B型肝炎とはウイルス性の肝炎であり、他人に伝染する病気としては代表格とも言えるものです。ちなみに、肝臓に炎症を引き起こすウイルスは非常に数多くあります。その中でも特に感染力が高いウイルスはB型を含めて五種類あります。A、B、C、D、そしてE型の五つが当てはまります。
また、現在日本では約150万人近い人が感染していると言われています。さらにB型肝炎ウイルスは感染力が非常に強く、唾液などのわずかな体液ですら伝染します。このため、年間で約10000人近い人々が、新たにB型肝炎に感染しているとも言われています。
B型肝炎の症状
ではB型肝炎に感染してしまったらどうなってしまうのでしょうか。
意外にも、約70%-80%の人にはすぐに害はありません。大抵の場合は目立った症状がないまま経過します。しかし、残りの約30%の人は急性肝炎という症状を発症してしまいます。具体的には、黄疸、発熱、全身に強いだるさを感じるなどといった症状が起きます。といっても、この程度ならまだ軽い方です。病院に行かずとも、自然に完治してしまう人いるほどです。
しかし、約1-2%の人はより重い劇症肝炎という症状を発症します。この状態は肝炎が急速に進行してしまった状態です。具体的な症状としては重い肝機能異常、それによる昏睡などが当たります。特に酷いと、発症からわずか数日で肝臓の機能が停止してしまうことすらあり、死亡率が70%にも及ぶ大変危険なものです。
B型肝炎の予防接種について
冒頭でも述べましたが、B型肝炎ウイルスは非常に高い感染力を持っています。その脅威は世界に広く認識されており、約180ヵ国で予防接種が行われているほどです。
また、何より恐ろしい特徴は、人から人への伝染(水平感染)だけでなく、母親からその赤ちゃんへとも伝染すること(垂直感染)です。当然、伝染して生まれた赤ちゃんはウイルスのキャリアとなってしまいます。すると、赤ちゃん自身が慢性感染や肝臓がん、肝硬変になりやすくなるだけでなく、他人への感染源になってしまいます。
そのため、世界保健機関(通称:WHO)は多く国々に対して、生後すぐの幼児にもB型肝炎の予防接種を実施するように呼び掛けています。生後すぐからの予防接種によって、母親から子への垂直感染も防げますが、他人からの水平感染も防げます。まさに一石二鳥なのです。もちろん、成人後の予防接種も十分に効果的です。ただ、効率性と確実性という観点からは、生後間もなくの予防の方が魅力的というだけです。
また日本の厚生労働省は、2016年の10月からB型肝炎防止のための予防接種を、定期接種(実施する際に自治体から金銭補助が行われ、大抵は無償で受けられる予防接種のカテゴリー)に指定しました。ちなみに、2016年6月現在のB型肝炎予防接種の費用は、病院にもよりますが、1回あたりで5000-6000円前後が平均相場です。
最後に、予防接種をするべきタイミングとスケジュールですが、これは人によります。というより、母親がB型肝炎ウイルスのキャリアか否かによって変わります。これに関しては以下より説明させて頂きます。
母親がキャリアの場合
前述の通り、母親がウイルスのキャリアと判明している場合は特に、生後すぐからの予防接種によってB型肝炎ウイルスの侵入を未然に防ぐことが推奨されています。具体的には、出生後12時間以内に1回目の予防接種を行うのがベストであり、そうでなくとも、48時間以内の摂取が望ましいとされています。そして生後1か月で2回目の、6か月で3回目の予防接種を受けることになります。
さらに生後9-12か月の間に抗体検査を行い、その結果、抗体の力が不十分であれば追加の予防接種が必要となります。要するに、B型肝炎への抵抗力をテストし。それが合格点以下であれば、追加接種で合格点まで抵抗力を底上げする、というわけです。
また、B型肝炎ワクチンとは別のワクチンも摂取する場合、その間隔を6日以上設ける必要があります。
その他の予防接種
母親がウイルスのキャリアでない場合の人も、十分な免疫をつけるためには計3回の予防接種が必要です。
1回目の予防接種は生後2か月以降の人が摂取可能となります。2回目の摂取はそれから4週間ほどの間を空けてからでないとなりません。そして3回目の予防摂取を行うためには、1回目の摂取から合計で20-24週の期間を経る必要があります。
また、残念ながらこれで終わりとは限りません。3回目の摂取から約1か月後に検査が必要です。この検査によって、抗体がちゃんとできているか、つまりB型肝炎への十分な抵抗力と免疫があるか審査します。結果、不十分だと判断された場合は、追加の予防接種を受ける必要があります。
B型肝炎の副作用について
ワクチンと言われると、副作用について心配される方が少なからずおられます。
特に、ここで先ほど紹介したケースのように、生まれて間もなくの赤ちゃんの摂取ともなると強い不安心を抱くご両親が数多くおられます。「ワクチンとは要するにウイルスや病原菌の基を入れることで抵抗力をつけるもの」という認識やイメージが一般的でしょうし、そんなものを抵抗力の弱い赤ちゃんの体の中に入れるということに抵抗を覚える方が多いのは当然のことかもしれません。
ですが、副作用を心配する方々には是非とも安心してほしいです。結論から言ってしまえば、B型肝炎用のワクチンは数あるワクチンの中でも特に危険性が低い部類に入ります。もちろん全く副作用がないわけではありません。平均で約10%の人が予防摂取後に何らかの副作用を発症します。
ですがその症状というのも、体のだるさや頭痛、ちょっとした発熱、注射箇所の腫れや痛みなどであり、まず命を左右するものではありません。こらから自身が摂取されるという方も、ある程度大きくなったお子さんやはたまた生まれてくる赤ちゃんに摂取させるという方もそこは心配はいりません。
なぜ副作用が弱い?
そもそもワクチンには大きくわけて、「生ワクチン」と「不活化ワクチン」の2種類があります。生ワクチンとは、生きている細菌やウイルスを弱体化させたものを接種することによって、その病気に対する抵抗力と免疫の獲得を狙うものです。要するに、一般的に知られているワクチン像はこの生ワクチンのことだと言えます。
しかし、B型肝炎用のワクチンはその生ワクチンには含まれません。そうではなく、B型肝炎ワクチンは不活化ワクチンの一種です。ではその不活化ワクチンとは一体何なのでしょうか。不活化ワクチンは、細菌やウイルスをほぼ完全に殺して毒性だけを奪い取り、そして反対に、抵抗力と免疫を得るために必要な成分だけを抽出したものです。
B型肝炎ウイルスの予防接種が複数回に渡る理由もここにあります。不活化ワクチンは、生ワクチンとは異なり摂取後に体内で免疫の基となるものが増殖しません。ウイルスや細菌、それ自体がすでに死んでいるためです。
よって、十分な免疫をつけるために複数回の接種が必要となるのです。非常に乱暴な言い方をしてしまうと、「1回で足りないくらいなら、何度もやってカバーしよう」という発想です。
では赤ちゃんが副作用になった場合はどう対処すれば?
とはいえ、繰り返しになりますが完全に副作用がないわけではありません。あくまでリスクが低いというわだけです。
まして、成人の肉体であれば多少の頭痛や発熱はそこまで心配しませんが、赤ちゃんの身に起きたとなると話は別です。まだ体が弱く、か弱い赤ちゃんの身に起きたとなれば、心配になるのが親心でしょうしそれが自然です。ですので、赤ちゃんに起こった場合の対処法を紹介いたします。
まず前提として、副作用とは異常なものではありません。体の中に急に入ってきた、ワクチンという異物に反応しただけのことであり、言い換えれば正常な反応を体が示した証拠です。ですので、赤ちゃんの発熱や不具合の理由が副作用である場合、むしろ危険性は低いとも言えます。むしろ、副作用以外での発症の方が未知の分恐ろしいです。もちろん、余りにも酷い過剰な副作用のケースは別です。その時は迷わず病院に行くべきです。
その上で、赤ちゃんの発熱や不調が副作用によるものなのか否かを見分ける方法を紹介します。簡単に言ってしまえば、「様子を見ること」が最善と言えます。熱が37℃前後であり、なおかつ注射箇所が腫れている場合などは副作用の可能性が高いです。この場合は、数日も休めば回復することが多いので、赤ちゃんの水分補給にだけは注意して、後はゆっくり休ませてあげてください。
しかし、他の副作用の特徴が見当たらない上に数日経っても治らない場合や、より高い高熱を出した場合は他の病気である場合や、あるいはただの副作用を超えた症状の可能性gありますので、病院にて診察を受けるべきです。
まとめ
今回は以上となります。確かに、B型肝炎は時に致命的に恐ろしい病気となることもあります。なので予防接種によってそのリスクを減じることには大きな意義があります。自分の身を守るという点でも、また他人へのさらなる感染と二次災害を防ぐという点でもです。
また、B型肝炎ワクチンの予防接種の場合、副作用の危険性は非常に低いです。約10%の人しか発症しませんし、その症状も深刻なものでもありません。ですので、まだ予防接種しておらず免疫がない方にも、これから子供が産まれてくるという方にも、差し出がましいようですが早めの予防接種をオススメします。