目の前に虫が飛んでいるような黒いものが見える、チラチラと黒いヒモのようなものが見える、また目の前にまぶしい光が突然差し込んだようになる、そんな症状はありませんか?単なる目の疲れ?よく聞く飛蚊症というものかな?
老化かな?と思っていても、それはもしかしたら網膜穿孔かもしれません。網膜穿孔とはどのような病気なのでしょうか。何が原因で起きるのか、他にどのような症状があるのか、どのような治療方法があるのかなどをご紹介していきます。
網膜穿孔の症状とは?
網膜穿孔とは?仕組みや症状を詳しく見ていきましょう。
網膜裂孔になる仕組み
まずは網膜裂孔になってしまう仕組みを説明します。網膜は厚さわずか0.2ミリの薄い膜状の組織で、眼底、つまり目の一番奥にあります。目をカメラに例えるとちょうどフイルムに該当するところです。角膜から入ってきた光の情報というのは水晶体、硝子体を通り網膜のところまで送られてくるのです。網膜は光を感じる大事なところだということがわかりますね。
網膜裂孔とはこの網膜に穴が空いたり裂け目が出来てしまうことです。目の中の硝子体(しょうしたい)は一部は網膜と接しています。この接している部分が網膜から剥がれてしまうときに穴が空いたり裂け目が出来る、ということが起こってしまうのです。網膜裂孔では網膜の穴や裂け目から、ゼリー状だった硝子体が液化してしまい網膜の下に入って行ってしまうことがあります。
こうなると穴や裂け目が広がっていってしまい網膜剥離になる危険性出てきてしまいます。網膜剥離にならないために穴や裂け目を塞ぐ必要があります。
網膜裂孔の症状
飛蚊症や光視症の症状
裂孔になると飛蚊症と言って目の前にゴミのような、小さな虫のようなものがチラチラと見え、目の動きとともに移動する症状が現れます。蚊が飛んでいるように見えることから飛蚊症といいます。
また光視症と言って、目に光が当たっていないのにもかかわらずキラキラとした光を感じたり、暗いところで突然稲光りのようなまぶしい光が視野に走る症状がみられます。これは網膜が引っ張られる際の刺激で起こり、実際には光がないのに光を感じてしまうのです。
この2つの症状は生理的現象で特に心配のない場合がほとんどですが、網膜裂孔の症状でもあるのです。この症状がある場合は網膜裂孔になってしまっていることも考えられるので、必ず眼科に行って検査をしてもらいましょう。特に今まではなかったのにここ最近急に飛蚊症になった、突然光を感じるようになったなどのときは特に注意が必要です。
また裂け目や穴から液体になった硝子体が網膜の下に入り込み出すと、網膜が眼底から剥がれていってしまい「網膜剥離(もうまくはくり)」になってしまう危険性があります。網膜剥離については、網膜剥離の原因は?症状や治し方を知っておこう!を読んでおきましょう。
視力の低下
網膜剥離になってしまうと次のような症状が加わります。まずは「視力の低下」が現れます。網膜の中央には「黄斑(おうはん)」と言われる部分があります。
「黄斑」は視神経が密集していて、この部分で視力が決まるという大変重要な場所です。ここに穴が空いたり裂け目ができると視力が急激に低下してしまうのです。
視野の欠損
また「視野の欠損」が出てきます。網膜は脈絡膜という毛細血管が張り巡らされている組織から酸素や栄養をもらっています。網膜と脈絡膜の間に液状の硝子体が入り込んでしまうことで、網膜が剥がれると酸素や栄養が届かなくなってしまいます。
そして酸素や栄養は不足していき網膜感度がどんどん低下してしまいます。その結果視神経が死んでしまい視野が欠けてしまうのです。
網膜剥離が進行し、網膜がすべて剥がれてしまうと最終的には失明してしまいます。そのため網膜裂孔になってしまった場合は早めの検査と処置が必要であることがわかりますね。
網膜裂孔の3つの原因
網膜裂孔の原因を紹介します。
中高年に起こりやすい網膜裂孔
40代から50代の中高年に起こりやすい網膜裂孔について説明します。目の中は硝子体というゼリー状の液体で満たされています。この硝子体に網膜の一部が接しています。この硝子体は加齢とともにだんだんとゼリー状からサラサラの液体に変化していってしまいます。水とゼリーに分かれていってしまうようなイメージです。この硝子体変性は「液化変性」といい、そうなるとゼリー状の硝子体の容積が減ってしまいます。そのため接していた網膜と離れてすき間が出来てしまいます。
これは「後部硝子体剥離(こうぶしょうしたいはくり)」といい、加齢とともに起きる生理的な現象なのです。しかし網膜が弱くなっていたり、網膜と硝子体が強く接していたりという場合があります。この場合では硝子体が収縮する時に網膜が強く引っ張られすぎて網膜が引き裂かれてしまうことがあるのです。
そうなると網膜に穴が空いたり亀裂が生じて裂け目ができてしまいます。これが中高年によく起こる網膜裂孔です。中高年の網膜裂孔は若い人に比べて進行が早いので注意が必要です。
強度の近視の人に起こりやすい網膜裂孔
近眼の人は眼球の長さが長く、ものを見たときの焦点は網膜よりも手前にあります。そのため網膜も長くなり薄い部分が出来てしまいます。網膜の薄くなった部分は弱いためここが萎縮するときに網膜に穴が空いてしまい網膜裂孔になってしまうのです。
近眼の人の網膜裂孔は網膜が萎縮して丸い穴が空いてしまうことから「萎縮性円孔(いしゅくせいえんこう)」とも呼ばれます。強度の近視の人は注意した方がよいでしょう。中高年の裂け目ができる網膜裂孔と異なり、この裂孔は穴が空いた状態となります。
目の打撲など外傷による網膜裂孔
激しいスポーツや喧嘩、また転倒などにより眼球を強く打撲してしまうことで網膜裂孔になってしまうことがあります。相撲やボクシング、ラグビーなどの体がぶつかり合うようなスポーツによく見られます。
また野球などでボールが眼に当たるなどの衝撃も注意が必要です。強くぶつけることで急激な眼球の変化が生じてしまい、網膜裂孔につながってしまう事があるのです。眼を強くぶつけたらすぐに眼科で検査をすることが必要です。
網膜裂孔の検査
網膜裂孔にはどのような検査があるのでしょうか
網膜裂孔の検査はどのようなことをやるのでしょう?
眼の症状が出たり強くぶつけたりしたら早めに眼科に行き検査をしましょう。では網膜裂孔の検査はどのようなものがあるのでしょうか。
眼底検査
まずは視力検査などを一般的な検査をします。その後眼底検査を行って硝子体や網膜に異常がないかを調べます。眼底検査は瞳孔を開かせる目薬「散瞳剤(さんどうざい)」をさすところから始まります。瞳孔が開いてしまうので、目薬の効果が出ている5〜6時間は光をまぶしく感じ、車の運転をすることができません。
この場合は眼科へは車やバイク、自転車で行くのを控えたほうがよいでしょう。ピントも合わないのでしばらくは本を読んだりすることもできません。これはカメラでいうと絞りが開いた状態と同じことです。眼底検査は医師が眼に光を当てて眼底をくまなく調べます。この検査では痛みなどはありません。
詳しくは、眼底検査でわかることは?検査方法や注意点を知っておこう!を読んでおきましょう。
もっと詳しく検査するには
より詳しく検査をするために「OCT検査」というものもあります。これは「光干渉断層計」といって網膜の検査をする最新の検査機器です。目のCTといえばわかりやすいでしょう。この検査では網膜の断面画像を撮影することができます。
網膜の出血範囲や網膜の厚さも正確に測ることができます。この検査も痛みはなく、おでこと顎を固定して患者は機械を覗くだけで時間もわずか数秒で終わってしまいます。網膜の状態や裂孔の状態も正確に詳しく把握できます。
網膜裂孔の治療は?
網膜裂孔とわかったらどのような治療をするのでしょうか。
レーザー光凝固療法
穴や裂け目塞ぐためにはどのような治療が行われるのでしょう。
まず行われる治療は「レーザー照射による治療」です。「レーザー手術」と呼んだり「レーザー光凝固療法」と呼んだりします。網膜の穴ができた周辺にレーザーを照射して組織を固めます。火傷のような状態になりますが、照射して固めることでこれ以上病変が広がらないように悪化を防ぐ目的で行われる治療です。元の状態に戻す治療なのではありませんのでこの治療で飛蚊症が治るわけではない、ということも覚えておきましょう。
レーザー治療は入院の必要はなく外来でできます。点眼で麻酔をしてからレーザー用のコンタクトレンズをつけます。麻酔を行うので痛みはあまり感じませんが、人によっては多少痛みを感じる人もいるようです。また治療そのものは数分から10分程度ですみます。レーザー治療を行った後は目の状態が落ち着くまで、目をこすったり強く押さえたりしないように気をつけましょう。
レーザー治療の手術代は3割負担で4万から6万くらいはするようです。裂け目の状態などでも変わる可能性があるので眼科の先生によく話を聞いておきましょう。
網膜冷凍凝固術
網膜を冷凍凝固させる治療です。これは網膜の外側から裂孔の部分にスポンジのようなものをあてます。そして裂孔の周りを冷凍して剥離した網膜をつけるという方法です。網膜の下に水が溜まっていれば抜く処置をすることもあります。
この治療法の利点は眼球の中に器具を入れる手術と異なり感染症や目の中にトラブルが生じにくいということが挙げられます。円孔だけの場合だと冷凍凝固術で処置をすることが多いようです。
硝子体手術
硝子体手術はどんな手術?
裂け目が大きめで、また後部硝子体剥離による網膜の牽引が強い時は「硝子体手術」という手術を行います。かつてはかなり大変な手術の一つでしたが今は技術が急速に発達しているため最新の機械と技術で日帰り手術も可能となっています。
硝子体混濁や出血などで網膜に光が届かなくなってしまうことがあります。また網膜を牽引してしまい剥がしてしまうというのも硝子体です。その硝子体を取り除いてしてしまうのがこの手術です。硝子体を取り除くことで網膜剥離を食い止めることができるのです。
硝子体を切除するためには白眼のところに(角膜)に小さな穴を3箇所開けます。そこから細い器具を眼の中に入れて出血したり混濁してしまった硝子体を吸い出します。出してしまった硝子体の代わりに空気を入れ網膜を押さえておきます。そして網膜を正常な位置に戻します。これで黄斑に空いた穴、黄斑円孔はふさがり黄斑の機能の回復が期待できます。硝子体手術によって昔は不治の病とされていた黄斑円孔がかなり回復するようになりました。
そしてそのあとは空気の代わりに吸収の遅いガスを入れます。そのガスが自然に抜けるまでの数日間で網膜は眼底にしっかり押さえつけられた状態になります。網膜の位置が正常になることで網膜剥離の治療ができるのです。さらに網膜の穴の周囲はレーザーで固めてしまいます。そうすることで再び網膜が剥がれることがないようになります。
軽ければ手術は1時間程度で済みますが、重症の場合は2時間はかかってしまうことが多く、手術に要する時間は症状によって異なることを知っておきましょう。
手術の後の注意点は?
この硝子体手術では入院を必要とすることが多いのですが、日帰りでできる病院があります。仕事のスケジュールなどで日帰りで手術をしたい場合は、相談してみたいですね。入院の場合はだいたい1週間から2週間のところが多いようです。さらに自宅での安静も必要な場合があり、症状によっては職場の復帰などに4週間ほど見ておく必要があるでしょう。
空気やガスを入れた場合は日数にして3日から5日間、お手洗いや食事以外うつ伏せでいなければいけません。網膜がしっかりと内から押さえるためです。ベッドでうつ伏せになる場合は目を圧迫しないようにする必要があります。手術の当日は出血予防のために眼圧を高くしますので多少痛みがあるようです。また日帰り手術も可能な病院で行った場合も家では安静にする必要があります。シャワーや入浴、洗顔で目に水を入れないように注意が必要です。
硝子体手術にも欠点があります。術後に白内障になってしまうことがあるのです。そのため若い人にはあまり向いていない手術とも言えます、逆に白内障も患っている高齢の人には、白内障の手術をしてしまうことがあります。
強膜内陥術(きょうまくないかんじゅつ)
どんな治療方法?
この治療法は強膜バックリング法と呼ばれることもあります。強膜内陥術とは眼底から剥がれてしまた網膜を眼球を歪ませることで裂孔を塞ぐ治療です。具体的には、網膜裂孔の外側にある強膜の外側に棒状のシリコンを縫い付けます。
そして眼球を歪ませ、眼球の壁と網膜をつけます。さらに網膜と色素上皮の隙間を小さく縮めます。それで硝子体の牽引を弱めて裂孔している部分や剥離している部分を凝固してしまいます。網膜の下に水分がたまってしまっている場合は水分を排出します。排出は強膜に穴を開けることで行います。そのことで網膜が元の位置に戻ることができるのです。
また先に説明した硝子体手術のように空気を入れる場合もあります。空気を入れた場合はやはり何日かはうつ伏せで過ごさなくてはなりません。局所麻酔で済む程度だと日帰り手術が可能ですが、状態によっては入院も必要となります。
この治療の欠点はある?
この手術のシリコンで圧迫するため眼球の奥行きが広くなり近眼になることもあります。治療法の欠点としては近眼や乱視が進んでしまうことがある、目がゴロゴロ痛むなどが挙げられます。
まとめ
早期発見早期治療が大切です。
いつもと違う眼の症状が出たら早めに眼科に行くことが大切です。飛蚊症や光視症は生理的現象としてよく起こる症状なので、大丈夫だと思ってしまいがちですが、一度は眼科で検査してもらう方が安心です。特に今まで目の前にゴミのようなものが見える経験がなかったのに急に見えるようになった、ある日突然暗いところで眩しい光を感じた、など今までとは違う症状が出た場合は特に気をつけましょう。
また眼を激しくぶつけた、痛むなどの場合もすぐに眼科にかかるようにして検査をしてもらいましょう。網膜裂孔は早期治療が大切です。網膜裂孔から網膜剥離になってしまう危険性があるためです。すべての網膜が剥がれてしまうと失明してしまう恐れがあるのです。
中高年い多い後部硝子体剥離はかかりやすい年齢としては50代から60代の人です。この年代の人は進行が早いので、特に早期発見が大事です。また20代の人では網膜に薄い部分があり網膜裂孔になりやすいと言われています。また強度の近眼の人も網膜が薄くなっていることがあるので網膜裂孔になりやすいのです。症状がなくても眼科でチェックしてもらうと安心です。
手術方法は、技術やレーザー機器や硝子体手術用の機器の進歩で昔より早く的確に行われるようになっています。日帰り手術ができるところもあります。保険がおりる手術も中にはあるので、手術を受けた際は保険会社に問い合わせておくと良いですね。目は大切な器官の一つです。おかしいと思ったらすぐに病院に行って相談をするようにしたいものですね。
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