朝起きて学校や会社に行き、夜になったら眠りに就き、翌朝また目覚める、これが、一般的な1日のサイクルですよね。もちろん、中には遅番や早番、夜勤など、必ずしも朝起きて夜眠る生活をしていない人もいます。しかし、仕事の形態なのでやむを得ない場合を除いて、昼夜逆転生活は、わたしたちの体にとって大きな負担になります。
では、昼夜逆転生活が体に及ぼす影響や昼夜逆転してしまう原因、そして、改善策をご紹介しましょう。
昼夜逆転の原因
昼夜逆転生活というのは、昼間に眠くなり、夜に目が冴えてしまう状態を言います。
これだけ聞くと、単純に怠けているだけ、だらしないだけ、という印象を持つ人も多いかも知れませんが、昼夜逆転してしまうと、日常生活を送ることにも支障が出るため、本人にとっては非常に辛い状況なのです。
では、昼夜逆転しまう原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
生活習慣の乱れ
まずは、なんと言っても生活習慣の乱れが大きく関係してきます。毎晩夜更かしをしていると、当然、昼間に眠気がやってきます。
夜、遊びすぎてしまう
たとえば、一晩中DVDを見ていたり、ネットサーフィンをしていたり、ということです。ゲームもそうですね。好きな人は1人でも長時間プレイしてしまうでしょうでしょうし、まして友達などとオンラインでつながっていれば、より一層熱中してします。
特に子供の場合は、夏休みや春休みのようなまとまとまった休みがあると、ついつい夜更かしして睡眠不足になり、生活リズムが乱れやすいです。また、大学の夏休みは非常に長いですから、学生なども注意が必要ですね。ネット依存している人は特に、長時間ネットで遊んでいる内に朝になってしまった、ということも少なくないでしょう。
やりたいことが多いと、それをすべてやるだけで時間が経過してしまいます。1日2日、こうした寝不足の日が続くと、徐々にそれが習慣化し、気付いた時には昼夜が逆転していた・・・ということになりかねません。
昼間、やることがない
勉強や仕事、友だちと会う約束や一人で出かける用事など、日中に用事がたくさんあれば、疲れが出て、夜は自然と眠くなります。
しかし、学校に通っていなかったり仕事をしていなかったりして、日中にやることが何もないと、昼間活動して夜は眠る、という生活のリズムが狂ってしまいます。
無理に昼間起きている必要もありませんから、何となくうとうとして過ごし、夜になると目がさえてしまう、ということになりやすいのです。
もちろん、学校や仕事に通っていなくても他にやりたいことがあれば、活動的に昼間動き、夜は眠るという健康的な生活リズムを保てるでしょう。ですから、家に引きこもって何もしない、ただ漠然と時間を過ごしていることが、昼夜逆転生活の一因だと言えるのです。
睡眠障害によるもの
こうした生活習慣によるもの以外に、体が不健康な状態にあるために、通常の睡眠リズムを崩してしまう場合もあります。睡眠障害は、加齢やストレス、うつ症状などによって、夜になってもなかなか寝付けない状態を言います。
睡眠障害と一口に言っても種類はいくつかあり、原因も違います。
概日リズム睡眠障害
概日リズム睡眠障害も、昼夜逆転生活の要因になります。簡単に言うと、睡眠覚醒リズムが狂ってしまう状態です。通常ならば、夜眠って朝には目が覚めるという睡眠リズムがありますが、概日リズム睡眠障害になると、眠りに就ける時間に眠くならず、起床時間がずれてしまうのです。
細かく分けると、夕方から眠気が来て眠り込み、早朝に目が覚める「睡眠相前進症候群」、寝付く時間と起きる時間が毎日1~2時間ずつ遅くなっていく「非24時間睡眠覚醒症候群」、睡眠と覚醒が昼夜を問わずランダムに現れる「不規則型睡眠覚醒パターン」に分けられます。
このパターンでは夜の間に眠る時間が少なくなり、昼間に眠くなることが多くなるのが特徴です。
また、その他の睡眠障害として、眠っている間の夢に伴い、実際に行動を起こしてしまうレム睡眠行動障害というものもあります。例えば大声を出したり、手足をバタバタと激しく動かしたりするという症状が見られます。
睡眠障害になると、毎日きちんと起きることができなくなりますし、仕事中に眠ってしまうことも増えます。そのため、社会生活を送ることが非常に困難になり、本人も強い精神的ストレスにさらされることになります。
認知症によるもの
認知症による睡眠障害もあります。認知症患者は、「見当識障害」によって、自分がいる場所や時間が分からなくなってしまいます。眠れないことで、夜間に目が覚めてしまうと、徘徊のリスクもありますし、さらに睡眠障害が悪化するとせん妄を引き起こすこともあります。
中でも、アルツハイマー型認知症は、体内時計を司っている脳のある部分に変化が生じ、睡眠や覚醒と言った本来のリズムが狂ってしまうのです。そのため、昼夜逆転生活になりやすいのですね。
また、レビー小体型認知症の場合には、悪夢を見て叫んだり、寝ぼけて起きたり、暴れたりする「レム睡眠行動障害」が現れるのが特徴です。夢で見た内容を実際に行動として起こしてしまうという、厄介なものです。
昼夜逆転生活のデメリット
では、昼夜逆転すると、一体どのようなデメリットがあるのでしょうか。
生活リズムの乱れ
昼夜逆転生活で最も分かりやすいデメリットは、生活リズムの乱れではないでしょうか。朝7時には起きていた人が、昼の12頃に起きてきて、昼食を朝ご飯代わりに食べ、ごろごろと過ごしておやつを食べ、夕飯の時間にはお腹が空かず、夜中に夜食を食べる、というような生活になったとします。
もちろん、学校や仕事があったら遅刻してしまいますし、変な時間にお腹が空いて困るでしょう。
しかし、影響はそれだけではありません。特に、夜遅くに食事を摂る習慣がついてしまうと、消化器官が十分に休めない状態になります。
本来ならば夜の21時までには食事を摂り、それ以降は消化器官が消化のために活発に動きます。そして、眠っている間に休ませるのです。遅い時間に食事を摂れば、その分、消化器官は遅くまで働かなければならず、十分な休養を取れないということになってしまいます。
つまり、体への影響は免れないということです。少し生活リズムが変わるくらい、と甘く見ず、規則正しい生活リズムを取り戻すことが重要です。
自立神経の乱れ
寝不足は消化器官だけでなく、自立神経という神経をも痛めつけます。
自立神経はホルモンバランスや脳からの指令など、体のあらゆる面で重要な働きをしている神経です。
自立神経が乱れると、動悸や息切れがしたり、汗を大量に掻いたりと、体に異変が現れます。
心身的な症状だけでなく、精神的な症状もあり、イライラしたり、食欲がなかったりと、気持ちが不安定になることもあります。自立神経は、わたしたちの体を司る、非常に大切な存在なのです。
ホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスの乱れも体にとっては大きな影響があります。バランスが保たれていることで、わたしたちは健康に過ごすことができますが、ホルモンバランスが崩れると代謝などにも変化が現れます。
ホルモンバランスが乱れると、生理不順や生理痛が重くなるなどの他、不正出血や自律神経失調症などを引きおこすこともあります。
昼夜逆転生活でホルモンのバランスを崩してしまうと、ゆくゆくは日常生活にも支障が出てしまうかも知れません。
睡眠の質が落ちる
また、昼夜逆転生活では、睡眠の質が低下するため、体がしっかりと休まっていません。人間の体は古来より、日が昇っている時間に覚醒して活発に動き、日が沈んだ夜には静まるようにできています。
本来眠るべき夜に活動し、活動すべき昼間に睡眠を取ることは、体にとって非常に不自然なことなのですね。体を休めるべき夜に眠らないと、疲れはしっかり取れず、質の悪い睡眠を取ることになってしまうのです。これは結果として、疲れが取れにくく、常にだるさや頭の重さなど、体の不調を感じている、ということでもあります。それほど、睡眠は体にとって重要なのです。
赤ちゃんの昼夜逆転
昼夜逆転生活と聞くと、つい学生や大人を思い浮かべてしまいがちですが、実は大人だけとは限りません。生まれたばかりの赤ちゃんは、昼夜逆転になりやすいのです。
体内時計が未発達
では、なぜ赤ちゃんが昼夜逆転生活になりやすいかと言うと、まずは体内時計がまだ未発達であることが理由に挙げられます。生まれたばかりなので、まだ生活リズムというものがはっきりしておらず、1日の大半を眠って過ごします。
とは言っても、眠りが浅いため、お腹が空いたりおしっこやうんちなどをしたりして、すぐに泣いて母親を呼びます。だから、親はまったく休めませんよね。
そうやって、些細なことで泣き出したり目を覚ましたりする赤ちゃんですから、生まれてすぐに生活リズムを整える事は出来ません。しかし、徐々に成長し、生後2~3か月ほど経つと、だんだんと生活リズムを作りやすくなります。
メリハリのある生活を
赤ちゃんの生活リズムを整えるためには、親もだらだらと過ごさないことが重要なポイントです。いつが朝なのか夜なのか分からない状態でいると、赤ちゃんは正しい生活リズムを身につけることができません。
いつまでも部屋を明るくしたり、テレビを見て起きていたりせず、朝になったらカーテンを開けて日の光をしっかりと部屋に取り込みましょう。そして、夜になったらカーテンを閉めて、朝と夜の違いを明確にしておくのです。
赤ちゃんの昼夜逆転には、時期によって別の理由があります。きちんと見極めることが重要です。
新生児~生後1~2か月
まずは、生まれて間もない生後1~2か月の新生児期は、まだ体内時計が発達していないことが原因です。昼夜を問わず寝たり起きたりして、決まった時間に寝てくれない時期ですね。
生後3~5か月
この頃になると、赤ちゃんも徐々にしっかりしてきます。この時期になっても昼夜逆転生活が続く場合には、生活リズムがきちんとできていないということです。
たとえば、親が夜更かしをしていたり、昼夜逆転生活をしていたりすれば、赤ちゃんも正しい生活リズムを身につけることができず、いつまでも昼夜逆転生活をしてしまうのです。この時期にきちんとした生活リズムを作ってあげることが重要です。
生後6~10か月
さらに成長し、赤ちゃんがしっかりしてくると、今度は夜泣きが始まります。徐々に生活リズムが整い、決まった時間に寝てくれるようになってきた時期になぜ昼夜逆転するかと言うと、昼間に受けた刺激や興奮したことを思い出して泣き出すそうです。
ですから、この時期に新しい経験をさせることが増えると、夜泣きも多くなり、昼夜逆転生活をしやすいのです。同じ昼夜逆転生活でも、成長過程によってその原因は異なることを理解しましょう。
寝るための環境を作る
赤ちゃんが昼夜逆転しないために大切なのは、寝るための環境をきちんと整えてあげることです。室温は20~25度を目安とし、湿度は50%程度にします。さらに、電気は消して、TVも音量を下げるなどして、赤ちゃんが寝るための環境にします。
また、朝になったらきちんとカーテンを開けて日の光を入れることで、朝と夜をしっかり分けることも大切です。
生活リズムを作る
日中はしっかりと起きてお散歩に行ったり、外気浴などで気分転換をします。逆に夜は、いつまでも絵本を読むのではなく、静かな環境を心がけます。音楽や絵本などがあると、赤ちゃんは気になって寝る状態になれません。
添い寝も効果的
赤ちゃんはベビーベッドに寝かせるという人も多いかと思いますが、添い寝も効果的です。やはり、母親が寄り添ってくれるのは安心感があるのでしょう。
日中は抱っこ紐やスリングを使う
抱っこ紐やスリングを使うと、ほどよい揺れが赤ちゃんに伝わり、安心して眠ってくれる可能性があります。歩き回るほか、家事をするだけでもいいので、ながら育児ができるという意味でもよいですね。
昼夜逆転生活を治すには?
では、このような辛い昼夜逆転生活を治すためには、どうしたらよいのでしょうか?
家庭でできる方法
まずは、家で手軽にできる改善方法をご紹介します。
生活リズムを戻す
まずは、狂ってしまった生活リズムを元に戻すことが大切です。そのためには、しっかりと朝日を浴びましょう。朝日を浴びると、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンと、その材料となるセロトニンの分泌を促してくれます。そのため、外に出なくても、朝起きたらカーテンを開けて、太陽の光をしっかり浴びることが大切なのです。これから活動するぞという耐性が整うわけですね。
さらに、規則正しい生活を休みの日でも行うことがポイントです。せっかく平日は規則正しい生活を送っていても、休日に昼夜逆転生活をしていては意味がありません。平日と同じ時間に起きなくてもよいですが、だらだらと寝ていないで、ある程度の時間になったらきちんと起きましょう。
体内時計をリセットする
また、狂ってしまった体内時計を元に戻すことも大切です。そのためには、寝る時間を正しい時間に戻すことが必要ですが、午前3時に眠っていた人が、いきなり午後11時に寝るように週間を帰ることは難しいです。
ですから、初めは1時間ずつ寝る時間を前倒していく、という方法がよいでしょう。
日中に運動をする
日が昇っている日中に体を動かすと、体に必要な筋肉を鍛えられるだけでなく、適度な疲れによって、眠りに就きやすくなります。1日中、寝そべってマンガを読んだりテレビを見たりしていては、体は怠けて、浸かれも溜まりません。そうすると、いざ眠ろうと思ってもまったく眠れない!ということになってしまいます。
きちんと昼間の内に体を動かし、適度に疲れさせておくことが、気持ちよく眠りに就くポイントです。
寝る前のアルコールやカフェインは慎む
よく眠れないからといって寝酒をしたり、寝る前にコーヒーを飲んでしまったり、喫煙者ならタバコを吸ってしまったりと、寝る前のNG週間を持っている人もいるでしょう。
しかし、アルコールやカフェイン、タバコに含まれるニコチンには睡眠を妨げる作用があります。夜の寝付きを悪くし、昼夜逆転生活を悪化させる原因にもなるのでやめましょう。
特に、アルコールは飲むと眠くなるため、睡眠導入に使う人がいますが、眠り自体は浅くなるので、眠りの質が落ちます。熟睡できないため疲れも取れないことになります。
入浴、食事、運動のタイミングを計る
日中運動で体を動かしておけば、夜は疲れて眠りやすくなります。しかし、夜に運動をする場合には時間に気をつけましょう。運動や入浴なら寝る1時間以上前、食事なら3時間以上前に終わらせます。
運動や入浴で体温が上がると交感神経が活発になり、寝付きが悪くなります。股、消化によって胃腸が活発に働いている中では、体を十分に休めることができません。
病院で受けられる治療
これまでご紹介した、生活習慣を変え、睡眠環境を整える以外にも、病院で受けられる治療があります。
非薬物療法
薬を使わずに行うこの治療法には、光の力を使ったものと、時間によって治療する2通りの方法があります。
高照度光療法方法
高照度光療法方法としては、起床してから1時間の間、2500ルクスを超える強い光を当てるというもので、朝日を浴びて生体リズムを整えるのに似ています。
時間療法
時間療法は、毎日3時間ずつ睡眠時間を遅らせていき、1週間ほどかけて、就寝するのに望ましい時間帯に戻していく療法です。ちょうどいい時間帯になったところで就寝時間と起床時間を固定することで改善を図る方法で、高照度光療法が不向きな、目の病気を持っている人にも行うことができる点がメリットです。
しかし、効果は短く、1か月ほどしか持たないと言われていますし、再発する可能性も高いのがネックと言えます。
薬物療法
次は、薬を使った治療法です。睡眠ホルモンとも言われるメラトニンは、メラトニン受容体と結合することで入眠リズムを作ります。
薬物療法は、ラメルテオンというメラトニン受容体に働きかける薬剤をを使用し、睡眠導入していきます。
まとめ
いかがだったでしょうか?昼夜逆転というのは、単純な夜更かしや、生活の乱れから始まります。特に学生時代は、休みの間中だらだらと夜更かしをして、昼頃まで寝ている、という生活をしていた人もいるでしょう。たしかに、休みの間くらい時間にしばられず、のんびり過ごしたい気持ちは分かります。しかし、行き過ぎた生活の乱れは、体内時計を狂わせ、体全体に関わる不調にもつがりますから、注意が必要です。
また、うつ病や認知症、睡眠障害など、病的な理由で昼夜逆転してしまうこともあります。病的なものが原因の場合、自分1人で解決することは非常に難しいでしょう。あまりにも日中の眠気が強かったり、仕事中に眠りこけてしまったりと、常識では考えられないようなことがあったら、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
しっかりと治療して、健やかな毎日を送りたいものですね。
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