水分補給は健康を維持するのに大切だと言われます。部活動の顧問などにも、適度な水分補給を勧められた、という人は少なくないと思います。
ところが、「どうも喉が渇く」と水を飲み過ぎる人は、病気の気信号かもしれません。また、「そんな、大げさな」と思われるかもしれませんが、実は水の飲み過ぎによって、最悪の場合には死に至ることもあるといわれるのです。そこでここでは、水の飲み過ぎに潜む危険性を紹介します。
この記事の目次
◆水を飲むのは大切
そもそも、水分をチャージすることが大事だと言われるのはなぜなのでしょうか?
体は水でできている
ご存じだとは思いますが、成人であれば、人体の約60~70%は水分でできていると言われています。この水分は、体内の隅々にまで栄養分を運んだり、不要となった老廃物を体外に排出したりしています。また、発汗による気化熱で体温を下げたりするためなど様々な働きを持っています。
体内の水分は、日常生活の中で汗や便、尿によって排出され、その量は、一日あたり、平均約2~2.5リットルといわれています。
水分が不足すると
体の中の水分が不足すると、様々な悪影響が現れはじめます。
・頭痛や吐き気
体内の水分には、塩分などが溶け込んでおり、その濃度を正常範囲で一定に保つことが、生命を維持するのには不可欠です。
ところが、水分が足りなくなると、血液の濃度が高くなり、ドロドロになって血流が悪くなってしまいます。そのため、脳に血液が正常に送られなくなり、頭痛や吐き気を覚えることがあります。
・便秘
水分が減って血液の流れが悪くなると、胃腸からはもっと水分を吸収しようとするため、通常より便が固くなってしまい、便秘になりやすくなります。さらに、水分不足で臓器の働きも悪くなるため、排出機能も低下してしまいます。
・肌のトラブル
水分が不足し血液の循環が悪くなると、体の隅々にまで水分が行き渡りにくくなります。すると、肌の水分量が減り、乾燥を防ぐために皮脂が過剰に分泌され、ニキビや肌荒れの原因となってしまうのです。
・熱中症
体内の水分が欠乏すると、体が危機を察知して、体外への水分の排出を抑えるようになり、汗などが出にくくなって、脱水症状になります。すると、気化熱で体温を下げる働きが弱くなり、熱中症になる危険性が高まります。
・脳卒中や心筋梗塞
水分不足に陥ると、血液がドロドロになるため、血液の循環の悪化を招きます。すると、血管内の血液が詰まりやすくなり、脳卒中や心筋梗塞という恐ろしい結果を引き起こすことにもなりかねないのです。
これらの悪影響を防ぐため、「こまめに水分を補給しましょう」と言われるわけです。
通常は、食べ物や体内のエネルギー代謝によって、1リットル前後を補給できるため、それ以外の1.5リットルほどを飲料水で補給することが大切です。
◆水を飲み過ぎるのは病気のサイン?
ここまで、水分補給は大事であり、体内の水分が欠乏すると、様々な悪影響を及ぼすということをお話してきました。
ところが、水分補給が不足しているわけではないのに、よく喉が渇いて水を飲み過ぎる人は、何らかの病気の黄信号であることが考えられます。
喉が渇きやすくなる病気
喉が渇きやすくなる病気には以下のようなものがありますので、ご紹介しましょう。
・糖尿病
糖尿病とは、食べたものから分解されたブドウ糖が体内に吸収されにくくなり、ブドウ糖が血液の中に溜まりすぎてしまう病気です。そのため、血液の濃度を薄め、糖を体外に排出しようとして、体内の細胞から水分が出て行ってしまいます。
その結果、体内は水分不足となり、唾液の分泌も少なくなるため、口やのどが渇き、水を欲するようになるのです。
・シェーグレン症候群
シェーグレン症候群とは、涙や唾液が出にくくなる自己免疫系の疾患で、年間約8万人前後の人が受診しており、近年患者の数が増加しています。専門医によると、潜在的な患者数は、推定30万人以上で、女性がかかりやすいのが特徴です。
これは、女性ホルモンやウイルスなど複数の原因で起きる免疫異常で、唾液腺に異常が発生し、唾液の分泌が少なくなってしまうことで喉が渇きやすくなります。
・自律神経失調症
自律神経失調症とは、全身の器官をつかさどる自律神経がバランスを崩してしまう病気です。
原因は、ストレスや生活リズムの乱れ、またはうつにあるとされ、これによって唾液のコントロールがうまくいかなくなって喉が渇くことがあります。
・更年期障害
更年期障害とは、加齢によって閉経を迎える女性に見られる症状で、女性ホルモンの減少により起こります。イライラしたり、ほてりやめまい、動悸や息切れに加えて、喉の渇きを覚えることが多いようです。
このように、水を飲んでいるのによく喉が渇くのであれば、内科を受診した方がよいでしょう。
◆水の飲み過ぎが危ない理由は?
さらに、水の飲み過ぎに潜む危険もあります。水を飲み過ぎると、体液が薄まり、「低ナトリウム血症」という症状を引き起こすことがあるのです。症状はアルコール依存症によく似ています。
ナトリウムは神経伝達や筋肉を動かすのに必要ですが、そのナトリウムの濃度が水の飲み過ぎによって低下すると、内臓や筋肉の働きに異常が生じます。
別名「水中毒」ともいわれるこの症状は、まず軽い疲労感から始まり、続いて頭痛や嘔吐、全身の倦怠感などを感じます。
さらに病状が悪化すると、細胞の水分バランスが崩れて水ぶくれを興し、けいれんや昏睡状態、脳がむくむ脳浮腫や、肺に水がたまる肺水腫などが発生してしまいます。最終的には神経の伝達がうまくいかなくなって、症状が悪化してしまうと呼吸困難などで死亡してしまうのです。
最近、ダイエットやデトックスのために水をがぶ飲みする人がありますが、このような危険性があるので注意が必要ですね。
◆低ナトリウム血症となる原因は?
水分を余分に摂取すると、腎臓で濾過され、尿となります。ところが、腎臓が尿を生産する能力には限界があり、一般的には1分間あたり16ミリリットル程度が限界です。
1時間あたりの尿の量を計算しても、60分×16=960ミリリットル。1リットルにも満たない量です。ですので、たくさん水を飲み過ぎると腎臓の処理能力を超え、余分な水分を尿として排出できなくなり、体内の細胞が過剰な水分で膨張してしまい、低ナトリウム血症が発生してしまうのです。
アメリカの情報サイトである「BUSINESS INSIDER」の記事によると、水6リットルが致死量であると記載されています。
また、体の小さい子どもではさらに少ない量でも生命の危険が生じると言われており、赤ちゃんにミルクを飲ませる際には、薄めて一度にたくさん飲ませないよう、気をつける必要があります。
◆こんな人は要注意!水中毒になる可能性あり
では、特にどんな人が、低ナトリウム血症に気をつける必要があるのでしょうか?
スポーツなどでよく汗をかく人
長距離マラソンなど、スポーツでたくさん汗をかくと、当然、水分を意識して摂取しようとして、水分補給のために水をたくさん飲んでしまいがちです。多い人は、1時間に1リットルほども汗をかくことがあるといわれます。
ところが、これが落とし穴で、汗をかいた状態で水の飲み過ぎると、体内のミネラル分が不足している上に水分が増えるため、体液の濃度が急激に薄まってしまい、低ナトリウム血症を起こしてしまうのです。
事実、2002年のボストンマラソンで488人の参加者を対象にマラソン直後の血液を検査したところ、参加者の1割以上が、低ナトリウム血症だったとの報告もなされています。
喉の渇く副作用のある薬を服用している人
医療用の医薬品の中には、口の中を乾燥させる副作用のあるものが、700種類以上あるようです。
例えば、風邪薬やアレルギー薬、血圧の薬などが挙げられ、身近な薬にもこのような副作用をもつものがあります。
市販の医薬品の中でも、抗コリン薬と呼ばれるものは副交感神経の働きを抑えるため、唾液の分泌が悪くなる作用があり、風邪薬、精神の薬、睡眠薬、不整脈の薬、整腸剤など様々なものに入っています。
喉が渇くのが気になるという方は、自己判断で服用をやめたりせずに、薬局やドラッグストアで薬剤師に相談して、副作用のないものを選んでもらうようにするといいでしょう。
水中毒については、水中毒の症状とは?原因や治療方法を紹介!の記事を読んでおきましょう。
◆水分補給には何がいい?
先に述べたように、標準的な体重の人ならば、1日1.5リットルくらい、体の大きい人でなら1日2リットル程度を摂取するのが適量です。
この時に注意すべきなのは、一度にたくさん飲むのではなく、少しずつ、回数を分けて、時間の間隔を空けて飲む、ということです。こうすれば、尿を作る働きのある腎臓の負担が少なくて済みます。
しかし、水だけだと、どうしてもミネラル分が不足してしまいます。そのため、コンビニや薬局ではスポーツドリンクが販売されています。
スポーツドリンクは、水分に加えて、ナトリウムやカリウムなどを含んでおり、体液に近い浸透圧で体にスムーズに吸収されるようになっています。
疲労物質と言われる乳酸を分解するクエン酸や、ブドウ糖・ショ糖などの糖分を多量に含んでいるので、疲労回復によいといわれます。ただし、その糖分量は3gのスティックシュガー約11本分ですから、注意が必要です。
一方、同じくドラッグストアで市販されている「経口補水液」といわれるものは、水に砂糖と塩を一定の割合で溶かしたもので、失った体液を素早く補給できるように、濃度を調整された飲料です。
たくさん失った水分やミネラル、電解質などを素早く補給できて、吸収率も高い経口補水液は、脱水症状を回復させるのに向いています。
ただ、塩分が非常に高いので、飲みすぎると塩分過多になる可能性があります。特に高血圧の方には負担が大きいですので、不安のある方は、飲んでもよいかどうか医師に相談したほうがよいでしょう。
◆まとめ
いかがでしたか?
喉が渇いて水を飲み過ぎるのは、病気のサインである可能性があります。また、水は不足しても危険ですが、飲み過ぎても危ないことがお分かりいただけたかと思います。
たかが水、とおろそかにせず、適切な形での水分補給を心がけて行きたいですね!
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