ふとした瞬間に、目の下がピクピクと痙攣(けいれん)するような経験や体験をされた人は、少なくないでしょう。現代社会はIT技術の発展によって、仕事ではパソコンモニターを見つめることが必要不可欠となっていますし、プライベートではスマホの画面を見つめる時間が長くなっています。私達の日常生活は、それだけ目に負担をかける環境になっているのですね。
このような背景から、目の下のピクピクとした痙攣は、多くの人が目の疲労・疲れが原因だと思っているようです。しかしながら、実は何らかの病気が原因となって、目の下に痙攣症状が現れている可能性もあるのです。
そこで今回は、目の下のピクピクとした痙攣が生じる原因や治療方法などについて、ご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。
目の下の痙攣症状について
そもそも痙攣(けいれん)とは、どのような症状のことなのでしょうか?また、目の下の痙攣症状は、どのような時に現れるのでしょうか?
まずは、目の下の痙攣症状について、基礎的な事項を再確認しておこうと思います。
痙攣とは?
そもそも痙攣とは、自分の意図とは無関係に生じる筋肉の動きのことで、特に筋肉が収縮し続ける状態や症状のことを言います。
痙攣は、身体の全身に現れる場合もあれば、身体の一部分の筋肉にのみ現れる場合もあります。全身性の痙攣の代表例は、てんかん発作による全身硬直などがあり、身体の部分的な痙攣の代表例としては、目の上下まぶたの痙攣や足がつった状態などが挙げられます。
目の下の痙攣症状
目の下のピクピクとした痙攣症状は、近年では最も多くの人が経験する痙攣症状と言えるかもしれません。目の下まぶたが、自分の意図とは無関係に局部的にピクピクと震えるように動きますので、決して気持ちの良いものではありません。
このような目の下の痙攣症状は、多くの場合で一時的なもので、しばらく目を閉じるなど目を休めていると痙攣が収束します。しかしながら、稀に目の下の痙攣症状が長く続く場合もあり、この場合は特に注意が必要です。
また、目の下の痙攣症状は、片目だけに生じる片側性の場合もあれば、両目に同時に生じる両側性の場合もあります。
目の下の痙攣症状が生じやすい時
目の下の痙攣症状が生じやすい時は、ある程度の共通点が見られます。つまり、目の下の痙攣症状は、身体や特に目が疲労して、身体的にも精神的にもストレスを受けているような時に生じやすいのです。目の下の痙攣症状が生じやすい具体例として、次のようなケースが挙げられます。
- パソコンモニターを見つめて、目が疲労した時。
- スマホ画面を見つめて、目が疲労した時。
- 全身に疲労を感じている時。
- 睡眠不足の時。
- 仕事や人間関係などで精神的ストレスを感じている時。
目の下の痙攣症状の原因
このような目の下の痙攣症状は、どのようなことが原因となって生じるのでしょうか?目の下の痙攣症状の治療法や対処法を理解するには、原因を知ることが必要不可欠です。
そこで、目の下の痙攣症状の原因について、ご紹介したいと思います。
病気とまでは言えない場合
目の下の痙攣症状の多くは病気とまでは言えず、疲労やストレスなどを原因とする一時的な症状にとどまります。
そこで、まずは病気とまでは言えない目の下の痙攣症状の原因について、ご紹介したいと思います。
目の疲れ・眼精疲労
目の下の痙攣症状の最大の原因は、目の酷使による疲れ目・眼精疲労にあると言えるでしょう。本来ならば、筋肉は脳から運動神経系を通じて命令を受けて動きます。しかしながら、あまりにも疲労すると筋肉細胞内のミネラルなどのバランスが崩れることにより、末梢神経細胞で異常な電気活動が起こって、筋肉が勝手に収縮して痙攣を起こしてしまいます。つまり、目を酷使すれば、目の周りの筋肉が極度に疲労するので、目の下の痙攣症状が生じてしまうのです。
現代社会はIT技術の発展によって、仕事ではパソコンモニターを見つめることが必要不可欠となっていますし、プライベートではスマホの画面を見つめる時間が長くなっています。パソコンモニターやスマホ画面には、液晶画面が多く用いられています。そして、この液晶画面には、ブルーライトと呼ばれる短い波長の光が使われています。このブルーライトは、紫外線に近い性質を持ちつつ、目の奥にまで届くので、目の疲れ・眼精疲労を引き起こしやすいとされています。
VDT症候群
ちなみに、パソコンモニターやスマホ画面を用いた長時間の作業(VDT作業)は、眼精疲労だけでなく、肩こり・慢性疲労・イライラ感・抑うつ症状など心身の不調をもたらすことがあります。このようなパソコンモニターやスマホ画面がもたらす心身の不調を、総称してVDT症候群(Visual Display Terminal Syndrome)と呼ぶことがあります。
睡眠不足
睡眠不足によっても、目の下の痙攣症状が生じることがあります。睡眠せずに覚醒して目を見開いている時間が増えるのですから、当たり前と言えば当たり前ですね。
また、睡眠不足の影響は、自律神経の乱れを誘います。自律神経は心臓や血管などの循環器系をコントロールしていますので、自律神経の乱れは血行不良も招きます。血行不良で血流が悪くなれば、当然のことですが身体の各細胞から疲労物質が運び出されずに停滞してしまいます。また、疲労回復に必要な酸素や栄養も不足します。その結果、睡眠不足から身体の疲労だけでなく疲れ目・眼精疲労も生じ、目の下の痙攣症状が現れるのです。
ちなみに、パソコンモニターやスマホ画面から発せられるブルーライトが、紫外線に近い性質を有するのは前述の通りです。そして、就寝前にブルーライトを浴びると脳や身体が紫外線を受けたと勘違いして、覚醒してしまい寝付きが悪くなるとともに睡眠が浅くなり、睡眠不足を招きやすくなります。
ストレス
睡眠不足と同様に、自律神経の乱れを引き起こすのがストレスです。自律神経は、交感神経と副交感神経が上手く切り替わることで、24時間休みなく循環器系や消化器系など生命維持に必要な臓器をコントロールしています。
ストレスがかかると自律神経のうち身体を興奮・覚醒させる交感神経が優位になりますが、ストレスを長く受け続けると交感神経のみが働き続けることになり、自律神経のバランスが乱れて最終的には自律神経失調症に陥ります。
このようなストレスによる自律神経の乱れは、睡眠不足の場合と同様に、血行不良を通じて疲労の蓄積や栄養不足を引き起こすので、目の下の痙攣症状が現れる原因の一つと言えるでしょう。
病気の場合
目の下の痙攣症状は、多くの場合で眼精疲労・睡眠不足・ストレスなどを原因とした、一時的な症状にとどまります。十分に休息をとったり、ストレスを軽減すれば、ほとんどが痙攣症状は収束します。
しかしながら、目の下の痙攣症状の中には、病気が原因となって現れている場合があります。そこで、目の下の痙攣症状の原因となる病気について、ご紹介したいと思います。
片側顔面痙攣(片側顔面けいれん)
片側顔面痙攣は、顔の表情を形作る様々な表情筋の動きを支配する運動神経の一つである顔面神経が、脳血管に圧迫されることによって刺激されて生じる顔面の筋肉の痙攣のことです。
片側顔面痙攣では、その初期症状として、片側の目の下まぶたや上まぶたといった目の周囲がピクピクと痙攣します。そして、徐々に片目の開閉が難しくなり、最終的には目だけでなく頬や口周りなど顔面の片側が痙攣したり、自分の意図とは無関係に顔面片側が動いたりしてしまいます。片側顔面痙攣は運動神経が刺激されるため、痛みを感じる神経とは関係性がないので、痛みは感じません。
ちなみに、片側顔面痙攣は、その名の通り顔面片側だけに症状が現れ、両側性の場合は非常に稀だとされています。また、片側顔面痙攣は、40才以上の女性に好発する傾向があります。さらに、突発的に片側の顔面の表情筋が動かなくなる顔面神経麻痺(顔面麻痺)の後遺症として、片側顔面痙攣が生じるケースもあるようです。
顔面ミオキミア(眼瞼ミオキミア・眼輪筋ミオキミア)
顔面ミオキミアとは、目の周囲にある眼輪筋が痙攣する病気のことで、特に下まぶたが痙攣することが多く、眼瞼ミオキミアや眼輪筋ミオキミアとも呼ばれます。
前述した眼精疲労・睡眠不足・ストレスなどによって生じる目の下の痙攣症状も顔面ミオキミアと言えますが、症状が一時的なもので休息することにより症状が治まるのならば、病気とまでは言えず、それほど心配はいらないでしょう。
しかしながら、休息をとって疲労感がなくなっているにもかかわらず、目の下の痙攣症状が治まらず断続的に続く場合は、病院でMRI検査などを受けて診断を仰ぐべきでしょう。というのも、脳腫瘍などの脳疾患や脳の外傷などによる顔面神経の損傷でも顔面ミオキミアが発症する可能性があるからです。
混同しやすい病気
片側顔面痙攣や顔面ミオキミアなどと混同されやすく注意が必要な病気が存在します。その病気は、眼瞼痙攣(がんけんけいれん)と呼ばれる病気です。
眼瞼痙攣は、病名に痙攣と名付けられて眼輪筋が収縮するものの、普通の人が痙攣と聞いてイメージするようなピクピクとした動きは生じません。そのため、その名称から眼瞼痙攣と片側顔面痙攣・顔面ミオキミアは混同されやすく、注意が必要です。それゆえ、眼瞼痙攣という病名を、眼瞼ジストニアという病名に変更することが提起されています。
また、眼瞼痙攣では、眼輪筋が収縮して意図せずに目が閉じる力が働いて、重度の場合には目を開くことができなくなるとされます。その他に、まぶしさを感じたり、目が乾いたり、目の痛みや不快感といった自覚症状が現れるとされます。そして、眼瞼痙攣は基本的に両目同時に症状が現れる両側性の病気で、目の乾きや目の痛み・不快感といった症状からドライアイや眼精疲労と間違いやすいとされます。
ちなみに、眼瞼痙攣・眼瞼ジストニアの原因は多くの場合で不明となっています。ただし、睡眠薬・抗うつ剤・抗不安薬などを長きにわたって服用していると、眼瞼痙攣・眼瞼ジストニアを引き起こしやすいと言われています。
目の下の痙攣症状の治療方法
このように目の下の痙攣症状の原因の多くは病気とまで言えない場合ですが、なかには重篤な病気が原因となっている場合もあるのです。それでは、目の下の痙攣症状が現れた場合には、どのように対処・治療したら良いのでしょうか?
そこで、目の下の痙攣症状の対処法や治療法について、ご紹介したいと思います。
十分な休息をとる
目の下の痙攣症状の多くは、疲れ目・眼精疲労・睡眠不足・ストレスによるものですから、まずは十分に休息や睡眠をとることによって、心身ともにリラックスさせることが大切になります。休息中にもパソコンモニターやスマホ画面を見ていると、休息の効果も半減してしまいますから、パソコンモニターやスマホ画面から離れることも重要な要素となるでしょう。
また、ストレスを上手く解消することも大切な対処法の一つです。自分なりのストレス解消法があれば良いのですが、特に無いのであれば、ウォーキングなどの適度な運動や入浴にはストレスの緩和効果がありますので、意識して取り入れてみると良いのではないでしょうか。
さらには、角膜を正常に保つ作用があるビタミンAや、神経細胞や筋肉細胞の新陳代謝に欠かせないビタミンB群など、必要十分な栄養補給も大切です。
血流を促す
前述のように十分な休息や睡眠がとれるのが一番ですが、そうは言っても仕事が忙しい人もいらっしゃるでしょう。その場合は、パソコンモニターやスマホ画面を見つめる作業について、1時間毎に5~10分の休憩を挟むように心掛けましょう。
そして、その休憩の際には、目の周りの血流を促すために、蒸しタオルや市販のホットアイマスクなどを使って、目の周辺を温めると良いでしょう。また、上下のまぶたを指の腹で軽くマッサージを実施することでも、目の周りの血流を促進させることができます。さらには、目の周りの血流を促すツボもありますので、興味のある方はインターネットなどで調べてみると良いでしょう。
おかしいなと思ったら病院を受診する
このような休息・睡眠や血流促進の対策を実施しても、目の下の痙攣症状が改善されない場合は、病院を受診して医師の診断を仰ぐべきです。
受診すべき診療科は、まずは最寄りか行きつけの眼科を受診するのが良いでしょう。眼科での検査を経て、脳の異常などが疑われれば、眼科の医師に神経内科や脳神経外科などの病院を紹介してもらいます。
病院での治療内容については、次の通りです。
顔面ミオキミアの治療
顔面ミオキミアが疑われる場合には、MRI検査やCT検査などの画像検査で、脳の異常の有無を確認します。
脳に異常がなく、眼精疲労・睡眠不足・ストレスなどが原因である場合には、基本的に症状に対応した点眼薬・目薬が処方されます。場合によっては、抗けいれん薬が処方される場合もあるようです。とはいえ、前述のように十分な休息や質の高い睡眠をとることが非常に重要です。
一方で、脳に異常がある場合には、その脳疾患の治療が必要になります。
片側顔面痙攣の治療
片側顔面痙攣の治療は、軽症の場合は抗けいれん薬の服用になりますが、症状が重度の場合はボツリヌス毒素の注射を定期的に実施するか外科手術のいずれかになります。
ボツリヌス毒素の注射とは、いわゆるボトックス注射のことで、筋肉の収縮・緊張を緩和させることで症状改善を図るものです。ボトックス注射の効果は概ね3ヶ月程度なので、定期的にボトックス注射を受ける必要があります。
一方で、外科手術では、顔面神経を圧迫する脳血管を顔面神経から離すことによって、圧迫を解消して症状の改善を図ります。この手術は、神経血管減圧術と呼ばれ、通常は脳外科・脳神経外科で行われます。ただし、神経血管減圧術は、聴神経と内耳動脈の走行する部分が手術部位となりますので、術後に難聴になる危険性・リスクが存在することには注意が必要です。
まとめ
いかがでしたか?目の下のピクピクとした痙攣が生じる原因や治療方法などについて、ご理解いただけたでしょうか?
たしかに、近年は仕事にパソコンモニターが必要不可欠ですし、スマホの登場によって情報収集も手軽になりましたが、その分だけ目に大きく負担がかかっています。そのため、多くの人が疲れ目・眼精疲労などが原因で、目の下の痙攣症状を経験しているのが実情です。
しかしながら、目の下の痙攣症状は決して疲れ目・眼精疲労・睡眠不足などだけが原因ではなく、実は重篤な病気が原因である場合もあるのです。
ですから、十分な休息をとっても目の下の痙攣症状が改善せず違和感を感じた場合は、早期に眼科などの病院を受診して医師の診断を仰ぎましょう。
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