手先や足先が冷えてしまい、つらい思いをする末端冷え性に悩んでいる女性は、少なくないようです。彼氏や旦那さんと手をつなぐと、パートナーから「手が冷たいね」と驚かれることは、もはや末端冷え性の人にとって定番とも言える相手の反応でしょう。
そもそも手先や足先が冷えてしまうのは、何らかの理由で血流が手先や足先まで十分に行き届いていないためだと考えられます。つまり、末端冷え性は一種の血流障害とも言えるのです。
末端冷え性について体質だからと改善を諦めている人も少なくありませんが、末端冷え性は本人の意思と努力次第で十分に改善を見込むことができます。そこで今回は、末端冷え性に原因・症状・改善方法などについて、ご紹介したいと思います。
末端冷え性とは?
末端冷え性の症状・原因・改善方法などについて深く理解していただくためにも、まずは末端冷え性や冷え性という概念について、基礎的な知識を整理しておきたいと思います。
冷え性とは?
冷え性とは、身体全体としては寒さ・冷えを感じないものの、手・足・腰など身体の一部で部分的に寒さ・冷えを感じる症状・状態のことを言います。
一般的には、末端冷え性も含め「冷え性」は、あくまでも身体の症状あるいは患者の自覚症状のことであって、いわゆる西洋医学においては病気・疾患として認められていません。
このような西洋医学に対して、漢方や鍼灸を扱う東洋医学においては、冷え性を治療が必要な病気・疾患と捉えています。
冷え性の種類
一口に冷え性と言っても、その症状の現れかたから冷え性をいくつかの種類に分類することができます。
具体的には、末端冷え性(末端型冷え性)・下半身型冷え性・内蔵型冷え性の3種類に分類されます。
末端冷え性(末端型冷え性)
末端冷え性は、身体全体としては寒さ・冷えを感じないものの、特に手の指先・足の指先など四肢の末端が部分的に寒さ・冷えを感じる症状のことを言います。
末端冷え性は、10歳代後半から30歳代の女性に多く現れるとされていますが、症状が酷くなければ身体全体としては冷えを感じないので、末端冷え性と認識できていない場合もあります。
一方で、症状が酷い場合には、手先・足先の冷えが原因となって十分な睡眠がとれないことから、様々な関連症状も現れます。
下半身型冷え性
下半身型冷え性は、上半身では寒さ・冷えを感じないものの、腰から下の下半身において幅広い範囲で寒さ・冷えを感じる症状のことを言います。
下半身型冷え性では、一般的に足先で寒さ・冷えを感じ始めて、徐々に足首・ふくらはぎ・太もも・腰部と冷えを感じる部分が拡大していく点が特徴とされています。というのも、下半身の血流が悪くなっているからです。一方で、上半身の血流はそれほど悪くないので、温かい血液が上半身に集中することで、のぼせるような状態になることもあります。
内蔵型冷え性
内蔵型冷え性は、手足などの四肢が冷たくなるわけではなく、内臓などが格納されている身体の深部の体温が低下する症状のことを言います。
手足などの四肢で寒さ・冷えを感じるわけではないので、内蔵型冷え性であることを自覚・認識することは難しく、「隠れ冷え性」と呼ばれることもあります。平熱が36度を下回るような人は、内蔵型冷え性の可能性があるかもしれません。
身体の深部体温が低下すると、内臓の働きが悪くなるだけでなく、代謝や免疫まで低下しますので、身体に対する様々な悪影響が懸念されます。
末端冷え性の原因
このように末端冷え性は、身体全身では寒さ・冷えを感じないのにもかかわらず、特に手の指先・足の指先など四肢の末端が部分的に寒さ・冷えを感じる症状のことです。
それでは、末端冷え性は、どのような原因で発症するのでしょうか?末端冷え性の原因について、ご紹介したいと思います。
血行不良
末端冷え性の最大の原因は、血行不良だと考えられています。
というのも、血液循環が正常に行われていれば、温められた血液が全身の血管を流れることで四肢の末端まで熱が伝わるところ、何らかの要因によって血流が悪化することで四肢の末端まで熱が行き届かないからです。
つまり、何らかの要因によって手先や足先の血流量が減少することによって、手先・足先に熱が伝わらず冷えてしまうのです。
筋肉量の不足
このような血行不良の主な要因は、筋肉量不足と言えます。
血液循環は心臓がポンプのように拍動することで全身に送り出されるわけですが、実は全身のあらゆる筋肉が伸縮することで血管に圧力をかけて補助ポンプのような役割を果たしています。そのため、運動不足などで筋肉量が不足すると、補助ポンプの力が弱くなってしまいます。すると、心臓の力だけでは四肢の末端まで、十分な血流量を送れないのです。
ですから、一般的に男性より筋肉量が少ないとされる女性に、末端冷え性となる人が多くなるわけです。
筋肉量不足による発熱量の低下
このように血行不良をもたらす筋肉量の不足は、別の側面からも末端冷え性の原因となります。
どういうことかというと、筋肉が動く際には糖質や脂肪などをエネルギーに変換しますが、その時の化学反応で同時に熱が生み出されています。そのため、運動不足などで筋肉量が少ないと発熱量も低下しますので、血液を十分に温めることができなくなるのです。
したがって、筋肉量の不足は、補助ポンプとしての機能低下と発熱量の低下をもたらし、二重の意味で末端冷え性の原因となるのです。
自律神経の乱れ
また、血行不良・血液循環の異常は、自律神経のバランスが乱れることでも起こります。
そもそも自律神経は、交感神経と副交感神経で構成されています。交感神経は身体が緊張・興奮しているときに優位となり、副交感神経は身体がリラックスしているときに優位となります。
このような自律神経は、生命維持に必要な循環器・消化器などを支配して24時間休みなくコントロールするほか、体温調節などにも関与しています。そのため、交感神経と副交感神経のバランスが乱れると、心臓や血管などの循環器の働きにも乱れが生じ、体温調節にも影響が出てしまうのです。
ですから、自律神経の乱れが末端冷え性の原因と可能性も十分に考えられると言えるでしょう。
ちなみに、自律神経はストレスを受けることでも乱れますし、バランスの悪い食事や睡眠不足などといった日常生活における生活習慣の乱れからも影響を受けます。
女性特有の原因
前述したように、一般的に女性は男性よりも筋肉量が少ないことから末端冷え性になりやすいのですが、その他にも末端冷え性になりやすくする女性特有の原因が存在します。
生理・月経
女性には周期的に生理・月経があり、その都度一時的に体内の血液量が減少します。体内の血液量が減少すると、生命維持に必要な脳や内臓への血液供給が優先されますので、四肢の末端の血流が減少する可能性があります。
女性ホルモンのバランス変化
また、生理・月経に伴って女性ホルモンのバランスも周期的に変化します。
女性ホルモンのバランス変化は、自律神経にも作用することで体温調節にも関与します。つまり、女性ホルモンが自律神経に作用することで、体温を上げて妊娠しやすい状態にしたり、体温を下げて通常の状態に戻したりするわけです。
しかしながら、この女性ホルモンの自律神経への作用が自律神経の乱れにつながる場合もあるのです。その結果として、自律神経の乱れから循環器の働きや体温調節に影響が及んでしまうのです。
過度のダイエット
女性は男性に比べて、美しさを追求するあまり過度のダイエットに励んでしまう傾向にあります。十分な食事をして運動するダイエットならば問題ありませんが、食事の制限をするような偏ったダイエット方法の場合は、末端冷え性の原因となる可能性があります。
というのも、炭水化物(糖質)・タンパク質・脂質といった三大栄養素やビタミン・ミネラルなどの栄養バランスを欠くと、筋肉組織を維持できずに筋肉量が低下してしまうからです。
女性ならではのファッション
女性ならではのファッションも、末端冷え性の原因となる可能性があります。
例えば、ファッション性を重視した丈の短いミニスカートやショートパンツを身につければ、必然的に足は露出しますので冷えの原因になる可能性があります。
また、体型を良く見せるために、身体を締め付ける下着やタイトなパンツを身につければ、必然的に身体を圧迫することで血流を悪くしますから、冷えの原因になる可能性があります。
さらに、脚を美しく見せるためのストッキングなどは汗を吸収しない素材であることが多く、足裏や足指からの発汗で生じた水分が冷えることで余計に足先の体温を奪うことになり、末端冷え性の原因となる可能性があるのです。
末端冷え性の症状
このように末端冷え性は、様々な原因が複合的に重なり合うことにより、症状として現れるのです。それでは、末端冷え性では具体的に、どのような症状が現れるのでしょうか?
末端冷え性の具体的な症状について、ご紹介したいと思います。
末端冷え性の直接的な症状
末端冷え性では、定義にも現れている通り、身体全体では寒さ・冷えを感じないものの、特に手の指先・足の指先など四肢の末端だけが部分的に冷たく感じ、場合によっては冷えが原因で痛みを感じることもあります。
あまりにも手足が冷たく感じるため、手袋や靴下など装着することで保温を図っても、手足が温まるという感覚を得られることが少ないとされます。そのため、睡眠に際して布団の中に入っても、なかなか手足が温まることがないので、手足の冷たさや痛みが原因となって寝付けなかったり、浅い眠りとなります。
このように四肢の末端である手の指先・足の指先が冷えることによって、しもやけ(霜焼け)となることもあるとされます。しもやけは、血流悪化による血行不足によって生じる炎症のことで、手足など毛細血管が細い部位で発生しやすい疾患です。
末端冷え性の関連症状
末端冷え性は、前述のように血流不足・血行不良が最大の原因となって生じる症状です。
そのため、末端冷え性では手先・足先などの四肢末端の冷えや痛みのほかにも、血行不良に伴う関連症状が現れることがあります。
足のむくみ
血行不良ということは、動脈血が四肢末端まで行き届かないことと同時に、末端からの静脈血の流れも悪いことを意味します。
また、筋肉量の不足による補助ポンプの作用が低下していることも、四肢末端からの静脈血の血流の悪さやリンパ液の流れの悪さにつながります。
ですから、特に下半身などの余計な水分が血液やリンパ液で回収されず、足のむくみとなって現れることになります。
免疫力の低下
血行不良による手先や足先の体温の低下は、放置していると免疫力の低下をもたらすことがあります。免疫力が低下するということは、ウイルスなどに対する身体の抵抗力が弱まるということですから、ちょっとしたことで風邪をひきやすくなります。
その他の関連症状
手先や足先の冷えが、他の部位に波及すれば腰痛・肩こり・頭痛・神経痛などといった症状が現れる場合もあります。
また、血行不良や冷えによって便秘症状や肌荒れが現れたり、生理不順を招くこともあるとされています。
末端冷え性の改善方法
それでは、末端冷え性の症状が現れた場合、どのようにすれば末端冷え性の症状を改善・解消することができるのでしょうか?
そこで、末端冷え性の改善法・改善策について、ご紹介したいと思います。
有酸素運動・ストレッチ
末端冷え性の主な原因は、血行不良と筋肉量の不足です。ですから、ウォーキングなどの有酸素運動を実施することが、血流改善と筋肉量の増加につながるので、末端冷え性を改善する最も効果的な方法と言えるでしょう。
また、ストレッチを行い身体全体を動かすことも、血流の改善につながります。ストレッチポールなどの器具を使ってみれば、より身体全体を動かすことにつながるでしょう。
忙しい日々の中では、敢えてウォーキングなどをするためのまとまった時間を確保するのが難しいこともあります。その場合は、掃除などの家事の際に脚の曲げ伸ばしを意識してみたり、通勤の際に1駅前で降りてその区間を歩いてみたり、エレベーターを使わずに階段を使うなど、暮らしの中で身体を動かすように工夫してみましょう。
お風呂に浸かる
末端冷え性の冷え解消方法として、即効性があるのが入浴です。忙しいからとシャワーだけで済まさずに、湯船にお湯をはって身体を温めることが重要です。
入浴前に水分を摂取して、じわりと発汗する程度までお風呂につかると、血流が良くなるでしょう。
また、お風呂に浸かることは、心身をリラックスさせる効果があり、自律神経のバランスを回復させる上でも有効とされています。
マッサージ・ツボ押し
入浴後に身体が温まっている際に、手や足などの四肢をマッサージすることも血流を促すことになり、末端冷え性の改善法の一つとなります。
また、東洋医学の鍼灸では、血流を促すツボがいくつか存在しますので、マッサージとともにツボを指圧すると良いでしょう。指圧が面倒であれば、足裏に湧泉という血流を促すツボがありますので、青竹踏みやゴルフボールを踏むことでも、同じような効果が期待できるでしょう。
身体を温める効果のある食材を摂取する
末端冷え性の冷え対策として、身体を温める効果のある食材を意識的に摂取することも良いかもしれません。身体を温める効果のある食べ物の代表格は、生姜(ショウガ)です。また、ゴボウや大根などの根菜類や大豆などの豆類なども、身体を温める効果を持っているとされています。
このような考え方は東洋医学に由来しますので、興味がある方は漢方薬や医食同源の思想から生まれた薬膳料理などについて調べてみるのも良いでしょう。
その他の改善方法
このような末端冷え性の改善方法の他に、十分な睡眠時間の確保や栄養バランスのとれた食事をして規則正しい生活を送ることも大切です。規則正しい生活をすることで、自律神経のバランスを維持できるからです。
また、過度で偏ったダイエットも避ける必要があります。ダイエットと末端冷え性の改善の両方を求める場合は、運動をするダイエット方法を選びましょう。
さらに、末端冷え性を自覚する場合には、締め付けの強い下着などの着用は避けたほうが良いかもしれません。
それでも改善しなければ病院へ
末端冷え性の改善方法をご紹介しましたが、あらゆる方法を試しても冷えが改善しないのであれば病院を受診しましょう。
もしかしたら、病気の可能性があるかもしれません。手足などの四肢末端に冷えが現れる病気としては、バージャー病やレイノー病が挙げられます。いずれも動脈に閉塞や収縮が起こり血流が悪化することで手先や足先に冷えやしびれといった症状が現れます。
まとめ
いかがでしたか?末端冷え性に症状・原因・改善方法などについて、ご理解いただけたでしょうか?
たしかに、手先や足先が冷えてしまう末端冷え性は、血流が手先や足先まで十分に行き届いていない一種の血流障害です。
しかしながら、その血流障害の主な原因は筋肉量の不足ですから、末端冷え性は本人の意思と努力次第で十分に改善を見込むことができるのです。
ですから、末端冷え性について体質だからと改善を諦めずに、本記事を参考にして末端冷え性の解消にチャレンジしてみてください。
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