溶連菌という名前はあまり耳馴染みがありませんが、「とびひ」という名称は聞いた事があるのではないでしょうか。触った所に感染する皮膚の炎症ですが、このとびひに関わる溶連菌は、実は重大な病気を引き起こす可能性を持った菌です。
感染力が高く、症状が収まっても感染が広がる事もあるため適切な治療が不可欠です。また、子供だけでなく大人にも感染する事があります。自分だけでなく周りの方に感染を広げないようにするためにも、溶連菌感染症の初期症状や潜伏期間について知っておきましょう。
溶連菌感染症とは
溶連菌感染症について知っておきましょう。
溶連菌とは
溶連菌感染症とは、レンサ球菌属によって引き起こされる感染症の事を指します。レンサ球菌は名前の通り玉が連なった鎖のような形をしており、その内、特に感染しやすい菌が化膿レンサ球菌という菌であるため、一般的には溶連菌感染症というと化膿レンサ球菌という菌による感染症の事を指しています。
化膿レンサ球菌は球形または卵型をした細菌で、これが様々な長さの鎖状に増殖しています。レンサ球菌の中には健康な人の体内や体表、粘膜に普通に存在している常在細菌もいますが、種類によっては免疫性の疾患や毒素による全身性疾患の原因に成る事があり注意すべきものです。
感染経路
溶連菌の感染経路は飛沫感染と経口感染です。感染症に罹った人のせきやくしゃみ、排出された細菌により感染が起こります。発症のピークは冬と春夏の間の年二回と言われています。
病気に成り始めの時期が最も感染力が強く、子供や抵抗力の低下した大人、妊婦に感染する場合があります。
症状
溶連菌には大体2~5日の潜伏期間があります。
主な症状は以下のものです。
・喉の痛みと高熱(38度〜39度)、嘔吐が症状の始まりとして現れる
・身体、手足にかゆみを伴う発疹が出る
・口蓋垂に出血性の斑点が見られる
・舌が赤くなり、ぶつぶつが出る(イチゴ舌と呼ばれる症状)
また、急性喉頭炎や扁桃腺炎を起こす場合がある他、重症化すると他の病気の原因になりやすい点が特徴と言えます。また、熱が下がってから手足の皮膚がふやけ、皮がむけてくる事もあります。
大半の場合熱は3~5日以内に下がりますが風邪のように自然治癒する事はなく、完全に菌が消えるまでは2~3週間かかる場合があり、継続した診察や治療を受ける必要があります。
大人が罹った場合
では、そんな溶連菌感染症に大人が罹ってしまうとどうなるのかを紹介します。
大人の溶連菌感染
溶連菌感染症は子供で起こりやすい病気で、5~15歳の小児に最も多いと言われていますが、大人でも感染する事があります。
大人の場合、疲れがたまっているなど免疫力が下がっている時に罹りやすく、家庭などで他に感染した人と密に接していると移ってしまう場合があります。
また、非常に珍しいケースではありますが溶連菌の中には劇症型と呼ばれるものがあり、こちらの発症が30~70代に多いというデータがあります。劇症型の溶連菌はいわゆる人食いバクテリアと呼ばれるもので、元気な人が急激に発症し30%が死亡する非常に重い病気です。特に妊娠末期の方の場合、子宮に大量の血液が流れ込んでいる事から症状が進行しやすいのではと考えられています。
劇症化についてはまだわかっていない点が多く、早めの診断と治療、そもそも感染しないようにする事が何よりも大切です。
症状の違い
大人の場合あまり症状が現れにくく、風邪と同じような熱、頭痛、咳といった症状が代表的な物として現れます。
重症化すると
溶連菌を原因として、感染性の疾患や毒素による疾患、自己免疫の異常による疾患を起こす可能性があります。重症化して引き起こされる可能性がある合併症に、以下のものがあります。
・急性腎炎
溶連菌に感染後2~4週間後に発症する事が多いとされています。溶連菌に抵抗するために身体は抗体を生成しますが、この抗体と溶連菌が結合した複合物が腎臓の編み目に引っかかり、目詰まりのような症状を起こします。
自然に治る病気ですが、腎臓の働きが悪くなると血液の中の成分が正常に保てなくなるため、腎臓の保護に取り組む事となります。血尿やむくみ、血圧の上昇が見られた場合は特に注意が必要です。
・リウマチ熱
リウマチ熱は溶連菌感染症の2~3週間後に現れる自己免疫疾患です。高熱や関節の痛み、腹痛などとなって現れます。
リウマチ熱が怖いのは、心臓弁膜症を引き起こすといわれている点です。心臓は右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋に分かれており、その境にある膜が破れて血液の逆流が起こります。再発しやすい病気でもあります。
・アトピー性皮膚炎の悪化
溶連菌が傷口につくと、とびひと呼ばれる皮膚病になります。強いかゆみや小さな水泡を特徴とし、ここからまた別の箇所に感染するので注意すべき症状です。
アトピー性皮膚炎を持っている方の場合、皮膚炎がある場所を引っ掻いたりして溶連菌が他の所に付いてしまう、口から入ってしまうなどの経路で悪化する場合があります。
・アレルギー性紫斑病
アレルギー性市販症は血管の炎症で、免疫システムの関連のある疾患と考えられています。強いかゆみが生じる発疹が左右対称に出るのが特徴で、関節の痛み、嘔吐を伴う腹痛が起きる場合もあります。
また、腎炎を起こす事もあり、長期的に見ると腎臓病のリスクがあります。
対策と予防について
溶連菌感染症の予防方法や対策について紹介します。
罹った場合の対策
罹ってしまった場合は抗生物質による投薬治療を行います。
脱水を予防するために水分補給をしっかり行うことと、処方された薬を適切に飲む事が重要です。症状が収まってもまだ菌が体内にいる場合があります。熱が下がっても菌が残っていると再発する恐れがあります。再発や他の方への感染を防ぐため、薬は期間内に飲みきり、完全に菌が居なくなったかの検査を受ける必要があります。
熱がなければお風呂に入っても問題はありませんが、発疹が出ている場合はあたためる事でかゆみが出る事があるので注意して下さい。かゆい部分をかきむしらないようにする事も大切です。
予防方法
感染経路からわかるように、予防方法は他の感染症と同様に手洗い、うがいの徹底とマスクの着用です。ご家族に感染が疑われる方がいらっしゃる場合、食器やタオルの共用により感染する可能性にも留意すべきです。
また、溶連菌は消毒薬に対する抵抗力が弱いので、消毒用のエタノールや次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨード、逆性せっけんなどを使うと効果的です。ただし、手が触れてよいものと周りを拭いたりする用途のものがあるので、よく確認の上使いましょう。
まとめ
溶連菌感染症は子供の間で流行するケースを良く耳にしますが、大人でも罹る事のある病気です。ぱっと見は風邪と似た症状のため気が付きづらいですが、重症化すると様々な病気を引き起こす可能性があります。抵抗力の弱っている方や妊婦さんなどは特に、感染した人に近寄らないなどの対処が必要です。
かきむしった傷口から再度感染したり、看病している人とされている人の間でピンポン感染を起こす場合もあるので、ご家庭で発症した方がいらっしゃる場合はマスクの着用や消毒液の使用などを徹底し、感染を広げないよう心がけましょう。
また、どのような病気に関しても早期発見と適切な治療が何よりも重要です。また、溶連菌については症状が治まってからも菌がいなくなるまできちんと治療しなくてはいけません。自己判断に頼らず疑わしい場合は早めに医療機関で診察を受け、最後まで治療を続けるようにしましょう。
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