線維筋痛症の症状について!原因や治療法、発症しやすい人とは?

首や胸、背中からお尻、手足の関節や筋肉など、身体の広い範囲があちこち痛い。病院に行っても、「特に異常は見られない」と言われる。でも、痛みはだんだんひどくなるばかり・・・こんな症状は、もしかしたら「線維筋痛症」かもしれません。

「線維筋痛症(せんいきんつうしょう)」・・・あまり聞いたことのない病気ですね。これは、いろいろな病名で呼ばれていた症状あるいは症候群をひとまとめにして「線維筋痛症」と呼ぶようになったためです。

身体のあちこちが激しく痛むばかりか、身体がこわばり、疲労感や倦怠感がとれません。気分が落ち込み、よく眠れなくなります。寝たきりになることもあります。

線維筋痛症とはどんな病気か?どんな症状があるのか?病気の原因は?治療法は?・・・繊維筋痛症について、お伝えします。

線維筋痛症とはどんな病気か?

weeping-beech-567726_960_720難病

線維筋痛症は英語でFibromyalgia(FM)、あるいはFibromyalgia Syndrome(FMS)と言います。Syndrome(症候群)と呼ばれるように、身体の広範囲に生じる慢性的な激痛を中心として、身体的・精神的なさまざまな症状を伴う病気です。

[線維筋痛症の原因は?]

「線維筋痛症」は、痛みを伝達する神経に何らかの異常が生じ、ささいな刺激を受けても激痛を感じるようになる「神経障害性疼痛」の1種と考えられます。つまり、神経が痛みに過敏反応するのです。

原因不明の難病

はっきり言うと、原因は不明です。血液検査・CTスキャン・MRI検査などでは、異常が見つかりません。そのため、診断が難しくなっています。同じように身体の関節が激しく痛むリウマチ性の疾患は、炎症や軟骨や骨の異常が見られるので、まず、リウマチ性疾患や内分泌異常による疾患ではないことを確認してから、線維筋痛症と診断します。原因不明のため、まだ治療法も確立していません。

ただ、比較的珍しい病気ではありません。日本では全人口の約2%近く、約200万人が罹患していると言われます。でも、これは病院等で「線維筋痛症」と診断された患者数で、未診断や誤診の人が多数いると考えられます。

発症要因

線維筋痛症の発症要因は、いくつかあります。

まず遺伝です。でも、遺伝病といわれるようなものではありません。「発症しやすい素質を受け継いでいる」という程度ですから、親が発症したから、必ず子供も罹患するということはありません。

遺伝以外の発症要因は、「線維筋痛症を発症するきっかけになる」という意味でトリガー(引き金)と呼ばれます。トリガーには外的要因と内的要因があります。

[外的要因]

交通事故など事故による外傷・むち打ち症・脊椎損傷、手術、抜歯、ウィルス感染などが、トリガーとなります。マイコプラズマ感染により、発症したケースもあります。身体に大きなダメージを受けることが、発症要因となるようです。

社会的に問題視されるのが、子宮頸癌ワクチンによる線維筋痛症の発症です。交通事故による発症とともに、なかなか認められないようです。

[内的要因]

社会的・心理的ストレスにより発症することが多いようです。解雇・倒産による失職・経済的困窮・離婚・家族との死別・介護など、生活環境の変化がもたらすストレスがトリガーになります。パニック障害が線維筋痛症を引き起こすきっかけになることもあります。

他の病気に伴って発症する

リウマチ性疾患にかかった場合にも、線維筋痛症を発症することがあります。リウマチ性疾患の中でも、関節リウマチが原病となることが多いと言われます。

[線維筋痛症を発症しやすいのは・・・]

線維筋痛症を発症しやすいのは、30代~50代の女性と言われます。欧米では、女性患者は男性の8~9倍、日本では約5倍程度となっています。希に子供や思春期にも発症しますから、発症する年齢範囲は広いと思われます。

ただ、中年女性の発症数が多いために、初期症状を更年期障害と誤診されることが多いようです。婦人科や内科、心療内科などを渡り歩く「ドクターショッピング」が少なくありません。

線維筋痛症の症状

gloomy-1215256_960_720激痛

線維筋痛症の主な症状は、慢性的な激しい痛みです。「身体の中で爆発が起きる」「キリを揉みこまれる」「万力で締めつけられる」など、痛みの表現はさまざまです。痛みの他にも、いろいろな身体症状や精神症状があります。

[痛み]

痛みには個人差があり、痛む場所も移動します。「チクチクする」程度から「焼けるような痛み」まで人によって違います。途切れることのない慢性的な痛みが続きます。

痛みが軽い間は日常生活に必要な事をなんとかこなすことができます。重症になると、末期癌の患者さんと同程度の痛みがあり、自力で生活することはできません。寝たきりになることもあります。痛みが激しくなると、意識がぼやけてしまうこともあります。

知覚が以上に敏感になっているので、わずかな音や光にも痛みを感じます。髪や爪に触れられただけで激痛が走ります。

痛みは全身に生じます。目の奥や舌にジンジンする痛みを感じることもあります。

[運動能力の低下]

激痛にともなって身体のあちこちがこわばり、運動能力が低下します。筋肉が痙攣(けいれん)したり、激しく疲労したりします。関節が痛むとともに腫れて、よく動かなくなります。今まで歩けた距離も歩けなくなり、自分では立ち上がることもできなくなります。

[その他の身体的症状]

全身に激しい疲労感と倦怠感があります。しびれたような感じ・耳鳴り・頭痛・頭重感・めまい・動悸・微熱・震えなどの症状が出ます。月経前症候群(イライラ・乳房の痛みなど)・頻尿・過敏性腸症候群(便秘・下痢)を発症することもあります。ドライアイ・ドライマウス(口が渇く)が、しばしば起きます。

膠原病・甲状腺機能低下症・シェーングレイ症候群など免疫疾患を併発することが多いようです。この場合は、朝夕に、こわばりやリンパ節の痛みがひどくなります。

[精神的症状]

睡眠障害(眠れない・熟睡した感じがない・いくら寝ても眠たい)があり、気分がひどく落ち込みます。いわゆる「うつ状態」になります。特に、社会的・心理的ストレスがトリガーとなって発症すると、うつ病とか心身症とか診断されることが多くなります。

身体の痛みが緩和されると、精神的症状も改善します。

[症状による病気の進行程度]

線維筋痛症の診断は、血液検査やCTやMRIなどの画像に頼ることができません。診断は、次の2点が基本になります。

  1. 身体のいろいろな部分に原因不明の痛みが生じ、3ヶ月以上続いている。またはしばしば再発する。
  2. 身体の決められた特定の部位18ヶ所を、親指で圧迫すると、11ヶ所以上に痛みを感じる。圧迫する時は、通常4㎏の強さで押す。

この2点があれば、線維筋痛症と診断されます。

進行程度は次の通りです。STAGEⅢ以上になるのは、患者さん全体の30%程度です。

STAGEⅠ

全身の18ヶ所の圧痛点の11ヶ所以上に痛みがありますが、日常生活はなんとか送ることができます。

STAGEⅡ

痛みが手足の末端まで広がります。不安感が強くなり、うつ状態になります。眠れなくなり、日常生活を送るのが困難になります。

STAGEⅢ

激しい痛みが続きます。髪や爪に触れたり、湿度や気温が変化したり、わずかな刺激で全身に疼痛が広がります。自分の力だけで日常生活を送ることが難しくなります。

STAGEⅣ

激痛のために自分で身体を動かすことができません。ほとんど寝たきりになります。自分の体重で痛みが生じるので、同じ姿勢で寝ていたり、座っていたりすることができません。自分で寝返りもうてなくなります。

STAGEⅤ

ドライアイ・ドライマウス・膀胱障害・尿路感染・直腸障害など、さまざまな障害が全身に広がります。激痛が続き、呼吸や嚥下も困難になります。通常の生活はできません。

[まぎらわしい病気、慢性疲労症候群]

線維筋痛症は誤診を受けやすい病気ですが、同じような症状で原因不明の疾患があります。「慢性疲労症候群」です。

慢性疲労症候群(CFS)の主な症状は、激しい慢性的な疲労です。全身に激しい疲労感・倦怠感を生じ、関節や筋肉に痛みやこわばりがあります。微熱が出て、リンパ節が腫れたり、頭痛が起きたりします。

運動したり頭脳を使ったりすると、疲労感は激しくなります。睡眠や休息をとっても疲労は回復せず、気分が落ち込んでいきます。睡眠障害が起きて、よく眠れなくなったり、長時間寝ても眠たかったりします。はっきりした夢を見るようになります。

疲労が激しいので、発症前の半分も活動できなくなり、時には、疲れすぎて寝返りも自分でうてなくなります。

線維筋痛症の主症状は慢性的な疼痛、慢性疲労症候群の主症状は激しい疲労感ですが、気分が落ち込んでうつ状態になったり、頭痛や関節痛などがあったりして、症状がよく似ています。そのため、この2つの疾患を「同じ病気」と考える医師もいるようです。

線維筋痛症の治療法は・・・

medications-1442283_960_720薬

治療法は、薬物療法と非薬物療法があります。非薬物療法は、心理療法から民間療法まで幅広い治療法があります。欧米では昔から知られている疾患なので、民間療法も発達しています。

発症すると回復は簡単ではありません。発症後1~2年で症状が安定し、約50%の患者さんに改善が見られます。しかし、30%程度は変化なく、悪化する患者さんもいます。

何よりも、はっきりした診断を受けて、その症状を理解し、自分で受け入れることです。病気を受け入れることで、うまく付き合っていく方法を見つけることができます。

[薬物療法]

薬物療法は、線維筋痛症を3型に分けて、それぞれに適した薬品を使うようにします。

線維筋痛症は、症状により、➀筋緊張亢進型 ②筋付着部炎型 ③うつ型に分類できます。

筋緊張亢進型

骨格筋を中心に激しい疼痛があり、身体がこわばって動かしにくくなります。

抗けいれん薬(新型抗てんかん薬)が効果があります。

筋付着部炎型

外傷やリウマチ性疾患がトリガーとなって発症することが多いようです。精神的症状は、あまり出ません。

抗炎症薬と鎮痛剤を使用します。ただ、非ステロイド系抗炎症薬などの通常の鎮痛剤は効き目がないようです。麻薬も効果に限界があるようです。

うつ型

心因性の発症要因、ストレスや精神的ショックなどで引き起こされます。

抗うつ薬・抗不安薬・睡眠調整剤などが投与されます。

重複型

筋緊張亢進型・筋付着部炎型・うつ型が重複しています。どの型の症状が重いかをよく見極めて、使用する薬剤を選びます。

[非薬物療法]

心理療法(精神療法)と運動療法

認知行動療法と有酸素運動の組み合わせで、痛みを緩和することができます。有酸素運動は、エアロビック・スロージョギング・ウォーキング・ストレッチなどが良いようです。

毎日、軽い運動をすることで、身体のこわばりをほぐし、運動機能の低下を防ぎます。

瞑想・リラクゼーション法・自律訓練法・注意転換法なども、痛みの緩和に役立ちます。これは、慢性疲労症候群にも効果があるようです。

民間療法

鍼灸やマッサージを受ける人が少なくありませんが、効果については実証されていません。太極拳・ヨガ・気功などを勧められますが、これも効き目については、はっきりしません。

民間療法の効果は、個人差が大きいようです。

[おかしいと思ったら、どうすればいいの?]

原因のわからない疼痛が身体のあちこちに生じ、2~3ヶ月持続する場合は、要注意です。疼痛の他に、疲労感・倦怠感・不眠・気分の落ち込みなどの症状があれば、線維筋痛症を疑ってください。

「日本線維筋痛症学会線維筋痛症診療ネットワーク」に相談することをオススメします。

まとめ

線維筋痛症は頻度の高い難病の1つです。原因不明なので、まだ治療法が確立していません。発症するきっかけとなる要因には、外傷や感染、手術、精神的ショックやストレスなど、いろいろあります。

主な症状は激しい慢性的な疼痛です。身体のあちこちが痛み、痛みが移動することもあります。痛みを抱えているだけでも、かなり疲れます。痛みを我慢し続ければ、心身ともにヘトヘトに疲れてしまいます。頭痛やめまい、不眠をともなうのも当然でしょう。うつ状態になっても無理はありません。

診断が難しいので誤診も多く、医師から医師へ渡り歩く患者さんも多いようです。まずは、専門医の診察を受けて、的確な治療法を見つけることが大事です。現在は、良い薬が開発されていますから、症状を緩和することができます。

そして、線維筋痛症を冷静に受け入れ、上手に付き合うようにすることです。無理をしないで、できることを少しずつするようにしてください。気分をゆったりさせてリラックスすれば、痛みも多少緩和できます。

病気とうまく付き合うことが何よりの治療法です。

  
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