HIVが完治する可能性はない?原因や対処方法について

2015年11月、アメリカの俳優チャーリー・シーンがHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染していることを公表して、HIVとエイズ(AIDS/後天性免疫不全症候群)が改めて注目されました。

HIVの感染によって発症するエイズは、1980年代は"死の病”と恐れられましたが、治療法の進歩により、患者の生命予後が飛躍的によくなりました。しかし、HIVを「完治」する方法はいまだにありません。HIV感染症について調べてみました。

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HIVとは

レッドリボン

HIVとはどのような病気なのでしょうか。

HIVとエイズ(AIDS)

健康を脅かす細菌やカビ、ウイルスと闘い、人体を守る防御システムを「免疫」と呼び、白血球やリンパ球などが、病原菌を攻撃する抗体の生産や、病原菌に感染した細胞の除去を行っています。

HIVとは「ヒト(Human)免疫不全(Immunodeficiency)ウイルス(Virus)」のことで、免疫機能で重要な役割を担うリンパ球の一種であるCD4リンパ球という細胞に感染し、破壊してしまうウイルスです。

HIVに感染すると、Tリンパ球の中でHIVが増殖し始めます。HIVが増える一方、CD4リンパ球が破壊されていくため、免疫力が徐々に低下して健康なときには問題にならないような感染症(日和見感染症)を発症するようになります。

HIV感染と免疫力の低下で起こる代表的な23疾患が、エイズ発症の「指標疾患」として決められていて、どれかひとつ以上を発症した状態を「エイズ」と呼びます。つまり、エイズとHIV感染は同じではありません

感染後の経過

HIVに感染すると、

  1. 感染初期(急性期)
  2. 無症候期
  3. エイズ発症期

という経過をたどります。感染後2週間から4週間の間にHIVは増殖を始め、発熱やのどの痛み、だるさ、下痢など風邪やインフルエンザに似た症状が出ることがありますが、数日から数週間で症状が消え、「無症候期」と呼ばれる状態になります。

無症候期には個人差があり、15年経っても症状が現れない人がいれば、感染から2年ほどでエイズを発症する人もいます。症状がなくて感染に気づかなくても、HIVが体内で増殖しているため、ほかの人に感染させる恐れがあります。

HIVが増える一方でCD4リンパ球は破壊されていき、健康なときには血中1マイクロリットルあたり700~1500個あるCD4リンパ級が200個未満にまで減少すると、免疫不全状態となってエイズを発症します。

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HIV/エイズの歴史と現状

アフリカ2

ここ数年、エボラウイルスによるエボラ出血熱が西アフリカで爆発的に流行し、多くの人が亡くなりました。コレラや結核、天然痘など、感染症の脅威はヒトの歴史とともにありましたが、HIVはいつ誕生して、どのように拡大したのでしょうか。

HIVの歴史

HIVは、アフリカのサル類が保菌していたウイルスがヒトに伝わったと考えられています。1930年代、アフリカ中西部で狩人の男性が、SIV(サル免疫不全ウイルス)を持つチンパンジーから感染したことを起源とする説が有力です。

2015年、HIVの数グループの株のうち、これまで起源が判明していなかった2つのグループが、カメルーン南西部のゴリラに由来すると分かり、20世紀前半のアフリカにおいて、サル類からヒトにHIVが感染したことが裏づけられました。

1981年、診断がつかずに広がっていた疾患が、初めて「エイズ」として特定されました。同年6月、アメリカ・ロサンゼルスで同性愛者の男性5人(20代~30代)が、カリニ肺炎を発症していると報告され、さらに7月、ニューヨークとカリフォルニア州で、20代から50代の男性26人のカポジ肉腫(皮膚がんの一種)が報告されました。いずれも免疫不全によるものと分かり、1982年に「AIDS(エイズ)」と名づけられました。

1983年、フランスのモンタニエ博士とアメリカのギャロ博士がほぼ同時期にエイズの原因ウイルスの分離と特定に成功し、1986年5月にHIVと命名されました。

世界と日本の感染者数

UNAIDS(国連合同エイズ計画)の推計によると、2014年末現在、世界のHIV陽性者数は3690万人で、年間200万人が新たにHIVに感染し、年間120万人がエイズによって死亡しています。

新規HIV感染者の数は、310万人だった2000年以降35%減少しています。死亡する人数も、最多だった2004年以降42%減少しています。
地域別でみると、HIV陽性者数が最も多いのはサハラ以南のアフリカで、2580万人が感染しています。日本を含むアジア太平洋地域も、HIV感染者の多い地域です。

日本をみると、2014年に報告された新規HIV感染者数は1091件、エイズ発症者数は455件でした。血液製剤による感染例を除く累計で、日本のHIV感染者数は1万6903人、エイズ発症者数は7658人です。

2007年以降、新たな感染者数は年間1000件以上で推移しています。エイズ発症者数も2006年以降、年間400件以上で推移し、ほかの先進国で感染者の増加が抑えられているのに対し、日本のHIV感染とエイズ発症数は高止まりしている状態です。特に、2014年は20代の新規HIV感染者数が148件にのぼり、20代の新規感染で過去最多を記録しています。

HIVの感染経路

HIVの主な感染経路は、「性的感染」「血液感染」「母子感染」の3つです。

HIVに感染すると、血液、精液、膣分泌液、母乳などからHIVが多く分泌されるようになります。HIVは感染力が弱いウイルスで、唾液や涙、尿などの体液からは、ほかの人に感染するほどの量が分泌されません。

一般的な社会生活を通して感染することはほとんどなく、粘膜の接触や、血管に達するような皮膚の傷を介して感染します。粘膜が触れ合う性行為による感染が最も多く、感染経路の8割以上を占めています。ほかには注射器具の共用、母子感染です。母親が感染者の場合、妊娠中や出産時に赤ちゃんに感染することがあります。

予防と早期発見

HIV感染を予防するには、HIVが多く分泌される血液や粘膜、傷ついた皮膚に触れないように、気をつける必要があります。

性行為でのコンドームの使用は、HIVに限らず、ほかの感染症予防にとっても大切です。また、自分がHIVに感染しているかどうか、HIV検査の受検も重要です。

日本でHIVの感染とエイズの発症が高止まりしているのは、感染者とエイズ患者が増加傾向であるのに、HIV検査を受ける人が増えていないことが指摘されています。HIVに感染した日本人のうち、3割にあたる約8000人が感染を知らずにいるという推定が、2015年11月の日本エイズ学会で発表されています。

早期発見は大切です。エイズを発症する前にHIV感染がわかれば、適切な時期に治療を始めることができ、生命予後が長くなります。

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HIVの「完治」への道のりは?

笑顔の子供

かつては”死の病”のように扱われたHIV感染ですが、今はHIVに感染しても、健康な人とほぼ変わらない生活が送れるようになりました。1990年代、3~4種類の抗HIV薬をあわせて飲む「多剤併用療法(HAART)」という治療法が開発され、体の中のウイルスの増殖を薬で抑え込むことができるようになりました。

HIV感染後の治療と生活

しかし残念ながら、HIVを完治する方法はいまだにみつかっていません。いったん感染すれば、HIVを体の中から排除することができないため、一生HIVと共に生きていくことになります。

感染が分かったら、専門病院を受診して免疫力の状態を把握し、医師と相談の上で投薬を開始します。抗HIV薬を投与して、血中のHIVを長期にわたって「検出限界」以下に抑えます。ウイルス量を減らして免疫力を回復させ、エイズ発症を防いで日常生活を維持します。新しい薬も増えて1日1回の内服で済むようになり、患者への負担は軽減されています。

ただしHIVのワクチンや根治薬がないため、定期的に病院に通い、生活に注意し、一生薬を飲み続けなくてはなりません。医療費もかかります。

変異しやすいウイルス

完治が難しい理由は、HIVが変異しやすいウイルスだからです。ある薬が効果を発揮しても、突然変異を起こして耐性を持ち、ふたたび増殖し始めてしまいます。

そのため、複数の薬を組み合わせるHAARTが行われるようになりました。HIVは変異をくり返すだけでなく、免疫細胞を「隠れ家」にして潜み続けます。

2013年、HIVの隠れ家(病原巣)が予想以上に大きいことをアメリカの研究チームが報告し、完治の難しさを裏づけました。

完治/再発防止法をめぐる研究

それでも、世界中で研究が行われています。具体的な例では2013年7月に国際エイズ学会で報告された「造血幹細胞移植」の知見です。HIVに感染して投薬を受けていた男性患者2人が、リンパ腫の治療で骨髄移植(造血幹細胞移植)を受けたところ、移植から6~9ヵ月後に、体内からHIVが検出されなくなりました。

投薬を中止してもHIVが検出されない状態が続いたため、造血幹細胞移植による治療の可能性が報告されたのですが、残念ながら、いったん消滅したとみられたHIVが数ヵ月後に再び検出されてしまいました。

ほかに、生きた細胞で任意のDNA配列を切断し、ゲノム情報を自由に改変する最新技術「ゲノム編集法」により、感染細胞のウイルスを選択的に除去する方法なども検討されています。

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まとめ

1981年の発見からわずか35年の間に、HIV感染とエイズは”死の病”から”慢性疾患”へと制御されてきました。しかし完治方法がないため、脅威は続きます。

世界のHIV感染者数は非常に多く、患者の負担となる医療費の問題も含めて、HIV/エイズ対策は世界規模で取り組むべき課題になっています。日常での予防を意識し、早期発見に努めることが大切です。

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