普段過ごしている中で胃の痛みを感じることがあるかもしれません。それは暴飲暴食をしてしまった翌日であったり、ストレスが多い日が続いているなどのことが背景にあるでしょう。
一方で細菌感染によって起こる慢性胃炎という病気があります。これはピロリ菌という細菌に感染することで起こります。誰しも一度は聞いたことがあるかもしれませんね。慢性胃炎とはどういう病気なのか。詳しくみていきましょう。
慢性胃炎の症状
慢性胃炎とはその名の通り、慢性的に胃炎症状が繰り返される病気のことです。
胃粘膜に炎症が見られ、それに伴い様々な症状を発症します。具体的には以下の自覚症状がみられます。
腹部膨満感
お腹が張っている感じを自覚します。慢性胃炎では胃の働き・胃腸機能が低下してしまっているので、こういった症状を感じるのですね。
食事をしても、お腹の違和感を感じることがあるでしょう。腹部膨満感の原因は?病気の可能性もある?対策方法や解消できない場合の薬を紹介!の記事も参考にして起きましょう。
胃もたれ
特に変なものを食べていないのに、なんとなく胃もたれを感じる…これも慢性胃炎の特徴的な症状です。
胃もたれなどの不快症状が長く続くようであれば、病気の可能性があるかもしれません。
胃痛
炎症症状が起きているので、胃部の痛みを感じます。
キリキリとした痛みを感じ、空腹時に起こることがあります。これも症状が長期間続いているようであれば注意が必要でしょう。
吐き気・嘔吐
症状が激しいケースでは吐き気や嘔吐を伴うことがあります。
体調がかなり悪い状態と推測でき、早めの治療が必要になるでしょう。我慢せず病院へ行くことが大事です。
食欲不振
長期的な胃の違和感・不快感から、食欲が低下してしまうことがあります。食事をしても胃のあたりの上部腹部不快感・違和感はぬぐえず、それがいつも続きます。
精神的にもかなりの負担となる状態です。
ほかの病気との区別がつきにくい
慢性胃炎の症状はほかの胃の病気にも同じように見られます。それは胃潰瘍や胃がんといった病気です。つまり、自覚症状だけでは慢性胃炎と診断することは難しく、きちんとした検査をする必要があります。
どちらにせよ長い間胃の違和感があるようであれば、何かしらの病気の可能性があります。症状を放置せず、病院へ行き検査をする必要があるでしょう。放置するほど病気は進行していくので、早めに対応するようにしましょう。
慢性胃炎の原因
慢性胃炎の原因について詳しく見ていきましょう。
慢性胃炎の原因
慢性胃炎の原因はピロリ菌です。ピロリ菌は正式名称「ヘリコバクター・ピロリ」と呼ばれます。ピロリ菌は強力な胃酸内でも生存することができる細菌で、1980年代に発見されました。ピロリ菌感染者・保菌している日本人は実に6,000万人と呼ばれていて2人に1人が持っていることになります。年齢が上がるほど保菌率は上がります。
胃に住み着いたピロリ菌はアンモニアという成分を産生し始めます。このアンモニアは胃の粘膜を刺激し、炎症を発症。慢性胃炎の原因となります。また、びらんと呼ばれる症状はなく、胃が刺激され続けると萎縮性胃炎というタイプの胃炎に移行することがあります。
ピロリ菌は経口から感染します。特に免疫力の弱い幼児期に感染するといわれています。年齢が高くなるほどピロリ菌の感染率が高くなるのは、衛生状態が悪い時代に生まれ育ったからといわれています。
萎縮性胃炎
長期間、ピロリ菌が胃へ刺激を与え続けることで起こる萎縮性胃炎。萎縮性とは胃粘膜表面が薄くなってたり、胃腺が萎縮しまう状態です。症状がさらに進行すると胃がんのリスクを高めるといわれています。
萎縮性胃炎が進行すると、胃粘膜の萎縮や胃粘膜病変が起こるので胃酸や粘液の分泌量が低下といった胃機能の低下がみられます。胃に深刻なダメージを与えてしまい、日常の生活にも影響を及ぼすことがあるでしょう。
また、腸上皮化生という症状も起こります。これは胃の粘膜・細胞が腸の粘膜・細胞に変化してしまう症状です。傷ついた胃粘膜を修復するほど腸粘膜に変化してしまい、胃がん発病のリスクを高めることがわかっています。ちなみに胃酸が十二指腸に流れることで十二指腸の粘膜が胃の細胞のように変質してしまう胃上皮化生という症状もあります。
胃腸炎
慢性胃炎とは別に胃腸炎があります。急性のケースが多く、嘔吐や腹痛、下痢症状などがみられます。
暴飲暴食がきっかけとなることもありますが、ウィルスや細菌によるものもあります。ウィルス性のものであれば、抗生剤を服用し治療していきます。
急性胃炎との違い
慢性胃炎と似たような症状を起こす病気として、急性胃炎があります。その名の通り、症状が急速に進行し、胃炎症状が起こる病気です。この病気の原因はピロリ菌とは関係なく、暴飲暴食やストレスです。
胃の違和感や痛みが一過性のものであれば、急性の胃炎である可能性が高いでしょう。発病の前にアルコールやタバコ、過度な香辛料を摂取していたり、悪い生活習慣やストレスがかかっているようであれば、それが引き金となっているでしょう。
慢性胃炎とは明確な原因の違いがあり、区別することができます。体にストレスもなく、嗜好品もあまりしない。それなのに胃の違和感がある…そういったときは慢性胃炎などの病気に罹っているかもしれません。
慢性胃炎の検査と治療
慢性胃炎の場合、X線検査や胃内視鏡検査(胃カメラ・胃カメラ検査)を行い、病状を確認します。自覚症状だけでは慢性胃炎の診断は難しいため、直接見るということが重要な検査となるでしょう。
内視鏡検査と併用して、ピロリ菌の感染検査を行うことがあります。ピロリ菌の産生するアンモニアの有無、顕微鏡検査、培養検査などを行い、菌の存在を確認していきます。
そのほか、内視鏡を使わない検査法もあります。血液や尿、呼気を検査することで、ピロリ菌感染しているかどうかがわかります。複数の検査をすることでより精度を高めることができます。
定期的な検査を心がける
胃の病気は自覚症状が軽度であることもあり、病院へ行くことがあまりありません。胃もたれや違和感は日常的なものであり、深刻に受け止められないこともあるでしょう。
しかし、もし病気を発病していた時、その進行は知らず知らずのうちに進んでいきます。それでいて目で見えませんから、なかなか自覚しにくいものです。
慢性胃炎もそうですが、胃がんなどの重篤な病気の可能性もあることから、定期的に内視鏡検査を受けることが大切です。意識して時間を作って、検査を受けるようにしましょう。
慢性胃炎の治療
ピロリ菌の感染検査で陽性と出た場合はどういった治療方法をするのでしょうか。基本的にはピロリ菌の除菌治療を受けることとなります。これは薬剤を用いた治療法です。
除菌療法で使われる薬は具体的に胃酸の分泌を抑える薬(胃酸分泌抑制薬)と、抗菌薬、その他胃粘膜保護薬を服用します。非常に高い成功率で除菌することができ、その後の症状も薬物療法で改善することが期待できるでしょう。
腹部膨満感などの依然として腹部不快感、違和感があるようでしたら、運動機能改善薬を服用することがあります。これにより胃の運動機能が回復し、症状を緩和することができます
治療後は検診を受ける
薬の服用期間が終わってから、再度、ピロリ菌の有無を検査します。これでいなくなっていれば治療は完了します。しかし、一方でまだいた場合は、処方薬を変え再び服用を始めます。
治療薬をきちんと飲み終えたからといって、完全に除菌できないケースもあるので、服用が終わっても検査する必要があります。検査には忘れず行くようにしましょう。
慢性胃炎と病気の予防
慢性胃炎にしろ、胃の病気にかかってしまったのであれば、胃に優しい習慣を身に付けたいものです。
習慣を身につけることができれば、病気を遠ざけ、いつまでも健康でいることができます。日々の生活の中で実践したい習慣は次のことが挙げられます。
食べ物をよく噛む
食べ物をよく噛むことは胃腸に優しい行動の一つです。食べ物が細かくなり消化がスムーズになったり、唾液と食べ物がよく混ざるので胃に優しいというメリットがあげられます。これは食事療法としても重要な食べ方です。
反対に食べ物をよく噛まず、咀嚼回数が少ないとそれだけ胃に負担がかかってしまいます。胃酸の分泌過多にも繋がりますから、注意が必要でしょう。普段の食事からよく噛むということを意識してみてください。
ゆっくりと食べる
よく噛む、ということと共通する部分もありますが、食事をゆっくりと食べることも大事です。ゆっくりと食べる効果は過食を防ぐということ。少しの量の食事でもお腹を満たすことができるので、胃への負担を減らすことにつながります。
ゆっくり食べる方法は、よく噛むこと、また口の中の食べ物がなくなってから次の食べ物を食べるといった工夫が挙げられるでしょう。食べるのが早い人は注意してみてください。
嗜好品はほどほどに
お酒やタバコなどの嗜好品は、当然ですが取りすぎると体に負担をかけます。それは胃も例外ではありません。胃癌などの病気のリスクを高めてしまったり、体調不良の原因にもなるでしょう。どちらもほどほどの付き合いを意識してください。
食生活に気を配る
体は普段食べているものから作られています。また、エネルギーを作り出し、日々の活動の原動力にしています。食べ物が悪いものになると、体の機能も低下し病気になりやすくなるでしょう。
胃に関して言えば、消化の負担となるお肉などのものを大量に食べてしまったり、反対に野菜が少ないような食生活をしていると、あまり良くないでしょう。体の健康とは何かを考えて日々の食事を食べてみてください。
また、加齢が進むほど胃を守る粘液の分泌量も減り、病気のリスクが高まります。歳を重ねてからの食事が、若い頃と同じであれば、少し内容を考えなければならないでしょう。
健康のための運動もする
慢性的な運動不足は病気の元。デスクワークばかりで室内にこもっていると、どうしても運動機能が低下していきます。週に数回でも運動をする習慣を身につければ、病気を予防することができるでしょう。
そのほかの胃の病気
慢性胃炎のほか、胃の病気は様々です。ただ、共通していることはなんとなく胃の違和感を感じるということです。
ちょっとした違和感が大病につながっていることもあるかもしれません。胃の病気には以下があげられます。
胃潰瘍
胃の粘膜が薄くなり、潰瘍ができてしまっている状態です。初期症状では胃の違和感や膨満感などですが、進行するほど胸焼けや腹痛などがみられます。さらに進行すると出血を伴い、吐血や血便などがみられます。
胃潰瘍では日常のストレスが引き金になることもありますし、普段の食生活が乱れていることもまた病気の原因になります。次第に症状が大きくなってくので、早めの対応が必要です。
詳しくは、胃潰瘍の症状をチェック!治療するための方法は?を読んでおきましょう。
急性胃炎
慢性胃炎とは異なり、症状が急激に現れ発症する胃炎です。胃潰瘍同様、普段の生活で不摂生を行なっていたり、ストレスを受けていると発症することがあります。また、過剰なアルコール、タバコ、薬の副作用によっても起こることがあります。ウイルスや細菌によるものもあります。
みぞおちの痛み、膨満感、違和感、嘔吐などを発症し、場合によっては吐血症状がみられることもあります。そのような症状がみられたときは早急な対応が必要でしょう。
治療は原因となっているものを取り除くことが大切です。ストレスであれば、距離をとったり、胃の負担となるような食生活を避けるようにしましょう。
胃がん
胃の病気の中でも深刻なものです。最近では内視鏡検査の進歩によって、定期検診時に早期発見できるようになりました。治療も負担が少ない内視鏡手術などで、早い段階で社会復帰が可能となります。
一方で腹部の違和感を感じつつ、それを放置してしまうと病気は知らず知らずのうちに進行してしまうことがあります。胃炎症状と一緒に、体重減少などがみられるようであれば注意が必要です。
逆流性食道炎
胃の病気ではないですが、胃に原因があるケースがあります。胃酸が逆流することで食道の粘膜を傷つけ炎症を起こしてしまいます。
病気の原因は加齢による胃と食道を閉じる部分の筋力低下とされていますが、肥満などによって胃が圧迫されることでも起こります。若い人でも発症するケースがあるので、肥満には注意が必要でしょう。
詳しくは、逆流性食道炎とは?症状・原因・治療法・検査法を知ろう!どんな人がなりやすい?を読んでおきましょう。
食中毒による病気
稀なケースですが、食べた物から食中毒を起こすことがあります。特に生ものには注意したいものです。海鮮などを外で食べるときは警戒しましょう。
ストレスを受けやすい胃腸
胃腸はストレスを受けやすい臓器といわれています。人によってはちょっとした緊張でも胃がキリキリしてしまうなんてことがあるかもしれませんよね。それほど胃腸は敏感な臓器です。
ストレスが一時的ならいいのですが、例えば仕事でいつもストレスを受けているようですと、将来の病気の可能性が高まるでしょう。小さなストレスの蓄積が病気を招いてしまうことがあるのです。
昔よりも食欲が減衰していたり、腹部の違和感が続いている…こういったことに心当たりがあるようですと、注意が必要かもしれませんね。
ストレスとの付き合い方を考える
ストレスを受けると胃酸の分泌が促進されます。これが胃の粘膜のバリアを弱めることにつながります。慢性胃炎の人は粘膜が弱っていますから、なるべく胃酸の分泌を抑えたいもの。そのためには、やはりストレスの付き合い方を考える必要があるのです。
自分なりのリラックス方法を日常の中に取り入れ、ストレスを軽減していく。これを続けるだけでも、そうでない時と比べて体の負担は軽くなると思います。
違和感を大事にする
健康であれば体のどこにも違和感を感じることはありませんよね。しかし、食事をしたときや食後、そういったときに強い違和感を感じるようであれば、何かしらの異変が起きているかもしれません。
ただ、それを疲れとか食べ過ぎだと判断してしまうと病気を見逃すことになってしまうでしょう。続く違和感を大事にしなければ、病気発見はどんどん遅くなってしまいます。
違和感は最初の自覚症状であり、大事にしなければならない体のサインです。違和感を感じたら、早めに病院へ行くようにしてくださいね。早期対応が健康を決めるのです。
まとめ
慢性胃炎は細菌感染によって引き起こされる病気でした。しかし、自覚症状だけでは病気と診断することはできず、その状態が放置されてしまうことがあるかもしれません。
少しの違和感でも長期間続いているようであれば、病気の可能性があるかもしれません。そういったときは、早い段階で検査を受けるようにしてください。市販薬を飲み続けて治らないことがあるようでしたら注意が必要でしょう。
どんな病気でもそうですが、早期発見・早期治療がなにより大切なことです。体の異常を察知したら早めの行動をするようにしましょう。
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