝で良く見られる光景ですよね。
ですから、目覚まし時計は布団やベッドから手の届く範囲ではなく、少し離れた場所に設置して、身体を動かさなければアラームを止められないようにしましょう。身体を強制的に動かすと目覚めやすくなりますので、目覚まし時計を離れた場所に置くことは二度寝防止のコツと言えるかもしれませんね。
また、目覚まし時計のスヌーズ機能を上手く活用したり、複数の目覚まし時計を用いたり、知人や家族に電話でモーニングコールをお願いしたり、スマホの目覚まし時計アプリなどを効果的に利用しても良いかもしれません。目覚ましアプリでは、無料アプリでも人気となっているものもあるようですから、自分に合ったものを探してみましょう。ただし、スマホのアプリを使う場合も、手が届かない場所に置いておくことは忘れないようにしましょう。
部屋は快適な温度にする
二度寝を防ぐには、部屋を睡眠や寝起きに適した温度にすることも必要です。
冬場は部屋の温度が低くなりがちで、温かい布団の中から起きようという気持ちが萎えてしまうこともあるでしょう。そのため、起床時間に合わせて暖房器具のタイマーをセットしておくと、部屋も温まり気持ち良く起きることができます。
また、夏場は部屋の温度や湿度が高くなりがちで、寝苦しく睡眠不足になりやすいので、エアコンで睡眠に快適な室温・湿度に調整することが大切です。
寝起きの行動を見直す
二度寝を防止する観点からは、部屋の環境を整えることとともに、自らの寝起き後の行動を見直すことも重要となります。漫然と従来と同じ姿勢でいると、つい油断して二度寝をしてしまうことになりかねないからです。
二度寝をしないという強い意志
まずは、二度寝をしないようにするという強い決意や意志を持つことが必要です。行動は意志や意識によって、変えることができます。逆に言えば、意志や意識が伴わなければ、行動も長続きしないのです。
ちなみに、早起きをした自分に対して、ご褒美や楽しみを用意しておくのも良いかもしれませんよ。子供は遠足当日に自然と早起きしてしまいますが、このように大人の中にも自分が早起きしてしまう仕掛けが二度寝防止策として効果的な人もいるでしょう。
アロマテラピーを利用する
アロマテラピーは、自然由来の香り成分が含まれるエッセンシャルオイルを用いて、健康や美容を実現しようとする自然療法のことです。
このエッセンシャルオイルの中には嗅覚から脳を刺激することで覚醒作用のあるものがありますので、起床後にオイルを焚いてみたり、起き抜けにオイルの香りを嗅いでみるのも良いかもしれません。
ちなみに、覚醒作用があるのはレモンやグレープフルーツなどの柑橘系や、ペパーミントやローズマリーなどのハーブ系です。
起床後に水・白湯を飲む
起床後に一杯の水か白湯を飲むと、胃腸が刺激されて目覚めやすくなります。ベッド脇に水を用意しておき、起床後に少し水を飲むのも良いかもしれません。
ただし、寝起きの口内は乾燥して細菌が多くなっている場合もありますので、洗面所でうがいをしたあとに、水か白湯を飲むことをおすすめします。
睡眠サイクルを意識する
前述のように、睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠のサイクルが存在します。この睡眠サイクルは、個人差はありますが約90分ごとにレム睡眠とノンレム睡眠を交互に繰り返しています。そして、レム睡眠のときに起床時間を迎えるようにすることが、スムーズに目覚めるポイントになります。
ですから、起床時間から逆算して睡眠時間が90分の倍数となるような時間に就寝すると良いでしょう。ただし、布団やベッドに入って就寝しても、そこから入眠するにはタイムラグが生じる人もいます。そのため、就寝後すぐに眠りに落ちるのか、就寝後も入眠するまでに時間がかかるのか、自分の眠りの傾向を把握しておく必要があるでしょう。
病気の疑いがある場合は病院へ
前述しましたが、二度寝があまりにも頻繁に起こる場合は、もしかしたら睡眠障害の可能性もあります。
睡眠障害の原因は、非常に様々で心因的なものもあれば、身体の機能異常が原因の場合もあります。まずは、かかりつけの医師に相談し、その上で精神科・心療内科・小児科・睡眠専門外来などの病院を紹介してもらうと良いでしょう。
まとめ
いかがでしたか?二度寝の原因を明らかにしつつ、二度寝の防止方法・防止対策についてまとめてみましたが、ご理解いただけたでしょうか?
たしかに、眠気に誘われるままに二度寝をしていると、何とも言えない幸福感に包まれた感覚に陥ります。しかしながら、二度寝をしてしまうと、遅刻や周囲の人に迷惑をかけるばかりでなく、自らが築いてきた自分に対する信用も失墜してしまう危険があります。
二度寝の防止方法について、いくつかご紹介してきましたが、もちろん全てを実施する必要はなく、自分の感覚に合うものを実施すれば良いのです。本記事を参考にして、自分に合う二度寝の防止方法を見つけていただければ幸いです。
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