「仕事でストレスがかかると、胸焼けや、胃の痛みなどを感じる」という人はありませんか?
このような症状が出ているのに、原因がはっきりしない場合、神経性胃炎の疑いがあります。ここでは、神経性胃炎の症状やその原因、対処法などについて紹介していきます。
◆胃ってどんな働きをしているの?
胃は、食道から送られてきた食べ物を一時貯めておく袋のような臓器で、食べ物が胃の中に入っていない時はぺちゃんこの平たい状態ですが、ゴムのように伸び縮みができるので、食べ物が入ってくると広がります。
胃の位置は、通常、食べ物が入っていない時にはへそより上にありますが、食べ物が入ると伸びて下方がへそより下がります。
胃の役目は、蠕動運動といううねるような動きをして食べ物をよくこねることと、胃液を分泌して食べ物を消化することです。
胃は、平滑筋という筋肉で作られていますが、この筋肉は、建て、横、斜めと色々な方向に走っていて、蠕動運動が効果的に行える仕組みになっています。
胃の内側は粘膜で覆われていて、この粘膜の中に、胃液を分泌する分泌腺があります。胃液は、主に塩酸や、ペプシンという消化酵素からなっており、食べ物に含まれるタンパク質を消化する役割があります。
◆神経性胃炎って?
神経性胃炎とは、心理的なストレス要因によって胃が炎症を起こしている状態です。心配事や悩みで、胃のあたりに痛みを感じたことはありませんか?
胃液の分泌などの胃の働きは、自律神経によってコントロールされています。この自律神経は、ストレスによって影響を受けやすく、精神的・肉体的なストレスが加わると、働きが乱れ、胃の働きも狂うことが知られています。
すぐに痛みがなくなるようなら特に注意は必要ないかと思いますが、胸がムカムカしたり、胃が痛むなどの違和感が続く場合には、神経性胃炎の疑いがあります。
ここで、胃の検査を受けたのに、特に異変が発見されないという場合は、神経性胃炎であることが多いようです。もっとも、最近では検査で異常は判明しないのに、胃炎という病名をつけるのはどうか、という理由から、機能性胃腸障害、機能性ディスペプシアという場合もあるようです。
神経性胃炎の症状としては、胃のもたれや、ムカつき、吐き気、胃やみぞおちの痛み、胸やけなどがあります。
◆神経性胃炎の原因は?
食べ物を消化するために、胃の中では胃酸(塩酸)やペプシンからなる胃液が分泌されます。この胃酸やペプシンは非常に消化力が強く、野菜や肉はもちろん、魚の骨なども消化する力を持っています。
そこで、自らが分泌した胃酸やペプシンで胃の粘膜が消化されてしまわないように、粘液というものが分泌され、これが自家消化から粘膜を守っています。
胃酸やペプシンの分泌は攻撃因子と呼ばれ、粘液の分泌による粘膜の抵抗力は防御因子と呼ばれています。健康な人では、この両者のバランスがうまくとれているわけです。
ところが、攻撃因子が強すぎたり、あるいは防御因子が弱すぎて攻撃因子に抗しきれないときに、胃酸やペプシンが胃の粘膜を消化してしまい、胃炎が起きるのではないかと考えられています。
○ストレスと胃炎
それでは、なぜ、攻撃因子が強くなったり、防御因子が弱くなったりするのでしょうか?
誘因の一つとして、近年の社会環境の複雑化による精神的、あるいは肉体的ストレスの増加が挙げられます。
慢性の胃炎が特に発生しやすい特定の職業や生活環境があるわけではありませんが、たとえば勤務先の仕事が忙しく、精神的、肉体的に疲れている時などに、胃炎が発生しやすいといわれます。
これは精神的緊張の連続や肉体的疲労、心配、不安、恐怖などのストレスが、神経に作用して胃酸やペプシンの分泌を高め、胃炎が発生しやすい状況を作るためではないかと考えられています。
◆病院での治療は?
神経性胃炎は、出血していたり、穴が開いている場合を除けば、まず胃の機能を回復させるための内科的治療を行うのが原則ですので、胃炎が疑われる症状のあるときは、消化器内科の診察を受けます。
また、神経性胃炎の場合には、自律神経との関係が強いため、自律神経を回復させる薬や、精神的なストレスを和らげる薬などを用いることがあります。
症状からだけでは、他の胃腸の病気と区別がつかない場合もあるので、必要によっては、X線検査と内視鏡検査が行われます。
・X線検査
胃はそのままではX線に写りにくいので、造影剤のバリウムを飲んで、X線写真を撮ります。
また、バリウムと一緒に発泡剤も飲みます。この薬は胃の中で空気を出して胃を拡張させ、胃壁のしわなど細かい部分まで写し出すようにするものです。
X線検査により、粘膜のわずかな変化など、小さな異常でも発見することができます。胃に潰瘍があれば、粘膜にくぼみのできた独特の陰影が写ります。
・内視鏡検査
内視鏡検査は、ファイバースコープとも呼ばれる内視鏡を口から飲み込み、管を通して光を当てて胃の内部を直接見る検査です。
内視鏡検査には、その場で直接胃炎の有無を確認できるという利点があります。また、内視鏡にカメラを装着し、問題のある部位を見ながらカラー写真を撮ったり、詳しく見たい部分をテレビ画面に拡大して写し出すこともできます。
見つかった部位がどのような病変なのかはっきりしない時には、内視鏡で見ながら、管の先端にセットしたメスのようなもので、病変部分や周辺の組織を6~7箇所採取して、顕微鏡で調べます。
この検査を生検といい、もし大きな病気なら、この組織片を調べることで分かります。
・胃液検査
胃液の状態を調べるため、胃液検査もしばしば行われます。
一口に胃炎と言っても、胃酸やペプシンの分泌量は患者によって差があります。したがって、どんな治療薬をどのくらい投薬するのが適当かを決めるためには胃液の状態を知らなくてはなりません。
検査方法は、細いゴム管を口から、胃内に届くまで飲み込み、この管を通して胃液を採取するものです。
○具体的な治療法は?
神経性の胃炎の場合には、特に胃の中に身体的な症状が認められない場合もあります。自律神経の失調が認められるときには、自律神経安定剤が使用されます。
心理的な要因が関与している胃炎には、精神療法や抗不安薬の投与がなされます。また、自己暗示によって心身の調和をはかる自律訓練法が効果を示す場合が良くあります。自律訓練法とは、自己統制を目的として、自分で自分に暗示をかけて、体の働きを調整しようとするものです。
例えば、振動の拍動がゆっくりしてくるといった自己暗示をかける訓練を続けることによって、実際に心臓の拍動もゆっくりとしてきます。
一方、ストレスでしばしば胃に大量出血をきたし、ときには潰瘍ができて胃の壁を破って穴を開けてしまい、急性腹膜炎を起こす場合もあります。
出血の程度が軽いものは、とりあえず内科的な処置で止血が試みられますが、出血が止まらずひどくなる場合は、手術が必要です。
○神経性胃炎の薬って?
では、神経性胃炎の薬には、どのようなものがあるのでしょうか?いくつかの種類がありますので、紹介していきます。
・胃の調子を整え、回復させる薬
例えば、消化管運動機能改善薬や健胃剤といった、消化器系の臓器の具合を良くする薬や、酸分泌抑制薬や消化剤という、胃酸の調子を調節して胸やけを抑える薬などが処方されます。
・気持ちを落ち着かせる薬
感情の起伏が激しくなる、抑うつの症状を和らげるための抗うつ薬や、不安やイライラを和らげる働きのある抗不安薬など、うつ病の治療に用いられる薬が処方されます。
・漢方薬
差し込むような胃の痛みに効果があるとされる安中散や、胸のつかえるような感じを強く感じるときに処方される半夏厚朴湯、胃のつかえるような感じを解消するのに使われる半夏瀉心湯、ストレス性の胃炎に効くと言われる六君子湯、胃もたれに効果が期待される平胃散など、その他にも多くの漢方薬があります。
神経性胃炎に効果が期待される漢方薬は、症状に合わせてたくさんの種類がありますので、探せば、自分の症状にあった漢方薬が見つかるかもしれません。
市販薬でも胃腸の薬はたくさんありますので、まずは、自律神経の乱れを抑えて、胃の不具合からくる胃痛・食欲不振・はきけなどの症状に効果が期待できる、漢方胃腸薬などを選んでみてはいかがでしょうか?
それでも具合が良くならない場合には、医療機関を受診してみることをおすすめします。
◆神経性胃炎になってしまったら
病院を受診して、神経性胃炎との結果が出た場合には、処方された薬を服用するとともに、根本原因であるストレスを解消することが大事になってきます。
食生活を見直したり、睡眠をしっかり取ったり、日常生活の中に運動を取り入れるよう心がける、など生活習慣を見直すきっかけにするとよいでしょう。
◆神経性胃炎にならないために
神経性胃炎は、ストレスからくるものですから、ストレスを溜めないよう、日常生活の中にリラックスできる時間を取り入れるのが大切になってきます。
例えば、ゆっくりとぬるま湯に浸かったり、好きな音楽を聴いたり、適度に体を動かすなど、自分に合ったストレス解消の方法を探すと良いでしょう。
また、食生活が乱れると、精神のバランスも乱れがちになってくるため、規則正しく、バランスの良い食生活を心がけ、自律神経の乱れを整えるような呼吸法、運動を身につけるのもおすすめです。
◆まとめ
いかがでしたか?
神経性胃炎は、他の胃炎と同じように、症状を抑えることがまず先決ですし、実は別の病気が潜んでいる可能性もありますので、市販の薬を服用しても良くならない場合には、早めに病院へ行くことをおすすめします。
また、神経性胃炎はストレスが原因と言われていますので、ストレスフルな生活であることを見なおす、一つのきっかけにしてみてはいかがでしょうか?