遂行機能障害とは?症状や分類、検査方法や治療方法を知ろう!

ATMが操作できない。1度に複数の物品を買うことができない。TVやエアコンのリモコンが使えない。料理の味つけがおかしい・・・これは、「遂行機能障害」かもしれません。

遂行機能障害は「実行機能障害」ともいいます。高次脳機能障害の1つです。

アルツハイマー症など認知症の中核症状の1つですが、交通事故や落下事故などで脳に損傷を受けて高次脳機能障害が起き、遂行機能障害の症状が出ることがあります。高齢者だけでなく、若い人にも生じる可能性があるのです。

遂行機能障害の症状と対処法について、認知症や高次脳機能障害とともに、お伝えしますね。

遂行機能障害とは?

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「遂行機能障害」「実行機能障害」は、「高次脳機能障害」の1つです。

「遂行機能」とは、「ある目的を持った一連の活動を効果的に成し遂げるために必要な能力」です。単一の認知作業ではなく、複数の過程を含む複雑な機能です。

遂行機能については大脳前頭葉(大脳前頭前野背外側部)が中心的役割を果たしています。遂行機能が障害されると、日常生活・社会生活に多大な影響が生じます。

[遂行機能]

遂行機能とは、「①目標を定める ②その目標を実現するために計画(段取り)を立てる ③目標に向かって、計画に沿った行動を実際に開始し継続する ④目標実現のために、効果的に行動するよう適切に調整する」という、一連の活動をする能力です。

遂行機能とは、日常生活の中で生じる様々な問題や課題に対して適切に対応し、解決して目標を実現する能力です。高次脳機能を統合して活用する能力とも言えるようです。

[遂行機能障害]

遂行機能がいろいろな原因で障害されると、遂行機能障害が生じます。

無計画な行動をしたり、いきあたりばったりに行動したりするようになります。物事の優先順位がつけられず、効率良く仕事をすることができません。人に指示されないと、行動できなくなります。

アルツハイマー型や脳血管障害型の認知症の中核症状の1つです。

遂行機能障害の症状

遂行機能障害の症状は、日常生活のいろいろな面において現れます。

①目標や計画が立てられないので、結果は成り行き任せです。刺激に対する自動的・保続的反応による衝動的な行動を取ります。仕事が決まった通りに仕上がりません。

②目標を設定する前に行動してしまったり、目標が立てられないので行動を開始することができなかったりします。

③実行する能力はあるので、指示されれば活動できます。指示がないと、動けません。適切に指示されないと、途中で活動できなくなります。

④注意を持続させて、自分と環境を客観的に眺める過程が障害されるので、状況に合わせて行動を修正することができません。自分の行動を評価したり、分析したりすることができず、間違いや失敗を次に活かせません。自己を環境に合わせて修正できないので、社会的に不適切な問題行動をとることがあります。

⑤1度に2つの作業ができなくなります。これは、遂行機能障害の特徴です。

⑥段取りができず、手順が悪いので、仕事を効率よくすることができません。

⑦不注意によるミスが多くなります。不注意による自動車事故を起こしやすくなります。

遂行機能の障害の分類

遂行機能障害の障害は、①開始 ②終了 ③自己抑制の3つに分類分けすることができます。

行動開始の障害

無感動・無関心で意欲が全くありません。何に対しても興味が持てず、動機づけができません。持続力・活動力・自発性が欠如しています。計画性・発動性が低下します。

行動計画が立てられないので、発動することができなくなります。自発的に行動することが難しくなります。

患者さんは表情に乏しく、感情を表さなくなります。以前の趣味や関心事、衛生習慣を忘れてしまったように振る舞います。

うつ病と似ているので要注意です。うつ病ならば、薬物療法などで改善できます。

行動終了の障害

不適切な、望ましくない行動(反社会的行動)をとり続けます。止めるように言われて、患者さん本人が納得しているのに、繰り返してしまいます。

何でもないのにナースコールのボタンを繰り返し押したり、他人のブローチやネクタイなどを自分の物と思い込み、繰り返し触り続けたりします。

強迫観念・情緒不安定・不安とうつ状態・妄想的な思考が生じています。

自己抑制の障害

患者さんは、自分が遂行機能障害になっている自覚がありません。行動には、自己中心性・社会的エチケット違反・判断力や洞察力の欠如・衝動性・反社会性が現れます。患者さんは、それを自分でコントロールできません。

約束の時間を守らなかったり、仕事を途中で投げ出したりします。

[遂行機能障害の検査方法]

遂行機能障害の検査は、高次脳機能障害の検査の一環として行われます。検査法にはいろいろありますが、複数の検査を行って診断するようです。

遂行機能や高次脳機能の評価を客観的に行うのは難しいものです。客観的な行動評価ができる心理検査やテスト方法、評価方法が開発されています。

①遂行機能障害症候群(BADS)の行動評価

慶応義塾大学医学部精神神経科の監訳による検査方法です。日常生活における問題点を検出する行動評価法です。

カードや道具を使う6種類の下位検査と遂行機能障害に対する質問紙1つから成り立っています。質問紙は、患者本人用と家族・介護者用があります。検査用カード・検査用シート・検査用紙が検査セットになっています。

②神経心理学的検査

高次脳機能障害を定量的・客観的に判断するためには、神経心理学的検査を行います。

(知能検査)

知識・見当識・記憶・計算などのテストです。

(言語機能に関する検査)

聞く・話す・読む・書くに関する言語情報に関する機能を調べます。

(記憶力の検査)

記憶力の障害の程度を調べる記憶検査です。

③前頭葉機能検査

遂行機能障害に関する検査です。「行動の計画・立案・実行」には前頭葉が大きく関わっているために、その機能を調べます。神経心理学的検査の1つとして行うこともあります。

前頭葉機能の検査法には「かなひろいテスト」と「WCST(Wisconsin card sorting test)」があります。

(かなひろいテスト)

かなひろいテストでは、1度に2つの事を処理できる能力の有無を調べます。

全文ひらがなの文章を読みながら、「あ・い・う・え・お」をチェックします。文章の読解とひらがなのチェックの2つができるかどうかの検査です。

(WCST=ウィスコンシン カード分類検査)

WCSTは、世界的に実施されている前頭葉の機能の検査方法です。ただし、以前から知的障害がある人に行っても無意味です。知能に問題のない人がWCSTで低い点数を取った場合は、前頭葉の機能に障害があると考えられます。

1組のカードを、色・形・数の3つの基準で分類させる「カード分類検査」です。突然、分類基準を変えても認識できるか、認識できるまでに何回間違えるか、などを見ていきます。

④標準注意検査法(CAT)・標準意欲評価法(CAS)

高次脳機能障害が起きると、集中力が低下して、注意の持続・維持が困難になります。注意障害の程度の客観的な検査法が「標準注意検査法」です。「注意機能スクリーニング検査(D-CAT)」という検査方法もあります

高次脳機能障害の患者さんは意欲を失います。「やる気」「気力」という目に見えない精神の能力を客観的に評価する検査が「標準意欲評価法」です。

ただし、認知症が起きていると、検査成績が低下する可能性があります。

認知症と遂行機能障害

sea-of-flowers-217683_960_720花を世話する老女

「認知症」とは、脳に不可逆的な(後戻りできない)変化・損傷が生じたために、脳のいろいろな機能が正常に働かなくなり、日常生活や社会生活が困難になった状態です。

変化・損傷の生じた脳の部位により、障害の起こる機能が異なります。

[認知症の種類]

認知症には、①アルツハイマー型 ②脳血管性 ③レビー小体型 ④前頭側頭型 ⑤その他があります。

アルツハイマー型認知症

「アルツハイマー型認知症」は、認知症の中で最も多いと言われています。

アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβというタンパク質が溜まり、脳神経細胞が破壊されて、脳委縮が起こることが原因です。

記憶障害から始まり、やがて過去と現在の区別がつかなくなります。徘徊や失禁が生じます。脳委縮が進み、言葉の数や意味が失われ、会話ができなくなります。歩行や嚥下にも困難が生じ、最後は寝たきりになります。

脳血管性認知症

認知症の20%が「脳血管性認知症」です。

脳梗塞や脳出血など脳の血管障害により、脳神経細胞が損傷されて発症する認知症です。梗塞巣が増えたり、大きくなったりするにつれて、脳の機能が低下していきます。

脳血管障害は、糖尿病や高血圧症、高脂血症などの生活習慣病によって引き起こされますから、生活習慣病を治療したり、予防したりして、脳血管性認知症を防ぐことができます。また、脳出血や脳梗塞を治療することで、認知症を軽減したり、進行を止めたりできます。

脳血管疾患が軽い場合は、自覚症状も軽いので、脳血管疾患が再発して、突然の発症に驚くことが多いようです。脳血管疾患が発症した部位により障害が起きる機能が異なるので、できることとできないことがあります。いわゆる「まだらボケ」です。

レビー小体型認知症・前頭側頭型認知症・その他

異常なタンパク質が脳や神経細胞に溜まり、脳委縮が起きたり、神経細胞が減少したりして、脳の機能が低下します。そのために認知症を発症します。

[認知症の症状]

認知症の症状には、脳の損傷による中核症状と、本人の性格や環境が作用する周辺症状があります。

遂行機能障害は中核症状の1つ

認知症における遂行機能障害は、女性の場合、料理をする能力に異常が生じて気づくことが多いようです。御飯の炊き方が柔らかすぎたり、固すぎたりします。味付けが濃くなります。調理の段取りや手順が悪くなったり、後片付けができなくなったりします。味噌汁さえ作れなくなります。

以下のような遂行機能障害が発現します。

  • ATMやTV・エアコンのリモコンが操作できない
  • 指示された通り薬が服用できない・医師に自分の症状を伝えられない
  • 洗濯機をかけながら掃除するなど、1度に2つの作業ができない
  • 1度に2つの物品を買えない・適切な店で買うことができない

中核症状としては、この他に、記憶力の低下・判断力や理解力の低下・見当識障害・高次脳機能障害が起きます。

記憶力の低下

今、食事を済ませたばかりなのに、食事をしたことを忘れてしまいます。直近の記憶がスッポリと抜け落ちてしまいます。「忘れた」という自覚がないので、「〇〇したことがない」と言い張ります。

自分が経験したことを思い出せなくなり、最悪の場合、自分の名前や家族の顔も忘れてしまいます。

「健忘症」は脳の老化による記憶力の低下です。いわゆる「もの忘れ」です。認知症と違うところは、「忘れてしまった」「忘れている」という自覚があることです。

判断力や理解力の低下

物事を筋道を立て、論理的に考えることができなくなります。気候や場面などに合わせて服装を選ぶことができません。

見当識障害

日時・場所・季節・家族などの人間関係がわからなくなります。

今日が何月何日なのか、自分はどこにいるのか、などがわからなくなります。昼夜の区別もできなくなることがあります。

失語・失認・失行

失語・失認・失行は、高次脳機能障害です。

「失語」は、大脳の言語野が障害され、「聞く・話す・読む・書く」という言語情報に関する機能が低下することです。目の前にある物の名前が言えなかったり、聞いたり読んだりしたことが理解できなかったりします。

「失認」は、身体の器官(目・耳・舌・皮膚など)に異常がないのに、正常に認識できないことです。周囲の人の介助で、正しく認識できることが多いようです。

「失行」は、運動機能は正常でも、目的とする行動の方法がわからないので、行動できないことです。ズボンのはき方がわからなくなったり、鍵穴に鉛筆などを入れて鍵を開けようとしたりします。

[認知症の遂行機能障害への対応]

認知症を発症した患者さんは、大きな不安を抱え、イライラしています。遂行機能障害が出て、今まで何でもなくしていたことができなくなると、不安でたまらなくなります。

認知症の患者さんには、安心感と信頼感を与えることが何より重要になります。料理をいっしょにしたり、リモコンをいっしょに操作したりして、「自分にもできる」という安心感を与えるようにします。

ただ、自動車の運転は止めることをオススメします。不注意による事故を起こして、自分も他人も傷害する危険性があります。認知症の患者さんは、自動車で徘徊することも多く、とんでもない遠い場所で困惑することがあります。

高次脳機能障害について

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高次脳機能障害とは、事故や疾患により脳が損傷されて起こる、後天性の神経心理学的な障害です。

頭部外傷による高次脳機能障害は、10代~20代の男性に発症することが多いようです。

高次脳機能障害は、脳神経外科・神経内科・精神科(精神神経科)で診療します。

[高次脳機能障害の原因]

高次脳機能障害の原因は、交通事故や落下事故、暴行などによる外傷性脳損傷、脳血管疾患が90%を占めます。その他に、脳腫瘍・ウィルス性脳炎・低酸素脳症・アルコール中毒などで起こります。

外傷性脳損傷

高次脳機能障害が起きる可能性が高い外傷性脳損傷は、「びまん性軸索損傷」です。「びまん性軸索損傷」の中核的所見には、「滑走性脳挫傷」と「脳梁損傷」があります。

びまん性軸索損傷は、四肢に麻痺が生じる確率が高くなります。脳梁損傷では、情動障害が起き、怒りっぽく、攻撃的行動を取りやすくなります。

脳血管疾患

脳血管疾患とは、脳出血とクモ膜下出血、脳梗塞(脳の血管が詰まる)です。脳出血・脳梗塞を起こすと、脳血管性認知症を発症することがあります。

[高次脳機能障害の診断]

MRIやCTなどの画像診断に加えて、前述した神経心理学的検査を複数行って診断します。MRIだけでは、障害部位が特定できないことがあります。

交通事故・落下事故により頭部に外傷を負った場合、社会生活を送る上で支障が出たり、問題となる社会行動を取ったり、人格・情動に変化が起きたりしたら、脳神経外科・神経内科・精神科の診療を受ける必要があります。

脳損傷のMRI所見

脳挫傷や頭蓋内血腫の後には、前頭葉や側頭葉の先端部・底部に広範囲な壊死や梗塞所見、脳委縮所見がみられます。

びまん性軸索損傷を含む広範囲な脳損傷の後には、脳室拡大や広範囲の脳委縮、脳梁の委縮、脳幹損傷、脳幹部委縮などの所見が見られます。

脳室拡大所見は、脳出血・クモ膜下出血・脳梗塞・アルツハイマー型認知症で見られます。

[高次脳機能障害の症状]

事故や脳血管疾患などで、脳損傷を受けた部位により、発現する症状が異なります。

①記憶障害

脳損傷が起きる前の記憶がなくなったり、新しい経験や情報が覚えられなくなります。健忘症候群といいます。

新しい経験や情報が覚えられない「学習障害」が起き、また、健忘症が起きてからの出来事の記憶を保持できません。何度も同じことを聞いたり、何の作業をしているのか、わからなくなったりします。

脳損傷以前の出来事や体験の記憶が障害されます。自分の体験について作話する傾向が生じます。

②注意障害

注意障害は、「全般性注意障害」と「半側空間無視」があります。

(全般性注意障害)

周囲からの刺激に対し、重要な物に意識を向け、注意を集中させることができません。気が散りやすく、長時間、一つ課題に取り組むことができません。

1度に2つのことに注意を向けようとすると、混乱します。

ぼんやりして、ミスが多くなります。

(半側空間無視)

脳損傷が起きた側と反対側の空間の刺激を見落とす「半側空間無視行動」を取ります。

脳の右半球、特に頭頂葉が損傷されると、左側の刺激を無視するようになります。

無視側が見えていない「半盲」とは全く異なりますが、混同されることがあります。

③社会的行動障害

社会的行動に様々な問題点が生じます。

①意欲・発動性が低下して、自発的活動ができません。四肢の麻痺などがないのに、1日中ベッドで過ごすようになります。

②情動コントロールができず、イライラして攻撃的行動に出ます。突然、興奮してどなったりします。じっとしていられません。看護者に対して暴力行為・性的行為など反社会的行動を取ります。

③病識が欠如しています。脳損傷患者さんは、自分の障害を認めず、必要なリハビリや訓練、治療を拒否します。

④対人関係に障害が起きます。認知機能や言語機能の下位機能である社会的スキルが低下して、人とうまく会話することが困難になります。失語症になると、自分の言いたいことを言えなくなったり、人の話の内容が理解できなくなったりします。

⑤人格機能の低下と発動性低下が起きるため、依存性行動を取るようになります。すぐに親や周囲の人に頼ります。

⑥失認症が起きると、人の顔が判別できなくなったり、物の形・色・手触りがわからなくなったりします。

⑦失行症が起きると、道具が使えなくなったり、動作がぎごちなくなったりします。

④遂行機能障害

目標を定め、計画を立て、問題を解決して、目標を実現する行動がとれません。詳しいことは前述してあります。

[高次脳機能障害の治療]

高次脳機能障害は、四肢の麻痺や運動機能障害と違って、周囲の理解が得られにくい障害です。一見しただけでは、わかりにくいのです。「やる気」がなく、注意集中できず、思考力や判断力、言語機能が低下するため、仕事の業績や学業成績が落ちます。仕事や学業に支障が生じ、社会生活が難しくなります。

高次脳機能障害の原因となる外傷性脳損傷や脳血管疾患は、外科手術や薬物療法などで治療できますが、その後遺症として起きる高次脳機能障害には、そうした治療法がありません。医学的リハビリテーションを含む適切なリハビリーテーションや訓練を受けることで社会復帰を目指します。

医学的リハビリテーションプログラム

医師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・臨床心理士など専門家が、病院など医療機関、保健施設、身体障碍者福祉センター、リハビリテーションセンター、訪問介護で、提供される総合的プログラムを「医学的リハビリテーションプログラム」といいます。

リハビリテーションの流れ

まず、身体的な訓練を行い、筋肉を増強し、関節の可動域を広げます。

次に、食事・排泄・入浴など日常生活動作の訓練を行います。

社会復帰、つまり、職場や学校、家庭において社会生活を送れるようにリハビリテーションを行います。

(社会復帰のためのリハビリテーション)

認知機能リハビリテーションでは、記憶力・集中力・注力などを回復させます。注意プロセス訓練・反復練習・イメージ形成訓練などを行います。

不適切な行動を適正行動に変える行動療法的対応を行い、対人関係の改善を図ります。社会的交流の頻度を高めるようにします。

日常生活活動や公共交通機関の利用など、生活訓練を行います。

カウンセリング・職業評価・職業訓練・就労就学支援など職業リハビリテーションを行います。

[高次脳機能障害と認知症の違い]

認知症は、徐々に認知の機能障害が進行(悪化)していきます。不可逆的な脳損傷ですから、進行を遅くすることはできますが、回復することはできません。

高次脳機能障害は、ゆっくりと回復します。

高次脳機能障害は気長にリハビリすれば改善できる

早期にリハビリテーションを開始すれば、脳に損傷を受けてから1年くらいで、かなり機能が回復します。しかし、2年目になると、回復速度が低下して、機能は少しずつ改善します。ここでリハビリや訓練を怠ると、症状が固まってしまいます。

適切なリハビリテーションや訓練を続けることで、完全に機能が回復できなくても、社会復帰できるようになります。早期にリハビリを始め、気長に続けることが、社会復帰を早めます。

[高次脳機能障害の社会保障]

2001年、厚生労働省が「高次脳機能障害支援モデル事業」を実施して、いろいろな支援制度を利用できるようになりました。主治医や病院の社会福祉士、ケアマネージャーに相談することをオススメします。

精神障碍者福祉手帳を申請することができます。

障害者福祉サービス・自立支援医療・重症心身障碍者医療費助成制度を利用できる場合があります。

年金加入者は、障碍者年金の受給可能性があります。

まとめ 遂行機能障害は改善する場合がある

「遂行機能障害」は高次脳機能障害の1つです。

「遂行機能」とは、「目的を実現するために、計画を立て、問題を解決する一連の行動を効率よくできる能力」です。高次脳機能を統合して活用する能力とも言えます。

遂行機能障害は前頭葉の機能低下の症状です。目標を設定して、行動計画を立て、様々な問題を解決したり、軌道修正したりして、目標を実現することができなくなります。自分の行動を評価したり、分析したりできません。

無計画でいきあたりばったり・物事の優先順位をつけられない・段取りが悪い・自分から行動を開始できない・人に指示されないと、何もできない・効率よく仕事ができない・1度に2つのことができない・失敗や間違いを次に活かせない。このような症状が生じます。

遂行機能障害は、認知症の中核症状です。しかし、交通事故や落下事故、暴行などによる外傷性脳損傷や、脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血などの脳疾患による脳損傷によって起きる高次機能障害の1つとして発症することがあります。

認知症は、アルツハイマー症のような脳神経細胞の破壊や脳梗塞・脳出血の脳血管障害によって起こります。認知症は、進行を遅らせることはできますが、回復することはありません。少しずつ悪化することが多いのです。

しかし、高次機能障害はリハビリテーションや訓練により改善することができます。遂行機能障害もゆっくりですが回復することが可能です。完全に元に戻らなくても、社会復帰して、支障なく社会生活を営めるようになります。気長に適切なリハビリテーションや訓練を行うことが大事です。

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